使ってみよう!ずがこうさくの教科書

使ってみよう!ずがこうさくの教科書

情景写真・作品写真を読み解こう!
2019.01.08
使ってみよう!ずがこうさくの教科書 <第2回>
情景写真・作品写真を読み解こう!
山田 芳明(やまだ・よしあき)

あなたは「ぼんやり」見る派?「じっくり」見る派?
前回は、題材ページ全体から授業の流れをイメージできることをお話ししました。今回は、情景写真(=子どもの活動風景の写真)と作品写真に注目します。
教科書には、魅力的な子どもの姿や活動の様子と、素敵な作品が数多く掲載されています。「ぼんやり」見ているだけでも楽しさが伝わってきますが、視点を定めて「じっくり」捉え直すと、その題材で大切にしたいことが見えてきます。
「ボーっと見てんじゃねーよ!」と誰かさんに叱られないよう、一緒に読み解いていきましょう。

情景写真を「じっくり」見てみよう

前回に引き続き、教科書3・4上「カラフルフレンド」(*1)の題材ページを見ていきましょう。
まずは、こちらの写真。

「ぼんやり」見ていると、楽しそうだなという感じです。もう少し「じっくり」見てみましょう。二人の子どもは、黄色とクリーム色のお花紙が交互に詰められた細長い袋を、くねっと曲げた様子を眺めて何かを話しています。「キリンに見えてきたよ」とイメージが広がってきたようです。実際に材料を組み合わせたり形を変えたりしながら、つくりたいものを思い付いていますね。「発想や構想の能力」を働かせている姿です。
さらに、左の女の子の視線は折れ曲がった袋の方に向いています。友だちの活動や作品に目を向け、そのよさや面白さを感じ取る「鑑賞の能力」を働かせているんですよね。

次に、こちらの情景写真を見てみましょう。

作品を置く場所を探している様子ですよね。よく見ると、女の子の視線は作品に向かっていませんねぇ。友だちと会話をしているのかもしれません。いろいろな場所に置いてみて、置いたらどんな感じがしたか、友だちと率直な感想を語り合う。これも、「鑑賞の能力」を働かせている姿なんですよね。

作品写真を「じっくり」見てみよう

さて、次は作品写真を「じっくり」見てみましょう。
題材をより深く理解するための大切な情報が、たくさん見つけられますよ。

まずは、こちらの二つの作品を見比べてみましょう。

「ビッグ犬」の体は一つの色だけを使ってつくっていますね。一方「みにまめちゃん」はいろいろな色を組み合わせてつくっています。このことから、この題材では子どもが自由に色を使っていいんだ、ということが分かります。

今度は、こちらの二つの作品を見比べてみましょう。

「ミミちゃんロボット」は26cm、「ロボ」は58cmです。このことから、子どもがつくりたいと思う「フレンド」の大きさは自由でよい、ということが読み取れます。つくる作品の大きさや何枚袋を使うかは、子どもが自由に選べるように保障することが大切ですね。

このように、作品写真を「じっくり」みることで、「題材における活動の幅をどのように設定したらよいのか」を捉えることができます。

ところで、情景写真と同様に、作品写真からも資質・能力を読み取ることができます。例えばさきほどの「ロボ」という作品は、一つの袋の中に少しずつ色の違うお花紙を詰める、という工夫が見て取れます。「色の組み合わせを工夫する」という「創造的な技能」を働かせたのだな、ということが分かりますね。

その他にも、大切なことがいっぱいつまっています

写真から読み取れることはまだまだあります。
ではここで練習です。こちらの写真を「じっくり」見てみましょう。

図工で大切にしたいことが読み取れそうな予感がします。
私の考えは次号の最後でお話しすることにして、今は謎のままにしておきます。
この写真からどんなことが読み取れるか、ぜひ親しい先生と話をしてみてください。

山田先生からひとこと
いかがでしたか?
今回は、情景写真や作品写真から活動の幅や資質・能力などを読み取ることで、題材を一歩深く理解できることについてお話ししました。写真という視覚的な情報は、みなさんの直観に働きかけてきます。だからこそ、「ぼんやり」見るのではなく、「じっくり」読み解く、という見方を身に付けましょう。もうワンステップ、授業をレべルアップすることができると思いますよ。

*1:平成27年度版 小学校図画工作科教科書 3・4上 P18-19