学び!と美術

学び!と美術

図画工作の授業(3)~評価方法のいろいろ
2016.08.10
学び!と美術 <Vol.48>
図画工作の授業(3)~評価方法のいろいろ
奥村 高明(おくむら・たかあき)

 前回からの続きです。評価は、評価規準の設定、測定、分析などいろいろな側面がありますが、今回は授業で活用できる方法を簡単に紹介したいと思います。

1.作品

 作品は図画工作で最も信頼性が高く、全員分の評価データが揃う公平な評価資料です。提示されたパフォーマンス課題(題材)に対する解答(作品)ということもできます。一人一人が自分なりの資質や能力を発揮した成果ですから、作品から子どもの声を聞くような気持ちで丁寧に分析しましょう(※1)。「いいこと考えたよ」「ここを工夫したんだ」などのいろいろな声が聞こえるはずです。時には「先生、ぼくもっとこうしたかったよ」「あんまり考えられなかったよ」など題材や指導を見直す視点も与えてくれます。

2.座席表

図1

 作品になったときに「過程で見せた特徴的な姿」「表現が変化した理由」などは消えてしまいがちです。これを補完するのが座席表などを用いた記録です。子ども同士の関係を矢印で記入したり、簡単にメモを書き留めたりします(図1)(※2)。ポイントは記入しながら生まれる空欄です。それは見落としている子どもである場合が多く、その発見が次の指導につながります(※3)。ただ、授業中に先生が座席表をもって常に記録して回るというのは不自然です。題材や年間指導計画との関わりで「この題材の、この場面で」で実施するとよいでしょう。

3.デジタルカメラ

 プロセスを撮影しておくことも有効です。例えば下絵を撮影しておくと、完成したときに「こんな工夫を加えた」ことがわかります(※4)。またカメラで撮るという行為は「あなたの作品を認めている」というメッセージにもなるので、称賛的な活動としても有効です。撮影した写真を授業のまとめに活用することもできるでしょう。ただ、カメラをもって撮影ばかりしているのはお勧めしません。評価者である前に、まず指導者であることが大切です。

4.ワークシート

 感想などを書かせたワークシートも貴重な評価資料です。子どもたちが形や色、イメージなど共通事項を手掛かりに振り返れるように設問等を工夫するとよいでしょう(※5)。マインドマップや概念地図のような形式で記述への負担を少なくする方法もあります(※6)。小グループでお互いの作品のよさや工夫したことを話し合い、その結果をまとめさせると、教師の気付かぬ点が出てくるのでお勧めです。前号では作品の題名や物語などを考える方法を紹介しましたが、これも有効な評価資料です(※7)。

5.スケッチブック

 スケッチブックはポートフォリオとして考えることができます。アイデアスケッチ、感想文、関連する作文、作品の写真、相互評価で使った付箋など、学習で用いた様々な資料を貼っていくと、1学期もすれば立派な評価資料になります。全員分が確実に蓄積しますので、評価の公平性という観点からも妥当な方法です。「学習帳」を「図画工作ノート」として4年間通して活用している例もあります(※8)。継続的に見ることで学年を超えた発達や成長がよく分かります。

6.ルーブリック

図2

 ルーブリックは、作品や発表など特定の課題に対するもの、単元や題材で育てたい力を見るもの、あるいは教科や学校レベルで考えるものなど、いろいろな種類があります。子どもが自己評価に使ったり、教師が作品評価に使ったりするなど方法も様々です(※9)。パフォーマンスを評価する仕組みとして近年広がっていますが(※10)、パソコンを使って簡単に相関や平均などの統計的な分析ができるようになったことも理由の一つでしょう。
 図2は、授業分析を目的にした鑑賞活動の自己評価ルーブリックです(※11)。現在、中央教育審議会で議論中の「三つの柱」をもとに、知識・技能として「①形や色など作品の特徴のこと」「②作品について話し合うこと」、思考・判断・表現として「③自分の考えを組み立てること」、学びに向かう力・人間性として「④学びに向かう力」の4項目を設定しています(※12)。
 鳥取県北条町立北条小学校で半年間調査した結果から現在分かったのは以下です。

  • 自分たちの作品を鑑賞するときは「①形や色など作品の特徴のこと」と他の項目との相関が強くなることです。おそらく、子どもたちは作るときに大事にしたことをそのまま鑑賞の視点にして友達の作品を見ているのでしょう(※13)。
  • 美術作品を鑑賞するときは「③自分の考えを組み立てること」と「④学びに向かう」の間に相関が強くなります。子どもたちにとって、大人の作品は未知の表現世界なので、考えることを頑張っているのかもしれません。
  • 「②作品について話し合うこと」だけが他の項目とあまり相関しません。小学生だからか、授業の内容によるものか、そもそもルーブリックに問題があるのか、まだ理由は分かりませんが、「盛んに話し合っている」「よく発言する」など表面的な様子だけを評価することは気を付けた方がいいでしょう。

 図画工作や美術は、これまで子どもの一人一人の資質能力をとらえようと、一方的な「冷たい評価」ではなく、子どもの成長を目指す「温かい評価」が目指されてきました。ただ、子どもの様子の記述やエビデンスの低いアンケート等などに偏っており、エビデンスとしては弱かったと思います。今後は、他教科と連動した様々な方法の開発が進むでしょう。

 

※1:評価規準をもとにすることが原則です。
※2:http://www.nier.go.jp/kaihatsu/hyouka/shou/07_sho_zugakousaku.pdf?time=1470709916241
※3:評価には教師の指導力を高める側面もあります。
※4:「学び!と美術 <Vol.05> 造形活動が育てる学力」の「どんぐりと山猫」の下絵段階(図1:デジタルカメラで撮影)と完成段階(図2)を比較して下さい。
※5:「感想を書きましょう」は曖昧です、具体的な視点が必要でしょう。
※6:http://www.nier.go.jp/kaihatsu/hyouka/shou/07_sho_zugakousaku.pdf?time=1470709916241

※7:なお、活動した直後に「振り返って書く」よりも、一日、二日たった後の日記や作文の方が具体的で評価に役立つ場合が多いようです。作品が仕上がった直後に感想文を書くのは大人でも結構つらいものです。落ち着いてから書く方がよく振り返れるのです。なお、子どもは作品を前にすれば数年たっても詳細に何を工夫したか思い出せます。
※8:当時東京都の図画工作専科だった内野務先生の実践です。

※9:「特定の課題に関する調査(図画工作・美術)」で用いられた解答類型は、作品評価のためのルーブリックといってよいでしょう。http://www.nier.go.jp/kaihatsu/tokutei_zukou/(19p~33p、84p~96p)
※10:例えば、第51回佐竹賞佳作賞 千葉県袖ケ浦特別支援学校森田亮先生の実践「教育美術8月号」2016
※11:筆者作成。このルーブリックを用いて、北条小学校以外に札幌市、川崎市、名古屋市などで鑑賞の授業について調査を行っています。
※12:授業分析やルーブリック開発を目的としたもので、個人内評価を行うためではありません。
※13:北条小学校と共同で作成した「表現活動のルーブリック」を用いた調査の分析からも、子どもたちが「形や色」を重視している傾向がうかがえます。

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