「昭和30年代の日本・家族の幸福(しあわせ)」

私たちが失ってしまった多くのことを、的確に伝えている。

夫婦編より「愛情屋台」 昨年は、昭和30年代後半の東京を舞台にした映画「三丁目の夕日」が大ヒット。あちこちで、レトロふうの雰囲気がもてはやされた。
 今年は、戦中戦後にかけて、ある女性がたくましく生き抜くという映画「母べえ」(かあべえ)が、吉永小百合主演、山田洋次監督で作られるという。(公開は来年)
 そんななか、「昭和30年代の日本・家族の幸福」(記録映画社、桜映画社、日本映画新社 共同製作)という三本組のDVDを見た。夫婦編、親子編、家族編の三本で、それぞれに中編の劇映画が三本、収録されている。しかもそれぞれの映画の前に、当時のニュース映画が入っていて、あらためて昭和の30年代がどんな時代であったかが、よく分かる。

 夫婦編は「今どきの嫁」「妻と夫がけんかした話」「愛情屋台」の三本。
  「愛情屋台」がいい。舞台は通天閣の見える大阪の下町。貧しい母子と所帯を持った男が、義理の息子に遠慮しながらも、屋台の焼き鳥屋を切り盛りする話である。昭和35年のニュース映画は、モーレツ社員の仕事ぶりを伝える。

親子編より「小さな町の小さな物語」 親子編は「小さな町の小さな物語」「風光る日に」「現代家族」の三編。
  アイゼンハワー来日の準備工作で、ハガチーが来日。抗議のデモが吹き荒れるニュースのあとに「小さな町の小さな物語」。中仙道沿いの小さな町の病院に勤める薬剤師一家の話。薬局を開く夢のある亭主は、お人好し。三人も子供がいるのに、不幸にあった親戚の子供をつぎつぎに引き取る。子供たちも薬局が開けるように応援するが…。

 家族編は「お母さんの幸福」「おじいさんはがんこ者」「長男」の三編。
  ニュースは昭和33年の皇太子妃決定。そのあとの「お母さんの幸福」が心打たれる。病気の母親のために、長女は会社を辞める。家族全員が母親のために協力する話である。ただ、当時の風俗、時代を伝える懐かしさだけではない。ここに描かれた九編の映画は、豊かで便利な今、私たちが失ってしまった多くのことを、的確に伝えている。それがいったい何なのか?

  家族で、学校で、このDVDに描かれたドラマをもとに、現代とくらべての議論は意味があると思う。

 三本のDVDは各5040円(税込)
 ※このDVDシリーズには、前作「昭和30年代の日本・家族の生活」
  都会の子どもたち編/都会の暮らし編/農村の暮らし編 が発売しています。

昭和30年代の日本・家族の幸福