幸せの絆

人として、本来のやさしさとは何かを考えてみたい作品

「天然コケッコー」Copyright2007「天然コケッコー」製作委員会 中国のメディアが「大催涙弾」と表現した映画「幸せの絆」(原題は「暖春」)を見た。
 観客を泣かせる映画は数多く作られてきたが、これまた、泣かせる映画、ということなのだろう。映画の舞台になった山西省では、チャン・イーモウの「HERO/英雄」を抜いての大ヒットだったようである。そして、じっさい、泣けて泣けて、という映画であった。

 舞台は中国・山西省の山あいにある芍薬という村。7歳の少女、小花(シャオホア)は、里親から虐待を受けた孤児で、村まで逃げてきたものの、倒れてしまった。貧しい村である。村人は可哀想とは思うが、誰もこの少女を引き取ろうとしない。やっと、ひとりの老人が、小花を引き取ることになる。老人は、一人息子の宝柱(パオチュウ)とその妻、香草(シャンツァオ)の三人暮らしである。貧しいなか、さらに小花の面倒までと、息子夫婦、ことに香草は小花につらくあたる。夫婦には子供ができないこともあって、夫婦のいさかいのもととなっている。
 老人は小花にやさしく接し、小花も老人をおじいさん、おじいさんと慕うようになっていく。けなげな少女である。
 いくらいじめにあっても、常に前向き、食事や掃除なども積極的にやろうとする。
おじいさんは小花を小学校に行かせるために、仕事に励む。ある日、雨の中、おじいさんは倒れてしまう。必死におじいさんにすがる小花をみて、息子夫婦も次第に心が溶かされてゆく。
 子供ができない息子夫婦のために、小花はイナゴを集め始める。イナゴを食べると、子供ができると信じての、小花の判断である。事実を知った香草は、小花に詫びる。
 やがて、おじいさんにも隠されていた秘密が明らかになる。

 筋書きは、いたってシンプルである。小花のけなげさに、観客は次第に涙するようになっていく。
 いまどきの、肉親を肉親とも思わない殺伐とした一連の事件を考えると、ありえないような話ではある。映画は、ストレートに、他人同士でさえも、血よりも濃い絆があることを伝える。だからこそ、小花の無償の行為が、より涙を誘うのだろう。素直に泣いて、人として本来の優しさとはなにか、考えるきっかけになればと思う。小花に扮したチャン・イェンは、2000人の中から選ばれたという。じつに達者な演技である。
 監督は内モンゴル出身のウーラン・ターナ。これが劇映画の初監督作になる。

●公開は7月21日(土) 銀座シネパトスにてモーニング・ロードショー他全国順次公開