書き初め

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 新年を迎え、この時期多くの学校では書写の授業において書き初めの指導が行われていることと思います。子どもたちは、通常の書写の授業で使用する筆や半紙とは異なる大きな用具の扱い方に戸惑いながらも、一字一字に全身全霊を傾け練習を重ねている姿が目に浮かびます。
 国語辞書などには、書き初めは古来より毎年正月二日にその年の恵方に向かい、おめでたい意味の詩歌などを書いていたとあります。その名残もあって、現在でも年が明けると全国各地で数多くの書き初め大会が開催され、我が国の伝統的な行事の一つになっていることは周知の通りです。
 私事になりますが、偶々父が書道を教えていたこともあり、小・中学生の頃はいつも年末から年始にかけて書き初めの練習に明け暮れました。大晦日や正月も休むことなく毎日何十枚と書きましたが、なかなか満足のいくものなど書けません。父の指導はとても厳しく、幼少の頃は何時もべそをかきながら書いていました。幾度となくもう書きたくないと思いながらも、練習を重ねるうちに少しずつ上手く書けるようになってくると、それまでの苦しみが逆に楽しさに変わり、いつの間にか積極的に取り組むようになりました。その結果、市や県の書き初め大会に学校代表で選ばれ、自分の作品が幾度か入賞する機会に恵まれると、苦労が報われた気持ちとともに達成感を得ることができました。そして次回は更に向上すべく努力を重ねたものです。そのような経験があったからか、大学の進学時に書の道を志し、現在は幾つかの学校や自宅にて書を教授しています。
 小学校における「書写」は、「文字を正しく整えて書くこと」がねらいであり、決して書の作品を制作することが目的ではありません。また精神主義や鍛錬主義を標榜するものでもありません。その上で、書き初めが書写の学習内容の一つになっていることを改めて考えてみたいと思います。書写の年間指導計画の中でどのように位置づけられるのかを見ていくと、各学年の終盤に設定される書き初めの学習は、それまでに実施してきた書写の学習内容を再確認するとともに、書くことによる表現の場ともなることでしょう。現行の学習指導要領では、書写は国語科の「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」に位置付けられていますので、その点から考えると書き初めの学習は、伝統的な言語文化の一翼を担っているとも言えるでしょう。教科書の教材を書くことは勿論のこと、小学校高学年などにおいては、その年の抱負や決意を自分で考えて書くこともよいのではないでしょうか。児童は語句を吟味し、それを自らの手で書くという一連の行為の中で、楽しさや喜びを感じることでしょう。また、それらの経験が、将来役に立つ児童も少なからずいることと思います。ぜひ多くの子どもたちに書くことの楽しみを享受させたいものです。


社会科において防災教育はどのように反映されているのか

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 本小文では、まず、小中高等学校の社会科の学習指導要領に照らして、実際の社会科の教科書のどこに課題があるのかを述べ、つぎに、全体にわたって欠けている視点を示し、さらに、具体的な小学校の津波防災教育の内容を紹介し、最後に、どのように改善すればよいかを示すことにした。

1.防災教育としての小学校社会科の現状

 わが国の災害対策基本法の第1章総則の第1条に示されているように、災害から守るべきものは、国土並びに国民の生命、身体及び財産となっている。そして、これを実行するためには、三つの「知ること」が必要である。それらは、①災害の起こり方を知る、②社会の弱いところを知る、③対策を知るである。①は災害のメカニズムであるから、教科としては理科が担当することになろう。では、②と③はどの教科が担当するかと考えれば、それは社会科ということになる。この考え方は、防災・減災研究者の考え方であって、文部科学省の学習指導要領では、つぎのようになっている。たとえば、「小学校学習指導要領解説 社会編」では、3 社会科改訂の要点の(1) 目標の改善についての中で、「自然災害の防止の重要性についての関心を深めることができるようにすること。」と記述されている。そして第5学年の目標として、「自然災害の防止(の重要性について関心を深める)」を加えた。
 これを受けて、たとえば、A社では、第5学年の社会の教科書で、「自然災害を防ぐ」の小単元で年間時数100の内4時数をとり、全208頁中6頁を当てている。この小単元は、全体の時数の4%および頁数の3%になっている。これは、火事、事故、事件の扱っている時数や頁数に比べてあまりにも少ないといわざるを得ない。すなわち、A社の第4学年の教科書で、くらしを守るとして、火事、事故、事件、すなわち警察と消防を全時数90の内19時数(21%)、全161頁中32頁(20%)をとっている。
 これらのことから、自然災害の扱いが少なすぎると言いたいのではない。火事、事故、事件が「くらしを守る」という単元に入っていて、これが本当は「いのちを守る」とすべきであると主張したいのである。そうすると自然災害は当然対象となる。しかも、くらしを守るということであれば、内容はHow toものとなってしまうからである。ここは「いのちとくらしを守る」とすべきであるにもかかわらず、くらしだけになっているので、自然災害と共通しないことになるのである。
 交通安全教育も防災教育も、もっとも大事なことは「いのちの尊さと生きていくことの大切さ」であろう。それが社会科の教科書から抜け落ちているのである。「生命の尊重」は道徳に入っているが、それではあまりにも一般的過ぎるだろう。交通安全教育が、交通事故に遭わないための教育に特化してしまっているところに問題があろう。無免許で運転すれば、交通事故を起こし、いのちを奪うという危険を同時に教えないから、全国的に若者の無謀運転事故が多発するのである。児童・生徒は運転しないから教えないのであれば、それこそまさにHow toものの証拠である。わが国では近年、交通事故の後遺症のある負傷者が毎年6万人前後を推移しており、欧米先進国ではこの数字が着実に減少していることを考えれば、必ずしも交通安全教育が成功したことにはならないのである(事故後24時間以内の死者数の減少だけを取り上げたのでは不十分である)。

2.防災教育としての中学校社会科の現状

 中学校になると、社会科は歴史、地理、公民の教科に分かれる。「中学校学習指導要領」では、自然災害と防災は地理で取り扱うことになっている。内容は、同学習指導要領によれば、地理の内容として、(2)日本の様々な地域の中の、イ 世界と比べた日本の地域的特色の(ア)自然環境として、「世界的視野から日本の地形や気候の特色、海洋に囲まれた日本の国土の特色を理解させるとともに、国内の地形や気候の特色、自然災害と防災への努力を取り上げ、日本の自然環境に関する特色を大観させる。」のように記述されている。そして、「中学校学習指導要領解説 社会編」の第3章指導計画の作成と内容の取扱いでは、小学校第5学年の教科内容との関連及び各分野相互の有機的な関連を図ることと記してあるが、中学校では自然環境の中で説明されている。そして「中学校学習指導要領解説 社会編」では、つぎのように記されている。「自然災害の面からみると地震や台風などの多様な自然災害の発生しやすい地域が多く、そのため早くから防災対策に努めてきたといった程度の内容を取り扱うことを意味している。」
 この程度の内容では、とても防災教育の一環といえるものでなくなっていることに気がつく。せめて、地震と台風だけでなく、すべての災害の特徴くらいは紹介すべきであろう。また、中学校の歴史においては、近世の日本のところで、「社会の変動や欧米諸国の接近」については、貨幣経済の農村への広がりや自然災害などによる都市や農村の変化に着目し、近世社会の基礎が動揺していったことに気付かせるとともに、…」の表現中、自然災害という単語が入っているだけである。
 自然災害の特徴は二つある。一つは地域性であり、ほかの一つは歴史性である。前者は、たとえば、アドリア海北部(ベニス)、ベンガル湾岸、メキシコ湾岸、有明海、大阪湾などの高潮は地域性をもっているということである。また、歴史性というのは繰り返すという意味である。東海・東南海・南海地震はその典型であって、684年に発生したことが日本書紀に書かれて以来、確実に8回は起こっている。たとえば、嘉永7年に発生した東海・南海地震は、被害が全国的に波及したので、年号が嘉永から安政に改元された。したがって、現在、これらの地震は安政東海、安政南海と呼ばれている。このように、歴史的に繰り返し起こってきた巨大災害は、社会的に大きなインパクトをもっていたにもかかわらず、その存在が不当にも歴史研究者に無視されてきた事情がある。
 したがって、中学校の地理や歴史で自然災害がもっと取り上げられてしかるべきことに気づく。ちなみに、中学校学習指導要領では理科の内容に関する文章中、「自然災害」という言葉は一度も出てこない。保健分野で「自然災害による傷害」が二度出てくるだけである。これでは、自然災害のメカニズム、すなわち、起こり方をまったく学ばずに高等学校の教育にゆだねることになろう。

3.防災教育としての高等学校社会科の現状

 高等学校では、社会科は、世界史、日本史、地理、現代社会、倫理、政治・経済に分かれる。その内、地理Aでは、2 内容の(2) 生活圏の諸課題の地理的考察として、イ 自然環境と防災のところで、「我が国の自然環境の特色と自然災害とのかかわりについて理解させるとともに、国内にみられる自然災害の事例を取り上げ、地域性を踏まえた対応が大切であることなどについて考察させる。」としている。そして、3 内容の説明で(ウ)として、「日本では様々な自然災害が多発することから、早くから自然災害への対応に努めてきたことなどを具体例を通して取り扱うこと。その際、地形図やハザードマップなどの主題図の読図など、日常生活と結び付いた地理的技能を身に付けさせるとともに、防災意識を高めるよう工夫すること。」となっている。
 社会科では、以上述べた内容で終わりである。しかし、東日本大震災が起こったとき、被災者を苦しめた内容は、まさに現代社会が抱える問題の数々であった。たとえば、避難所で発生した問題は、人権、災害時要援護者、ジェンダー、男女共同参画などであって、現代社会の内容と多くは合致するものであるが、自然災害との関係では一切触れられていない。
 それでは、理科において詳しく示されているかといえば、量的にそれほど多くない。第1 科学と人間生活のエ 宇宙や地球の科学の(イ)身近な自然景観と自然災害として、「身近な自然景観の成り立ちと自然災害について、太陽の放射エネルギーによる作用や地球内部のエネルギーによる変動と関連付けて理解すること。」としか書かれていない。そして、内容についても、「(イ)については、地域の自然景観、その変化と自然災害に関して、観察、実験などを中心に扱うこと。その際、自然景観が長い時間の中で変化してできたことにも触れること。「自然景観の成り立ち」については、流水の作用、地震や火山活動と関連付けて扱うこと。「自然災害」については、防災にも触れること。」と書かれているだけである。そして、具体的に地学において、地震と地殻活動の内容として、「…世界の地震帯の特徴をプレート運動と関連付けて扱うこと。また、日本列島付近におけるプレート間地震やプレート内地震の特徴も扱うこと。…」と書かれており、自然災害という言葉は一切出てこない。
 ここで示したように、高等学校においてすら断片的な知識の切り売り状態となっており。しかも、地震などのメカニズムに偏っており、冒頭に示した、②社会の弱いところを知る、③対策を知るに関する記述は皆無となっている。

4.社会科で防災教育を進めるときの重要な視点

 阪神・淡路大震災を経験した私たち防災・減災研究者の最大の反省は、研究の中心に被災者を置いてこなかったということであった。これは痛恨の極みであった。学問のいずれの分野でも、自分が書いた論文が、世界のトップ・ジャーナルに掲載されることは研究者の目標であり、それが評価につながった。しかし、この震災は、あまりの人的被害の大きさゆえに、また被災者の生活再建の難渋さゆえに、防災・減災の研究成果が被害の抑止や軽減に役立ってこそ価値があることに気づかせてくれた。防災・減災のトップランナーであった研究者ほど、この反省は強かった。研究成果の実践性が求められているのである。残念ながら、その点に気づかなかった防災・減災研究者も多い。だから、研究者間で格差が大きくなってきている。そこが一流と二流の違うところであろう。
 このような観点から文部科学省の学習指導要領や教育委員会などの指導書をみると、まだまだ不十分であることに気がつく。たとえば、一般論としての命の尊さや人と人との絆の大切さは、自然災害だけに重要なのではない。前述した交通安全問題でも病気と健康、福祉などでも重要であろう。これらはすべて私たち一人ひとりにとって重要なのである。だから、自然災害の場合、三つの「知ること」が重要だと指摘したが、その2番目の社会の弱いところに対する誤解がある。社会の弱いところとは、物理的に弱いところと社会的に弱いところであり、前者はライフラインや情報、経済などであり、後者の社会とは被災者となる、あるいはなった人びとの生活の意味なのである。
 阪神・淡路大震災の復興過程を系統的に調査してきた筆者らは、被災者はつぎの順序で、生活再建できないことに苦しめられてきたことがわかっている。それは、「すまい、人と人とのつながり、まち、こころとからだ、そなえ、行政とのかかわり、くらしむき」の7要素である。とくに、被災者にとっての生活再建は、最初の2課題、すなわち、すまいの再建と人と人とのつながりの維持・豊富化の二つが重要な要素を占めていることが明らかになった。これら7課題は東日本大震災でも変わらないと考えてよいだろう。すなわち、これら7課題に関する生活再建の視点が欠如していることがわかる。

5.社会科における具体的な津波防災教育の試み

 まず、カリキュラムへの具体的な配慮を示そう。和歌山県教育委員会では、2011年12月に「津波防災教育指導の手引」を県内小中学校の全教員6,400名に配布した。手引書は47ページで、災害時に子どもたちが自ら判断し、行動できるような指導内容に重点を置いている。群馬大学の片田教授が提唱する「想定を信じない」「最善を尽くす」「率先して避難する」という避難3原則を浸透させることを主眼に置いている。和歌山県教育委員会によれば、従来の防災教育用教材に比べて、実際の授業を想定した指導事例や資料集を盛り込むなど、具体的な点に特徴があるという。
 たとえば小学校3・4年生では津波避難場所の標識を提示して認識させたり、避難場所や避難方法を考えさせたりする学習方法を掲載。中学生では、東日本大震災時に津波浸水予測図を超えた津波が発生した事例から、予測図の意味を考える討論学習などに取り組むとしている。
 また、小学校から中学校までの全学年の学習内容を一冊に掲載することで、全ての教員が防災教育の意識を共有するとともに、継続的な指導ができるようにしている。学校の所在地によって予想される被災状況も異なることから、手引書を基に地域性を取り入れた防災教育を各学校で考えることにしている。2012年度には、教員による研究グループをつくって、さらに工夫を加えた教材や防災教育を展開していく方針としており、各学校でこの手引を1~6時間活用することになっている。
 具体的にT小学校では、1.学年別・教育目的別一覧表(縦軸は教育項目として、Ⅰ地震・津波を知る(内容的にはA 地震・津波の起き方を知る、B 津波の特徴を知る、C 避難の必要性を知る、D 津波の様々な特徴を知る)、Ⅱ対処行動を知る(A 地震から身を守る方法を知る、B 津波からの避難方法を知る、C 学校や自宅周辺の避難場所を知る、D 様々な避難方法を考える)、Ⅲ先人の経験に学ぶ(A 語り継ぐ責任)をとり、横軸は1年から6年までの各学年をとっているので、9×6=54のマトリックスになっている)および2. 学年別・教科領域別一覧表(縦軸は国語、社会、算数、理科、生活、家庭、体育・保健の7教科と、総合、道徳、特別活動、横軸は1年から6年までとっているので、10×6=60のマトリックスになっている)が作られている。
 社会科に関しては、つぎの内容である。
 <3年生> わたしたちのまちのようす…避難場所や避難施設、避難標識などの確認。
 <4年生> 地しんによるひ害を少なくするには…地震から身を守るための方法や非常持ち出し品などについてまとめる。
 <6年生> わたしたちのくらしと政治…災害が起きた時の人々の願いと、市や県・国の働きについて調べる。
 このようにT小学校では、津波防災教育を、国語、社会、算数、理科、生活、家庭、体育・保健の7教科と、総合、道徳、特別活動において実施していることがわかる。このような網羅的な取り組みが防災教育では必要なのである。

6.防災教育に関係する副読本と防災教材の例

 まず、副読本としては、兵庫県教育委員会が編集した小学校低学年用「あすにいきる」・高学年用「明日に生きる」の2冊が2012年度より兵庫県の全小学校に配布・設置されている(授業で各児童・生徒が使うので、必要な冊数は各学校に常備してある。中学校、高等学校用の2種類は2012年度中に完成し、2013年度から使用予定)。この副読本は筆者が委員長となって、前出の片田教授など13名の防災教育副読本作成検討委員会の審議を踏まえて作成されたものであり、2011年東日本大震災を契機に従来の副読本を全面改訂したものである。
 さらに、中学生を主たる対象とした防災教材として、2013年3月の東日本大震災2周年に間に合うように作成中のものがある。防災教材「勇気をもって」と題するものであり、テキストとニュース映像を収録したDVDから構成されている。この教材は、NNN、読売新聞社、関西大学社会安全学部が共同で制作中のものである。テキストはA4版180頁、2編構成でその半分のスペースはカラー写真やイラストで構成されている。前編で対象とした災害は、地震、津波、火山噴火、台風、高潮、洪水、竜巻、土砂災害の8種類である。それぞれの災害は、たとえば、「地震の起こり方を学ぶ」「地震に弱いところを学ぶ」「地震への備え方(ノウハウ)(自助)」「地震の歴史(実例)を学ぶ」「命や災害について考える」の5節構成となっている。後編では、防災対策や防災教育の一般論を展開している。この防災教材は、教育や防災関連機関への配布などが予定されている。

7.将来の改善を目指して

 本小文で示したかったことは、社会科による防災教育に関して、小学校、中学校、高等学校の学習指導要領を例に示したように、この12年間で網羅的に内容が展開していないことである。また、内容の抜け、漏れ、落ちがないかどうかを第一級の専門家に検討してもらうことである。本来は和歌山県教育委員会が手引に示したように、各教科での分担を明示することであろう。防災教育を一部の教科だけで行うことは不可能である。一つの解決策は、防災を一つの教科として12年間で教える場合、どのような構成になるかを考えることだろう。そうすると、それを現在の様々な教科で教えると考えれば、教育内容が決定できるし、省かざるを得ない部分も出てくると考えられる。
 繰り返すが、私たち防災・減災研究者は阪神・淡路大震災で大きな反省を余儀なくされた。それは、研究は被災者のためにやるものであるということである。そして、東日本大震災で約1万9千名の犠牲者を数え、そこには小学生から高校生までの犠牲者471名も含まれている。この事実によって、人的被害を一人でも減らすために、防災教育の重要性を認め、それを実践することで二度とこのような悲惨な災害を繰り返さないことを約束したい。

河田 惠昭(かわた よしあき)
専門分野/防災・減災、危機管理
主要著書/『これからの防災・減災がわかる本』(岩波ジュニア新書、2008年)、『津波災害』(岩波新書、2010年)、『にげましょう』(共同通信社、2012年)など


速さ「速さを表そう」(第5学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

速さ「速さを表そう」

2.本時の位置づけ

5/8時間

3.本時のねらい

 本時は、速さ(1時間あたりに進む道のり)と道のりがわかっていて、時間を求める問題場面を解決することを通して、速さも単位量あたりの大きさの考えで表したり比べたりできるという見方・考え方をより深めていくことをねらいとする。そこで大切となってくるのが数直線である。数直線に表現することで、問題場面の速さ、道のり、時間の関係を視覚的、構造的に明確にとらえさせたり、表現した数直線をもとにしながら、これまでとの共通点(速さ×時間=道のりなど、3つの数量の関係)や差異点(3つの数量の何が未知なのか、未知□の求め方)を考えさせたりしたい。また、本時の学び(速さと道のりをもとに、時間を求める)だけでなく、前時の学び(速さと時間をもとに道のりを求める)を含んだ2段階処理を必要とする問題にも挑戦させることを通して、学びの活用を図り、思考力・判断力を高めていきたい。

4.本時の評価基準

○数学的な考え方
 速さ、道のり、時間の関係を数直線で表すとともに、3つの数量の関係は、速さ×時間=道のりになっていることに着目したり、未知の時間の求め方を説明したりすることができる。
○知識・理解
 速さと道のりをもとに、時間の求め方をとらえることができる。

5.単元指導計画

学習活動及び内容

こみ具合等、数直線を用いながら単位量あたりの大きさで比べるという既習の学びをふり返る。

進んだ道のりとかかった時間をもとに、数直線を用いながら1分間あたりに進む道のりでソーラーカーの速さを比べ、速さも単位量辺りの大きさで比べられることをとらえる。

数直線を用いながら新幹線やキリンの速さを求め、時速や秒速、分速についてとらえる。

自動車の速さとかかった時間をもとに、数直線を用いながら進んだ道のりの求め方を考え、速さと時間、道のりの関係の見方を深める。


本時

自転車の速さと進んだ道のりをもとに、数直線を用いながらかかった時間の求め方を考え、速さと時間、道のりの関係の見方を深める。

数直線を使いながら速さ、道のり、時間を求める3つの問題を解決し、速さ=道のり÷時間、道のり=速さ×時間、時間=道のり÷速さの公式をつくりだす。

仕事の早さを数直線を用いながら求め、これまでの速さと同様に、単位量あたりの大きさで比べられることをとらえる。

これまでの学びを生かし、単位換算を必要とする速さの問題を数直線を用いながら解決する。

教科書の「たしかめぽいんと」や「じっくりチェック」「ぐっとチャレンジ」を通して、学習のまとめをする。

6.実践紹介

(1)導入(課題把握・解決の見通しの段階)
 まず、導入(課題把握・解決の見通し)の段階である。本時の問題場面①(時間を求める問題)を提示し、前の問題場面と変わったところを話し合わせた。 

【前時の問題場面】
 ある自動車がA地点を出発して、時速60㎞で走ります。2時間後にB地点、3時間後にC地点に到着しました。A地点からそれぞれの地点までの道のりを求めましょう。

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【本時の問題場面①】
 自転車に乗ってA地点を出発して、分速200mで走ります。A地点からB地点までは800m、C地点までは1500m、D地点までは1600mの道のりがあります。それぞれの地点まで何分かかりますか。

 すると、子どもたちは、「前の問題は、速さと時間がわかっていて道のりを求める問題だったけど、今日の問題は、速さと道のりがわかっていて時間を求める問題に変わっている。」というように、速さ、時間、道のりの3つの数量に着目し、問題の変化を取り出していった。また、問題の変化に伴って、求めるための数直線も、□の位置を変える必要があると予想することができた。これは、これまで、数直線の□の位置を意識させながら解決することを積み上げてきたことが有効に働いたものと考える。そこで、本時のめあてを設定した。

めあて
速さと道のりをもとに、到着までにかかる時間を数直線を使って求めよう。

(2)解決の実行の段階
 次に、展開(解決の実行)の段階である。子どもたちは、まず、問題①に対して自分の見通しをもとに数直線で3つの数量の関係を表現しながら自力解決を行った。ここでは資料1のように、それぞれの地点を1つ1つ数直線で表現し解決する姿と、資料2のように、3つの地点を1つの数直線にまとめて表現し解決する姿が見られた。

【資料1】それぞれの地点を別々に表現した数直線

【資料1】それぞれの地点を別々に表現した数直線

【資料2】3つの地点をまとめて表現した数直線

【資料2】3つの地点をまとめて表現した数直線

 自力解決の後、2人組で自分の解決の過程を説明し合わせた。2人組で行ったのは、一人一人に確実に説明する場を設定し自分の考えを自覚させるためである。そして、全体の場で確認し合い、解決の過程の共有化を図った。その際、1つにまとめた数直線を示し、「なぜこのように1つの数直線にまとめられるのですか。」と子どもたちを揺さぶった。そうすることで、1分間に対する道のりが全て同じであることを確認し、それらを1つにまとめるよさをとらえさせたのである。
 その後、子どもたちに、問題を解決してみて気づいたことを話し合わせた。子どもたちは、「これまでと同じように、数直線で求められた。」「速さが同じだから1つの数直線でまとめて表すことができた。」「数直線でもわかるように、全て200(速さ)×□(時間)=道のりの関係になっている。」「□(時間)を求める式はわり算になっている。」など、数直線と結びつけながら3つの数量の関係に着目し、時間の求め方を一般化していった。このように一般化することができたのは、A地点まで、B地点まで、C地点までと時間を求める処理過程が3つ含まれた問題を提示したことが有効に働いたと考える。
 更に、追加事象として下の問題場面②を提示した。

【本時の問題場面②】
時速72㎞で走る自動車で、5時間かかる道のりがあります。その道のりを時速90㎞で走る電車では、何時間かかりますか。

 これは、単なる時間を求める問題ではなく、本時問題①のように時間を求める前に、前時の道のりを求める処理が必要となってくる2段階処理の問題である。つまり、前時と本時に獲得した見方・考え方を発揮させるものである。

【図1】問題②の関係を表現した数直線

【図1】問題②の関係を表現した数直線

 自力解決をする前に、全体を数直線に表現すると、図1のように、未知の□が2つになることを確認した。子どもたちは、はじめ、□が2つあることに戸惑っている様子だった。そこで、「どちらかの□は先に求められませんか。」と尋ねると、子どもたちは、順番に求めればよいことに気づき、それぞれ自力解決をしていった。

【資料3】問題②を解決した数直線

【資料3】問題②を解決した数直線

 右は、子どもが解決したものである。
 まず、上の数直線のように、自動車の速さとかかった時間をもとにして道のりの□を求めた。次に、下の数直線のように、求めた道のりと電車の速さをもとにしてかかった時間の□を求めた。このように、前時と本時に獲得した考えを使いこなしながら、2段階処理を必要とする問題を解決することができた。ただし、これは、時間の関係もあり、全員が解決するまでには至らなかった。

(3)解決の整理の段階
 最後に終末(解決の整理)の段階である。ここでは、今日の学習を通した気づきを自分なりに整理させ、それらを出し合わせることで、本時の学習を以下のようにまとめていった。

まとめ
・時間を求める問題でも、これまでと同じように数直線を使って考えると速さや道のり、時間の関係がはっきりし、求めることができた。
・速さが同じであれば、道のりがいろいろあっても1つの数直線でまとめて表すことができた。
・いろいろな道のりにかかる時間を求める問題では、どれも速さの□倍が道のりという関係になっている。だから、時間の□はわり算で求めるようになった。

計算のきまりを調べよう「式と計算」(第4学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「計算のきまりを調べよう『式と計算』」

2.本時の位置づけ

9/9時間

3.本時のねらい

 本時は,20このクッキーの代金を1種類,2種類,3種類のねだんの違うクッキーの組み合わせで考えて,答えが4000円になる1つの式にする方法を調べる。この学習では、子ども達が自分なりの見通しと根拠をもって活動することを目指す。そのために、モデルの図と条件を確認しながら自分の考えをつくっていく。具体的には①縦に5こ横に4このクッキーがはいっている箱②1列に入るクッキーの種類は,同じもの③20こ入りのクッキーの値段は、3000円④値段の違うクッキーを2種類入れる。という4つの条件を確認しながら、商品を考えていくことである。このとき子ども達は「クッキーを2種類にし10個ずつ同じクッキーにしたらよい。1つのクッキーの値段は,もし300円のものにしたら,代金は10こで3000円になるから,残り1000円を10個でわるのだから,代金は,100円になる。だから式は,100×10+300×10になる」などの根拠をもって活動することができるようになると考える。

4.本時の評価規準

観点

学習活動及び内容

数学的な考え方

 1つの式にしたときの計算回数の違いについて気付き,問題場面にある課題を簡潔・明瞭・的確の観点から考えることができる。

技能

 四則混合の計算式の計算回数に目を向け,図と式を結び付けて説明することができる。

5.本単元の指導計画

学習活動及び内容

具体的な買い物場面から問題をつくる。

2段階構造の問題[加減]を1つの式に表す方法を考える。
例 500-(150+80) ※( )のある式の計算順序をまとめる。

2段階構造の問題[加減乗除]を1つの式に表す方法を考える。
例 120×(5+3)

加減と乗除の2段階構造の問題を1つの式に表し,計算順序を考える。
例 500-(120×3),85+(600÷2)

四則混合の3段階構造の式の計算順序を考える。  
例 8×6-4÷2

整数の加減,乗法について分配法則・交換法則・結合法則が成り立つことを確かめる。

小数についても加法の交換法則・結合法則が成り立つことを確かめる。

加減,乗除の相互関係を考える。

整数の結合法則、分配法則を活用して条件にあったお菓子の詰め合わせを考える。

6.実践紹介

 条件に合ったお菓子の詰め合わせ商品を,個数,お菓子の種類と配列そしてそれぞれの値段に気を付けて開発することをねらいとしている。そのために,菓子折の観察,お菓子の配列の確認,菓子折づくりの場の設定を行った。具体的には、3種類のお菓子で4000円になる詰め合わせを、お菓子の値段や個数などの条件に気を付けて,1つの式に表して簡単に調べることができる方法を見付けていくことである。

【導入段階】
san011_011 まず導入段階では,20こで4000円になるクッキーの組み合わせを調べた。4000円でどのようなお菓子をどのモデルの形で詰め合わせるかを考え、一箱に入っているクッキーの数が20個であることを確認した。子ども達は、クッキー1個の値段が3000÷20で1個150円になることを確認した。そして条件が、一箱の値段が4000円に変わったとき,クッキーの値段は1種類のときには,200円になることを確認した。これを根拠として2種類,3種類の詰め合わせを考えるという見通しをもたせた。ここでの条件は、1列には、同じ商品が入らないといけないことであった。

【展開段階前半】
san011_021 次に展開段階では自分なりの見通しと根拠をもって活動した。A児は、「たてに5このクッキーが入っていて横に4このまんじゅうが入っている。列に入るクッキーの種類は,同じものなのでクッキーを2種類にし10個ずつ同じまんじゅうにしたらよいのではと考えながら、図に数値を入れながら、どのような詰め合わせがあるかを考えていった。A児が考えたのは、上に示した3つの考えである。もし300円のものにしたら,代金は10こで3000円になるから,残り1000円になるとして、2種類の商品の考えをつくっていっていることが分かる。これを基に、3種類の詰め合わせを考えている。また、何度も消しながら自分の考えをつくり直していることも分かる。条件に合うものを探すために、1つ1つに数を入れながら考えをつくっていった結果であると考える。

【展開段階後半】
san011_031 ここでは、どのようにしてお菓子の詰め合わせを考えたかを、図と式を結び付けて考えていった。まずどの考えも4000円になるお菓子の詰め合わせであることを確認し、出し合った考えを仲間分けしていった。仲間分けするときには、図を基にして縦に考えていったのか、横に考えていったのか確かめていった。その後,横の組み合わせを考えていく方が、縦に入れて考える方法よりも簡単ということを話し合いで見付けていった。これは、交流の時に,図をもとに早くできるものを考え直し,「B君が行ったように、よこの組み合わせを考えれば、縦に5個入っているのだから5倍すればいい。だから、横の組み合わせが、800円になるように考えれば簡単」という言葉に表れている。図でその箇所を示しながら自分の考えを柔軟に変えている姿に表れている。

【終末段階前半
san011_041 終末段階では、縦に入れて考えた方が簡単なのか、それとも横に入れた方が簡単なのかを追事象を基に考えるようにした。これが右に示すものである。
 A児は、縦に詰めて考えるものを2つ、横に詰めて考えるものを1つつくった。このように繰り返し、自分で考えるうちに、縦で考えるよりも横で考える方が簡単であることに気付いていったと考える。それは、一番最後に横の考えで行っていることや後ほど示す資料でのA児の発言から伺える。

【終末段階後半】
 下に示すのは、B児が発表した後のC児そしてA児の応答である。

san011_051 4種類のお菓子が入っていますね。さて縦に詰めたのと横に詰めた考えでは、どっちが簡単に早く商品を作り出すことができますか?
B児 横の見方が早いと思います。×10とかしなくても5000÷5とかをして,1000円の組み合わせを考えればできるから。
C児 B君が言ったように5000÷5をしたら,この列が1000円だから,1000円になる商品の組み合わせを考えれば早くできると思います。(横の列を示しながら説明している)
A児 自分も縦に入れる方法と横に入れる方法で考えたけど、どんな種類を入れればいいか考えるのが簡単なのは、横に入れていくものでした。横の列に入れることに納得しました。

 子ども達は、考えられる商品をすべて作り出すことができた。子ども達がつくり出したのは、「5000円の商品の種類」は,「(150+150+300+400)×5=5000」「(100+200+350+350)×5=5000」の式になる3種類のお菓子からなるものと「(100+200+300+400)×5=5000」となる4種類からなる商品である。これはただ単に当てはめて考えていく縦に詰める方法ではなく、まず1000円になる組み合わせを考えてから横に詰めていく方法を検討したから早く何度も書き直すことなく簡単につくり出した姿であると考える。
 以上のようにして、子ども達は、( )を使って計算していくことのよさを図と結び付けながら考えていった。

明日(アシタ)の空の向こうに

(C) Kid Film 2010

(C) Kid Film 2010

 「明日(アシタ)の空の向こうに」(パイオニア映画シネマディスク配給)は、ポーランドのドロタ・ケンジェジャフスカ監督の新作である。小欄で紹介した「僕がいない場所」も彼女の作品だ。「木洩れ日の家」では、凛とした老女の人生のほぼ最後の日々を描き、「僕がいない場所」では、母から拒否される悲惨な境遇の少年を、きめ細やかな視点で描いた。このほどの新作は、またも不幸な境遇の少年たちを描く。
 ポーランドとの国境に近い、ロシアの田舎の町。駅舎に寝起きする少年たちがいる。いわば、ストリート・チルドレン。身よりもなく、住む家もない。物乞いや、ちょっとした盗みで、なんとか生き延びているのだろう。6歳のペチャ(オレグ・ルィバ)と10歳の兄ヴァーシャ(エウゲヌィ・ルィバ)は、今日も駅のベンチの下に寝そべって、拾ったたばこをふかしている。
 ヴァーシャは、11歳の友達リャパ(アフメド・サルダロフ)と、かなり前から、国境を越えてポーランドに行く計画をあたためている。いろんな情報を集めて、いよいよポーランド行きを実行する。せめて、今よりは、いい暮らしになるはずと信じてのことだ。ヴァーシャとリャパは、少年とはいえ、すでに大人の世界に足を踏み入れている。ペチャはまだ6歳、ませてはいるが、あどけなさが残る幼児である。

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(C) Kid Film 2010

 3人は、なんとか貨物列車に乗り、国境近くの町に着く。ペチャは、持ち前の愛くるしさで、パンを売るおばさんを美人だと誉めそやし、食料を得る。ペットボトルに小川の水を汲み、3人は国境を目指す。
 道中、リャパの知り合いの老人を訪ねたりするが、3人の旅は続く。結婚式に出会い、「幸福のおすそわけ」をねだる。大人たちの愛し合うシーンに遭遇し、こっそり見てしまう兄たちだが、ペチャはてんとう虫と遊んでいる。
 やっと、国境にたどり着く。金網には高圧電流が流れている。空き缶で、穴を堀り、なんとか金網をくぐり抜ける。ポーランドだ。「お空はどこも同じだね」とペシャ。そこには、いまよりはましな、新しい暮らしが待っているはずだったが…。
 ポーランドとの国境に近いロシアの実情が、くわしく語られているわけではないし、子供たちの目指すポーランドが、ユートピアとして描かれているわけではない。辛い境遇に身をおく少年たちが、いまよりは少しはましな生活を求めて、一歩踏みだそうとしている。その少年たちに寄り添うような監督の視線が、なんとも暖かく、優しい。

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(C) Kid Film 2010

 悲惨な運命の、恵まれない子供たちを描いた映画は数多い。ことは、ポーランド、ロシアに限った話ではない。映画では、人の良いおとなたちも登場するが、子供たちを、このような状況に追いやったのは、ほかでもない、おとなたちとその社会である。声高ではないが、ドロタ・ケンジェジャフスカ監督の強固な意志が窺える。
 緑豊かな草原。大空を翔ける鶴の群れ。おだやかな木洩れ日。小川で戯れる少年たちの表情。映像が美しく、素晴らしい。
 2曲出てくる音楽は、どちらも哀愁を帯びて、心に残る。ことに、ラスト近くとエンド・クレジットで、ロシアの歌手アルカディ・セヴェルヌィによって唄われる「鶴は翔んでゆく」は名曲だ。少年たちのいまと未来を指し示すかのようだ。「鶴の群れは遠い彼方に飛び立つ 荒れ狂う吹雪の野原を越えて 遠いかなたに飛ぶ力は尽きて 夜更けに森の広場に舞い降りた…」
 6歳のペチャの叫びに耳を傾けるおとなたちがいて、だから、少年たちの未来に、わずかでも希望があればいいのだが。

2013年1月26日(土)より、新宿シネマカリテico_link他全国順次公開

『明日(アシタ)の空の向こうに』公式Webサイトico_link

監督・脚本・編集:ドロタ・ケンジェジャフスカ
製作・撮影監督・編集:アルトゥル・ラインハルト
共同製作:丹羽高史、ズビグニェフ・クラ、チャレク・リソフスキ
出演:オレグ・ルィバ、エウゲヌィ・ルィバ、アフメド・サルダロフ 他
2010年/ポーランド・日本合作/118分/カラー/35mm(1:1.85)/ドルビーデジタル
原題:“JUTRO B?DZIE LEPIEJ”
配給:パイオニア映画シネマデスク
宣伝協力:ブラウニー


筆算のしかたをさらに考えよう(第2学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

筆算のしかたをさらに考えよう(2年上P.87~105)

2.目 標

(1)十進位取り記数法のしくみをもとに,加法や減法の計算や筆算の仕方を考えることができる。
(2)(2,3位数)+(1,2位数)=(3位数),(3位数)-(1,2位数)=(2,3位数)の計算ができる。

3.評価規準

「関心・意欲・態度」
身の回りの生活から加法や減法の用いられる場面を見つけ,活用とする。

「数学的な考え方」
既習の加法・減法の考え方を生かし,(2,3位数)+(1,2位数)=(3位数),(3位数)-(1,2位数)=(2,3位数)の計算の仕方を考えることができる。

「技能」
(2,3位数)±(2位数)=(3位数)の計算や筆算の仕方を絵図で表し,正しく処理することができる。

「知識・理解」
(2,3位数)±(2位数)=(3位数)の計算や筆算の仕方も,同じ位同士で考えることや繰り上がり・繰り下がりがあることを理解することができる。

4.本単元の指導にあたって

①教材について
 算数科は,学習の系統性が特に強い。そのため,学習指導を1つの単元や1単位時間だけで仕組んでも内容の系統性を捉えにくく,よりよい理解にならないと考える。本単元は,百の位に繰り上がるたし算と百の位から繰り下がるひき算の学習である。そこで,これまでのたし算・ひき算の学習とつなぐことを大切にする。

②学習過程について
 1単位時間に「数量の関係などを的確にとらえ,場面の変化をつかむ把握の場」「これまでの処理を生かし,変化した場面を処理する解決の場」「これまでの変化をまとめる整理の場」の3つの場を設定する。そして,それぞれの場に「テープ図や位取り表で表す絵図化の活動」と「気づいたことを交流し,まとめる活動」を位置づける。

③児童の実態
 絵図化・言葉化の実態調査や1学期に学習した十の位から一の位に繰り下がるひき算の学習ノートを分析した。子どもたちは「絵図化」や「言葉化」することのよさを感じていることが分かった。子どもたちは本時の気付きを理解することはできるが,学習のつながりをとらえていないことが分かった。

5.単元の指導計画

学習活動及び内容

学習のねらい

子どもの活動と内容

評価規準の具体例

(2位数)±(2位数)の計算に興味を持ち,問題をつくることができる。

挿絵をみて,既習の(2位数)±(2位数)の計算をふり返る。

・(2位数)±(2位数)の計算に興味を持ち,問題づくりに取り組んでいる。【関】

筆算図を使いながら,位の大きさに着目して十の位が繰り上がる計算や筆算の仕方を考え,これまでとの変化を説明することができる。

十の位が繰り上がる(2位数)+(2位数)の計算や筆算の仕方を筆算図で考える。

・既習をもとに,十の位が繰り上がる(2位数)+(2位数)の計算や筆算の仕方を考えている。【考】

筆算図を使いながら,位の大きさに着目して一・十の位が繰り上がる計算や筆算の仕方を考え,これまでとの変化を説明することができる。

一の位も十の位も繰り上がる(2位数)+(2位数)=(3位数)の計算や筆算の仕方を筆算図で考える。

・既習をもとに,一の位と十の位が繰り上がる(2位数)+(2位数)の計算や筆算の仕方を考えている。【考】

筆算図を使いながら,位の大きさに着目して百の位に波及的に繰り上がる計算や筆算の仕方を考え,これまでとの変化を説明することができる。

十の位に繰り上がることで,百の位に波及的に繰り上がる(2位数)+(1,2位数)の計算や筆算の仕方を筆算図で考える。

・既習をもとに,百の位に波及的に繰り上がる(2位数)+(1,2位数)の計算や筆算の仕方を考えている。【考】

筆算図を使いながら,位の大きさに着目して百の位が繰り下がる計算や筆算の仕方を考え,これまでとの変化を説明することができる。

百の位が繰り下がる(3位数)-(2位数)の計算や筆算の仕方を筆算図で考える。

・既習をもとに百の位が繰り下がる(3位数)-(2位数)の計算や筆算の仕方を考えている。【考】


本時

筆算図を使いながら,位の大きさに着目して百・十の位が繰り下がる計算や筆算の仕方を考え,これまでとの変化を説明することができる。

百の位と十の位が繰り下がる(3位数)-(2位数)=(2位数)の計算や筆算の仕方を筆算図で考える。

・既習をもとに,十の位と百の位が繰り下がる(3位数)-(2位数)の計算や筆算の仕方を考えている。【考】

筆算図を使いながら,位の大きさに着目して百の位が波及的に繰り下がる計算や筆算の仕方を考え,これまでとの変化を説明することができる。

十の位が繰り下がることで,百の位が波及的に繰り下がる(3位数)-(2位数)の計算や筆算の仕方を筆算図で考える。

・既習をもとに,百の位が波及的に繰り下がる(3位数)-(2位数)の計算や筆算の仕方を考えている。【考】

筆算図を使いながら,位の大きさに着目して百の位が波及的に繰り下がる計算や筆算の仕方を考え,これまでとの変化を説明することができる。

十の位が繰り下がることで百の位が波及的に繰り下がる(3位数)-(1位数)の計算や筆算の仕方を筆算図で考える。

・既習をもとに,百の位が波及的に繰り下がる(3位数)-(1位数)の計算や筆算の仕方を考えている。【考】

(3位数)±(1,2位数)の筆算による仕方を考え,正しく処理できるようにする。

(3位数)±(1,2位数)の筆算による仕方を考える。

・(3位数)±(1,2位数)の計算が筆算でできる。【技】

10

(3位数)±(1,2位数)の適用問題を正しく処理できるようにする。

(3位数)±(1,2位数)の適用問題を解決する。

・(3位数)±(1,2位数)の適用問題を解決することができる。【考】

6.本時の学習(第6時/全10時)

①目標
 筆算図を使いながら,位の大きさに着目して百・十の位が繰り下がる計算や筆算の仕方を考え,これまでとの変化を説明することができる。

②学習展開

 

主な学習活動

指導の工夫と教師の支援

資料




問題場面を提示し,本時の学習で必要な図について話し合う。

問題場面の状況が変化したことをとらえさせ,テープ図が必要ないことを理解できるようにする。






もんだい
142-58のひっ算のしかたを考えましょう。

T :(問題を提示した後)これまでと変わったことは何ですか。
C1:今までは「のこりは何個ですか」という問題だったけど,今日は「筆算の仕方を考えましょう」という問題になっています。
T :そうですね。今日はテープ図が必要ですか。
C2:今まではひき算かどうか調べるためにテープ図が必要だったけど,今日は筆算の仕方を考えるから,テープ図はいらないね。
C3:今日は筆算図が必要だね。
C4:今日は始めから百の位があるから,今日も百の位まである筆算図がいるね。
T :(百の位まである筆算図を配付し,筆算図で場面を表した後)これまでと計算の仕方が変わりそうだけど,分かるかな。
C5:(筆算図を指し示し)一の位も繰り下がりそう。
C6:(筆算図を指し示し)繰り下がりが2回ありそう。

めあて
ひっ算図をつかって,これまでとかわったところを見つけよう。




142-58の計算の仕方を筆算図で絵図化し,考えをつくる。

142-58の筆算の仕方を百の位がある筆算図で表現させ,2回ある繰り下がりをとらえることができるようにする。

本時の筆算図
san010_01

san010_04

前時までの筆算図
十の位が繰り下がる
san010_02

百の位が繰り下がる
san010_03

筆算図で考えをつくった後,これまでとの計算の仕方から変化した点について,話し合う。


T :これまでの計算の仕方と変わったことは 何ですか。隣の人と話し合いましょう。
C7:(筆算図を指し示し)今までは,十の位だけや百の位だけたりなくてひけなかったけど,今日は,十の位も百の位もたりなくてひけないね。
C8:今までは繰り下がりが1回だけだったけど,今日は繰り下がりが2回あるね。




子どもが本時の活動や学習してきたことで生まれた気づきをもとに自分の言葉で学習をまとめる。

本時までのたし算やひき算についてふり返らせ,これまでのことをもとにまとめることができるようにする。


まとめ
・今までのはくり下がり1回しかなかったけど,今日はくり下がりが2回ある。
・たし算でもひき算でも,くり下がりやくり上がりが2つあるけい算もある。
・百の位からも十の位からもくり下がった。

造形活動が育てる学力

 「図工を充実させることで全国学習状況調査のB問題の成績が上がる」。最近、その原因は図工の授業時間の中で実現していること、図工の学習活動そのものにあるのではないかと考えています。今回は、図工の学習活動を、まず会話に例え、その上で全国学習状況調査について検討してみます。

 終わってみれば、何事かが達成されている会話。でも3分後に何が話されているのか予想できる人はいません。それは会話が、常に直前の「資源」~言葉や内容、周りの空間や環境など~をもとにしているからです。この「資源」は発言と相互的な関係にあり、その場の会話の中で見出される性質があります。また、会話が「まずい」方向に行かないように、参加者は、相手の仕草や表情などを適切に判断しながら、細かな調整を繰り返しています。その結果が、会話なのです(※1)。

art2_vol5_01

読書感想画「どんぐりと山猫」の下絵段階

art2_vol5_02

完成段階~色や口元の表現が工夫されており、より意地悪そうに山猫を描いたことが分かる

 同じようなことが、図工の授業でも起きています。つくっている最中は、どうなるのか誰も予想できません。表現の過程では、主題やメッセージ、形や色、材料、周囲の空間、友達や先生、授業の文脈などの「資源」が用いられます。それは、進行中の造形活動と相互的な関係にあり、新しく見付けられたり、足し引きされたりしています。そして、子どもたちは、自らの行為によって変わる作品の状況を把握しながら、次の一手を判断しています。その結果、出来上がったのが作品です。
 会話と図工に共通するのは、変わり得る状況を適切に判断しながら、「資源」を見出し、それらを関係付けながら、概ね論理的に進めていることです(※2)。子どもにゆだねる部分の多い図工が、会話と同じような状態を生みだしていると言い換えてもよいでしょう(※3)。
 次に、全国学力調査について考えてみます。全国学習状況調査のB問題には特徴があります(※4)。多くの場合、特定の場面やストーリーなどが設定され、そこに知識や技能などの「資源」が散りばめられています。問題を解こうとする子どもたちは、まず、問題の設定を理解しなければなりません。次に、「資源」を見付けだし、それらをどのように結び付けて解答するかを考えることになります。問題という仮の状況の中で、資源を発見し、それを関係付けながら、最も妥当な解答を導き出す。それは図工の学習活動に実によく似たプロセスです。
 おそらく研究指定校では、これに成功する子どもたちが増えたのでしょう。そうだとすれば、図工の研究指定校でB問題の成績が上がる理由は、図工の授業を充実させたことであり、それが直接的に子どもたちの学力に影響したとは考えられないでしょうか。

 そのような可能性が図工・美術にあるとすれば、その特質を十分に生かした授業を実践することが大切でしょう。「子どもの手を借りた先生の絵」を描かせるのは論外です。とは言ってみたものの、当の筆者自身が、今も昔も反省や失敗ばかり。次回はそんな話も交えながら、図工・美術の授業について語ってみたいと思います。

※1:会話の内容が事前に決まっていたら、それは会話ではない。やらせ、あるいはシナリオだ。
※2:ただし、頭だけでなく、手や体も一緒になって使っているところが表現では大事だ。
※3:ここでは指示通りに子どもを動かし、先生の構図、先生の色、先生の絵を全員に描かせる授業は想定していない。
※4:個人が保有する知識の量や技能を問うのはA問題である。


地域連携を重視する学校運営

icon_pdf_small「日文の教育情報 No.121」PDFダウンロード(327KB)

■ 地域の重要性の再確認

 学校外部評価委員、あるいは学校運営協議会委員として様々な角度から学校に関わる機会を得て、改めて学校・家庭・地域の信頼関係に大きな意味のあることを確認している。
 一つには、子どもの抱える問題、学校が直面する課題が多様化する傾向にあって、課題解決には家庭・地域との緊密な連携が欠かせないからである。
 次にあげられるのは、第一の理由と重なって、地域住民・保護者が積極的に学校に協力することによって特色ある教育活動の充実・活性化が図られるからである。
 例えば、私が学校運営協議会委員として関わっている、東京都のA小学校においては、運営協議会が家庭・地域の様々な意見を学校運営に反映させるだけでなく、職場体験や全校マラソンといった行事に協力し、さらに学校支援本部が主体的に多様な子どもの活動の企画、展開に機能し、実際の支援を行っている。
 また、B中学校では「○○中学校おやじの会」「学区内町会・自治会」「PTA OB会」などを母体とする学校応援団の組織という形で連携体制・支援本部を構築し、地域の意見・要望を学校に伝え、同時に学校行事、生徒会行事などを支援している。
 そこで展開される諸活動を通じ、地域に潜在する教育力の大きいこと、地域の方々の中にある子育てへの思いの強さを知らされた。諸活動の積み重ねによって家庭・地域の願いが学校の教育活動に反映される。見守られ、支えられることが子どもの活動に活気を与え、指導に当たる教員の指導を活性化させるのである。
 さらに、共感的に学校が直面する課題の難しさ、積み重ねられている努力を理解し、単に見守るだけではなく、それぞれの役割を果たそうとするようになる。そのことが教育機能を高めることとなり、学校の過剰な役割の改善につながる面を持つことも見逃せない。

■ 学校運営改善に関する報告書

 教育目標の実現を効果的に進めるためには、学校だけの力では難しくなっている。学校運営の展開には、保護者や地域と信頼関係を築き、地域を巻き込んで活動を展開するという発想が欠かせなくなっている。
 平成23年7月に公表された、学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議報告書「子どもの豊かな学びを創造し、地域の絆をつなぐ~地域とともにある学校づくりの推進方策~」の冒頭には、次のように示されている。
 「近年、『新しい公共』という概念が打ち出される中で、保護者、市民としての子育てや学校の関わり方について、社会の意識変化が生まれつつある。」
 特に注目されるのは、「子どもを中心に据えた学校と地域の連携」の項で述べられている次の部分である。
 「子どもの『生きる力』は、多様な人々と関わり、様々な経験を重ねていく中でよりはぐくまれるものであり、学校のみではぐくめるものではない。加えて、近年の社会の変化に伴い、多様化・複雑化するニーズに学校の教職員や行政の力だけで対応していくことは困難となっており、学校が地域社会においてその役割を果たしていくためには、地域の人々(保護者・地域住民等)の支えが必要となっている。」
 改めて考えてみると、現代の子どもと地域における様々な人との関わりは非常に乏しくなっていることに気づかされる。子どもにとって、社会性の獲得、自己指導力の育成は重要な課題であるが、これは学校内の教育活動だけでは難しい。学校を開かれたものにし、家庭・地域からの活力を得ることが必要になる。

■ 学校段階を超えた子どもの育ち

 ここに引いた報告書が述べるように、子どもの育ちは各学校単位で収まるものではない。地域における子どもの育ちは、個々の学校や学校段階を超えて捉えていくことが必要になっている。
 これは当然の認識なのだが、実際には学校の教育活動が学校内、教室内に限定されている場合があり、全人的な「生きる力」育成の課題になっている。
 まずは学校と家庭・地域の間で、どのような子どもを育成するのか、何を実現することが求められているのか、目標を共有することが求められる。
 これからの学校運営については、こうした考えを十分に生かし、地域の人々の学校運営への参画などについても視野に入れ、全教職員の共通認識の下で開かれた教育活動を展開することが課題になっている。
 その第一歩として、例えば、ここに引いた報告書の重点になる部分を資料にするなどして、目指すべき学校運営の在り方について全教職員の間で十分に話し合い共通認識を有することが強く望まれている。

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