学び!とESD

学び!とESD

ESDと気候変動教育(その6) 幼児とともに気候アクションを!
2021.11.15
学び!とESD <Vol.23>
ESDと気候変動教育(その6) 幼児とともに気候アクションを!
木戸啓絵(聖心女子大学大学院永田研究室・岐阜聖徳学園大学短期大学部専任講師)

COP26開幕!日本は化石賞…

 イギリス・グラスゴーで、第26回 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開幕し、およそ120カ国の首脳らが集い、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度以内に抑えることを目指し、さまざまな角度から議論が行われています。岸田首相も首脳級会合に出席し、気候変動対策について日本の取り組みをスピーチしました。しかし、残念ながら日本は、国際NGO「気候行動ネットワーク(Climate Action Network:CAN)」が発表する化石賞を、前回に引き続き受賞してしまいました。この化石賞は、気候変動対策に後ろ向きな国に対して贈られます。今回のCOP26では、温暖化をはじめとする気候変動の最大の原因とも言われる石炭火力発電の廃止の動きが加速する中、日本は新たな技術革新を盛り込みながらも、いまだ石炭火力発電を続ける方針を示していることが批判されています。
 一方で、COP26開催地のグラスゴーなど各地で大規模なデモが行われており、各国の首脳らが掲げる目標やスピーチには、具体的な行動が伴っておらず、空っぽのスローガンであると批判する声もあがっています。COP26では、各国の教育大臣や関係者が集い「気候変動と教育」についても活発な議論が行われていますが、残念ながら日本のメディアではそこまで報道されていません。

広がる気候変動への危機意識~ドイツ~

 そこで今回は、気候変動と教育をテーマに、幼児期の子どもたちとどのようなアクションが生まれているか、ドイツの様子をご紹介したいと思います。ドイツは「ESD for 2030ベルリン大会」(学び!とESD<Vol.18>)の開催国でもありますが、学校教育だけでなくさまざまな教育の場でESDを実践していくことや、学校や地域全体で持続可能性を実現していくことを目指して、学習指導要領等の改訂や教員等に向けた研修の充実が図られています。
 ESDや気候変動教育については、幼児期が大きな鍵となることが、ユネスコの報告書でも何度も主張されてきました(UNESCO 2006.2019.)。しかし、残念ながら日本ではまだその重要性の認識が低いように思われます。ドイツ国内では、幼い子どもたちに向けてESDの理念や実践をまとめた報告書が数多く発表されるとともに、全国規模で保育者向けのESDや気候について学び合う場が充実しています。今回は、そのうちの一つ「気候こども園ネットワーク(Klima-Kita-Netzwerk)」の取り組みについて少し紹介したいと思います。

気候こども園ネットワーク

 気候こども園ネットワークは、2021年3月にボンで、環境の専門家チームや自然保護団体らが連携して構築されました。ドイツ全土のおよそ730の保育施設や保育者養成校等がつながり、気候変動や持続可能性といったテーマを幼い子どもたちの日常生活でどのように実践していけるか、このネットワークを通じて多くのアイディアや方法が開発・収集されています。園を持続可能性の観点から改装したり、電気や水などの資源を使うときや食事のメニューや食料調達の際に地球環境に配慮したりするなど、具体的な取り組みを進める園が増えているようです。園で実践されてきたアイディアは子どもたち自身から生まれたものも多く、子どもたちが自分たちで何かができるという体験をすることの重要性も主張されています。持続可能な未来の創り手は自分たちであるという自覚は、幼児期から育まれることを忘れてはならないでしょう。

気候アクション週間~持続可能なクリスマスに向けて~

クリスマス・シーズンのドイツの様子(筆者撮影) 今月末から、このネットワークの気候アクションが、「クリスマスのお菓子の代わりにクリスマスの奇跡を~持続可能なクリスマス・シーズン~」というテーマで始まります。2021年11月27日から12月24日までを「気候アクション週間」として、クリスマスに向けた持続可能な取り組みを各園に呼びかけています。ちょうど11月27日は、世界60カ国以上で広がっている「何も買わない日(Buy Nothing Day)」とも重なっています。園生活の中には、おもちゃ、クリスマスの飾り、買い物など、子どもたちと一緒に持続可能性について考え行動するきっかけがあふれています。ドイツでは、クリスマス・シーズンになると、園内でもクリスマス・ツリーや星などを飾ったり、アドベント・カレンダーを用意したり、たくさんの物を購入する場面が増えます。しかし、これまでと同じような消費スタイルは、持続可能なクリスマスと言えるでしょうか。クリスマスのイルミネーションの電気は、どこからくるのでしょうか。アドベント・カレンダーのたくさんの小さなプレゼントの代わりになるようなものは何かないでしょうか。
 このように気候アクション週間では、子どもたちと一緒に探求しながら持続可能なアイディアを発見する旅に出かけようと呼びかけが行われています。すでに園生活の中で行われているさまざまな場面を、持続可能性の観点から変革していくプロセスは、ESDや気候変動教育で重視されているホールスクール・アプローチ(学び!とESD<Vol.14>)に支えられています。上述したように、COP26では世界中の若者たちを中心に「おしゃべりはもういい!行動しよう!」という声があがっています。
 日本のみなさん。私たちはどのようなことを子どもたちと一緒に探求しましょうか。まずは、身近なところから一緒に行動していきませんか。

【引用・参考文献】