高等学校 美術/工芸

高等学校 美術/工芸

「ホタル池」のあるまちづくり ~造形的な視点を通して世界のことを考える~(第1学年)
2020.05.18
高等学校 美術/工芸 <No.002>
「ホタル池」のあるまちづくり ~造形的な視点を通して世界のことを考える~(第1学年)
神奈川県立横浜栄高等学校教諭 猪又隆洋

1.題材名

「ホタル池」のあるまちづくり

2.サブタイトル

~造形的な視点を通して世界のことを考える~

3.目標

【思考力・判断力・表現力等】
スライドや活動を通して造形的なよさや美しさ,表現の意図と創意工夫,美術の働きなどについて考え、価値意識を持って美術や美術文化に対する見方や感じ方を深める。

【学びに向かう力,人間性等】
主体的な活動を通して社会や世界の諸問題を発見し,造形的な視点を通して問題解決を考察できるような感性を高め,美術文化に親しみ,心豊かな生活や社会を創造していく態度を養う。

4.準備(材料,用具)

・ワークシート 参考資料(4.1MB)
・模造紙(B2程度。ポスターの裏紙などでも可)× 班数分(一班4,5人)

・指示プリント 参考資料(71.8KB)
・振り返りプリント 参考資料(1.2MB)
・マーカー(12色程の太字のものが使いやすい)

5.評価規準

【思考・判断・表現】
世界各地の文化遺産としてのまちづくりの特徴を主体的に学び,感性や美意識,想像力を働かせながら,造形的な視点を通してランドスケープデザインや都市計画について思考することができる。

【主体的に学習に取り組む態度】
チームとなって他の生徒と議論しながら一つの図を作り,そこで生じた新たな問題に気付き,持続可能な社会や世界を築くための問題解決方法を,造形的な視点を通して考察することができる。

6.本題材の指導にあたって

教材について
 本校の裏に広がる林には首都圏では珍しくホタルが生息する小川が流れている。そのためハイシーズンになると,近隣住人以外にも多くの観光客がホタル観察に訪れる。しかし近年周辺の急速な宅地開発によってホタルが減少し,林そのものの存続も危惧されている。
 美術の授業の中でこの身近な問題を発展させたワークショップを用いて環境問題に触れ,そこから造形的な視点を通してSDGsの中の「住み続けられるまちづくりを」という目標について考えるきっかけを作りたいと考えた。
 ワークショップの前段階として,ユネスコ世界遺産に登録されている文化遺産としての町をいくつか紹介する。その中で日本の町についても取り上げつつ,ランドスケープデザインや都市計画についても触れる。そして指導要領(※1)の各項目を意識しながら,それらのまちづくりについての造形的なよさや美しさ,表現の意図と創意工夫,美術の働きなどについて考えさせる。
 それらを踏まえながら,ワークショップを通して身近で起きているリアルな出来事を世界の縮図として自分自身にも関わることであると捉え,「住み続けられるまちづくりを」という目標に向けて今何をすればよいのか生徒自ら課題を発見し考察することによって,SDGs実現に向けた諸問題解決のための第一歩となることを目指す。

※1:
高等学校学習指導要領(平成30年告示)抜粋
・美術Ⅰ 2内容 B鑑賞(1)イ(イ)日本及び諸外国の美術作品や文化遺産などから,美意識や創造性などを感じ取り,日本の美術の歴史や表現の特質,それぞれの国の美術文化について考え,見方や感じ方を深めること。
・美術Ⅱ 2内容 B鑑賞(1)イ(イ)日本及び諸外国の美術作品や文化遺産などから表現の独自性などを感じ取り,時代,民族,風土,宗教などによる表現の相違点と共通点などから美術文化について考え,見方や感じ方を深めること。
・美術Ⅲ 2内容 B鑑賞(1)イ(ア)日本及び諸外国の美術作品や文化遺産などから伝統や文化の価値を感じ取り,国際理解に果たす美術の役割や美術文化の継承,発展,創造することの意義について考え,見方や感じ方を深めること。

7.題材の指導計画(50分×2)

授業数

時間

学習活動の流れ

指導上の留意点,評価方法

1
(50分)

5分

・出欠確認
・アイスブレイク

・出欠確認
・グループワークをしやすい雰囲気を作る。

15分

・スライドを観賞する

・ワークシートを用いてまちづくりの特徴や工夫を考える

・スライドを用いて世界各地の文化遺産としての町を紹介し,それぞれのまちづくりの特徴や工夫を考えさせる。
参考資料(3.0MB)
・日本の町についても取り上げつつ,ランドスケープデザインや都市計画についても触れる。
・時代,民族,風土,宗教などによる表現の相違点や共通点などを思考させる。
解説 参考資料(1.5MB)

30分

・ワークショップの説明を聞く(5分)
・制作(25分)
動画(Youtube)

・ワークショップの説明を行う。
参考資料(1.3MB)
解説 参考資料(4.8MB)
・ワークシートと指示プリントを配る。
・休み時間をまたぐ場合は,他班の目に触れないように用紙を裏返させる等の配慮をする。

2
(50分)

15分

・制作(15分)

30分

・各班が制作した町について特徴や工夫を発表する(8分)

・一班1分程度で全体に向け発表させる。
動画(Youtube)
・発表を受け,各班のポイントについて簡潔に解説する。

・展開と議論(5分)

・全ての班の発表終了後【展開】を行う。
動画(Youtube)
・【展開】を受けて班内で自由に話し合う

・SDGsの説明を聞く(5分)

・SDGsの説明をする。

・振り返り記入(12分)

・振り返りをさせる。

5分

・使用した道具等を片付ける
・本時の振り返りを行う

・片付けの指示を出す。
・本時の振り返りをさせ,目標が達成できたか確認させる。
・本時のまとめと次時の連絡を行う。

目標

【思考力・判断力・表現力等】
スライドや活動を通して造形的なよさや美しさ,表現の意図と創意工夫,美術の働きなどについて考え,価値意識を持って美術や美術文化に対する見方や感じ方を深めたりすることができるようになる。

【学びに向かう力,人間性等】
主体的な活動を通して社会や世界の諸問題を発見し,造形的な視点を通して問題解決を創造的に考えるための感性を高める。美術文化に親しみ,心豊かな生活や社会を創造していく態度を養う。

評価基準
評価方法

【思考・判断・表現】 観察・発表
世界各地の文化遺産としてのまちづくりの特徴を主体的に学び,感性や美意識,想像力を働かせながら,造形的な視点を通してランドスケープデザインや都市計画について思考することができる。

【主体的に学習に取り組む態度】 振り返りシート
他の生徒と意見を共有し理解し合いながら一つの形にまとめ,そこで生じた新たな問題に気付き,持続可能な社会や世界を築くための問題解決方法を,造形的な視点を通して考察することができる。

8.授業を終えて

 通常の授業ではあまり扱わない内容であったため,生徒は新鮮な気持ちで真剣に取り組んでいた。生徒の振り返りを読むとこちらのねらいは概ね達成できたように思う。今後も社会や世界の動向をしっかりと見極めながら「美術の教育」のみならず「美術を通した教育」において何ができるかを探究していきたい。
 本題材は短時間で実施できるため,長期休業前後や学期末などの時間に用いやすい。また,その時々の問題に応じて目標や落とし所,前半のスライド部分の内容等を設定することで,他教科や道徳,総合の時間,地域の問題解決などにも応用できるだろう。

生徒の振り返り(抜粋)

◆美術,美術文化について
・美術とは絵や彫刻だけだと思っていたが,身近な社会や生活の中にも様々な形で美術は存在していることに気づいた。美の基準は多種多様で,人は「美」と共にあると感じた。
・美術を学ぶことで今までとは違った視点で物事を見たり考えたりするようになった。今回の課題を通してその視野が更に広がった気がする。伝統や文化を大切にして後世に残さなければ,と改めて思った。
・ランドスケープデザインという言葉を初めて知り,美術にはこんな活かし方もあるのだと感動した。
・様々な国の美意識や美術的な魅力を知れたのと共に,改めて日本の良さを知れた気がする。
・美術を通して文化や考え方を学び,学校の授業になぜ美術があるのかわかった気がする。

◆他者理解・異文化理解,環境問題,SDGs等について
・目的が同じでも人によって様々な手段をとっていた。皆考え方が違っていてとても面白かった。
・それぞれが互いのことを考えなければ,結局その町の良さが潰れてしまう。自分も周りもよくするために独りよがりな考え方をせずに広い視野を持つことが大切だと思った。
・どれだけ暮らしやすい町にできるかのみを考えていたが,その自分の町の外のことを考えていなかったので反省した。無意識に自分の周りしか考えていなかったのは怖いと思う。
・環境問題について考えることはあったけど,まちづくりという観点からは考えたことがなかったので環境問題の解決方法がたくさんあることに気づけたと思う。私にできることを探していきたい。
・一人一人が関心を持つことが重要だと思った。人間だけでなく,植物や生物など他の生命のことも視野に入れて考えていかなければゴールにたどり着くことはできない。これからの生活を守っていくために何ができるのかを考えるいい機会になった。
・今までSDGsと言われても遠い外国の話で自分には関係ないと思っていたが,実は自分にも深く関係しているし,その解決方法も意外と身近にあるのかもしれないと思った。

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