学び!と美術

学び!と美術

子どもの絵の見方
2015.08.10
学び!と美術 <Vol.36>
子どもの絵の見方
奥村 高明(おくむら・たかあき)

 最も多く研修会で依頼されるのがこの演題です。現場の先生にとっては、古くて新しい、でも切実な課題なのでしょう(※1)。私は、誰でもできるように、3つのステップにまとめて説明しています。

1.近づく

 子どもの描いている距離まで近づいて、絵の「部分」を見ます。遠くからだけ見ていると「花かなぁ」「ビルかな」という全体的な主題、つまり「何を表したか」に意識が向きがちです(写真1)。でも近づくと、その子の「行為」に近づくことができます。左の筒の穴にはヘラの後が見えます(写真2)。右には丸く平たくした粘土を指先で器用に曲げた形があります(写真3)。すると、この子が「慎重に道具や指を使いながら丁寧につくっていること」が伝わってきます。

写真1

写真2

写真3

2.たどる

写真4

 子どもが描いた順番をたどってプロセスを再現します。ペンやクレヨンの重なり、画面の隙間などから結構分かります(※2)。人差し指でたどりながら、描いた順番を再現すると、その時、子どもが何を感じ考えたのか伝わってきます。この絵は、家族が砂場で遊んだ絵です(写真4)。誰がお母さんか分かりますか?。そうです。真ん中です。この顔だけ口が二重になっています。口紅です。真ん中が「大好きなお母さん」、左下の「おめめぱっちり」がかわいい私。右下が「やんちゃな弟」、右上が「お父さん」…うーん、お父さん、存在が薄い…。

3.考える

写真5

 近づいて、たどって、そこで分かったことをまとめます。この段階で題名なども参考にしましょう。この時「事実」と「解釈」を分けることが大切です。写真5で言えば、「真ん中の人物の青い線だけ、他の線よりもゆっくり描かれている」のが「事実」、「ずっと泣いていて顎や胸元まで涙で濡れたのだろう」が「解釈」です。「お泊り保育でお化け屋敷したよ、私は泣かなかったけど、友達はずっと泣いていたよ」という絵です。確かに泣かなかった右上の「私」と「友達」を丁寧に描いています。「ん?じゃあ左上は誰」「あ、男子、いた」。うーん、男子、そんな存在でしかないのか…。

 簡単な3ステップですが、いつの間にか、絵から子どもの声が聞こえてくるような気持ちになります。子どもが何を感じ、何を考えて描いたかが伝わってきます。そして、目の前の絵が、最初見た時とは全く別物に見えてきます。「なんでもない絵」が「かけがえのない絵」になるのです。ぜひ、身近なところで試してください。

 

※1:詳しくは奥村高明「子どもの絵の見方~子どもの世界を鑑賞するまなざし~」(東洋館出版2010)
※2:学び!と美術Vol.1020に具体例があります。
※画像引用元:奥村高明「子どもの絵の見方~子どもの世界を鑑賞するまなざし~」(東洋館出版2010)
 写真1~3:P64、写真4:P40、写真5:P36

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