先輩からのアドバイス vol.26
【マンガ】創造の空間、美術室

指導や授業で、つまづきがちな悩みや疑問をとりあげ、ベテラン教師から読者と同じ目線で問題解決へのアドバイスを提案します。

ここがポイント

気持ちが美術になる空間
 美術の授業で子どもたちは、形や色、光や材料といった媒体を通して、自らの表現や鑑賞といった造形活動と向かい合います。そこでは表現として生み出されるものに目が奪われがちですが、表現に至るまでにはいろいろな学びがあって、その成果として造形活動に昇華されるのです。子どもたちの表現のエネルギーを迎え入れ、展開できる環境の美術室にするためにはどのような点に注意すべきなのでしょうか。造形活動に至るまでの時間と活動が展開される時間に分けて考えてみたいと思います。
 美術の授業の時間になると子どもたちは美術室にやってきます。一週間ぶりの美術室で彼らは何を見つけるのでしょうか? それまでの時間は美術とは関係のない時間を過ごしていた彼らの心に波紋を広げられる何かを存在させたいものです。同じ題材の授業をしている同学年の作品や、参考作品、他学年の作品など、表現された工夫やよさは彼らの内発的な動機の発端となります。ブームを学年に巻き起こすのです。また参考になる掲示物や展示物といったものも気持ちが美術になるための学習素材といえそうです。表現のために実験をした、いろいろな成果を見せるのもよいでしょう。教師のアイデアが子どもたちの目を美術に向けさせます。心を動かす多様な鑑賞というインプットがあって初めてアウトプットのエネルギーは生まれるのです。

活動を柔軟に受け入れる美術室
 元気いっぱいの中学生の活動を支えるためには美術室が安全な空間である必要があります。危険な道具もあります。美術科教師は整理整頓やその管理をしっかりと行うことが大切です。
 表現活動では自己の主題をはっきりと持ち邁進している生徒もいれば、表現主題が揺れ動き、制作のイメージを見失っている生徒も見受けられます。そのようなときに違った角度から活動を見直せるように実験コーナーや、同じように考え、工夫した他のクラスの作品を展示しておくことも有効です。子どもたちが初めて見るような表現素材を試せるコーナーを用意してみるのもよいのではないでしょうか。ただ、一つ一つの掲示物や展示物には賞味期限があるということを忘れてはいけません。当たり前の風景に溶け込んでしまっては、そこから新たな発想を生み出すことは相当難しくなります。フレッシュで子どもたちのエネルギーに負けない美術室を考えたいものですね。

(シナリオ・監修、文 川合 克彦)