学び!とPBL

学び!とPBL

「コンフォートゾーンから出てみる」
2021.12.21
学び!とPBL <Vol.45>
「コンフォートゾーンから出てみる」
三浦 浩喜(みうら・ひろき)

1.クラスタースクール

図1 まずはアイスブレイク 私たちは、生徒たちをイベント屋さんに育てることを目指しているわけではありません。高校生フェスティバルはあくまでも一つのゴールであり、生徒たちが、ここまでにどれほどの現実的な問題を解決してきたのか、そして、それ以上にどのような認識を得て、深めたのかが重要です。ややもすると、活動主義に陥り、現実的な実務に追われがちですが、私たちは毎年、夏、冬、春の休みを利用し、2泊3日のクラスタースクールを開催し、生徒たちの学びを広げようと努力し続けてきました。それは、東北スクールの集中スクールから続く伝統です。(<Vol.16>地域課題に挑む生徒たち<Vol.26>デジタル・ストーリーテリング、等を参照)
 クラスタースクールは、県外も含めて可能な限り複数地域の生徒たちを集めることで、新しい出会いを実現させます。スクールの目的を明確にし、カリキュラムを学生たちと考え、全体の流れをデザインしますが、当日の状況によって大きく修正することも良しとします。また、始めと終わりにアンケートを採り、生徒たちの変化をモニタリングします。スクールは、プロジェクト全体のポンプとなります。

2.SDGsを学ぶ

図2 SDGsカードゲーム 高校生フェスティバルを終えた2018年12月、福島市といわき市の高校生、福島大学の学生と教員、ゲストスピーカーら、約40人でクラスタースクールを開催しました。「高校生フェスティバルの目的をもう一度考える」ことが目的で、フェスティバル開催が自己目的化しないよう、課題意識を呼び起こすことをめざしました。1日目から2日目にかけて、海外交流を積極的に展開するNPOのGiFTの皆さんにお越しいただき、SDGsについて学習しようと考えました。
 今でこそSDGsは、どこでも取り組まれていますが、取り組みやすい環境問題などに矮小化されやすく、そもそもSDGsとは何かを追求する必要があるように感じられます。大学の教員からは、SDGsの取り組み自体が新たな問題を引き起こしてしまう海外の事例なども紹介され、結論ありきではなく、物事を丁寧に見ていく大切さが示されます。
図3 ゲームの趣旨説明 SDGsカードゲームでは、ゲームに慣れている高校生は、要領よくゲームの趣旨を理解し、課題解決には複数の視点を必要とし、考えることの大切さを身をもって知ることができました。自分の過去や未来に思いをはせ、世界の課題を自分事にする深い議論を展開していきます。
 クラスタースクールの2日目。SDGsワークショップは続きます。まず1時間かけてチェックイン、ファシリテーターを指名することは一切せず、参加者全員が自発的に、昨日からの学びや思いを語りました。次にSDGsの17のゴールへの考えを発表し、最後にはHERO INTERVIEW。一人ひとりが2030年の成功者になりきって演じ、お互いに成功者に対するインタビューをします。SDGsそのものが目的なのではなく、SDGsを介して自分の人生を考えることに目的があったことに気づかされます。「コンフォートゾーン(心地よい場所)から一度出てみる」という言葉が、強いキーワードとして私たちの中に刻み込まれました。

図4 全員が自発的に感想発表図5 成功者になりきってインタビュー

3.愛知県高校生フェスティバル

図6 STEMのワークショップ アクセンチュアさんのSTEMワークショップでは、ロボティクスを地域課題の何に応用するかを考え、グループごとに発表しました。
図7 ロボティクスを地域課題解決に活用 夕方からは愛知の高校で指導をされているK先生に、30年も続く愛知県高校生フェスティバルの話を聞きました。K先生は筆者の後輩にあたり、2~30年一緒に活動していた間柄で、このところ連絡が途絶えていたのですが、ふとしたことがきっかけで、筆者が強く関心をもっていた「愛知県高校生フェスティバル」に関わっていることを知り、ぜひ話してもらおうということになりました。福島のフェスティバルとは規模も目的も異なりますが、高校生の活動で共通して大切なものをいろいろと教えていただきました。なかでも「重要なのは、支えてくれる大人との関係づくり」という点で、私たちの課題意識とぴったり合いました。
図8 春には愛知県高校生フェスティバルへの参加が決定 愛知県高校生フェスティバルと福島市高校生フェスティバルをつなぎ、次の愛知県フェスには福島市のメンバーも参加することとなり、福島の話を聞く分科会も設定してもらえることになりました。また一つ、ネットワークを広げることができました。