ヨーガを教育に 「国民の1%にヨーガを」を目指す、倉本英雄さん。

新年にふさわしいトピックとして、健康にまつわる話題をお送りします。

「健康づくり」の一つに、いまヨーガが人気だ。
読者の近所でもヨーガ教室を見かけることが多くなったのではないだろうか。

インド? ダイエット? 柔軟体操? 神秘的? セレブ?
といったキーワードが浮かぶ人もいるはず。健康増進やストレス解消、体質改善のため…など、さまざまな目的で注目されている健康法の一つだといわれるヨーガ。そもそも、無理せずゆっくりと長い時間をかけることで、有酸素運動の長所をよりよく生かした運動法ではないかと思われる。

 そのヨーガは、今から約5000年前にインドで生まれた心身の健康法。日本には仏教と一緒に伝わり、ラージャヨーガをはじめ七つの主な流派があるという。「体位法」「呼吸法」「瞑想法」の三本の柱を中心に据えた修行法として仏教や禅の源流といえるもので、その三つがリンクしながら、人の緊張や萎縮したものをやわらげ、張り詰めた神経をくつろがせ、心のイライラを落ち着かせ、健康体を築くことにつながるという。

倉本英雄さん そんな中、YIE(ヨーガ・イン・エデュケーション)「ヨーガを教育に」を合い言葉に、全国規模で普及に熱心に取り組む人がいる。香川ヨーガ道友会会長の倉本英雄さんは、香川県の県立高校教師を20年勤め、現在自身の運営するYIEヨーガアカデミー大阪学院長や、全国各地への講演とヨーガ指導などに活躍されている。
 なんと、お会いしただけで、場が和み、空気が柔和に、周りの人々をリラックスさせるようなオーラを感じる人である。柔軟なのはなにもカラダなのではなく、雰囲気までもそうさせるかのよう。もちろんヨーガは、硬い体をやわらかくすること以上に、実践することで爽快な気分、あふれる活力、疲れを知らないスタミナ、若々しい容貌、不屈の精神、温和な人柄が手に入るという、上記の三本の柱を基にした総合的な健康法だと言っている。

 倉本さんは長年子どもたちが毎日、はつらつと生気あふれる心身で、子どもらしく日々過ごせるようにと、学校の中にヨーガを取り入れるよう運動中である。
 不登校、薬物乱用、食生活や生活習慣の乱れなど、子どもたちを取り巻く暗いニュースの多い現代、氏の提唱するヨーガの精神は、今の子どもたちにも必要なものかもしれない。
 『いきいき、はつらつとした心身を得るには、脳のバッテリーとも言える脳幹網様体に大量の神経信号を送り届け、大脳の興奮、抑制の両過程の活動水準を高めなければなりません。このことに絶大なる力をもっているのが、「体位法」「呼吸法」「瞑想法」の三本の柱。ヨーガの実践は、大脳の働きを快調にするので、感受し、知覚し、認識し、識別し、理解し、判断するという一連の精神活動が高まり、持続力、思考力、記憶力、創造力等の精神力が強化される』という。

ヨーガ教室 ただ硬いカラダをやわらかくするのではなく、ただダイエットに効果があるのではなく、「内面の健全化」なのだという。元々、教員在職中にヨーガクラブを発足し長きに亘って教え続けてきた倉本さんだからこその考えであることだろう。ヨーガの普及に取り組み、保育所や幼稚園はもとより、小、中、高校・大学の学生や教職員、PTAにもその輪は、広がっているそうだ。ITに代表される情報社会の、ともすれば慌しい現代とは反対に、どんな年齢の人でも相応な体位法や呼吸法で実践できるという、ヨーガのスローな時間が必要かもしれない。

 学校では、朝や下校前の短い時間や、体育の授業、「健康」や「食生活」などの現代社会をテーマに総合的な学習の時間でも組み込むことができるのではないだろうか。香川県の善通寺東中学校では、倉本さんの指導の下、毎朝全校生徒が3分間のヨーガを実践しているという。

 いずれは「国民の1%にヨーガを」が目標のようである。

ヨーガで健康いきいきライフ 柔和な表情で指導される倉本さんが推奨するヨーガは「決して苦行や鍛錬ではなく“やわらぎ”“やすらぎ”“くつろぎ”の健全な状態に心を変えるもの」「呼吸を制するものは人生を制します。息の仕方が生き方を決めるのです」
 今回も記事作成にあたり電話で連絡したところ、不思議なことに声を聞くだけで倉本さんの、温和で穏やかな雰囲気が伝わってきた。
 氏の熱意により、地元香川では教室約200という国内でも有数のヨーガ人口を誇る県だという。

ヨーガ実習の根幹をなすという“10の心得”

  1. 手洗いをすませてから
    排便、排尿をすませ、口をすすいでおきます。
  2. 空腹時に
    食後1時間以内は避けます。飲酒後は絶対に行ってはなりません。
  3. 入浴の直前直後は避ける
    30分以上あけてから行います。
  4. 自力で行う。
    禅と同じように、瞑想につながるものなので、他人に手伝ってもらったり、器具を使ったりはしません。
  5. マイペースで
    競争心は禁物。無理しないで自分の体と対話しながら徐々に限界を広げてゆきましょう。
  6. リラックスできる服装で
    伸縮性のある楽な服装で行ない、体をしめつけるものや装身具等ははずしておきます。
  7. 閑静で空気の新鮮なところで
    天気のよい日は、緑のあふれる野外で行ないましょう。
  8. 毎日規則正しく
    短い時間であっても毎日欠かさず行なってください。
  9. 楽しみながら行なう
    無理にいやいやするのでは効果は半減します。ゆったりした気持ちで楽しみながら行ないましょう。
  10. ていねいに行なう
    じっくりと、心をこめて、ていねいに行なうようにしたいものです。粗暴なやり方は危険でもあります。
倉本英雄氏の最新刊
画像:寿限無のささやき

「心と脳を元気にする70の法則」

出版社名:致知出版社
発行年月:2008年8月
定価:1,250円(1,190円+税5%)
ISBN:978-4-88474-821-0