先輩からのアドバイス vol.37
【マンガ】小学校図工の展覧会を見学して

指導や授業で、つまづきがちな悩みや疑問をとりあげ、ベテラン教師から読者と同じ目線で問題解決へのアドバイスを提案します。

ここがポイント

図画工作科と美術科
 井澤先生は、東京都の小学校に勤務する先輩の先生より作品発表会の招待状を受け取りました。遠方でしたが、ミュズを連れ立って出かけることにしました。東京都は図画工作科の専任の教師を採用する制度があります。井澤先生の先輩の齋藤先生は中学校の美術科の教員でしたが、現在はこの専科制度によって小学校の図工専科の教員として勤務しています。小学校高学年の教科担任制度が話題に上りますが、齋藤先生のように小学1年生から6年生まで図画工作科に携わる制度はまだまだ浸透していませんね。それぞれのメリット、デメリットを検証し、明確にしていくことが望まれます。
 ここで貴重なこととは、齋藤先生は中学校美術科という視点と、小学校の図画工作科の視点、両方の視点を持ちながら子供たちの成長を見つめて授業を開発しているということです。中学校の先生は中学生のことを、小学校の先生は小学生のことについてよく理解しているでしょうが、互いの校種に関してはどうでしょうか? 子供たちの成長と図画工作科、子供たちの成長と美術科がつながりやその変容を感じ取ってこそ本当の意味で個々の子の成長過程における二つの必修教科のあり方が見え、問えるような気がします。
 両方の教科をまたいで担当するということは現実的にはまだ難しいのかもしれませんが、それぞれの教科の垣根を越え、授業を見て自由に研究会を開催する、交換授業を開催してみるなどの研修によっての意見交換はとても有効なことに発展していくのではないでしょうか。大切なことは、不必要な垣根を自分で作らないことです。

小学生のデザイン学習から中学生のデザイン学習へ
 体育館いっぱいに展示された小学生の作品に圧倒されっぱなしの井澤先生でしたが、珍しく(失礼)冷静に彼は小学生のデザイン領域の学習に着目しています。小学校の図画工作編学習指導要領の目標の中に「デザイン」という言葉は見当たりません。第5学年及び第6学年「A表現」(1)において「……感じたこと、想像したこと、見たこと、伝え合いたいことから……用途などを考えながら……」という文言で目標が示されていますが、この学習が中学校美術科の「イ 伝える、使うなどの目的や機能を考え、デザインや工芸に表現する活動を通して……」につながっていくわけです。デザインは人を豊かにする温かさを伝える力を持っています。子供たちは、自分たちが作った作品の目的や機能が発揮される現場を目にすることは少ないでしょう。小学校の目標と中学校の目標をつなぐ、子供たちの学習のコアにある大切な要素の一つにイメージするということがあります。イメージの中で一つ一つの作品は子供たちが想像した人々に温かく受け入れられていくのではないでしょうか。小学校2年生の場合も「イメージを基に」という学習は学習指導要領の中で大切に明記されています。
 デザインは作り手と人をつなぎます。よいデザインはどこから生まれるのでしょうか? おそらくそれは、子供たちが学ぶ大切な、作り手が作品に託し伝える「人を思う」気持ちから生み出されるのではないでしょうか。

(シナリオ・監修、文 川合 克彦)