先輩からのアドバイス vol.36
【マンガ】デザインは誰のため?(2年生の実践)

指導や授業で、つまづきがちな悩みや疑問をとりあげ、ベテラン教師から読者と同じ目線で問題解決へのアドバイスを提案します。

ここがポイント

目的や機能の美
 井澤先生は今回、ランプシェードの授業にチャレンジしました。この題材の興味深い部分を考えてみましょう。作品そのものの形や色などのよさや美しさを追求し、学習を深めていく題材が多い中、ランプシェードの制作は光源として置かれた空間を変化させ、演出する効果を持っています。作品の制作を通して光と影が織りなす空間の雰囲気が作品となる題材です。どのような素材を用いるのかを吟味し、感情にもたらす効果を子どもたちに生き生きと感じ取らせることができる楽しい題材だといえます。
 例えば影の形を考える、光の透過を利用する、反射する素材を生かす、色を光の中に組み入れるなど子どもたち一人一人の主題に沿った、いろいろな工夫が次々に生まれる可能性を秘めています。身近な素材を使うこともできますし、加工にもチャレンジする方法がいくつも考えられます。一例を挙げるとレジンなどの樹脂を利用したり、水性ニスなどで和紙や布を固めたりする技術や方法を学ぶと、発想はどんどん膨らんでいくのではないでしょうか。教師はそれぞれの素材の使い方をよく研究し、安全に配慮した制作を心掛けなければいけません。

デザインを考え学ぶこと
 光と影がもたらす効果は、その空間の雰囲気を演出することができます。自分が作るデザインがどのような効果をつくりだすのか、子どもたちがイメージし、主題を構築することがこの題材の重要なところです。子どもたちは制作者として、誰がどのような場面や場所で使うのかを考えます。そうすることで、自分の作品を使う人の気持ちを想像し、よりよいもの、より美しいものをつくり出そうとするエネルギーに変換させていくことにつなげてあげましょう。
 他者を思うということはデザインでの学習の大切な要素です。他者を意識することは次に何を生み出すのか?それは「自分という存在と向き合う自分」を自覚することにつながるのではないでしょうか。これは中学2年生にとっては大切な成長過程といえます。ぜひその自覚される自分像を肯定的に感じ取れるように、デザインの学習での造形活動でも個々の思いを温かい気持ちで聞き、汲み取り、認める評価をしたいものですね。

(シナリオ・監修、文 川合 克彦)