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ネットワーク配信教育コンテンツの今、これから

ネットワーク配信型コンテンツ活用推進事業」成果報告会の様子コンテンツの「質」、教師のアイデア

 2007年、3月3日、都内にて文部科学省委託事業の「ネットワーク配信型コンテンツ活用推進事業」成果報告会が開催されました。

 何やらとても長い事業名ですが、今回のお題を占う取り組みです。詳しく紹介する前に、「ネットワーク配信教育コンテンツ」がどんなものかご紹介しましょう。

 コンテンツとは、直訳すれば「中身・内容(物)」のこと。教育用のコンテンツですから、いわゆる教材のことです。教材の中でも特にコンピュータ上で再生する、CD-ROMやインターネットを通して配信されているデジタル化された教材のことをコンテンツと呼んでいます。例えばコンテンツを使うと、社会科の歴史資料や理科の実験場面、体育の模範演技のような映像を見ることが出来たり、算数のドリル学習や、図形を画面上で変形させたり、漢字の筆順をアニメーションで確認したり、といったことが実現します。

 1980年代、コンピュータが学校に入り始めた頃から様々な教材が開発されてきました。現在は、市販のものだけでなく、インターネット上には無数のコンテンツが配布されています。教師が作成したもの、地域の教育センターが提供するものや、企業・団体が提供しているコンテンツもあります。インターネットが広がる前は、少ない資料、限られた教材からどう授業を組み立てるのか苦心した訳ですが、現在では膨大な選択肢の中から自分の作りたい授業のために教材を選ぶ、という全く逆の状況が起きています。

 ここで重要なのは、コンテンツの「質」を見極める目を先生方が持つこと。そして、流通しているコンテンツそのものの質を高いものにしていく文化を育てていくことだと筆者は考えています。

 「ネットワーク配信型コンテンツ活用推進事業」が注力していたのはまさにこの問題でした。本事業のコンテンツはすべて有料です。コンテンツ開発のプロである企業が提供する1000を超えるコンテンツの中から、教師は予算の範囲内で自由にコンテンツを選択できます。参加したのは全国34地域で約60万件の利用件数でした。筆者はこの事業の「評価推進委員」として、各地の熱心な取り組みを見させていただくチャンスに恵まれました。その一環として成果報告会では、参加校の先生方の間で、コンテンツを活用した優れた実践を共有するためにコンテストを開催しました。最優秀賞を獲得した宮崎市の先生の実践を少し紹介してみましょう。

小学校社会科の実践から

 小学校6年生の社会科「開国をせまった黒船」の授業。江戸時代の末、黒船を見た人々の様子やペリーの似顔絵などが紹介した2分間の短い映像です。この短い映像を先生はさらに刻みます。最初の40秒だけ、しかも20秒後からは音声を消して見せます。子どもたちには、映像場面に「吹き出し」がついたワークシートを配ります。映像を見て黒船を見た当時の人々の思いを想像して吹き出しに書きこむところから、この授業をはじめられたという取り組みでした。この後、さまざまな歴史資料を調べながら幕末の時代の変化を学んでいく訳ですが、子どもたちは頭の中に映像のイメージをもって、想像を豊かに広げながら当時の様子を学習することが出来ました。

 教師がコンテンツの良さを引き出す。つまり、工夫が加わることで、子どもたちの学びを焚きつけることに成功した好例です。こうしてみると、コンテンツはたくさんあればそれで良いという訳ではなく、どう使うのか?というアイデアがコンテンツを使った授業を成功させるポイントだということ、お分かりいただけると思います。

 この事業は2004年度から2006年度までの3年間で終了しました。文部科学省の委託事業としては終わりましたが、民間企業の間で同種の取り組みは広がりを見せています。現在、学校現場では「教育の情報化」として教室にネットワーク回線やコンピュータ、プロジェクタといったIT機器の導入が進んでいます。どの教室からもこうしたコンテンツを使った授業がいつでも活用できる、そんな環境の実現はそう遠い話ではないはずです。その時に必要なのは機器だけでなく、そこで何を見せるかというコンテンツの「質」と、どう見せるかという、教師のアイデアになります。

 そんなアイデアを全国の先生方の間で共有できたら、さらにそのアイデアを企業の方にも見ていただくことで、コンテンツをより教師が使いやすく、子どもたちのやる気を引き出すものにしていければ、教育用コンテンツは現在以上に子どもたちの学びに役立つものになるはずです。

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