美・知との遭遇 美術教育見聞録 学び!と美術

酸素濃度が高かった時代?
真の美術史が見えてくる

導入事例Case7掲載

画像:09文化史紀元前(部分) 昨年(平成20年度)より新版になった「美術資料」(秀学社)巻末の10ページにも及ぶ「美術のながれ(美術史略年表)」が充実しました。掲載図版も多くなり、年表上下の西洋・日本とアジア諸国の時代性をビジュアルに比較しながら楽しめます。特にルネサンス期と、近代の印象派あたり以降から現代アートに続く東西美術のながれは、鑑賞の授業で多様に展開できそうだと感じるのは私だけではないでしょう。

 以前に、ルネサンス期・大航海時代について触れたことがありますが(Vol.009 12月号2007)、近ごろの興味は紀元前数世紀に向いていると自覚しています。
 略年表に示される膨大な時の流れと、私がイメージする時代認識には大きな隔たりがあることは否めません。代表的な作品とされる名品群の陰で、もっと庶民的な文化の潮流があったと思われますし、その時代に生きた人々の価値観や表現目的などへの洞察が伴って、真の美術史が見えてくるのだと考えられます。そう理解しながらも、春秋戦国の諸子百家のように、それぞれの時代が文化の飛躍や芸術家の百花繚乱を生むリズムのようなものが文化史にはあると感じています。ただ、その起因や時代背景について問われても、そのことを分析をする術のない私には、「酸素濃度が高かったのでは?」という回答で濁すほか思い当たる理由が見つかりません。
画像:今月のPhoto 桃園のキジ(福島大学の近くで) 下の年表は、文化史の概観を講義するために作成した文化史年表資料の一部です。おおよそ紀元前7世紀から紀元前1世紀を示しています。人物名の後の数字は生没年を表していますが、生年の定かでない場合が多いことをご理解の上参照して下さい。引用書によって孔子などの生年が若干異なります。

 授業の中で学生は、まずイソップに注目します。グリム兄弟(18~19世紀)、アンデルセン(19世紀)との隔たりに改めて驚くからでしょう。「ピノッキオの冒険」も19世紀イタリアの物語です。私が想像画の指導に用いる「ウサギとカメ」や「アリとキリギリス」が、原典から2500年を経て語り継がれる教訓に充ちたイソップ物語だというロマンだけでも、紀元前への興味が起こります。
 アリストテレスがアレキサンダー大王の家庭教師であったことは有名です。大王の祖父初代マケドニア王の依頼でアリストテレスの父が紹介したとされますが、家庭教師だった頃の双方の年齢を大王13?16歳、アリストテレス41~43歳として想像すればリアルにイメージが広がります。プラトンの弟子が反抗期の少年であった大王に、どのような哲学を伝授したのでしょう。二人の没年は1年違いです。情報伝達が十分ではない時代に、教え子の顛末を師はどこまで知って生を終えたのかを、教育者の視点で考えてしまいます。

 まだまだデータが十分ではない試作年表ですが、学生たちとリアルに文化史を俯瞰できるよう、今後も楽しみながら内容を充実させたいと思っています。

画像:09文化史紀元前(部分)

導入事例 Case7

中学3年 『自分らしさを見つけて』 ―自画像―(12時間)

*今の自分と向き合う姿勢を身につけながら、コンテで自画像をかく授業です。

◎主な材料
  • コンテ(茶・黒・白)
  • 黄ボール(四ッ切)
◎導入の工夫
  • 自分を見つめることは照れ臭く、多くの生徒が自分という存在を否定的に捉える傾向にあります。導入では内面には触れずに、「人物の素描」に興味をもたせるという視点から授業を工夫してみました。
福笑い的顔のバランスと表情の学習
(下段画像参照)(2)からパーツを切り取り(1)に配置して表情の違いを見ながら、眉・目・鼻・口の位置を確認する。
目は口ほどにものを言う?
目をかいてみる
まず鉛筆で、想像した眼をかいてから、鏡に向かって、観察しながら目をかかせます。小さな鏡の方が、顔全体が映らず、抵抗なく目を観察できます。まぶたに隠れた黒眼やまつげの生えている向きなどを確認させながらかく生徒は結構いました。コンテでもう一方の目をかかせます。
  • 導入事例7
    (1)顔
  • 導入事例7
    (2)パーツ

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N先生の実践授業