人と人を結ぶ

 「三保松原逆転登録」の立役者として,その名を広く報じられた前文化庁長官の近藤誠一さん。今年7月に退官したのちも,世界遺産に関する取材や交渉術に関する講演など依頼が相次ぎ,身を休めるヒマがないという。「登録決定後,三保松原へは何度か足を運んだものの,未だ富士山を拝めてないんですよ」と笑う近藤さんに,あらためて世界遺産の価値とは何か,外交に必要とされるものとは何かを伺った。

世界に認められた美意識

 2013年6月,富士山の世界文化遺産登録が決まった。事前に国際記念物遺跡会議(イコモス)から「除外すべき」と勧告を受けていた三保松原が構成資産のひとつとして認められたことを受けて,逆転劇と大きく報じられた。当時,文化庁長官として世界遺産委員会に出席していた近藤さんが,その立役者として多数のメディアに取り上げられたことは記憶に新しい。
 「富士山は,ヨーロッパの印象派に大きな影響を与えた広重や北斎の浮世絵をはじめ,日本人を触媒に素晴らしい文化芸術を生み出してきました。その価値が認められたということは,日本人の美意識が世界に認められたということにほかなりません」
 いにしえから脈々と受け継がれてきた日本人特有の自然観や思想を脇に追いやり,経済第一で急成長を遂げた近代日本。その勢いが失われ停滞している現代において,日本人はよりどころを失い,自信をなくして
うつむいている。そんな中,日本人の心の象徴とも言うべき富士山が世界遺産として登録されたことは,自然と共に生きてきた日本人の誇りを回復するきっかけになるのではないかと近藤さんは語る。
 「世界遺産としての正式な登録名は『富士山-信仰の対象と芸術の源泉』です。自然遺産ではなく文化遺産。『顕著な普遍的価値を有する出来事(行事),生きた伝統,思想,信仰,芸術的作品,あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある』という世界遺産条約の下にある登録基準(vi)が登録への足掛かりでした。富士山が日本人に与えている影響という,目に見えにくい,明文化しにくい価値観を委員国の方々に認めてもらうには,やはり武器と戦略が必要です」

人と人との長期的な“つながり”

 近藤さんが外交官時代を含めて築き上げてきた人脈が,ロビー活動の武器となった。近藤さんはまず世界遺産委員会の権威4人と接触し戦略を練り,イコモスの勧告を尊重すべきとする「最も厳しい国」の委員と会食。三保松原と富士山の関係性を説明し,三保松原を構成資産に含めることに対して「反対しない」という言質を取り付けた。
 「幸い,最初に接触した4人も,厳しいと見られていた国の委員も,それぞれ知己の仲でした。あらゆる分野の人と付き合い,普段から貸しを作り,借りを返し,国を超えて人間同士として付き合い,信頼を得ていく。ほとんどムダのように思えるけれども,いざというときに強力な後ろ盾となる。これが外交力です」
 最も厳しい国が態度を軟化させたことで,他国との折衝が格段にラクになったと近藤さん。
 「結局,最後は長期的な人間関係がものを言います。人間関係を長続きさせるには,時間と,手間と,少しのお金が必要です。これは外交に限った話ではなく,一般的な人間関係においても同様ですよね。相手のことを知りもしないのに,お願いだけ押し付けても聞き入れてくれるわけがありません」
 ただし,と近藤さんは言葉をつなぐ。
 「いくら気心知れた仲だと言っても,外国人に“ 目に見えない価値”を理解してもらうのはとても難しいことです。世界遺産は基本的に物的証拠が第一。今後,登録を目指すものについては,その基本をあらためて押さえていくべきでしょうね」

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近藤誠一
1946年神奈川県逗子市に生まれる。1971年東京大学教養学部教養学科イギリス科を卒業。同年東大大学院法学政治学研究科に進むが,在籍中に外務公務員採用上級試験に合格。1972年大学院を中退し外務省に入省。1973~1975年イギリス・オックスフォード大学に留学。広報文化交流部長を経て,2006~2008年ユネスコ日本政府代表部特命全権大使。2008年9月より駐デンマーク特命全権大使。2010年7月30日,文化庁長官に就任。2013年7月8日に退官。著書に『ミネルヴァのふくろうと明日の日本』『外交官のア・ラ・カルト』など。

日本、日本人とは

何故、声高に日本が語られるの

 安部総理は、「我が国の平和と安全のため」「我が国の経済の発展のため」「我が国の国際競争力のため」に、「長い歴史と固有の文化を持つ日本国」「今や国際社会に重要な地位を占めている我が国」の固有性を宣揚し、「美しい国」日本を何かにつけ声高に説いています。ここに宣揚される「日本人」「日本国」とは何なのでしょうか。施政方針は、世界に冠たる日本になるべきだとのとの強い決意を宣言していますものの、日本について何一つ具体的に語っていません。しかしその思いは、日本国憲法が占領軍によってつくられたものとなし、天皇を元首と戴く国になるべきだ、との主張を読み解けば、「美しい国」日本の原像を大日本帝国憲法下の日本に求めているようです。
 ここで問われるべきは現在語り説かれている「日本」「日本国」とは何なのかを検証する作業です。国家は、その存在をおびやかす他者、他国を意識したとき、自己の存在を強く主張することで国民をとりこもうとします。その風潮は、ナショナリズムを増幅させ、過剰なまでに日本人であること、世界に向かい日本の優位性を説くことをうながします。このような時代の気分に流される前に、日本とか、日本人とは如何なるものとみられていたかを、他者の眼で読み解き、己の場を確かめることが求められているのではないでしょうか。

アレシャンドゥロ・ヴァリニャーノがとらえた日本

 そこで16世紀、西洋世界と出会ったとき、日本、日本人はどのように紹介されたかを、アレシャンドゥロ・ヴァリニャーノの眼がとらえた世界から学ぶこととします。ヴァリニャーノは、イエズス会の東アジア巡察師として、その巡察区域でもっとも遠隔の地日本に1579年7月上陸、1582年2月までの2年余、日本の布教状況を巡察しました。この巡察の成果は、在日イエズス会員に日本社会へ順応した布教をうながし、16世紀を「キリシタンの時代」といわれるような状況をもたらすこととなりました。
 この巡察報告書は、1583年10月28日付けで、「日本諸事要録」として提出されました。その第1章は、「日本の風習、性格、その他の記述」として、日本の国の在り方、その国民性等々について紹介したものです。そこでは、冒頭に「日本は66カ国に分かれた多数の島嶼から成る地方」と紹介し、そこの住民と国土を次のように述べています。

 人々はいずれも色白く、きわめて礼儀正しい。一般庶民や労働者でもその社会では驚嘆すべき礼節をもって上品に育てられ、あたかも宮廷の使用人のように見受けられる。この点においては、東洋の他の諸民族のみならず、我等ヨーロッパ人よりも優れている。
 国民は有能で、秀でた理解力を有し、子供達は我等の学問や規律をすべてよく学びとり、ヨーロッパの子供達よりも、はるかに容易に、かつ短期間に我等の言葉で読み書きすることを覚える。また下層の人々の間にも、我等ヨーロッパ人の間に見受けられる粗暴や無能力ということがなく、一般にみな優れた理解力を有し、上品に育てられ、仕事に熟達している。
 国土は、ある地方では彼等の主食である米を産し、また麦もとれるが、他の地方は不毛の山岳地帯となっている。一般的に言って日本の不毛と貧困さは東洋全域で最もはなはだしい。というのは、ポルトガル人が支那から彼等のもとに齎し、彼等が衣類として用いる絹のほかには、ほとんど商品らしいものは何もないからである。牧畜も行なわれず、土地を利用するなんらの産業もなく、彼等の生活を保つ僅かの米があるのみである。したがって一般には庶民も貴族もきわめて貧困である。ただし彼等の間では、貧困は恥辱とは考えられていないし、ある場合には、彼等は貧しくとも清潔にして鄭重に待遇されるので、貧困は他人の目につかないのである。貴人は大いに尊敬され、一般にはその身分と地位に従って多数の従者を伴っている。
 日本人の家屋は、板や藁で覆われた木造で、はなはだ清潔でゆとりがあり、技術は精巧である。屋内にはどこもコルクのような畳が敷かれているので、きわめて清潔であり、調和が保たれている。
 日本人は、全世界で最も面目と名誉を重んずる国民であると思われる。すなわち、彼等は侮蔑的な言辞は言うまでもなく、怒りを含んだ言葉を堪えることができない。したがって、もっとも下級の職人や農夫と語る時でも我等は礼節を尽くさねばならない。さもなくば、彼等はその無礼な言葉を堪え忍ぶことができず、その職から得られる収入にもかかわらず、その職を放棄するか、さらに不利であっても別の職に就いてしまう。

 生活の貧しさが語られていますが、その貧しさには、衣食住にみられる暮らしのかたちである文化の差異がもたらしたものといえましょう。イエズス会の学校で学ぶ子供たちへの高い評価は後の少年使節派遣につながるものです。ここで感歎をもって語られている礼節と忍耐力は、「感情を表わすことにはなはだ慎み深く、胸中に抱く感情を外部に示さず、憤怒の情を抑制しているので、怒りを発することは稀である」「いかなる者も柔和で忍耐強く、秀でた性格を有するように見えるのであり、この点において、日本人が他の人々より優秀であることは否定し得ない」と、日本人への高い評価につながります。しかし日本人の無表情は、現在でも指摘されているものですが、日本人の「不気味」さとみなされるものにほかなりません。この「美徳」の裏には理解しがたい悪徳がひそんでいました。

「新奇な風俗」とみなされた悪徳

 日本人は、「非常に優れた風習や天性を具有し、それによって、世界のもっとも高尚で思慮があり、良く教育された国民に匹敵しながら、一方悪い面を有し、この点ではそれ以下がないほど悪い」として、下記の諸点が糾弾されています。

1)色欲上の罪に耽ること。なかでも「口にするに堪えない」として、「衆道」などとのいわれた男子の同性愛、男色の営みが公然としていること。
2)主君に対する忠誠心の欠如、「血族や味方同士の間で、数多の殺戮と裏切行為が繰り返される」こと。ここには、下剋上の世がもたらした社会の気風、戦国争乱を生き抜く作法が世の習いとなっていることが読みとれましょう。
3)「偽りの教義」、正しい信仰を身につけていないがために欺瞞と虚構が満ちており、嘘を平然と語り、陰険に偽り装うことを怪しまないこと。嘘も方便とみなす世渡りの作法。
4)性格は、残忍にして、軽々しく人間を殺すこと。ここでは、民家を焼き、民衆を殺戮していく戦乱のならいのみならず、敵とみなせばきり殺すことを当然視し、母親の子殺し等々が言及されています。
5)飲酒、祝祭、饗宴に耽溺することに多くの時間を消費し、幾晩も夜を徹すること。

 ここにあげられた日本人の悪徳は、礼節、忍耐等々と語られている「美徳」の裏にあるもので、現在の日本人も共有していることといえましょう。ここで指摘された残酷な処刑の作法は、現在も中国、韓国から日本の「歴史認識」として問い質されている日本人像に重ねて、読みとられることにもなりましょう。それだけに「美しい国」などという言葉に幻惑されることなく、イエズス会が共有したいと思った世界から日本をとらえなおしたいものです。すでに「ルイス・フロイスが見た日本」(Vol.28Vol.29)で描きましたが、いましばらく日本、日本人とは何かを問い質していくこととします。

参考文献

  • ヴァリニャーノ、松田毅一他訳『日本巡察記』(東洋文庫229) 平凡社 1973年

キューティー&ボクサー

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(C) 2013 EX LION TAMER, INC. All rights reserved.

 ボクシング・ペインティングという現代アートがある。手に絵の具を染み込ませたグローブをはめ、カンバスに叩きつけるように描いていく。ニューヨークに住んで40年になる日本人、ギュウちゃんこと篠原有司男(しのはらうしお)の作品である。すでに年齢は80歳を超えている。映画「キューティー&ボクサー」(ザジフィルムズ、パルコ配給)は、ギュウちゃんと、その妻で、アーティストでもある篠原乃り子の、ニューヨークでの制作ぶりと日常を追いかけたドキュメンタリーである。これが、なかなかにコクがあり、味わい深い。
 ギュウちゃんは、日本で最初にモヒカン刈りをした絵描きだ。東京藝術大学を中退、1969年以降、ニューヨークに住んでいる。乃り子は、1972年、19歳のときに、美術を学ぶためニューヨークに渡る。21歳も年上のギュウちゃんに出会い、結婚。1974年、男の子アレックスを産む。育児に追われ、一時、アートシーンから身を引くが、自らの人生を基にした絵本仕立ての「キューティー・シリーズ」の制作を続けている。

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(C) 2013 EX LION TAMER, INC. All rights reserved.

 ギュウちゃんは、爆発的に売れたりする作家ではない。ボクシング・ペインティングやら、ジャンク品や段ボールで作った前衛的なオブジェ、彫刻の類である。雨漏りのするアトリエには、埃をかぶった作品の山。優雅な暮らしでないことが分かる。家賃や光熱費の1000ドルも、いまは手元にはない。それでも、ギュウちゃんはのんびり。ハッパをかける乃り子を無視して、マイ・ペースを崩さない。乃り子は、ギュウちゃんにお小言や文句を言いながら、ちゃんと日常の暮らしを支え、自らの人生に模した絵本仕立ての「キューティー・シリーズ」の制作に打ち込んでいる。
 食事のシーンが多く、ふたりのやりとりが繰り返し出てくる。乃り子の話し方はきついけれど、細やかな心使いで、ギュウちゃんの面倒を見ている。乃り子にとってのギュウちゃんは、夫ではあるが、同じアート仲間であり、師でもある。つましい暮らしではあるが、なんとも自由な雰囲気に溢れていて、ほほえましい限り。
 グッゲンハイム美術館から、1点購入したいとの話が来て、よろこぶ二人。ただし、これから資金提供者を見つけるとのことらしい。ギュウちゃんは、自らの作品をケースに詰めて、売りに行く。作品の値付けは、ギュウちゃんは3000ドルくらいと控えめだが、乃り子は1万ドルよ、と主張する。それでも、いくつか売れたらしく、ギュウちゃんは、100ドル札を数十枚、持ち帰る。息子のアレックスも絵を描いている。篠原ファミリーの展覧会の話が舞い込む。それぞれが、作品の制作に取りかかる。

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(C) 2013 EX LION TAMER, INC. All rights reserved.

 前衛アーティストのドキュメンタリーというより、外国に住む一組の日本人夫婦のラブ・ストーリーのようで結構である。自由に生きているようではあるが、作品はそう売れる訳ではない。乃り子はまだ若いが、ギュウちゃんは、老いている。さまざまな問題をいつも抱えている。また、映画は、ことさら、この夫婦を賛美しているわけではない。淡々と、日常のスケッチに終始する。
 乃り子の作品「キューティーとブリー」が、たびたび挿入される。これが実にすてきな作品だ。キューティーは、乃り子のあだ名で、ブリーは牛。ギュウちゃんと呼ばれる有司男の「うし」だろう。キューティーとブリーという、一組の男女のそれぞれの思いが、ぶつかりながらも寄り添っている。人と人が信頼しあい、結びつく、確かな証左だろう。
 監督は、まだ若いザッカリー・ハインザーリング。夫妻に魅せられて、約4年、追い続けた労作である。来年のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門のエントリー15作品に選ばれている。最終ノミネート5作品は、来年の1月16日(現地時間)に発表される。たとえ、選に漏れても、秀逸なドキュメンタリーと思う。

2013年12月21日(土)、シネマライズico_linkほか全国ロードショー!

『キューティー&ボクサー』公式Webサイトico_link

監督・撮影・プロデューサー:ザッカリー・ハインザーリング
プロデューサー:リディア・ディーン・ピルチャー、パトリック・バーンズ、シエラ・ペテンジル
エグゼクティブ・プロデューサー:キキ三宅
共同プロデューサー:マーク・スティール、エズラ・エデルマン、キャロライン・ウォーターロー
編集:デヴィッド・ティーグ
作曲:清水靖晃
視覚効果:Art Jail
出演:篠原有司男、篠原乃り子、篠原アレクサンダー空海、富井玲子、アレクサンドラ・モンロー、山谷周平、イーサン・コーエン
アメリカ/2013年/カラー/82分/ビスタサイズ
字幕:桜庭理絵
原題:CUTIE AND THE BOXER
提供:キングレコード、パルコ
配給:ザジフィルムズ、パルコ

持ち方

 学生たちと一緒に食事をする機会がありました。彼女たちの箸の持ち方に驚き、あの持ち方でどうやって食べるのか不思議で、じっと観察していると、「先生、何見てるんですか」と訝しがられたことがありました。
 高校の教員をしていた頃、書道部の合宿で食事ごとに箸の持ち方をチェックし、喧しく言ったことを思い出します。未だにその頃の教え子に会うと、「箸の持ち方まで叱られた」とよく言われます。三泊四日の合宿で、帰りには全員綺麗な持ち方になり、筆の持ち方も皆よくなりました。箸の持ち方と筆や鉛筆の持ち方に共通点が多いからでしょう。
 大学で、毎年「国語概論」という講座の中の書写を担当しています。小学校教諭の免許取得のための必修科目で、書写が国語の領域となっているため、その十五分の三だけ書写が割り当てられているのです。一コマ九十分、三コマの授業で書写の指導ができる能力を身に付けさせるのは到底無理です。何をどうやれというのか、ただ茶を濁しているだけとしか思えません。書写の指導者を養成し、各校に配置するような制度ができればと常々思っていますが、ともあれ「国語概論」での授業は、児童に望ましい姿勢や鉛筆の持ち方と、平仮名の書き方、漢字の基本的な形の取り方を教えられるようにということに絞ってやっています。
 受講生全員の鉛筆の持ち方をチェックし、年々ひどい持ち方の学生が増えているのを実感しています。とんでもない箸の持ち方と似た持ち方で鉛筆を持っている学生が増えているのです。望ましい持ち方の学生は皆無といってよいぐらいです。時間をかけ、一人一人の持ち方を矯正しますが、矯正された持ち方に抵抗のある学生も多くあるものの、すんなり受け入れられ、「書きやすい」「形が取りやすい」という学生もかなりいます。矯正した持ち方がいつまでもつかわかりませんが、教壇に立った時に思い出し、しっかり指導してくれることを願っています。持ち方が良くなければ書きにくく、字も整えにくいはずです。現今の状況は、家庭や学校での箸や鉛筆の持ち方についての指導不足が大きな原因と思います。一旦悪習が身につくと矯正に労力が必要ですが、粘り強い努力により必ず矯正できます。家庭で、学校で、「美文字」をめざし、なるべく小さい時からの「持ち方」指導の徹底を願う昨今です。

開国と明治維新(第6学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

開国と明治維新

2.目 標

 黒船の来航,明治維新,文明開化などについて調べ,日本が廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めていったことを理解できるようにする。

3.評価基準

1.黒船の来航,明治維新,文明開化,大日本帝国憲法の発布などに関心をもち,それらを意欲的に調べることを通して,新しい日本の国づくりに関心を深めようとしている。【関心・意欲・態度】

2.廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことなどを,世の中の出来事や人物の働き,人々の暮らしなどを通して考え,表現している。【思考・判断・表現】

3.黒船の来航,明治維新,文明開化,大日本帝国憲法の発布などについて各種の基礎的資料を効果的に読み取ったりまとめたりすることができる。【観察・資料活用の技能】

4.廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことを理解している。【知識・理解】

4.本単元の指導にあたって

①児童の実態について
 児童は,概ね歴史学習に興味をもち,授業以外でも歴史に関する資料を見たり,歴史上の人物の伝記等の図書資料を読んだりしている。授業においても,歴史的事象の起きた要因や社会に与えた影響に興味をもち,教科書や資料集等を効果的に活用して調べ活動を行う等,主体的に問題解決を図ろうとする態度が身に付きつつある。しかしながら,資料から何を見つけてよいか分からなかったり,語句の意味が分からないまま学習を進めてしまったりして,客観的事実を正確に捉えることができない児童も少なからずいる。また,複数の資料を見比べることが難しく,歴史的事象や歴史上の人物との関連を見いだしにくくなっている児童も多い。そのため,歴史的事象の起きた要因や社会に与えた影響を類推しにくくなることも見られる。表現力に関わっては,自分の考えをもつことは少しずつできるようになってきたが,調べた内容を根拠にして自分の考えを分かりやすく表現できる児童が少ない。友だちの考えと自分の考えを比べたり話し合いをしたりすることも苦手としている児童が多い。

②教材について
 本単元は,学習指導要領第6学年2内容(1)キ「黒船の来航,明治維新,文明開化などについて調べ,廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことが分かること。」に基づいて構成している。本単元で扱う時代は,江戸幕府が倒れたことにより,武士による政治が終わり,明治天皇を中心にした政治の仕組みがつくられた時代である。廃藩置県や四民平等などの諸改革を始めとして,様々な政治や社会の仕組みが整えられた。また,欧米から様々な文化が取り入れられたことにより,人々の生活が大きく変化した時代でもある。それらの諸改革や新しい国づくりに尽くした人物の業績や考え方,新しい文化などを調べることを通して,我が国は,天皇を中心とした諸改革を行い,欧米から文化を取り入れつつ近代化を進めたことが分かるようにすることがねらいである。

③指導について
 本中単元では,調べたことをもとに自分の考えをもち,相手に分かりやすく表現したり伝えたりすることのできる児童を育てることを重視したい。具体的には,2枚の写真を比べたり変化の分かりやすい具体物を掲示したりすることにより,児童から気づきや疑問をより多く引き出し,学習問題を追及しようとする意欲を高めるようにする。また,教科書や資料集の中から必要な情報を探し,ノートやワークシートに考えを端的にまとめることができるように机間巡視しながら個に応じた支援をしていく。
 本時の学習では,まず「つかむ」段階で文明開化によって食べ始めたアンパンや牛肉等の具体物を提示し,本時の学習への意欲につなげていく。「調べる」段階では,明治時代の日本橋周辺の絵図と江戸時代後期の絵図が載ったワークシートを配布し,グループで江戸時代と明治時代の変化や新しく始まったことを調べ,グループごとにノートや黒板に書かせ発表させていく。各班の発表が終わった後,班ごとに検証していく。その後,文明開化の「衣食住」などが整理された虫食いの年表を拡大したものを掲示し,虫食い部分をクイズ形式で考えさせることによって,より多くの技術や文化が発達したことに気づかせていく。「考える」段階では,調べたことをもとにして,「なぜ,明治政府は文明開化を急いだのか?」という学習問題を設定し,一人一人に追及させたい。その際,児童の考えが表出しやすいように,吹き出し式のワークシートを用意し,そこに自分なりの考えを書かせる。また,自分の考えをもちにくい児童については,既習事項を想起させることにより,自分なりの考えをもてるように支援していく。その後,意見交流・集団思考を行うことにより,「文明開化の目的は,欧米列強に追いつき,日本への進出を防ぐ」ことであったことに気づくことができるようにする。「ひろめる」段階では,文明開化で急速に発達した世の中での問題点を考えさせていきたい。そこで,本時の「考える」段階までを振り返り問題点を見つけて良いことばかりではないということを理解し,まとめを自分の言葉でノートに書かせたい。

5.単元の指導計画

学習のねらい

子どもの活動と内容

評価規準の具体例

1

世の中が大きく変わるきっかけになった黒船来航に関心をもち,鎖国を終わらせざるをえなかったことについて調べることができる。

・黒船が来航した時の様子について話し合う。
・黒船の来航以降の出来事について調べる。
・開国が日本に与えた影響について考える。

・黒船の来航について調べ,開国が日本に及ぼした影響について関心をもつことができたか。
(関心・意欲・態度)

2

勝海舟と江戸幕府の終わり

・大政奉還の様子について話し合う。
・幕府が倒れるまでの動きについて調べる。
・江戸幕府が倒れた原因について考える。

・幕府が倒れるまでの動きについて調べ,鎌倉時代から続いた武士の時代が終わったことを理解できたか。
(知識・理解)

3

大久保利通と明治維新

・新政府の役人について話し合う。
・明治政府の取り組みについて調べる。
・明治政府がめざした国づくりについて考える。

・明治政府の取り組みについて調べ,天皇を中心とした新しい政治の仕組みを作ろうとしたことを理解できたか。
(知識・理解)

4

四民平等と解放令

・明治時代の身分別の人口の割合について話し合う。
・四民平等と解放令について調べる。
・四民平等が人々に与えた影響について考える。

・四民平等と解放令について調べ,新しい身分制度が確立したことを知るとともに,差別が根強く残った原因を考えることができたか。
(思考・判断・表現)

5

富国強兵と人々のくらし

・徴兵検査の様子について話し合う。
・明治政府が行った政策について調べる。
・明治政府の政治のねらいについて考える。

・明治政府の具体的政策について調べ,学制・徴兵令・地租改正などを行ったねらいを考えることができたか。
(思考・判断・表現)

6

福沢諭吉について話し合う

・福沢諭吉の業績について調べる。
・福沢諭吉の新しい世の中への願いについて考える。

・福沢諭吉の業績について調べ,諭吉の新しい世の中への願いに関心をもつことができたか。
(関心・意欲・態度)

7

幕末の江戸の様子と明治初期の東京の様子について話し合う。

・明治初期に欧米から取り入れられた文化や制度について調べる。
・文明開化が人々の生活に与えた影響について考える。

・欧米諸国から取り入れた文化や制度について調べ,文明開化が人々に与えた影響についてとらえることができたか。
(観察・資料活用の技能)

6.本時の学習

①目 標
 欧米の文化や技術,制度が取り入れられた文明開化について調べ,明治政府がそれらの導入を推し進めたわけについて考えることができるようにする。

②学習展開

学習活動・学習内容

指導上の留意点

資料等



○文明開化によって始まった新しい食文化のパンや牛肉の具体物を提示する
・食文化の変化を実感する。

○明治になってどのような制度や文化が生まれたのか関心をもつことができるようにする。
○食文化が変化したことをきっかけに文明開化に興味をもつことができるようにする。

・アンパンや牛肉などの具体物

江戸時代と明治時代の人々のくらしの違いについて調べよう。

調

○明治時代初期に欧米から取り入れられた文化や制度について調べる。
<文化,技術>
・帽子 ・洋服 ・くつ
・パン ・牛乳 ・牛肉
・ガス燈 ・煉瓦 ・印刷
・自転車 ・人力車 ・鉄道
・乗合馬車
<制度>
・電信 ・電話 ・郵便
・学校 ・太陽暦

○明治初期の日本橋の様子と江戸時代の様子を表した資料を配布し,江戸時代の人々の様子と違うところを読み取ることを通して,新しい文化や技術,制度が多種多様であったことをとらえられるようにする。
○人々の生活を取り巻くものが多岐にわたって新しくなったことを「文明開化」と呼ぶことを補説する

・ワークシート①(比較絵図:省略)
・年表(虫食い式になったもの)



○10数年の期間に新しい文化や制度,技術を取り入れていったわけを考える。
・欧米への対抗
・富国強兵

・ワークシート②(大久保利通の吹き出し)

(期待する児童の考え)

・外国よりも遅れてしまっていることに気づいて,早く追いつかなければとあせっていたのではないかな。
・このままでは日本は外国に攻められると思って,外国に対抗しようとしたと思う。

○調べた内容をもとに,わずかな期間でたくさんの欧米の制度や技術,生活様式などを取り入れたことから,欧米諸国に早く追いつこうとした政府のねらいをとらえるようにする。




○文明開化が人々の生活に与えた問題について話し合う。
・急激な変化へのとまどい
・都市部中心の欧米化
・古いものに対する軽視

○欧米諸国の文化が積極的に取り入れられたのは一部の都市のみで,農村部などにはなかなか広まらなかったことや,古いものに対する軽視があったことを補説する。

文明開化年表

文明開化年表

ワークシート②

ワークシート②

「わたしのくつ」(第5学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.題材名

「わたしのくつ」

2.目 標

 身近であるくつを描くことで、材料の特徴をとらえ、自分の思いを表現していく楽しさを味わうことができる。

3.準備(材料・用具)

教師:八つ切り画用紙・台紙用色画用紙・ハンコ用発泡スチロール板・付箋
児童:油性ペン(黒)・水彩絵の具・習字道具・はさみ・のり

4.評価基準

造形への関心・意欲・態度
〇テーマに向かい、自分のイメージをもちながら、すすんで活動に取り組んでいる。

発想や構想の能力
〇自分の思いが伝わるように、形や色を工夫しながら表現方法を構想している。

創造的な技能
〇自分のイメージした絵になるように、線の太さや色の濃さ、かき方を工夫している。

鑑賞の能力
〇自分や友だちの作品を見合い、作品にこめられた思いや表現方法のよさを感じ取ったりすることができる。

5.本題材の指導にあたって

 線描は、対象をよく見て、粘り強く、ていねいにかきすすめなければならない。そのため、子どもが愛着を感じ、大切にしているもの、または、その思いに気付かせたいものをかかせたいと考え、靴を対象に選んだ。
 八つ切り画用紙にし、実際の大きさより少し大きめを目指してかかせるようにした。はき口からつま先へとかかせることで、のびやかにかきすすめることができるようにする。また、縫い目や、素材、汚れに着目させたり、同じ色でも場所や光によって見え方がちがうことに気付かせたりすることで、表現の工夫を促すようにもしたい。線の強さや長さを工夫することで、線描の楽しさを味わわせたい。

6.題材の指導計画(全7時間)

学習活動の流れ

指導上の留意点・評価

1
2

〇くつを線描する。
・自分のくつを机上に置き、形、色、つくり、汚れなどをよく観察する。
・くつの向きを決める。
・はき口、甲、つま先の順でかきすすめる。
・縫い目など、細かく観察してかく。

・色々な向きからくつを見て、自分のかきたい向きを見つけるようにする。
・小さな絵にならないよう、どんな大きさにかくかイメージさせておく。

3
4

〇水彩絵の具でくつの色をぬる。
・明るい色から塗り始める。
・点々塗りで塗り進める。

・水を十分に加え、薄く塗り重ねるようにする。
・別の色を塗り重ねる場合、乾いてから塗るようにする。

5
6

〇約1cmを残し、くつのまわりを切り取り、台紙に貼る。
〇くつの詩をつくって、空いたところに墨汁で書く。
〇ハンコを押して完成させる。

・完成図をイメージさせて、台紙に貼る場所を決めるようにする。
・詩は、くつを引き立て、くつへの愛着を深めるようなものになるよう助言する。

7

〇相互鑑賞をする。
・友だちの作品のよさを見つけ、付箋に感想を書いて貼る。

・作品を掲示する。
・全員に付箋が貼られるよう配慮する。

7.本時の学習(1~2/7時間)

①目 標
・自分の思いに対するイメージをもち、意欲的に活動に取り組む。
・しっかりとくつを見つめ、表現を工夫しながら線描する。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫や教師の支援・評価の留意点

1.学習課題を確認する。

「わたしのくつ」の線描をしよう。

2.机上にくつを置き、見る。
かく向きを決める。
形、色、つくり、汚れなど、よく観察する。

・色々な向きからくつを見て、自分のかきたい向きを見つけるようにする。

3.くつの線描をする。
・はき口
・甲
・つま先
・外周
・かかと
・縫い目

・小さな絵にならないよう、どんな大きさに描くかイメージさせるため、鉛筆で薄く外周をかくようにする。
・でき上がった作品から紹介し、いいところを取り入れられるようにする。

4.次時の学習内容を知る。

水彩絵の具で「わたしのくつ」を塗ろう。

生徒作品1

生徒作品1

生徒作品2

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生徒作品3

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生徒作品4

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生徒作品5

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生徒作品6

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生徒作品7

生徒作品7

生徒作品8

ブリングリング

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(C)2013 Somewhere Else, LLC. All Rights Reserved

 2008年から2009年にかけて、ロサンゼルス郊外のセレブたちの住む家に侵入、ブランド品や宝石、現金などを盗む事件が、実際にあった。盗みに入ったのは、まだ十代の若い子たち。被害にあったのは、パリス・ヒルトン、リンジー・ローハン、オーランド・ブルームといった、ハリウッドの映画スターや有名なモデルである。この事件を取材した女性ジャーナリストのナンシー・ジョー・セールズが、雑誌「ヴァニティ・フェア」に、「容疑者たちはルブタンを履いていた」という記事を書き、「ブリングリング こうして僕たちはハリウッドセレブから300万ドル盗んだ」(ハヤカワ文庫・高橋璃子訳)という本を書く。この記事や本から材を得て、ソフィア・コッポラが脚本を書き、映画にする。このほど公開される「ブリングリング」(アークエンタテインメント、東北新社配給)だ。
 事件そのものの描写もさることながら、若い人たちの生態を巧みに活写し、話の展開がスピーディ、たいへんに面白い。背景となるアメリカ西海岸、ロサンゼルスの、若い人たちをとりまく環境、状況が、くっきりと浮かびあがってくる。監督のソフィア・コッポラは、「ゴッドファーザー」の3作や、「地獄の黙示録」を監督したフランシス・フォード・コッポラの娘で、やはりセレブの一人である。初監督作は「ヴァージン・スーサイズ」で、良家の5人姉妹の自殺事件をめぐる話。また「マリー・アントワネット」は、当時の最高のセレブであったマリー・アントワネットをめぐるドラマ。さらに、2004年、アカデミー賞の脚本賞を受賞した「ロスト・イン・トランスレーション」では、著名なハリウッドスターの悩み、苦しみに焦点を当てた。さらに、2010年の「サムウェア」では、ハリウッド俳優が豪華ホテルで暮らすという、スターの孤独と虚無を描いた。このような映画を撮り続けているソフィア・コッポラだから、憧れのセレブたちの家に侵入した若者たちを描くのも当然のように思えてくる。

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(C)2013 Somewhere Else, LLC. All Rights Reserved

 侵入したのは、ニッキー(エマ・ワトソン)、レベッカ(ケイティ・チャン)、クロエ(クレア・ジュリアン)、サム(タイッサ・ファーミガ)という4人の女の子。男の子はマーク(イズラエル・ブルサール)である。いずれも、悪事を働いているという自覚はない。家庭は裕福ではないけれど、そう貧乏ではない。学校に行かず、家で教育を受けているニッキーは、妹といっしょに母から、ロンダ・バーンの書いた「ザ・シークレット」に出てくる“引き寄せの法則”を学んでいる。マークは、学校を退学し、自宅学習を続けていて、やっと新しい学校に通い始めたばかり。レベッカがマークに声をかけ、ファッションやブランド品について、おしゃべりを続ける。
 ある夜、レベッカは、留めてある車のドアを開け、盗みを働く。セレブたちの車は、かなりの確率でドアが開いていて、現金などが置かれているらしい。

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(C)2013 Somewhere Else, LLC. All Rights Reserved

 ナイトクラブで知り合い、仲良しになった仲間が5人になる。マークとレベッカは、インターネットで、パリス・ヒルトンの留守を知る。自宅の場所もインターネットで分かる。一度、侵入に成功した後、5人が揃って、パリス・ヒルトンの留守宅に侵入する。洋服、靴、宝石などなど、ブランド品がズラリ。味をしめた5人は、ミーガン・フォックスや、オーランド・ブルームなどの予定を調べ、その留守宅に侵入する。リンジー・ローハン宅に侵入した際の、監視カメラの映像が、警察に届けられる。捜査の手が伸び始める。
 凶悪な犯罪ではないし、悪気はないとは思う。しかし、罪は罪、当然、裁判になる。ところが、若い容疑者たちは、罪の意識が希薄。ニッキーは、事件後、「今回の件は、学びの場と思う。人間として成長し、将来は国のリーダーになりたい」と嘯いたりする。
 まだ数年前の話である。ロサンゼルス郊外の状況ではあるが、若い子たちを取り巻く家庭環境や、教育の在りようがよく分かる。テレビやインターネットの情報が錯綜し、いろんなメディアに、セレブが露出し続けている。セレブ自身がパパラッチを煽り、自らをさらに売り込むこともあるようだ。若い子たちは、おバカな金持ちの有名人から、何を盗んだって大したことではない、と考える。盗まれたセレブたちは、大量の盗難に合わなければ気がつかないらしい。
 映画を見て、さまざま思いがよぎる。若い子たちに、罪はないのかもしれない。セレブ宅への侵入盗難事件の主犯は、若い子たちではなく、彼らを取り巻く周辺の環境や、大人たちの作った社会ではないか、と。

2013年12月14日(土)より、シネクイントico_link新宿シネマカリテico_linkシネ・リーブル池袋ico_link丸の内TOEIico_linkほか全国ロードショー!

■『ブリングリング』

監督・脚本:ソフィア・コッポラ
衣装:ステイシー・バタット
音楽スーパーバイザー:ブライアン・レイツェル
編集:サラ・フラック
プロダクション・デザイン:アン・ロス
撮影監督:ハリス・サヴィデス、クリストファー・ブローヴェルト
出演:エマ・ワトソン、ケイティ・チャン、クレア・ジュリアン、イズラエル・ブルサール、タイッサ・ファーミガ、レスリー・マン
製作年:2013年/上映時間:90分/製作国:アメリカ、フランス、イギリス、日本、ドイツ合作
R15+ 原題:The Bling Ring
配給:アークエンタテインメント、東北新社

算数・数学科授業における数学的な言語活動

1.何のための言語活動の充実か

 平成20年(2008年)改訂告示の小学校・中学校学習指導要領では,すべての教科教育を含む学校教育において,言語活動の充実が求められています。何のための言語活動の充実でしょうか。それには次のような2つのねらいがあると言われています(中央教育審議会,2008)。
 第一のねらいは,我が国の子どもたちにとって課題となっている知識・技能の活用などの思考力・判断力・表現力等をはぐくむためです。第二のねらいは,自分に自信がもてず,自らの将来や人間関係に不安を抱えている子どもたちに,他者,社会,自然・環境とのかかわりの中で,これらと共に生きる自分への自信をもたせるためです。
 第一は「知的基盤としての言語活動」,第二は「コミュニケーションや感性・情緒の基盤としての言語活動」と特徴づけられます。

(1)知的基盤としての言語活動
 第一の「知的基盤としての言語活動」の充実は,知識・技能の活用など思考力・判断力・表現力等をはぐくむためであり,各教科における教育内容の改善を図る際にこのことに留意する必要があるとの方針が示されたのです。中央教育審議会(2008)の「答申」では,各教科における思考力・判断力・表現力等の育成にとって不可欠な学習活動として次の6つのことが例示されました。

①体験から感じ取ったことを表現する
②事実を正確に理解し伝達する
③概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活用したりする
④情報を分析・評価し,論述する
⑤課題について,構想を立て実践し,評価・改善する
⑥互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる

 これら6つの学習活動の基盤となるのは,数式などを含む広い意味での言語です。したがって,知的基盤としての言語活動は,国語科だけの教育内容ではなく,すべての教科で取り組まれるべきものです。こうした認識のもとで,中央教育審議会(2008)の「答申」では,「学習指導要領上,各教科の教育内容として,これらの記録,要約,論述といった学習活動に取り組む必要があることを明示すべきと考える」というように,各教科における教育内容の改善への提言がなされました。

(2)コミュニケーションや感性・情緒の基盤としての言語活動
 第二の「コミュニケーションや感性・情緒の基盤としての言語活動」の充実は,「自分や他者の感情や思いを表現したり,受け止めたりする語彙や表現力が乏しいことが,他者とのコミュニケーションがとれなかったり,他者との関係において容易にキレてしまう一因になっており,これらについての指導の充実が必要である」(中央教育審議会,2008)との認識によるものです。平成20年(2008年)改訂告示の小学校・中学校学習指導要領では,各教科や道徳,総合的な学習の時間,特別活動等において,こうしたコミュニケーションや感性・情緒の基盤としての言語活動に配慮すべきことが明記されています。

(3)言語活動の充実のための教育課程の編成と言語環境の整備
 こうした2つの大きなねらいをもった言語活動の充実を図る上で,それに相応しい教育課程を編成することは不可欠です。
 そのためには,まず,教師は言語活動の重要性を認識し,各教科の目標や特質及び児童生徒の発達段階に応じて,知的基盤としての言語活動を各教科の指導計画に教育内容として位置づけ,その指導に当たってはコミュニケーションや感性・情緒の基盤としての言語活動に配慮する必要があります。そして,教科間の連携や道徳,総合的な学習の時間,特別活動等の学校教育全般にわたって,すべての教師が協力し,言語活動の充実を図ることが重要です。
 そのためにも,中央教育審議会(2008)の「答申」において言及されているように,学校内における言語活動を充実するための条件や言語環境を整備する必要があります。たとえば,学習活動において語彙を豊かにすること,言語に関する能力を高めていくための教材開発や指導方法の工夫,読書活動の推進,学校図書館の活用,メディア環境の整備及び情報モラルやメディアリテラシー(様々なメディアの働きを理解し,適切に利用する能力)の育成など,言語活動を充実するための言語環境の整備に,学校が中心となって家庭や地域と連携して取り組むことが求められます(小山,2008)。
 このように,言語活動の充実は,学校教育全般ですべての教師が協力してはじめて可能になるということを共有することが大切です。

2.算数・数学的活動と言語活動

 それでは,算数・数学教育において言語活動の充実を図るためには,いかにすればよいでしょうか。中央教育審議会(2008)の「答申」では,上述のように,算数・数学科の目標や特質及び児童生徒の発達段階に応じて,知的基盤としての言語活動を算数・数学科の指導計画に教育内容として位置づけることが求められています。こうした要求は,平成20年(2008年)改訂告示の小学校・中学校学習指導要領では,算数科における「算数的活動」,中学校数学科における「数学的活動」として教育課程の編成において具体化されていると言ってよいと思います。

(1)算数・数学的活動としての具体化
 小学校算数科における算数的活動とは,「児童が目的意識をもって主体的に取り組む算数にかかわりのある様々な活動」のことで,次のような3つの活動が例示されています(文部科学省,2008a)。

ア.作業的・体験的な活動など身体を使ったり,具体物を用いたりする活動
イ.算数に関する課題について考えたり,算数の知識をもとに発展的・応用的に考えたりする活動
ウ.考えたことなどを表現したり,説明したりする活動

 一方,中学校数学科における数学的活動とは,「生徒が目的意識をもって主体的に取り組む数学にかかわりのある様々な営み」と規定されており,指導内容としての〔数学的活動〕として次の3つの活動が例示されています(文部科学省,2008b)。

ア.数や図形の性質などを見いだす活動
イ.数学を利用する活動
ウ.数学的に説明し伝え合う活動

 こうした指導内容としての算数的活動や数学的活動は,算数・数学教育の目標である児童生徒の思考力や表現力の育成をねらったものですが,算数・数学科における言語活動の充実はそれぞれの「ウ.考えたことなどを表現したり,説明したりする活動」,「ウ.数学的に説明し伝え合う活動」として取り込まれていると考えられます。

(2)思考・表現とコミュニケーションの関係及び言語の役割
 一般に,言語は思考の道具であり,表現の手段である,と言われることがあります。図1は,複数の子どもたちの間でのコミュニケーションを単純化して,2人の子どもA,Bが言語を用いて考え表現し(縦の関係),言語を用いて説明し伝え合う(横の関係)様子を表したものです。
 算数・数学教育における言語には,言葉,数,式,図,表,グラフがあります。したがって,算数・数学教育において言語活動の充実を図るためには,これらの数学的言語を用いて考え表現したり,説明し伝え合ったりするなどの学習活動を,算数・数学科授業に積極的に取り入れることが重要であると考えます。

図1 思考・表現とコミュニーションの関係及び言語の役割

図1 思考・表現とコミュニーションの関係及び言語の役割

3.授業における数学的な言語活動

 その際に留意したいことは,以下の2点です。第一は,個々の子どもが算数・数学の問題を解決する際にも当然のことながら重視すべき言語活動があるということです。図1の「縦の関係」に表されているように,個々の子どもは既有の知識・技能や数学的な考え方,経験を活用して問題を解決しようとします。そのとき,数学的言語を用いて考え,それを表現し,それを見直すことで考えを進めたり修正したりして表現していくという一連の言語活動が見られます。
 第二は,図1の「横の関係」に表されているように,子どもたちが各自の考えを説明し伝え合ったりするという言語活動についてです。子どもが自分で算数・数学の問題を解決する際の表現は自分自身にわかればよいとも言えますが,相手に考えを説明し伝え合う際には,相手意識をもって自分の考えが伝わるように,わかりやすく筋道立てて表現しなければなりません。また,相手から伝えられた表現に耳を傾けたり注意して見たりして,それを解釈して相手の考えを読み取ろうとする姿勢が大切です。したがって,その指導に当たってはコミュニケーションや感性・情緒の基盤としての言語活動にも配慮する必要があります。
 最近は言語活動の充実ということで,算数・数学科授業においてペア・トークや小集団,教室全体での話し合いなどのコミュニケーション活動が多く取り入れられるようになりました。このことは決して悪いことではありません。しかし,それが図1の〈表層〉での「表現」のやり取りだけに終始しないようにしましょう。数学的な言語活動としてのコミュニケーションの真価は,図1の〈表層〉での数学的な「表現」のやり取りを通して,〈深層〉での数学的な「思考」を共有し,広げたり深めたりすることにあるからです。

【参考文献】

  • 小山正孝 (2008),「言語活動の充実」,大杉昭英編著『中学校新学習指導要領の展開 総則編』,明治図書,pp.31-34.
  • 小山正孝 (2009),「数学的な思考力・表現力を高める算数教育」,広島県小学校教育研究会算数部会会誌『算数』,第53巻,pp.2-5.
  • 小山正孝 (2010),『算数教育における数学的理解の過程モデルの研究』,聖文新社.
  • 中央教育審議会(2008),「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改訂について」,文部科学省ホームページ.
  • 文部科学省 (2008a),『小学校学習指導要領解説 算数編』,東洋館出版.
  • 文部科学省 (2008b),『中学校学習指導要領解説 数学編』,教育出版.

「道徳の時間」って、正しい行動を教えるんじゃないんですか?

今までなかった「どうとくマンガ」!
「道徳教育」についてよく抱かれる疑問を取り上げ、マンガでわかりやすく解説します!
第1回のテーマは、「行動」と「心の内面」についてです。

【登場人物】

徳田一道(とくだかずみち)

徳田一道
(とくだかずみち)

主人公。新任の中学校教師。悩んでいる。

モモ

モモ

なぜか一道に「道徳」について教えてくれる妖精(?)

ルル

ルル

モモと一緒に「道徳」について教えてくれる妖精(?)

小学校社会科とICTの活用

1.知識基盤社会に生きる子どもたち

 知識基盤社会,情報化社会へ対応する人材の育成は学習指導要領や教育の情報化ビジョンでも述べられているところである。知識基盤社会に生きる子どもたちには,豊富な知識と柔軟な思考力,確かな情報活用能力に基づき,主体的にコミュニケーション,コラボレーションしながら新しい知や価値を創造し,平和・共存する社会をともに創っていってほしいと願う。その目的を達成するためのツールとして,学習者も指導者もICTを使いこなすことが必須であると考える。

2.若楠小学校のICT環境

 本校は,総務省「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」の教育情報化事業の採択校となっており,4学年以上の全児童に1人1台のタブレット端末と,4学年以上の全教室に電子黒板,指導者用デジタル教科書が整備されている。教師が児童に分かりやすい学びを提供するツールとして,児童が資料などの情報を活用して協働的に学び,思考力や表現力を向上させるツールとして,ICT活用を試みている。

3.授業で教師が活用

電子黒板でグラフを説明

電子黒板でグラフを説明

 教師が電子黒板を活用し,図表や写真,動画等の資料を提示している。授業の導入場面で学習問題を導き出し児童の解決意欲を喚起したり,分かりやすく説明し知識を確実に定着させたりするツールとして日常的に活用している。また,指導者用デジタル教科書やネット上の資料を大きく映し出しマーキングしながら説明したり,実際に体験することが困難な事象を動画などで児童に間接体験させたりしており,これらは分かりやすい学びを提供するうえで有効であると考える。

4.児童が活用

 「小学校学習指導要領解説社会編第4章 指導計画の作成と内容の取扱い」には,問題解決をする際,コンピュータを活用して,情報を検索・収集する能力,分析・選択する能力,検討・吟味する能力,加工・整理する能力などを習得することができると述べてある。また,コンピュータを活用して,調べたことや考えたことを分かりやすく発信・表現する能力を育てることにも言及している。つまり,情報を読み解き,自分の考えをもち表現する活動を通して,情報活用能力も育むことができる。これらは,ICTを児童が活用することで身につく力である。これらの能力をどのように育てているのか,実践例を元に紹介する。

タブレット端末の画像から 情報を読み取る

タブレット端末の画像から情報を読み取る

動画を視聴して情報を読み取る

動画を視聴して情報を読み取る

5. 実践事例

「情報化した社会とわたしたちの生活」(5年生 全5時間 2013年3月12日 若楠小学校5年1組にて実施)

①指導計画と本時の展開(全5時間)
(1)生活と情報とのかかわりについて話し合い,学習問題をもつ。
(2)情報化により生活がどう便利になったか話し合う。
(3)情報化の進展に関わる様々な問題について調べる。※興味を持った問題についてさらに調べ,その解決策を考える。(家庭学習)
(4)3人グループで話し合い,よりよい情報活用について考え発表する。(本時)
(5)下級生に伝える掲示物を作成する。

②本時の指導(表1参照)

表1 本時案

表1 本時案

 本時はまず,前時で興味をもった情報化に伴う問題点(デジタル万引き,電話番号占い,端末の紛失,なりすまし,ネットいじめ,フィッシング,ネット上の誹謗中傷)とその解決策について,休み時間や放課後の自主学習,家庭学習で調べ,自分の考えをもったうえで,同じ課題について考えてきた3人グループで話し合いを行った。そして,グループの考えをまとめた。表現する道具として,3人で1台の端末を活用して図表や言葉を使いながらまとめた。児童は,必要に応じてその場でネット検索をして考えを検討したり,友達の考えに質問をしたりしながらグループの考えを構築していた。みんなで一つの画面をのぞき込みながら,自由な雰囲気で活発なコミュニケーションが成立していると感じた。次に,発表ツールとして電子黒板を活用した。端末の画面を電子黒板に映しながら発表し,考えを学級全体で共有化した。友達の発表を聞いて初めて認識したこともあったようで,「ゲームや占いなど特に何も考えずに使っていたけれど,これからは個人情報に気をつける」「ネット上は,直接話をするのと違って一気に情報が広まってしまうので,とてもこわい。写真のアップロードは相手の許可を取ることと,人を傷つけるような言葉を書き込まないことを心がける」等の感想を述べていた。

グループの考えを端末にまとめる

グループの考えを端末にまとめる

グループの考えを全体で共有する

グループの考えを全体で共有する

6.おわりに

 知識基盤社会に生きるうえで役立つ思考力,表現力,コミュニケーション能力を育むためには,学習者主体の学びを授業の中に組み込んでいくことが重要であると考える。特に社会科は身近な社会問題を取り扱うことが多いので,みんなで知恵を出し合い,話し合いながら主体的に問題を解決していく学習形態が合っている。その中で,学習者がICTをツールとして使いこなすことに大きな可能性を感じている。公民的資質の基礎を養うために,有効な活用法を今後も探っていきたい。