vol.03 弘前市立第五中学校 髙橋憲司 先生
詳しく解説!私の指導計画(3年生編)

 美術の先生が実際に立てられた年間指導計画を紹介、解説するコーナー。前回に引き続き、弘前市立第五中学校の髙橋憲司先生に解説いただきます。今回は、3年生の年間指導計画に焦点を当てて解説いただきます。

 以下より、髙橋先生が立てられた3年生の年間指導計画の表がダウンロードいただけますので、ぜひ記事と併せてご確認ください!
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 また、3年間分の年間指導計画をまとめた表は以下よりダウンロードいただけます。
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目 次

1.3年生の年間指導計画、どうやって考えている?

2.実際の年間指導計画を解説!
・4~7月:思いを伝える1枚の絵
・8月:現代アートって何だ?
・8~12月:これが私の歩く道
・1~3月:卒業式を飾る
・1~3月:私の軌跡

3.おわりに

1. 3年生の年間指導計画、どうやって考えている?

 これまでの集大成として活動できるよう、時期や時間数、題材の内容を工夫して計画します。
 中学校卒業後は、美術的鑑賞活動は続けていくことになるであろうが、表現活動に取り組む機会がぐんと減ることが予想されるため、今しかできない活動をさせたいと考え、最終的には美術を愛好する心情を深め、心豊かな生活を創造していく態度を養うことを目標に、自由度が高い活動に比較的長い時間をかけて創意工夫しながら取り組ませるよう考えています。

2.実際の年間指導計画を解説!

 筆者が、3年生の年間指導計画を立てる際に、どんなことを意識していたのかを題材ごとに解説します。

4~7月:思いを伝える1枚の絵

 文化祭のポスター原画を制作する題材です。2年次にもほぼ同内容の題材を設定してますが、2年次は試しにいろいろやってみる、3年次は1年次で身に付けたことや2年次で挑戦したことを全て生かすということを意識させています。「絵を描く」というのではなく、様々な表現方法、技法、道具、材料を駆使して、1枚の紙に思いや工夫を全てぶつけるようなニュアンスで指導している題材です。

生徒作品:「明るい未来への挑戦」

生徒作品:「力をあわせて」

8月:現代アートって何だ?

 現代美術に関する映像や映像作品などの鑑賞を通して、現代作家の表現の幅広さを感じ取る題材です。主に映像を鑑賞する1時間ですが、とにかく「固定観念を崩す」ことを目的に、「表現ってこういうこともあるんだ・これでもいいんだ」という感覚を獲得してもらうことをねらって行います。
 ただ映像や映像作品を鑑賞するだけではなく、途中途中で解説を入れたり、生徒同士が思ったことや疑問を話し合う時間を入れることで学びが深まります。

8~12月:これが私の歩く道

 これまで小中で取り組んできた全ての集大成として取り組ませ、卒業制作としてのニュアンスも加えながら実践しています。
 使う材料は、基本の共通材料として軽量紙粘土と土台用の木製の板材、人体表現用芯材を配付します。それらを用いて「自分がこれまでどう歩んできて、これからどう歩みを進めていこうと思うのか」を表現しますが、共通材料以外の様々な材料を使って得意な表現、好きな表現方法で進める生徒がいれば、これまで使ったこともない材料や表現方法を大胆に試してみる生徒もいます。
 とにかく固定観念にとらわれず、自分の進路や人生を考えながら、思い思いに思い切った表現をする義務教育最後の表現活動です。

1~3月:卒業式を飾る

 モビールなどを参考作品にして、空間装飾物を制作する題材です。完成した作品は、自分たちの卒業式に校内を飾ることを前提とするため、卒業式に対する気持ちや思いを表現することになります。教材カタログにある紙製の工作グッズを活用して、天井にぶら下げるモビールのような作品を制作させます。卒業式の会場付近の廊下や、保護者控室の天井などにぶら下げることになるので、「仲間たちを祝う気持ち」「仲間・保護者への感謝の気持ち」などを主題に制作する感じになります。
 「これが私の歩く道」の題材の後半に並行して取り組ませるため、短時間での活動になります。そのためあまり難しいことはさせず、ほぼ彩色や接着のみで仕上げます。

1~3月:私の軌跡

 一人一台のタブレット端末を用いて、各自が制作した「これが私の歩く道」の画像と自分のポートレイト写真をメインに、3年間の美術の授業のまとめをする題材です。
ワープロソフトなどを使って、自分の作品画像や文字などのレイアウトを工夫しながら制作し、データとして提出させます。
 3年間のいろいろな思いや学びの振り返りをきれいに工夫して制作させています。
また、苦手な生徒のためにテンプレートとなるデータを用意して、それを使って編集できるよう配慮もしています。

3.おわりに

 様々な題材に取り組んでいますが、これに満足しているわけではありません。過去に小規模校で実践していたのに、今できていないというものもあります。しかし、その学校の実態に応じて自分のこだわりやポリシーを曲げてでも計画を変えることは大事ですし、実践してみて内容を変えることも大事だと思います。その学校や生徒の実態に合わせて、今はこのように計画・実践していますが、変えないのは「3年間を通した学び」の意識です。3年次の「これが私の歩く道」の表現に向かって、1年次から計画・指導を進めています。


執筆者紹介

髙橋憲司
弘前市立第五中学校 教諭

 

○経歴
1997年  弘前大学教育学部中学校教員養成課程美術科卒
1998年~ 弘前市立第一中学校
2001年~ 平川市立尾上中学校
2006年~ 弘前市立津軽中学校
2009年~ 弘前市立東目屋中学校
2017年~ 弘前市立第一中学校
2022年~ 弘前市立第五中学校 勤務