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職業体験ができる街・キッザニア東京を探検

経済を知る、社会をちょっと垣間見る子どもたち

画像:キッザニア東京 幼い頃に「オモチャ屋さんごっこ」などの経験はおありだろうか。 いつの時代でも、子どもは大人のマネをしてみたいのだ。それが、今では本物そっくりの施設で、あらゆる職種を体験し施設独自の給料を手にすることができる。

 東京都江東区豊洲にあるキッザニア東京を訪問。2006年10月の開館以来、連日盛況ぶりでなんと休日分は年末まで一部の時間がすでに予約でいっぱいだという。

 キッザニアという架空の街。街灯も建物も車も、すべてが現実社会の2/3のサイズで作られている。そのリアルな街並みの中に、約50のパビリオンがあり、その中で約70の仕事やサービスを体験することができる。子どもが主役ということで、すべてが子ども目線だ。
 空港のチェックインカウンター形式の入場口で、子どもたちはボーディングパスとトラベラーズチェックを入手する。この街の通貨単位は「キッゾ」。仕事の体験をすると報酬としてキッゾを得ることができ、銀行で口座を開設し、貯金してキャッシュカードを作ったり、街角のATMで残高の確認や引き出しもできる。またトラベラーズチェックを換金したり、電子マネー化したり、何かに支払ったりとさまざまだ。

 どこのパビリオンでも、その職種の制服を着てスタッフになりきる。各入り口には、たくさんの子どもたちの行列だ。
画像:キッザニア東京 「裁判所」を見学。小学生7名の参加である。スタッフから民事と刑事裁判の違いを教えてもらい、参加者にどちらが良いか選ばせ、さらに役割の書かれたカードを引いて担当を決める。裁判官、検察官、弁護士、証人や被告人まである。また裁判員制度も導入していて、その役割の子もいる。保護者が傍聴席にすわる。
 架空の刑事事件が展開。それぞれの役割や裁判の流れが把握できるよう台本があり、各人が読みつつ演技していく。キッザニアの街の交通ルールを無視した速度違反という設定だ。証人は目撃シーンを話し、検事は状況証拠を語り求刑、それに対し弁護士は罪の軽減を主張。最後は、参加者全員で話し合い、納得のいく中で裁判長が判決を下す。役割を持ちながら、自分の意見を示していく。最後の話し合いでは、考えが分かれた。傍聴人の保護者も興味深く観ている。

画像:キッザニア東京 「パン工場」では食べるよりも作る側の体験の中で、材料を知り、また衛生、安全面を知りながらクロワッサンを作っていく。もちろん、美味しそうなお土産ももらって。食べ物に関わるパビリオンは他にもハンバーガーショップや冷凍食品の開発などがあった。

 これらの体験時間は20分から1時間までさまざま。知らない者同士が、初めてのことを一つの空間で体験し合うことで、良い緊張感も生まれているように感じた。働けばその場で給料がもらえる。子どもたちはしっかりとお財布の中にしまう。表情から充実感も伺える。

 スーパーバイザーと呼ばれるスタッフらが子どもたちの体験をサポートする。会話口調も常に大人として接するよう徹底されている。対等な立場という意識が植え付けられ、短い時間であっても、仕事体験に良い緊張感が生まれるのだろう。こうした徹底したコンセプトのもとで未来をになう子どもたちの体験が、何かしら影響していくとしたら、ますますスタッフの能力の向上も望まれるところであろう。

 キッザニアはメキシコで誕生し(2カ所)、海外では今のところ日本のみ。本場メキシコのキッザニアも年間来場者82万人、227日間満員記録を出しているという。日本においても、第二第三を目指しているという。

画像:キッザニア東京 民間施設だけでなく、「スチューデントシティ」などという名称で、実際に近い街を再現し、店員や職員、消費者の両方を経済体験する公共の施設も増えている。東京都品川区や、京都市などが学校の空き教室を使って職業体験型施設を運営している。これらも、地元企業などが協賛している。今や、工場や企業に見学しに行くだけではなく、当事者になって貨幣の流れなどを体験することに大きな意味があるようだ。

 リアルな街の中で実際に近い体験をする。それこそ本格的で楽しみながら。
 これぞ本来の学びの姿なのかもしれない。