学び!とPBL
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1.地方創生イノベーションスクール2030で育てたい力
地方創生イノベーションスクール2030では、OECD東北スクールと同様に、参加した教師や研究者、企業でルーブリックを作りました。プロジェクトの独自性だけでなく、学校教育との親和性を考慮した結果、評価指標が「知識」「スキル」「価値観」の3つの領域、18項目にもなってしまい、これでは多すぎて評価に手間取ると思われましたが、絞り込む時間もなく、結局現在も含めてそのまま使っています。
毎年夏、冬、春に実施する「クラスタースクール」では、20分ほどの時間を取って、このルーブリックにもとづいて説明しながら自己評価させます。項目が多いばかりか、用語も難しく、これでは肝心の生徒たちがわからないのではないかと考え、解説書も作りました。しかし実際のところこのようなものを読んでくれることもないので、いっそカードゲームにしたらどうかと考え、後にテーマトークゲームのカードにしたところ、生徒たちはもちろん、先生方もテーマトークに没頭します。面白い事件でした。
2.自分たちの足で歩み出す中学生たち
福島市チームは、農業と観光を結びつけた観光プランを作ったらどうかということになり、いっそこれを内閣府の主催する「地方創生☆政策アイディアコンテスト2015」に応募することになりました。チームの生徒たちは学校のパソコン室に集まり、RESASを使ってさらに分析を進め、それを企画案としてプレゼンテーションにまとめていきます。
実はこの福島市チームを率いていたのは、OECD東北スクールの伊達市チームを指導した教員で、東北スクールのノウハウが随所に活かされていました。最も重視したのは、地元の中学生たちのそのままの思いだけでなく、その思いを客観的に、かつ実践的に組み立て直すかということでした。
まとめられた福島市チームのアイディア「中学生の視点から地域の魅力を再発見し、観光プランを作る」は書類審査を通り、年末に東京大学・福武ホールで開催する最終審査のプレゼンテーションを行うことになりました。するとこのアイディアが、高校生以下の部で最高賞を獲得したではありませんか。
「福島市に笑顔を取り戻す」と言ってはみたものの、その先に進めなかった福島市チームが、「たんにデータの分析に留まらず、自分たちの足で地域を歩き、データにない情報を集めた点が評価された」として、地方創生担当大臣賞を受賞したのです。この「事件」は、中学生たちでもやればできるという自信を獲得したばかりではなく、福島県知事が年末の会見でこの中学生の活躍を冒頭で述べたり、旅行会社が連携を求めてきたりするなど彼らを取り囲む環境も大きく変えることにつながっていきます。
3.「自分たちの力で」
そして翌年の夏には、旅行会社を通して1泊2日の「地元の中学生が企画・案内するバスツアー 夏の福島体験プログラム」として販売されました。ツアーには17人の一般の方々が参加し、お客様から好評を得ることとなりました。
24人のチームメンバーは「映像班」「PR班」「観光案内班」の三つのグループに分かれて活動し、市のマスコットキャラクターの使用権を得るために市と交渉したり、何度も観光地を訪問して予行演習を行ったりしました。新聞社の取材を受けたり、地元のラジオ番組にも出演したりしました。本番のツアー中ゲリラ豪雨にも遭遇し、一部取りやめざるを得ない部分もありましたが、生徒たちがへこたれることはありませんでした。中学生であっても、わずか17人であっても、努力してアイディアを実現しようとがんばれば、本当にできる、という何事にも替えられない「成功体験」となったのです。