先輩からのアドバイス vol.38
【マンガ】木でつくる(2年生)

指導や授業で、つまづきがちな悩みや疑問をとりあげ、ベテラン教師から読者と同じ目線で問題解決へのアドバイスを提案します。

ここがポイント

木工芸と安全指導
 木の素材で工芸作品を制作する場合、いろいろな刃物や電動工具を使用することがあります。使用方法を間違ったり、必要以上の力を加えたりするなど無理な加工をしようとすると非常に危険な場合があります。指導する教師は、前もって道具や特に電動機器の使用方法などを調べ、確認しておくことが大切です。子どもたちはどうしても制作中は夢中になり、教師が注意したことを忘れ、つい無理をしてしまうことがよくあります。怖がらせる必要はありませんが、その危険性を知らせ、安全な制作をするように丁寧な指導が重要です。
 また、いろいろな素材に対し、アレルギー反応を示す生徒もいるかもしれません。事前の調査を行い、対応について担任とも相談をし、家庭との連絡をしっかりと行うことが大切です。今回のように木を削った粉が舞うようなときには換気に留意し、マスクや目を守るためのゴーグルなど必要な対策をしっかりと行わなければなりません。
刃物はそのメンテナンスにも注意したいものです。切れ味の悪い刃物は余計な力をかけてしまいがちなので、けがの原因になることがあります。必要な場合は「研ぎ」の業者にお願いしましょう。可能ならば教師自身が研ぎに挑戦してみることも勉強になりますよ。

工芸の授業の魅力と落とし穴
 一般的に木工芸などの工芸作品の多くは、いろいろな地域の伝統工芸としてその技が守られてきました。受け継がれた伝統として職人の方の技によって磨かれ、工芸作品として作品化がなされてきました。卓越した技により生み出された作品は、見事な出来栄えに目を見張る魅力あるものが数多くあります。
 子どもたちと取り組む木工芸の授業においても、教師のイメージの先にはこうした匠の技によって生み出された作品のイメージがどうしてもちらつきます。学習の目標がすでに教師の思いの中で硬直化してはいないでしょうか? 例えば、授業として教師は3つの育てたい資質・能力の「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」を踏まえた目標のもとに行うべきなのは当然のことですが、子どもたちの作品の中に技術的に優れた作品が生まれると、どうしてもその作品に目が行ってしまいませんか? 「技能」の部分が突出した偏った授業に傾いて行きがちになってしまう落とし穴に陥らないことが大切です。
 木という素材は、制作の抵抗感という視点で考えると子どもたちの成長に合わせた学習の目標を設定できる優れた素材といえます。確かに技の魅力を見出すことは大切な学習要素といえますが、制作の中から生み出される子どもたちの発想や工夫を大切に見出し、何を学ばせるための授業なのか、学ぶべき目標を見失わないようにすることが重要です。

(シナリオ・監修、文 川合 克彦)