学び!と美術

学び!と美術

発見の喜び
2014.04.10
学び!と美術 <Vol.20>
発見の喜び
奥村 高明(おくむら・たかあき)

 楽しみにしているネット上の情報の中に、子育て真っ最中のお父さんの記録があります。「丸をうまく描くのとおしゃべりの始まりは影響し合う」「ひらがなを書き出した頃にアンパンマンを描く」など、我が子の成長からいろいろな発見をしています。これが実に勉強になるのです。本稿ではその例を挙げながら、図画工作や美術の役割まで広げて考えてみましょう。

1.子どもの発見

 まず、Aちゃんの発見です。写真1についていたコメントは「ピグマックスとプロッキーを手に取り、じっとみて『いっしょや』」です。これのどこが発見なのでしょう。

写真1

 Aちゃんは、二本のペンを手に持ってじっと見つめています。それは二本を比較、検討していることを示しています。「いっしょや」とは、当初「二本は違う」という意識があったということです。つまり、二本のペンを比べ、考えて、その上で「いっしょ」=「同じ」という結論に達したのでしょう。さらに興味深いのは、Aちゃんが「紫」と言ってないことです。「紫」という色を知っていて、そこに二本を当てはめたのではないということです。子どもは、大人と異なり、全ての色や音などがそのまま入ってくると言われています(※1)。そこから見方や感じ方を身に付けたり、何かに焦点化する方法を学んだりしていきます。その代表が「言葉」です。「言葉」を用いることで、私たちは混沌とした世界を「明確」にとらえます。「色」という概念も、その一つです。国や地域の文化に応じて、世界を「赤」や「青」などに分けています。おそらくAちゃんは、この「色」という概念から目の前の二本のペンを同じ仲間として分類したのでしょう(※2)。その瞬間をお父さんはとらえたというわけです。それは、子どもの発見という育ちを見逃さない温かい親のまなざしだと思います。そんなまなざしで毎日見つめられてるなんてAちゃんは幸せですね。

2.親の発見

 次は、お父さんが子どもの絵から発想の仕組みを発見した事例です。
 ある日、Bちゃんが写真2のような絵を描きます。お父さんは「手の表現が変わったな」と思い、「これは?」と聞きました。Bちゃんは「それ羽根やで」と答えました。お父さんは「なぜだろう?」と思い、「描いた順番」をたどりました 。以下お父さんの分析です。

写真2

 家族4人のバランスが安定していないので、おそらく真ん中の赤い花から描いたのでしょう。次に、ペンを持ち替えて茎と葉。それから左の雲をペンでクルクルと描きます。右にいくにつれ、次第にリズムが出てきています。その後、左から二番目のB子を、顔、髪、髪飾り、服、ヒラヒラの順に描きます。ここで、さっき描いた花の葉っぱが目に入り、じーっと見たのではないかと思います。そして、「あっ」と思ったのではないでしょうか。「これ、羽根の形に似てるわ!」。そこでペンを持ち替え、手の部分に青い羽根を書いたのでしょう。そして、同じ描き方で右隣に花をよけながら「かあちゃん」、そして「とうちゃん」。最後にB子の左の隙間を埋めるように、妹のC子を描いたのだと思います(※3)。
 お見事です。絵を描いた順番をたどることで、Bちゃんが羽根を描いた理由を解明しています(※4)。子どもは描きながら発想し、それをすぐに応用し、また描きます。この連鎖が造形活動です。後から見ると絵や工作なのですが、その最中はその子なりの試行錯誤や相互行為の連続です。お父さんは、その仕組みを何気ない絵から発見したのです。子どもの成長が分かってうれしかったでしょうね。子どもの成長や能力に関わる発見は、親が味わえる最上の喜びだと思います 。

3.発見の喜びと図画工作・美術

 本稿のような発見は、図画工作や美術の時間によく見られるように思います。もちろん、図画工作や美術は教科であり、絵と言葉やリズムなどが一体になっている子どもの世界と対応しているわけではありません。でも、現在の教育課程の中では、子どもの一体性や主体性などが存分に発揮されている教科でしょう。そこに関わる人々が、発見の喜びを感じることが多い教科だと思うのです。

 

※1:胎児や0才の段階からフランス語と日本語を聞き分けるという研究もある。
※2:学習の資源としては、少なくとも8色~12色の二種類のカラーペンのセットがあり、それを自在に使いながら絵を描ける環境がデザインされているのだろう。色は、親や兄弟と一緒に描きながら「赤を取って」「青いお花だね」などの対話の中で学習していると思われる。教師としては、この子を有能な子として成立させている資源のネットワークまで考えたい。
※3:この後、本人に聞いたら順番はほぼ同じだったそうだ。でも「妹は『泣いてるねん』。確かに表情が違っている」、う~ん、なるほど。
※4:奥村高明『子どもの絵の見方~子どもの世界を鑑賞するまなざし~』を参考にしている。

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