空気を感じる場所

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

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屋外の環境をダイナミックに変身させる題材です。新聞形式の学習カードを用いてつくりたいものへの思いをふくらませます。

指  導  計  画

題材名

空気を感じる場所

時間

4時間

準備

ポリエチレン製荷造り用テープ,はさみ,学習カード

学習目標

テープの飾り方を工夫し身の回りの場所を生かして空気を感じられるような空間をつくる。完成後見せ合うことで,環境造形のおもしろさを味わうことが出来る。

主な学習内容

○森に行き活動場所を決め,試しづくりをしながら作品のイメージをふくらませる。
○テープを巻きつけたり結んだり加工したりしながら空気を感じる場所をつくる。
○作品を見たり中に入ったりして遊び鑑賞する。

主な評価の観点

●仲間とともに空気を感じる場所をつくったり体感したりすることを楽しんでいる。(関心・意欲・態度)
●身の回りの場所の地形や建物,自然物などからテープを用いて空気を感じるような空間を想像することができる。(発想や構想の能力)
●テープを巻く・結ぶ・裂くなどの加工や加飾の方法を考え,工夫して表現することができる。(創造的な技能)
●地形や場所などの環境とテープのたなびきなどから総合的に得られる感覚を楽しみ,環境造形のおもしろさを味わうことができる。(鑑賞の能力)

<伝え合って、全身で感じて>

題材は2つの特徴がある。

①新聞形式カードによる思いや表現の伝え合い、②準備も最小限、短時間でしかも全身で感じられる題材、である。

使用する学習カードを「新聞形式カード」と呼ぶ。「新聞形式」とは2つの意味を持つ。一つは表し方のことである。見出しや記事、図、などである。二つ目は「新聞記者の視点で表す」という意味である。自分の作品や表現を、取材に来た新聞記者の眼になって記事にしていくということである。新聞形式カードを用いて構想や感想などの思いや表現を多面的に表すことにより、それを友人に伝えたり友人から広く見られたりするようにする。その中で友人と時には協調し、友人の作品のよさや美しさを感じたり、それを自分の作品に取り入れたりする。また、自分の作品や表現の確かさを再確認する。

本題材は5学年の造形遊びでグループ単位になって表現したり鑑賞したりする共同してつくりだす活動である。本校内の森の木々にテープを用いて空間を表現する。森に吹く風でテープが風で揺れたりたなびいたりする効果を味わい、自分もテープをくぐる、またぐなどの行為から空気を感じるようにする。

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新聞形式カード以外で準備するものは、実質テープだけである。ポリエチレン製のポンポンとしてスポーツの応援でもよく使われるカラフルな荷造り用のひものことである。構想で1時間、表現で2時間、鑑賞で1時間で全身で感じられるダイナミックな活動ができる。本活動では森が場所になっているが、校舎からテープを垂らしたり校舎から校舎へとテープを渡したりと様々な応用が利く。立ち木や遊具も活用できる。

<ぴらぴらと音を立て気持ちよい>

授業実践ではまずグループごとに場所を決め、試しに思い思いにテープを木から木へと渡すようにした。児童はそこでテープの感触や風に触れる音、たなびく様子などを五感を通じて実感した。30分後、新聞形式カードへの記入の時間を取り友人と意見を出し合いながら、実感したことやアイデアをカードにまとめるようにした。

実践事例「空気を感じる場所」03

実践事例「空気を感じる場所」04

森の中央に集合して記入したので、他のグループとカードを見たり見せたりしてそのよさや美しさを確かめ合った。この活動で、グループ一人一人の考えが分かり作品づくりの道筋を立てることができたと考える。第2・3時は友人と協力し合いながら表現を進め完成させた。遠い木にテープを渡したり、はしご状にしたり、房にして渡したテープに付けたりと作品の表現方法が多岐に渡っていた。このようなアイデアの大部分はそれに関する新聞形式カードの記述があまりないため表現する途中で思いついたものであろうと推測される。しかし事前に自分のグループ内で表現に対する意見を交わし、基本と なる構想を明確に持ったからこそ、そのような多様な表現のアレンジができたのだろう。短時間で迷いなく表現し続けた児童が多かったのがその表れと言える。 第4時には見たり中に入ったり遊んだりして自分たちのつくった空間を楽しんだ。その様子をカードにのびのびと記入した。本題材で得た意欲を今後の活動に生 かせるよう、カードには「各地に出現(予定)の空気を感じる場所」という欄を設けたので、テープ以外のものを巻きつけたり、テープの色を虹色にしたりする など、これからつくってみたい場所のアイデアを思い思いにかいた。

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抽出児童のカードや活動を見てみる。つくる前に行った友人へのインタビューを「急ながけの上」や「池の少し上あたり」とカードに記録することができ、思いの広がりと明確さを表せた。活動中はがけをかけ上がったり友人と協力して池の近くまで長くテープを伸ばしたりするなど、新聞形式カードに記した構想を生かして楽しく作業することができた。

実践事例「空気を感じる場所」06

協力して友人との活動を行った後、終末には「他の班のビニールテープと合体し、とてもおもしろい作品を作ることができました。」と、うれしさをカードに表現することができた。そして「各地に出現(予定)の空気を感じる場所」の項目ではテープのたなびく様子を強調した様子をかき表した。意欲的な夢のある表現と言える。

<ひとこと>

実践事例「空気を感じる場所」08

新聞形式カードを使用したことにより、より広い記入欄が確保できたので屋外でも端的に記入でき、また読みやすいカードになった。友人同士でのカードでのアイデアの出し合いも「読んで伝え合う」ことになり想像がより広がった。構想を詳しく示すことができ、作品の主張点を明確にすることができた。終了後もさらにつくってみたい作品を想像できた。

また、インタビューから友人との相互理解が深まりつくりたいものやアイデアが分かり合えたと言える。結果として自分の表現や作品を振り返り、自分の感じたことや考えたことを大切にする態度を養うことができたと判断できる。

実践事例「空気を感じる場所」07

この新聞形式カードは特に話すことが苦手な児童に有効と言える。自分の思いを端的に表現できるからである。図工の活動の中ですべての児童の思いや表現を把握することは困難である。そのような中、新聞形式カードによりより多くの児童の思いや表現を伝えられたらと思う。また、本題材は以上の実践から、限られた時数の中でダイナミック、かつ満足感を得られるものであると言える。材料面からも裂く、結ぶ、垂らす、網にする、渡す、房にするなど本テープの多様性を生かすことは創造力、技術力で有効である。

育みたい学力「想像力」

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〈せいか〉「この読みの漢字をいくつ書けますか?」
 昔、高校生の間でプチブームとなった問題です。今では電子辞書を持ち歩く人が多くなり、その答えは簡単に求められます。私の電子辞書では、26の二字熟語が示されます。

「想を含む熟語をいくつ書けますか?」
 これは、美術研究会での先生方への課題でした。これの解答を見るには、逆引き機能も必要となります。夢想、幻想にまで至る「想」を含む熟語には、それぞれ微妙な差があって、日本人のデリカシーを感じるとともに、美術教育での用い方の難しさも感じることができました。

 美術教育を通して育みたい学力や、表現するために求められる能力として、「想像力」は中核となる能力です。特に、他の教科との相対においても、美術教育で育むべき特質的な能力であると言えるかもしれません。私たちは想像力なしには造形表現は成立しないことを知っていますし、多くの美術教育課題は、その能力を高めたり用いたりすることをねらいとして設定されます。
 以下の二つは、手近な電子辞書の広辞苑で調べた「想像力」です。

  1. 感性と悟性を分有し、両者を媒介して認識を成立させる能力(カント)
  2. 芸術経験の創造・享受両面における形象生産の契機(ニーチェ・サルトル)

 図画工作や美術の時間で用いる「想像力」は、これほど硬く考えたり、難しく議論したりはしませんが、絵を描くときには「観察画」と「想像画」に分けて課題設定するのが常です。「想像画」とは何かを改めて考えてみると、その規定は簡単ではなさそうです。

  1. 物語や会話、あるいは図形のメモなどから、シーンや情況を思い浮かべられる能力
  2. 考えやイメージを発想したり、新たなアイデアを思いついたりする能力
  3. 他の考えや発想、アイデアに触発され、発展させたり組み合わせたりする能力
  4. 相手の心情や認識の度合いを推察し、分かりやすく表現を構想する能力
  5. 他者の立場や情況を考慮し、使い勝手や安全について創造的に思考・判断する能力

 児童や生徒が表現している情況を深く洞察すれば、観察画においても、対象を見た直後に画用紙に描き写す瞬間の記憶は、想像的であるかもしれません。表現者は、一瞬前の記憶を思い出しながら表現者独自の想像のもとに具現していると考えられるからです。
 つまり、記憶される多くの事象は、表現者のそれまでの経験の違いにより、他者とは異なった印象として認識され、思い出すときも同様に、個別的フィルターで再現されていると考えられます。私たちは、カメラで撮影されるように対象を決っして見ていないということでしょう。例え観察画であっても、カントのいう、感性と悟性を媒介した認識によって想像力が働き、それを具現化しようとするからこそ個性的な表現が成立するのではないでしょうか。作品を鑑賞する楽しさもそこのところにありそうです。

 造形活動による学習とは、私たちの想像を司る脳の重要な部分を刺激し続けることなのです。それは、私たちが人間らしく成長するための基礎となる学習活動であるといえるのではないでしょうか。

導入事例 Case8

小学5年 『彫りすすみ版画でカラフルな世界を』(3時間)

*一版多色の彫りすすみ版画で、色彩の魅力を感じさせる授業です。

◎主な材料

  • スチレンボード(B4)
  • 色画用紙
  • 練り板
  • ローラー
  • ばれん

◎導入の工夫

  • 刷るたびに画面が変化する楽しさが子どもを夢中にさせます。しかし、色を残したいところを彫って重色するシステムを理解するのは難しいようです。彫りすすみ見通しをもたせるために、彫りと刷りの実験をして見せました。

T:彫りすすみ版画」とは、どんな版画なのか,これから実際にやってみるね。(数人の児童も参加してスチレンボードの表面を削って、版をづくりを見せる。)
T:この版に色を付けてすると、どんな絵が現れるか刷ってみるね。(版にインクを付けて色画用紙に刷り、刷り上がりを一緒にみる。)
C:わあっ!きれい!
彫りすすみ版画
T:彫ったところがどうなったのか分かる?
C:下の色が出てる
T:さらに彫って別の色で刷ったらどうなるかなぁ?
C:やってみたい!(児童も参加させ、版を彫り進めて2色目を刷る。)

(A先生の実践授業)

導入事例 Case9

中学1年 『色の広がり形の魅力』-クリアフォルダーのデザイン-(10時間)

*色や形の特性を学習し、クリアフォルダーのデザインを考え色面構成する授業です。

◎主な材料

  • スケッチブック
  • アクリルガッシュ

◎導入の工夫

  • 色の学習はその特性や言葉など覚えることが多いため、美術に苦手意識を持つ生徒にとって敬遠したい部分と言えます。導入では色の学習を行う際、色と自分の身近な関わりから興味を持たせるという視点から授業を工夫してみました。

色と自分の意外なつながりに気づく
 アクリルガッシュの特性について学んだ後に「自分好みの色カード」を3枚作り、12枚に切り分ける。切り分けたカードのうち各1片は自分のワークシートにはり、残りを友人と交換し合って自分好みの色カードを収集する。色の好みからわかる、人の性格について話し合い、色のイメージに興味を持たせる。

導入事例9-1
導入事例9-2

身近なもののデザインについて
 色の性質について具体的に理解できるよう、飲料水のペットボトルを数種類提示する。また、形についても生徒の身近なスポーツブランドのマークを提示し、その由来や形の変化を考えさせることで制作への意欲とイメージを膨らませる。

導入事例7

(A先生の実践授業)


いけちゃんとぼく(2009年・日本)

大人になったあなたに贈る、珠玉のラブストーリー

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 人気のコミック作家、西原理恵子さん初の絵本「いけちゃんとぼく」が映画になった。タイトルも同じ「いけちゃんとぼく」(角川映画配給)である。
 コミカルで軽快、ファンタジーではあるが、これがなかなか、考えさせられる。正体不明の生き物いけちゃんと9歳の男の子の交流を通して、一見、男の子の成長が描かれるが、実はそれだけではない。

 いけちゃんは、9歳の男の子ヨシオ(深澤嵐)にしか見えない、正体不明の生き物である。ヨシオがいじめられたり、また他の子をいじめたり、父親が死んだり、同じ年頃の女の子と仲良くなったりするときなど、折にふれて、ヨシオのそばに現れる。いけちゃんには、基本的な形はあるけれども、そのときの状況で、色や形が変わったりする。
 いじめにあったヨシオは、学校をさぼっていけちゃんと山に向かう。いじめに対する復讐の練習である。なんとヨシオは、トンボの頭を万華鏡に入れたり、蝶をそのままノートに貼り付けたりする。悔しくて泣き出すヨシオにいけちゃんは言う。「大きくなって好きな人ができたら、このことを話しなさい。きっと、笑ってくれるよ」と。

 家に帰ると、いじめられたヨシオの危機を救おうと、父親(荻原聖人)が出かけていくが、いじめっ子の親たちに恐れをなして、行方不明になってしまう。さっそく、子どもの喧嘩に親が出るとはなんだとばかり、ヨシオはいじめっ子に詰め寄られるが、そこに、父親の訃報が届く。
 いけちゃんはヨシオに「人より早くおとなにならなければいけない子どももいるんだ。きみがその一人」と励ます。

いけちゃんとぼく03
 その日から、ヨシオは、母親(ともさかりえ)が驚くくらい、ごはんをたくさん食べて、早くおとなになろうと努力を始める。さらに、強くなろうと、牛乳屋のおじさん(モト冬樹)に空手を習い始めたりする。
 ヨシオが女の子と仲良くなろうとすると、いけちゃんは顔を真っ赤にして怒る。そんないけちゃんを見て、ヨシオは、いけちゃんはひょっとしたら女の子ではないかと思う。
 「今日はラッキーなことがある」といけちゃん。ヨシオは、いじめっ子にはじめて、パンチの仕返しをする。いけちゃんの予知能力にヨシオは驚く。
 遠くの町の悪ガキたちが、ヨシオたちの住む町にやってくる。いまやリーダー格になったヨシオは、悪ガキたちに、決着は野球の試合でつけようと提案する。
 少しずつだが、ヨシオは成長をとげていく。それにつれて、いけちゃんは、次第に、見えなくなることが多くなってくる。
 やがて、いけちゃんは、ヨシオに正体を明かすことになるが…。

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 CGをうまく使って、ユーモラスにいけちゃんが描かれる。いけちゃんの声は、蒼井優が務める。表情と感情の豊かないけちゃんに合わせて、なかなかの雰囲気ある声である。

 いけちゃんの正体が分ったとき、そうか、このファンタジーは、人を愛することはどういうことかを、それぞれに問いかけているのだと、納得することになる。そして、涙を誘うラストシーンが待っている。

 映画「いけちゃんとぼく」は、おとな向けの映画かも知れないが、若い人たちにも、さまざまな形の愛の意味を、充分考えさせてくれるファンタジーである。

 2009年6月20日(土)角川シネマ新宿他にて全国ロードショー


全公立小中学校に、電子黒板。校内LAN100%へ

100年に一度の補正予算?

 全てのテレビを地デジ対応。校務用コンピュータを教員1人1台。全ての普通教室に校内LAN

 これらのいわゆるICT環境といわれ、長らく命題であった案件の整備が一気に加速することになった。しかも、今年度中にどれも100%実現へ向けて。麻生内閣の目玉、大型補正予算は教育現場へも大きく影響することになった。

 ICT環境整備での事業費総額は4081億円。これを学校ICT環境整備事業補助金等の国庫補助として半分、地域活性化・経済危機対策臨時交付金として半分を負担する割合である。

 特に、臨時交付金は、今回のための特別な措置であり、従来の地方交付金ではなく、あくまでも今回のICT環境整備として各自治体・教育委員会が自由に使えるものだ。国庫補助とこの交付金を利用して、実物投影機やプロジェクタ、ソフトウエア等の周辺機器の整備のために申請をすすめていくことになる。

 そこで教育委員会は、各自治体の財政当局に早期に働きかけ、財源を確保する手続きに入らなければいけない。文科省は、4月に事務連絡を発出し、この5月中に全教育委員会へ説明を進めている。政府も、与野党も含め地デジ化とともに、ICT環境の整備には前向きな姿勢である。たとえ政権交代があったとしても、方向性は変わらないだろう。

 以前本欄で取り上げた「ネットワーク配信型コンテンツ推進事業」から2年が経過している。(Vol.001 4月号2007

地上波デジタル放送に対応する整備

電子黒板と「ようぐる」を活用した授業。文科省「エル・ネット・システム」Webサイトにて動画公開中 公立の幼・小・中・高・中等・特別支援において現在教育活用されているすべてのテレビをデジタル放送対応へ買換える。また壁掛けか専用の台を付けたものとして、50インチ以上が望ましいとしている。このうち、電子黒板については各校1台(原則)を設置する。文科省は、テレビ自体を今後電子黒板として付加できるものを前提としているので、PCや実物投影機と接続できることで、従来のテレビ放送だけでなく、モニターとしてやインターネット利用など多くの活用が出来る電子モニターが、各学校の各教室に生まれ変わることになる。

 またこのテレビを、文科省は電気黒板機能を備えた一体型のものが望ましいとしている。

 これは中々の衝撃ではないだろうか。ハードがこのように整備されれば、ソフトもデジタルコンテンツが求められていく。そもそも、このデジタル対応テレビの整備は「教科書がデジタル化されたときにも役立つ」と発言していた。

校内LAN整備率

電子黒板と「ようぐる」を活用した授業のイメージイラスト 「うちの学校はまだまだ校内LANなど…」は、もうじき聞こえなくなることだろう。隣国韓国を意識してか、今年度で一気に整備率100%を実現させてしまう。この整備では、「学校情報通信技術環境整備事業補助金」や「安全・安心な学校づくり交付金」などからも対象として工事に着手できる。近年、学習用教育用ソフトウエア等は、校内フリーライセンスの扱いが増えてきた。ここへきて一気に利用しやすくなることを期待したい。

 このたびの補正予算で整備事業としている内容の中でも、臨時交付金で措置されるものは、特に各自治体が早期に財源確保に動かなければならない。この一年で、どれほど学校のICT環境が変わっていくのだろうか。いよいよである。

主な内容

<整備目標> <20年3月末現在→21年度補正での実現>
全てのテレビをデジタル化 約1% → 100%
校務用コンピュータを教員1人1台 約58% → 100%
教育用コンピュータを児童生徒3.6人に1台  7.0人 → 3.6人
全ての普通教室に校内LANを整備 63% → 100%


読書会のすすめ

■「子どもの読書週間」

 今年も4月23日から5月12日までの期間は「子どもの読書週間」((社)読進協主催)でした。
 今年の読書週間の標語は「笑顔のヒミツは本の中」というもので、作者の北島絢子さんは「ページを1枚めくるたびにドキドキわくわく、本にはいろんな力があります。その素敵な力がひとりでも多くの子どもたちに届きますように、…」とコメントしています。このドキドキわくわく感は子どもばかりではありません。大人にとっても素敵な本との出会いは胸が躍ります。
 最近、「子どもの読書週間」を知らない人が多いことを知り、いささかショックを受けました。しかし、このこと以上に最近の若い人たちの本離れは心配です。たくさんの書物に接して欲しいと願う教職員にもその傾向が見られます。パソコンに向かう時間の増加に反比例するかのように読書に費やす時間は少なくなっています。教職員の多忙化が拍車をかけているとはいえ、心配です。

■100冊の本

 かつて静岡県教育委員会は、『先輩からのメッセージ「99+1冊」』を教職員全員に配布したことがあります。教職員に読書のすすめをしたもので、「99 冊」は県知事はじめ、教育関係者、民間の方々合わせて、1200人にアンケートを実施し、選出しました。
 パンフレットには次のコメントを付しました。
 『「99冊」の本は、子どもへの温かい視点や教育への熱い思い、人としての生き方などに指針を与える先輩からの温かいメッセージであり、エールそのものです。そして、最後の「1冊」は、一人一人の教職員が選んだ座右の書「私が私に薦める1 冊」です。それは、授業や子どものことを考える時に自信やよりどころとなるものです。』
 分類は、哲学、歴史、社会科学、自然科学…とせず、今、教職員に求められる六つの分野、「誇りと使命感」、「子ども理解」、「実践力」、「教養と人間性」、「社会の変化に対応する力」、「人としての生き方」に区分し、読む上での便を図ったものにしました。

■全国学習状況調査と読書

 平成20年度の学習状況調査によれば、「読書が好きな児童・生徒の方が、国語の正答率が高い傾向にある。」と国は公表しましたが、静岡県(浜松市)では国語のみならず、算数・数学にも同じ傾向が見られました。また、小学校では、読書が好きな児童と好きでない児童との正答率の差が前年度より大きくなっているという結果も出ています。各学校では、朝読書も盛んに行われ、読書に関わる指導は、どの学校でもきめ細かに行われているものの、読書についても二極化が進んでいます。

■『橋をかける』

 これは、皇后様の著した本(4月10日発行)の題名です。副題に―子供時代の読書の思い出―とあります。本稿は、1998年(平成10年)の9月インドのニューデリーで開かれた国際児童図書評議会第26 回世界大会においてビデオテープによって上映された皇后様の基調講演を収録したものです。
 皇后様は、「私の子供の時代は、戦争による疎開生活をはさみながらも、年長者の手に護られた、比較的平穏なものであったと思います。そのような中でも、度重なる生活環境の変化は、子供には負担であり、私は時に周囲との関係に不安を覚えたり、なかなか折り合いのつかない自分自身との関係に、疲れてしまったりしていたことを覚えています。
 そのような時、何冊かの本が身近にあったことが、どんなに自分を楽しませ、励まし、個々の問題を解かないまでも、自分を歩き続けさせてくれたか。」と、その中でお述べになっています。
 本のもつ意味はこの短いお言葉の中に凝縮されているように思います。そして、読書の思い出として真っ先に、まだ小さな子供であった時のことで不確かな記憶ですが、と断わりをしたうえで、新美南吉の『でんでんむしのかなしみ』をあげ、「この話は、その後何度となく、思いがけない時に私の記憶に甦って来ました。」とお述べになっています。

■読書会のすすめ

 読書の大切さは教職員であれば誰もが認識しています。教職員が本を読まずして、子どもたちに本の素晴らしさを伝えることが困難なことも承知しています。しかし、現実は、読書に多くの時間を割くことは至難の業でもあります。
 時代は移り、生活環境も大きく変わってきました。読書が全てではありませんが、読書の時間は確保して欲しいと思います。できれば、昔のような読書会(放課後)を復活し議論をして欲しい。教育力が確かなものになります。
 孔子は、「学んで思わざれば則(すなわ)ち罔(くら)し、思うて学ばざれば則ち殆(あやう)し」といっています。本を読むゆとりのない中で、読書するだけでなく、皆で議論をして欲しいというのは余りにも乱暴な提案のようにも思いますが、「教育」の問われている時代だけに、原点に返る一つの縁(よすが)として、改めて教職員の「読書会」を勧めたいと思うこの頃です。

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