学び!とESD

学び!とESD

ミャンマーの持続可能な開発と起業家精神
2023.05.17
学び!とESD <Vol.41>
ミャンマーの持続可能な開発と起業家精神
スモン ピソン(永田研究室大学院生)

 前回執筆したVol.06では、ミャンマーのESDとローカル製品について少し触れました。今回は、改めてミャンマーの現状と変化について述べたいと思います。
 環境の持続可能性と開発は、21世紀の最も差し迫った世界的な関心事の1つです。世界中の国々が、経済成長と環境の持続可能性のバランスをとろうと努力しています。ミャンマーも例外ではありません。発展途上国であるミャンマーは、環境の持続可能性と開発を両立するために対処しなければならない多くの課題に直面しているのです。
 ミャンマーは世界でも有数の多様な生物が生息する国の1つですが、国の発展を重視するあまり、環境問題は優先事項ではありませんでした。一方、今回取り上げる持続可能な開発における起業家精神は、経済成長を促進させ、ミャンマーの生活水準を向上させる上で重要な役割を果たします。

最近の環境問題に対する起業

 ミャンマーが直面している大きな課題の1つは、電力へのアクセスの欠如です。全人口の約35%しか電気を利用できず(*1)、調理や暖房用のエネルギーの大半は木材や木炭などの資源に依存しています。持続可能な起業家精神が大きな影響を与えることができるもう1つの分野は、農業分野です。ミャンマーは多様な生態系をもつ豊かな生物多様性と肥沃な土地で知られていますが、伝統的な農業の慣行が土壌の劣化と生産性の低下につながる場合もあります。
 ミャンマーは、他の国と同様に、新型コロナウィルスの影響を受けています。また、クーデターによる国内での動乱など最悪の事態に見舞われたことは、読者の皆様もご存じかと思います。これらのことが、国の経済や健康、教育に深刻な影響を及ぼし、環境保護活動にも支障をきたしました。しかし、こうした苦境のなかでも小さな民間企業がビジネスを展開していることは注目に値します。
 2018年に設立されたBokashi Myanmar(以下、「ボカシ・ミャンマー」という)という会社を紹介したいと思います。ボカシ・ミャンマーでは、食品廃棄物や台所廃棄物を適切に管理し、肥料として再利用しています。食品廃棄物は保存されているだけでなく、廃棄物の発生率も抑えています。これに加えて、肥料は簡単にすぐに使用できるため、肥料を使ってマイクログリーンを栽培する環境づくりが奨励されています(マイクログリーンは新芽野菜で、通常は発芽から7~14日以内に収穫され、栄養価が高く、料理に風味、食感、色を加えるために使用されます)。さらに、ボカシ・ミャンマーは、他の起業家と協力して、無料で自然廃棄物の管理と堆肥化に関するトレーニングも提供しています。 現時点では、こうしたビジネスを拡大させることで、環境を保護するだけでなく、トレーニングの提供を通じて人々に環境保護に対する意識を広めているのです。
 ミャンマーの起業家は、持続可能な開発への関心が高まることによって、国全体の持続可能な開発に貢献すると強調しています。
 ESDに関しては先進国からの情報発信の方が多いように思われますが、ここで紹介したように、発展途上国における持続可能性のための起業の動向に、教育や訓練も視野に入れながら今後も注目していきたいと思います。

ボカシ・ミャンマー商品堆肥化に必要な、窒素(緑色)、炭素が豊富な物質(茶色)、土壌(黒色)の存在を表しています。

【参考文献】

*1:Energy Assessment, Strategy, and Road Map (ADB. 2016. Myanmar: Energy Assessment, Strategy, and Road Map. Manila.)
https://www.adb.org/documents/myanmar-energy-assessment-strategy-road-map
Power Network Development Project: Sector Assessment (Summary) – Energy
https://www.adb.org/sites/default/files/linked-documents/50020-002-ssa.pdf