「キラキラのおくりものバッグ」(第4学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.題材名

「キラキラのおくりものバッグ」

2.目 標

・キラキラのおくりものバッグをプレゼントしたい人をイメージし、身の回りにある材料を使って、紙袋の中にキラキラしているおくりものをつくる。
・アルミホイルや光沢のある紙、つるつるした針金など、光を反射しやすい材料などに興味や関心をもち、それらの特性を生かして表現したものを光を通した場所にかざって、楽しむ。

3.準備(材料・準備)

教師:宅急便用紙袋・たこ糸・アルミホイル・光沢のある紙・色セロハン・線材料(針金・モールなど)・ビーズ・ペンチ・カッター・接着剤など
児童:はさみ・のり

4.評価基準

造形への関心・意欲・態度
○銀紙や線材などの身辺材料などで光を反射する材料に興味や関心をもち、それらを生かした表現を楽しむ。
○心をこめたおくりものをプレゼントする相手を考えてつくろうとしている。

発想や構想の能力
○銀紙や線材などの光を反射する材料に触れ、色や形からイメージを広げ、自分が表現したいものやことを思いつく。

創造的な技能
○身近な材料や用具の特徴を生かして組み合わせを試し、自分なりの表し方を工夫する。
○光を通して、キラキラ見えるように効果的な表し方を工夫する。

鑑賞
○友だちの表し方の面白さや違いに気づき、感じたことや思ったことを伝え合う。

道徳との関連
○プレゼントしたい相手のことを考え、相手も喜んでくれるような表現を考える。

5.本題材の指導にあたって

 「宅急便用の袋を使ってバッグをつくり、相手が喜ぶようなキラキラのおくりものをつくろう。」と子どもに呼びかけ、自分がイメージするキラキラのおくりものが入っているバッグを身近な材料でつくる。
 宅急便の紙は、光沢がありしっかりしているので、製作活動中も切ったり貼ったりして色々工夫ができる。紙袋の真ん中をくり抜き、光を通してキラキラが効果的に見えるようにし、目の前で光を感じやすいような環境を設定する。おくりものという言葉から、もらった相手の気持ちが温かくなるような表現活動も予想される。
 身辺材料を自分でも準備することで、より楽しく意欲的に創造活動ができると考える。窓際や光を通しやすい場所を考えて展示することにより、互いに作品に興味をもち、友だちの作品のよいところを見つけやすいと考える。

6.題材の指導計画

太字…教師の投げかけ


学習活動の流れ


指導上の留意点

1

光を通すキラキラのおくりものバッグをイメージしてみよう。

・プレゼントされた相手が喜ぶようなキラキラのおくりものが入ったバッグをイメージし、アイディアスケッチをする。

・キラキラする材料を選び、袋の中にどのようなおくりものを入れたいか考える。

・宅急便のバッグに触れさせ、バッグの使い方を理解できるように声をかける。

【関心・意欲・態度】キラキラの材料に興味をもち、おくりものバッグを意欲的につくろうとする。

光を通すキラキラのおくりものバッグをイメージしてみよう。

光が通るように袋に穴をあけよう。

取っ手の部分は切り取った紙でつくろう。

4
本時

光が通るように袋に穴をあけよう。

・袋を2つ折りにして、両面にはさみで穴をあける。

・予定していない部分まで穴をあけないように声をかける。

身の回りの材料で、つくりたいキラキラのおくりものをつくろう。

・アルミホイル、光沢のある紙、セロハン、線材料(針金・モールなど)、ビーズなどの身辺材料を使い、イメージするキラキラの世界をつくる。

・ひもでぶら下げたり、穴から効果的に見えるようなしくみができるように声をかける。
・おくりものバッグの取っ手の部分をつくり持てるように声をかける。

【発想や構想の能力】キラキラをイメージしながらつくりたいものを考え、材料を見立てる。
【創造的な技能】身近な材料や用具の特徴を生かして組み合わせを試し、自分なりの表し方を工夫する

モールとビーズで花をつくったよ。

<材料>
宅急便用紙袋、アルミホイル、光沢のある色紙、色セロハン、線材料(針金・モール)、ビーズ、ペンチ、カッター、接着剤など

アルミホイルでキラキラのおくりものをつくっているよ。

キノコのふしぎなおくりものができた。

ハートの窓の中に針金でハートをつくったよ。

針金を使ってイメージする形をつくっているよ。

接着剤やのり、ホチキス、セロハンテープなどで。

キラキラのモールとアルミホイルを組み合わせて。

キラキラしている富士山です。

納豆の入れものに、キラキラの豆をいれたよ。納豆が好きなんだ。

穴に透明シートをつけて、光や色が透き通ってキラキラ見えるような工夫をしよう。

・透明シートにペンで色をつけたり、色セロハンを貼り、袋の中がよりキラキラするように工夫してつくる。

・透明シートを袋に貼る作業については、両面テープなどを使い丁寧に貼るように伝える。

窓枠にキラキラテープをつけてみたよ。中をのぞきたくなるね。

シートをつける時は、両面テープや接着剤を使ってまっすぐに貼りました。

色ペンは透明度の高いものを使用し、色の組み合わせも工夫しました。

1

光を通しやすい場所を考え、展示しよう。みんなで見てみよう。

・校舎内の窓や校庭などキラキラが効果的に表現される場所を探し、展示する。互いの作品のよいところを発見したり、自分が工夫したことや頑張ったところを発表したりする。

・光を通しやすい場所を考え、作品が効果的 に見える場所を探すように伝える。

【鑑賞の能力】友だちの表し方のおもしろさや違いに気づき、感じたことや思ったことを伝え合う。

上から雨粒が落ちてきました。ひもでぶら下げました。

送る相手にカードをつくったよ。

外の枝にぶら下げてみました。光を通しますね。

7.本時の学習

①目 標
 キラキラのおくりものをイメージしながら、アルミホイルや光沢のある紙、つるつるした針金など、光を反射しやすい材料などに興味や関心をもち、それらを生かした表現を工夫し楽しみながらつくる。

②学習展開(4時間)

主な学習活動・内容

指導の工夫や教師の支援・評価の留意点

光が通るように袋に穴をあけよう。

・袋を2つ折りにして、両面に穴をはさみであける。

・予定していない部分まで穴をあけないように声をかける。
・穴をあける活動が困難と思われる児童には、線をかいて分かりやすくする。

身の回りの材料で、つくりたいキラキラのおくりものをつくろう。

・アルミホイル、光沢のある紙、セロハン、線材料(針金・モールなど)、ビーズなどの身辺材料を使い、イメージするキラキラのおくりものの世界をつくる。
・穴をのぞきながら、キラキラのおくりものをぶら下げたり、貼ったり、置いたりしてキラキラが見やすい位置を考えながら表す。

・ひもでぶら下げたり、穴から効果的に見えるようなしくみができるように声をかける。
[ひも]1㎜程度のたこ糸。結べるところは結ぶように伝える

・おくりものバッグの取っ手の部分をつくり、持てように声をかける。
[取っ手の部分]バッグを切り抜いた紙を利用して、もつところをつくるように知らせる。

【発想や構想の能力】キラキラをイメージしながらつくりたいものを考え材料を見立てる。
【創造的な技能】身近な材料や用具の特徴を生かして組み合わせを考え自分なりの表し方を工夫する。

穴に透明シートをつけて、光や色が透き通ってキラキラ見えるような工夫をしよう。

・透明シートにペンで色をつけたり、色セロハンを貼り、袋の中がよりキラキラ効果的に見えるように工夫してつくる。

・透明シートを袋に貼る作業については、両面テープなどを使い丁寧に貼るように伝える。

【発想や構想の能力】透明シートに色セロハンをはったりペンで表したり自分のイメージを表そうとしている。
【創造的な技能】【鑑賞の能力】透明シートを貼りキラキラがより効果的に見えるよう工夫しようとしている。

8.完成作品

世界の果ての通学路

フランス発、地球を通学路という観点から捉えた驚きと感動のドキュメンタリー!

長く危険に満ちた通学路を行く子供たちの姿から、地球の今と未来が見えてくる―

あなたは信じられるだろうか。
学校へいくために15kmのサバンナを命がけで駆け抜ける兄妹がいることを。

 『オーシャンズ』『皇帝ペンギン』『WATARIDORI』など、世界最高峰のフランスドキュメンタリー最新作が届きました!
 地球上の全く異なる4つの地域の通学路に密着し、数十キロの危険な道のりを通して、未来を切り開こうとする子供たちの姿をとらえた本作は、雄大な地球の姿に魅了されながら、子供たちの学習に対する高いモチベーションと、その意志をサポートする家族の愛と勇気ある決断に胸を打たれ、激しく心揺さぶられる感動のドキュメンタリーです。
 スイスのロカルノ国際映画祭での大絶賛を得て、本国フランスではディズニーが配給、動員120万人を超える大ヒットを記録しました。監督は、12年間に渡ってケニアに通いつめ『マサイ』(05)を撮り上げたパスカル・ブリッソン。自然と調和する人間の姿を追ってきた監督ならではで、人はなぜどんな環境でも学ぼうとするのか、その本質と意義に迫ります。

ストーリー

(c)2013 – Winds – Ymagis – Herodiade

 ケニアの15kmものサバンナを、命懸けで駆け抜けるジャクソン。
 360度見渡す限り誰もいないパタゴニア平原を、妹と共に馬に乗って通学するカルロス。
 モロッコの険しいアトラス山脈を越えて、女友達3人と寄宿舎を目指すザヒラ。
 幼い弟たちに車椅子を押されならが、舗装されていない道を学校に向かうインドのサミュエル。
 これは命懸けで学校に通う世界各国の子供たちの通学路に密着した、驚きと感動のドキュメンタリー!

◆次回Vol.96にて、この作品のコラムを掲載します。

2014年4月12日(土)、シネスイッチ銀座ico_linkほか全国順次ロードショー!

『世界の果ての通学路』公式Webサイトico_link

監督:パスカル・プリッソン
原題:‘Sur le chemin de l’école’
2012/フランス/77分/ビスタ/カラー/5.1ch/英語&日本語字幕
字幕翻訳:チオキ真理/G
製作協力:OCS フランス5 ユネスコ エイド・エ・アクション
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力:ユニフランス・フィルムズ
提供:キノフィルムズ、KADOKAWA
配給:キノフィルムズ
(c)2013 – Winds – Ymagis – Herodiade

「かたちから みーつけた!」(第1学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.題材名

「かたちから みーつけた!」

2.目 標

 紙をちぎってできた偶然の形を基に発想を膨らませ,楽しみながら自分のイメージを表す。

3.準備(材料・用具)

教師:A4コピー用紙,八切画用紙,スティックのり,磁石,プロジェクター(winペイント使用),パソコン,名札
児童:クレヨン・パス,筆記用具

4.評価規準

造形への関心・意欲・態度
○ちぎったときの感触や音を感じたり,ちぎった紙の形が何に見えるか考えたりすることに関心をもち,楽しみながら活動に取り組んでいる。

発想や構想の能力
○ちぎった紙の形を基に発想を膨らませ,自分のイメージを描いている。

創造的な技能
○紙の感触を楽しみながら,ちぎっている。
○自分のイメージに合わせて,画用紙やクレヨン・パスの色を選んだり,ぬり方を工夫したりしている。

鑑賞の能力
○感じたことを話したり,友達の話を聞いたりしながら,作品や見立ての面白さを感じている。

5.本題材の指導にあたって

 小学校6年間を通して図画工作科で身に付けさせたい力の1つに,「形や色を用いて自分のイメージを伝える力」がある。そのために,低学年から,自分で色を選んだり,形をつくったり,色や形を基にイメージをもったりする活動をたくさん経験させることが大切である。
 本題材は,紙をちぎってできた偶然の形を基に発想を膨らませ,思い付いた自分のイメージを絵に表す活動である。日頃から,児童は,身の回りにある雲,葉,水たまりなどの偶然の形を「クジラに見える」「顔に見える」と発言し,見立てることの面白さを感じている。この見立てこそ,児童が自分の感覚を通して形をとらえ,自分のイメージをもった瞬間である。日常の中で見立てを楽しんでいる低学年の時期に,形を主役とした題材を投げかけ,形のもつ多面的な面白さと自分のイメージを人に伝えることの楽しさを味わわせたい。

6.指導計画(全2時間計画)

学習活動の流れ

指導上の留意点,評価方法

1

◯材料の感触を楽しみながら,いろいろな形を表す。

紙の感触を楽しみながら,ちぎってみましょう

・紙には,いろいろなちぎり方があることを知り,試す。
・コピー用紙をちぎり,偶然の形をつくる。
①鉛筆で紙の好きな場所4か所に穴をあける。
②いろいろなちぎり方を試しながら,穴を通って一周する。

・ギザギザ,くねくね,まっすぐなどちぎり方の例を児童と一緒に考え板書する。
・穴をあけるときは,
①鉛筆の角度は小さく。
②手の位置は穴をあける場所の横。
と伝え,ケガをしないよう配慮する。

[創]紙の感触を楽しみながら,ちぎっている。(様子・発言)

2
本時

○紙をちぎってできた偶然の形を基に発想を膨らませ,楽しみながら自分のイメージを表す。

・学級全体で参考作品を見て,何に見えるか考えることで,形にはたくさんの見方があることに気付くことができるようにする。
・クレヨン・パスで色をぬるときは,薄い色からぬるよう言葉かけをする。
(児童に指導をする際は,直感的に分かりやすいよう,薄い色を「よわい色」,濃い色を「つよい色」としている。)
・紙を貼るときは,スティックのりをポンポンと軽く押し付けてつけるよう言葉かけをする。

[関]ちぎってできた形が何に見えるか楽しみながら考えている。(様子・発言)

[発]ちぎった紙の形を基に発想を膨らませ,自分のイメージを描いている。(様子・発言・作品)

[創]自分のイメージに合わせて,画用紙やクレヨン・パスの色を選んだり,ぬり方を工夫したりしている。(様子・発言・作品)

[鑑]ちぎった紙を見たり,友達と対話をしたりして,作品や見立ての面白さを感じている。(様子・発言)

ちぎった紙の形から思い付いたものをかきましょう

・ちぎった紙の向きや角度を変えて,いろいろな見方を試す。
・名札の裏に,形から見立てたものを2つ以上書く。
・クレヨン・パスで紙に色を付け,思い付いたものを工夫して表す。
・見立てたものに合わせて画用紙(台紙)の色を選び,ちぎった紙を貼る。
・題名を付け,自分の作品を説明する。

7.本時の指導(2/2)

①目 標
○紙をちぎってできた偶然の形を基に発想を膨らませ,楽しみながら自分のイメージを表す。

②学習展開

主な学習活動・内容

☆指導の工夫や教師の支援・評価の留意点

◯本時の課題をつかみ,活動の見通しをもつ。
・ちぎった紙からいろいろな形に見立てられることに気付く。

☆ちぎった紙が一人ひとり違う形をしていることを確認し,自分がつくった形からイメージを広げていくことを意識させる。

教師(以下T):何に見えるかな?
児童(以下C):鳥だよ!右下が口ばしに見えるでしょ。
C:ちょうちょに見えるよ!大きく羽を広げているみたいだよ。
T:じゃあ,くるっと回したら……。
C:あっ,手裏剣みたい。
C:上から見たゾウに見えるよ。
C:ゾウ?どこがゾウに見えるの?

T:ゾウに見えたんだね。どこが目かな。鼻は?
C:ここのあたりが目だよ!
T:先生がパソコンでかいてみるね。目はこのあたりかな。
C:本当だ!上から見たゾウになった。

☆視聴覚機器を活用し,児童の発想を画面に描き加えたり,注目するポイントを拡大して分かりやすくしたりして,学習の見通しがもてるようにする。

☆紙の向きや角度を変えることで,いろいろな形に見立てられることを確認する。

○学習課題に取り組む

☆色を重ねる時は薄い色から重ねること,強くぬる方法と弱くぬる方法があること,細い線と太い線の違いを確かめ,黒板に掲示する。

ちぎった紙の形から 思い付いたものを かきましょう。

・ちぎった紙に色をぬり,友達に自分の思い付いたイメージを伝えることを知る。
・用具の正しい使い方を確認する。

・自分がちぎった紙の形が何に見えるか考える。
・いくつも思い付いた児童は,名札の裏に思い付いたものをメモする。

C:ギザギザが鬼の金棒みたいに見えてきた!何色でぬろうかな。

・自分のイメージが伝わるよう,紙にクレヨン・パスでかき加える。

☆何に見えるか考える時間を十分に確保することで,たくさんの見方を実感できるようにする。

・見立てられない児童への手立て
→班の友達に何に見えるか相談したり,一緒に考えたりして,発想のきっかけをつくる。
→紙をもう少しちぎって形を変える,先に台紙に貼ってかき加える等,イメージを補うよう支援する

・見立てられるが,絵に表すことができない児童への手立て
→何に困っているのか聞き,一緒に色を選んだり,児童のイメージを試し紙にかいたりして支援する。

・自分が思い付いたものに似合う色の画用紙(台紙)を選ぶ。

C:クマに似合う色は何かな。
C:森にいるから,緑が似合うよ!

・紙を台紙に貼って,周りをかき足す。

C:上を向いているみたいに,斜めに貼ってみよう。

C:玉乗りゾウさんにしよう!ボールをかくぞ!

☆思い付いたものに似合う色やよく見える色を考えて,自分で台紙を選べるようにする。

・台紙に模様を付けたり,周りの様子を描き足したりしている児童への対応
→形から発想を広げ,周りまで想像してかけたことを褒める。

◯作品や見立ての面白さを共有する。
・自分の作品を紹介する。

C:ここの形がしっぽに見えたから犬にしました。
T:形から思い付いたことを,友達に伝えることができたね。

☆基になった形が何に変身しているか見付けるよう言葉かけし,鑑賞の視点を示す。

【児童作品】

もりのくまさん

もりのくまさん

ふじさん

ふじさん

ファイヤーバード

ファイヤーバード

大きいくつ

大きいくつ

あざらし

[論説]人間として他者と共に生きることを学ぶ教科「情報」 若井田正文 ほか

  • 人間として他者と共に生きることを学ぶ教科「情報」 
    …若井田 正文
  • 「社会と情報」「情報の科学」両科目の開設に向けて
    —生徒の特性に合わせた情報教育を目指して— 
    …佐々木 寛
  • さまざまなタイプのアクティブラーニング
    —生徒を主体的に動かすしかけを意識した授業デザインの実践—
    …須藤 祥代
  • 高校生が教える情報モラル教育 
    …佐藤 正二
  • 言語活動の充実と情報活用の実践力を養うための教材の開発と実践
    —情報カードを使った高等学校における協働学習の実践—
    …勝田 浩次 稲川 孝司
  • 「情報通信技術の歴史としくみ」実践報告
    —本物を見て,触って,操作して,身近に感じる情報通信機器の歴史—
    …下田 彰
  • sAccessでデータベース操作実習を行おう 
    …長瀧 寛之
  • ビッグデータの汎用性と問題点
    —個人情報はどこまで守られるか— 
    …楢原 毅
  • 井の中の蛙大会を知らず!?
    —情報科の教員が陥りがちな危ういシチュエーションとは?—

フルートベール駅で

(c) 2013 OG Project, LLC. All Rights Reserved

 黒人の若者に警察官が銃を発砲する。黒人は病院に運ばれるがまもなく死亡。ほんの数年前、2009年1月1日未明に実際に起こった事件である。映画「フルートベール駅で」(クロックワークス配給)は事実に基づいた映画で、射殺された黒人オスカー・グラントの最後の一日を描く。

(c) 2013 OG Project, LLC. All Rights Reserved

 黒人への差別や虐待を描いた映画は、いままで数多く作られてきた。古くは、「アラバマ物語」や「ルーツ」、「マルコムX」、最近でも「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」、「プレシャス」、「ジャンゴ 繋がれざる者」、「大統領執事の涙」などなど、描かれた時代は変わっても枚挙にいとまがない。今年のアカデミー賞で作品賞を受けた「それでも夜は明ける」もまた、白人に虐げられた黒人の過酷な年月を描いた映画だが、これは1840年代の話だ。170年以上経過した今、たとえ大統領が白人でなくても、なお、黒人への差別、蔑視が、色濃く残っていることが分かる。
 ドラッグの売人から足を洗い、まじめに生きていこうとする22歳のオスカー(マイケル・B・ジョーダン)が、2008年の大晦日の夜、4歳の幼い娘を母親に預け、妻や仲間たちと新年を迎える花火をサンフランシスコまで見にいく。カウントダウンが終わり電車で帰ろうとする。昔の悪い仲間に出会ったオスカーとその仲間たちは騒ぎに巻き込まれる。オスカーたちは、フルートベール駅で警官たちに取り押さえられる。オスカーが何もしていないと言っても、警官は聞いていない。一方的に取り押さえられたオスカーに警官が発砲する。

(c) 2013 OG Project, LLC. All Rights Reserved

 映画は、オスカーの大晦日の一日を丁寧に描く。オスカーは母親思いで、妻と幼い娘を大事にしていることが分かる。ドラッグの売人をやめる決意をして、かつて勤めたスーパーに再就職を願ったりする。また、車にはねられた犬を抱きかかえたりする優しい青年なのだ。
 事件は2009年1月1日の未明に起こる。オバマが大統領に当選したのは2008年11月、就任は2009年1月20日である。白人ではない大統領が誕生したというのにこの事件である。アメリカの有名な映画スターで、黒人は多い。シドニー・ポアチエ、エディ・マーフィー、フォレスト・ウィテカー、サミュエル・L・ジャクソン、ウーピー・ゴールドバーグ、ウィル・スミス、デンゼル・ワシントン、モーガン・フリーマンなどなど。いま、大活躍をするようになるまでは、さぞかしの苦労があったことと思われる。白人でない大統領、多くの黒人俳優、テニスや競馬の騎手まで、黒人が活躍する時代である。そのような時代なのに、黒人の若者オスカー・グラントは何も悪いことをしていないのに警官の銃弾を浴びる。しかも、過失で発砲したという警官への罪は、はなはだ軽い。
 監督のライアン・クーグラーは黒人で、まだ27歳。母親役のオクタヴィア・スペンサーも黒人で、「ヘルプ~心がつなぐストーリー~」ではアカデミー賞の助演女優賞を受けている。上述したように、活躍する多くの黒人俳優が出た映画や、黒人の差別や虐待を描いた多くの映画がある。「フルートベール駅で」をご覧になる前でも後でも、黒人たちをどう描いたか、ぜひ多くの映画を見ていただけたらと思う。

2014年3月21日(金・祝)、新宿武蔵野館ico_linkヒューマントラストシネマ有楽町ico_linkほか全国順次ロードショー!

■『フルートベール駅で』

監督:ライアン・クーグラー
出演:マイケル・B・ジョーダン (『クロニクル』)、オクタヴィア・スペンサー (『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』)
製作:フォレスト・ウィテカー
配給:クロックワークス
2013年/85分/PG12

国語読本にみる日本と日本人

「日本国」という世界

 明治期に刊行された国語の教科書は、文学教育よりも、国民道徳の涵養をはかるものでした。金港堂版『尋常国語読本』は、1900年(明治33)7月の小学校令、同施行規則のもとづく検定教科書ですが、日清戦争の勝利による国家意識を小学生に根付かせるべく、日本という国の姿を空間的に説くのみならず、天皇の国であることを説き聞かせています。小学2年生には、戦勝がもたらした日本国の地理的範囲とともに、万世一系の天皇の民である喜びと務めが教え、日本国民であることを自覚させます

我が日の下は、あじやなる、太平洋の其の中に、大き小さきうちまじり、斜にわたる島つ国。
さて其の中のおもなるは、五大島とて、五つあり。
其の第一は、本土にて、四国・九州・台湾は、西と南に立ち並び、北海道は、北にあり。
小島の数は多けれど、其の中殊に、名高きは、千島・佐渡・隠岐・壱岐・対馬、さては琉球・澎湖島。
其の道のりを南より、北のはてまでかぞふれば、一千里にもあまるべし。
土地の分ちは昔より、地勢によりてさだめたり。
京都もよりを畿内とし、東と北は、東海道、東山・北陸・北海道、西と南は、南海道、山陰・山陽・西海道、国の総数八十四、人口凡そ4千万、是に琉球台湾の、土地と人とをくはふれば、たやすくかぞへつくされず。
上は万世一系の、たふとき 天皇ましまして、民をみること子のごとし。
民はそれそれなりはひをつとめはげみて、一すぢに、忠と孝とをつくすなり。
げにたふときは日の本ぞ。

 日本国民は、万世一系の天皇の子である「臣民」として、各人に相応しい生業に励み、忠孝を尽くさねばならない存在なのだと教え諭されたのです。この天皇が統治する国の由来は、天孫降臨の物語を、小学3年生の第1課「我が國の昔話」として語り聞かせています。

昔話という問いかけ

 「我が國の昔話」は、古事記が「邇邇藝命(ににぎのみこと)に科詔(おほ)せて、此の豊葦原水穂国(とよあしはらみづほのくに)は、汝知(みまししら)さむ国なり、と言依(ことよ)さし賜ふ」と描きだした世界を、日向高千穂への降臨、神武天皇の東征と即位、皇位継承の証である三種の神器をめぐる天孫降臨、神武東征が物語る日本のことはじめを、神話的潤色もなく、「古き昔」のこととして簡潔に述べています。
 ついで国土平定を第2課、3課「日本武尊(やまとたけるのみこと)」で説き、この日本に現在知ろしめす「今上天皇陛下並に 皇后陛下の御盛徳」を第16課「皇恩」として語り聞かせます。そこでは、明治天皇が1873年(明治6)の宮城火災後に「国事多端」として御所の造営をいそがなかったこと、皇后が「不孝の民をめぐみ」学校、病院に足を運ばれた事績を紹介し、「あはれ我等国民は、かくばかり大いなる皇恩の下に月日をおくれり、さらばいかにして其の万分の一をだにむくい奉るべき、ただ身を修め業をはげみて、君の御心を安んじたてまつるべきなり。」と、「皇恩」をことほぎました。

美しき国日本の虚実

 最終学年の4年生では、「大和めぐり」「藤原鎌足」「伊勢まゐり」と皇室の故地と権威を確立していく世界を述べて後に、巻7の第4課「日本の美風」で天皇が営む祭りにかさねて先祖祭祀の意味を説きます。まさに祖先教は、日本の美風とみなされ、皇国日本の国のかたちを巻8の第1課「我が國」で「気候温和に土地肥えて、五穀善くみのる」「瑞穂の国」の美しい姿として、次のように確認します。

此の国をすべ治め給ふは、万世一系の 天皇なり。天皇の御血筋は、国の初より今に至るまでつづきつづきてしばしもたえたることなし。古き昔はさておき神武天皇より数ふるも、今に至るまで、御代を重ぬること百二十二代、年をふること二千五百余年の久しきに及べり。
此の間、世々の天皇は、皆御徳盛にましまして、ひとへに臣民の幸福を進め、苦難を除くことを務めさせ給ひ、臣民も亦其の恩沢に感じて、忠義を励み、善く事へまつり来りければ、世の中、大方おだやかにして、異国にはなき程の事なりき。
かかるめでたき国に生まれ来たる我等の幸は、実に大なりと云ふべし。されば我等は、皆々よく心を会はせて、国勢の益々盛ならんことをはかり、皇運のいよいよ栄えまさんことをいのるべきなり。

 瑞穂の国日本は、万世一系の天皇の威徳により、国勢盛んにして、美しい国とみなされました。そして「明治の御代」を「国の威光を世界にかがやかし」「日本の為めに利益を増し、武威を増し、名誉を増した」「めでたき御代」と寿ぎます。ここに国民は、「臣民」として、天皇の恩沢に報ゆるべく忠義に励み、己の生業に務めることが課されたのです。
さらに高等科では、「臣民」たる義務をおりにふれて説き聞かせ、現在の6年生に相当する学年を終えるにあたり、あらためて「国の名誉」を確認させております。この「国の名誉」は、「政体の美」を温和な気候と日本三景、吉野の櫻、田子の浦等々の「風景の美」に重ね、「千百年の美観旧蹟」で「日本帝国の名は、世界に鳴り渡れり」と、政体と自然を一体にすることで世界に冠たる日本を誇り、「愛国」の業を言挙げしてやみません。

夫れ勇壮義烈にして、身命を軽んじ、国家を重んじ、一歩も敵国に譲らざるは、是、事ある時の愛国なり。快活にして毫も猜疑の心なく、外人を遇すること親切なるは、是平和なる時の愛国なり。此の二つのもの若し一を缺く時は、気候風土も恃むに足らず、美観旧蹟も誇るに足らず。国の名誉の亡びんこと、踵を回らすを待たざるなり。
今や吾が国民は、幸に此の二つのものを兼ね有てり。諸子此の美風を継続して墜すことなくば、日本帝国の名誉は、千秋万歳永く世界に輝くべし。

 昨今声高に説かれる「美しい国」日本という言説は、1900年初頭、日清戦争勝利の昂揚感にうながされ、万世一系の皇統の国日本への「愛国心」をうながし、「臣民」たる国民の育成をめざす声をよびもどそうとするもののようです。思うにユネスコの世界遺産に登録された富士山フィーバーの底流には、「経済大国」日本の失墜で喪失した民族の自負心をして、富士山に託して「国の名誉」を説き聞かせ、「愛国心」の昂揚で「日本をとりもどす」との想いがあります。まさに、このような「美しい日本」の原像にひそむ世界は、万世一系の皇統の国柄への強き信仰に導かれたもので、「身命を軽んじ、国家を重んじ」る「愛国心」の発露なのです。それだけに現在問われているのは、「読本」が説き聞かせてきた日本のかたちに距離をとり、「天皇の国」として身体に刻みこまれた世界をして、一個独立した己の場から質していく作業ではないでしょうか。

PISA調査の結果から考えるべきこと

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■調査結果の国際比較

PISA2012年調査における平均得点の国際比較
(国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査」より)

 昨年12月に、第5回PISA調査(2012年に実施)の結果が発表された。新聞等で報道されたので、ご存じの方も多いと思うが、今回、上位10位を占めた国・地域の結果は右記の通りである。
 上位の中で上海などの地域やシンガポールなどOECD非加盟国を除くと、日本は数学的応用力は韓国についで2位、読解力と科学的応用力は1位ということになる。過去、日本は第1回(2000年)ではトップクラスであったけれども、その後は下がり続け、第3回(2006年)が最低であった。しかし、第4回(2009年)で上昇に転じ、今回さらに上昇という結果である。そこで、「日本トップレベルに回復」ということになる。さて、 この結果から何を考えるか、考えるべきかである。

■学力の回復力

 今回の結果に対しては、多くのマスコミが文科省を中心とする学力向上対策が実を結んだものであると評価している。筆者もそう思う一人である。ただ、ここで注目したいことは、「学力の回復」よりも「学力の回復力」があったということである。
 周知のように、日本では20世紀末からいわゆる「ゆとり教育」が実施され始めた。しかし、21世紀に入り、そのゆとり教育の弊害が強く指摘され、学力とりわけPISA型の学力育成に力が入れられるようになった。その結果、PISA型学力はねらい通りに回復してきた。学力は一度下がると回復が難しいが、日本は短期間で回復した。この回復力に注目したいのである。欧米諸国も努力はしているが思わしい結果には結びついていない。これを可能にしたのは、コストや時間など膨大なエネルギーを注ぎ込むとともに、「文科省―教育委員会―教育現場」の一体化した取り組みによるところが大きいと考える。日本のこのシステムを重要視したい。こうしたシステムを構築できたことを評価したい。

■これから取り組むべきこと

 PISA型学力は応用力に重きを置いており、それが高いということは基礎学力、思考力そして活用力があるということである。したがって、こうした学力は価値あるものであり、今後も重視し、その育成に力を入れていくべきである。しかし、今回のようなよい結果が得られれば、今後教育予算やエネルギーを何に注ぎ込むかを再検討してみる必要がある。既にマスコミ等で指摘されているように、PISA型学力の育成面でもなお課題はある。我が国流に表現すれば、学習意欲の向上、確かな学力の育成、言語活動の充実などがそれである。そうした課題への努力は大切であるが、その他に取り組むべき重要なことはないかという問題提起である。
 PISAを実施しているOECDのシュライヒャー教育局次長は、今後は学校現場において「グローバル人材育成」が求められるとして、その力の調査を検討しているという。世界のグローバル化は、経済はもちろん政治、学問、環境等々あらゆる分野で急速に進んでおり、さすがの着眼点である。ところで、そうした能力面の育成ももちろん重要であるけれども、その基盤をなす人間性の育成も改めて考え直してみるべき状況にある。日本においては、学校内の暴力行為や不登校が非常に増加している。いじめも依然として後を絶たない。社会や学校におけるひずみがこうした形で現れているといえないであろうか。だとすると、教育の原点である人間性の育成にさらに大きなエネルギーを注ぎ込むべきであろう。
 現在の日本の教育は、[生きる力]の育成を目的としており、豊かな人間性はその重要な要素に位置づけられている。PISA学力の向上に注いだエネルギーをそこに向ければ、豊かな人間性を育成できる教育システムを構築することができると考える。それは、21世紀の子どもたちに求められる「生き抜く力」を培う道である。

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他者との関わりの中で自己のイメージを広げさまざまな表現のよさを見いだす生徒の育成(第2学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

授業で解決しようとしている課題(研究仮説)

 生徒はよりよい作品制作を目指し意欲的に学習に取り組むことができる。だが,表現活動においてアイデアスケッチの段階から下絵,着色と制作が進行しても生徒作品に表出されてくるイメージに広がりがみられない様相にある点と他者と違う表現をすることに不安を感じる生徒がいる点が課題と感じてきた。筆者の授業を振り返ると個別で学習活動する場面が多い。だから生徒は自身の発想・構想の行き詰まりやさらなる改善をめざすことができなかったり,他者の表現との違って当然であることに価値を見いだせなかったりしているのではないかと考えた。そこで,学習活動の展開の中に他者と関わる場面を活動の中に設定する。すると,生徒は他者との関わりをきっかけとし,自己のイメージを増幅したり多様な表現のよさを見いだしたりすることができるようになるものと考えた。本時では「鑑賞」活動に焦点を当てた実践と考察を行うこととする。
 第Ⅰ部で題材全体の流れと本時の位置づけ,第Ⅱ部では実践の様子や結果が分かるよう画像と授業後の生徒アンケートを記述する。第Ⅲ部は授業で解決しようとしている課題が克服されたか生徒アンケートをもとに考察した。

第Ⅰ部 題材全体の構成と本時(学習指導案)

1.題材名

「空想の世界」-空想画の「表現」及び「鑑賞」-

2.題材の目標

 空想画を表現及び鑑賞する活動を通して,現在の自分の夢,想像や感情など心の世界をもとに,主題を生み出し発見する面白さを味わうとともに,さまざまな美術作品のよさを味わうことができる。

3.題材の評価規準

(1)関心・意欲・態度
 活動に主体的に取り組み空想画のよさや美しさなどを感じ取り,美術を愛好する心情を高める。

(2)発想・構想の能力
 空想画を描く,観る活動を通して豊かに発想し構想する。

(3)創造的な技能
 空想画を描く活動を通して,表現方法を創意工夫し,主体的に表現する技能を獲得する。

(4)鑑賞の能力
 空想画のよさや美しさを形や色彩がもたらす感情をもとに,作品を分析的にとらえ,自分の考えを口頭又は文章で表現できる。また,自他の考えのよさや視点の違いの面白さに気付く。

4.題材と指導の構想

(1)題材設定理由
 古くは洞窟画壁画,宗教を題材とした宗教画,シュルレアリスムの画家たちの作品,前衛芸術家の作品など古今東西で空想画が描かれて来た。それらは願望や夢,物語,技法の偶然性などから着想を得,多様な素材を駆使して表現されている。
 本題材を通して身につけさせたい力は次の2点である。

①空想画の表現活動を通して,主体的に材料や形や色彩の組み合わせにより自己の想いを表現する力。
②空想画の鑑賞活動を通して,作品を分析的に読み解き主題や作品に込められたメッセージを推測する力。

(2)生徒の実態と題材のかかわり 2学年4組 37名(男子20名 女子17名)
 生徒たちは2学年4月から6月にデザインの表現活動を通して自己の想いを多くの人々に伝えるために,形や色彩などの効果を生かして分かりやすさや美しさなどを考え,表現の構想を練る活動を行った。その結果,全員が作品を完成させることができたが,作品の主題が曖昧で自分で何を表現したかったのか不明な生徒がいた。
 そこで,生徒が感じ取ったことや考えたことなどをもとに表現する活動を通して,発想や構想に関する学習が必要と考えた。具体的には主題などをもとに想像力を働かせ,単純化や省略,強調,技法の組合せなど構成要素を考え,創造的な構成を工夫し,心豊かな表現活動である。
 中学生の時期はJ・ピアジェによれば,形式的、抽象的操作が可能になり仮説演繹的思考ができるようになるとされる。また,E・エリクソンによれば,他者と異なる一貫した自分自身の同一性の確立する時期とされている。つまり,自他のさまざまな事象を分析的にとらえ客観視するようになるのが中学生の年齢といえる。したがって,自分の無意識の感覚を空想画として表現したり,他者の作品を分析的に鑑賞したりする活動は発達段階に適した題材ではないだろうか。
 また,表現活動との関連の中でオディオン・ルドン(以降,ルドンと記述)の美術作品に触れるために美術館を活用した鑑賞の授業を行うこととする。実物の作品を扱うことでディテールやマチエールを確認することが可能となり,芸術家が制作した実物の美術作品が持つ魅力を体感できる。ルドンが制作した実物の美術作品の形や色彩,技法などを通して分析的に鑑賞する能力(「情報の取り出し」,「解釈」又は「熟考」する力)をさらに高めるだけでなく,感覚的にすばらしいと感じることのできる美術作品を選ぶ経験もさせたい。それが,空想画に対する興味の高まりにつながるものと考えた。
 本指導案における「情報の取り出し」とは,形や色彩などを通して美術作品に何が表現されているか(推測も含む)を言語化することとする。「解釈」とは美術作品上に表現された形や色彩をもとに美術作品に込められたメッセージや物語を推測し言語化することとする。また,「熟考・評価」とは美術作品上に表現された形や色彩,美術作品以外の情報をもとに美術作品に込められたメッセージや物語を推測し言語化することである。

(3)指導の方策
 本題材を実施する上で①指導の連携,②体験,③他者との交流の場面を設定する。

①指導の連携とは
 美術館学芸員と連携したギャラリートークの実施。

②体験とは
 美術館を訪問し,実物の美術作品を目にする。
 生徒が気に入った美術作品を体験的にとらえる(模写する)ことで,形や色彩の特徴をとらえる。
 空想画(印刷作品)を日常的に鑑賞できるよう,多様な作品を廊下に掲示する。

③他者との交流とは
 他者と意見交換させ,多様な考え方を知る。

 ①から③の活動を行うことで,さまざまなアーティストたちが制作した空想画の魅力を生徒が感じ取るとともに,自己の作品制作におけるイメージの膨らみが期待できるものと考えた。

5.題材の指導計画(全12時間)

◯学習のねらい
・主な学習活動

評価の観点

具体的内容

1

◯空想画への関心を持つ。(「鑑賞」)
・空想画を鑑賞し,想像を膨らませてイメージをつくりだすことに関心をもつ。
・表現するためのさまざまな表現方法を知る。

◯空想画への関心を持つ。
・サルバドール・ダリ『記憶の固執』,ルネ・マグリット『大家族』,井上直久『船を見つけた日』を鑑賞し,表現された形や色彩を手がかりに何が描かれているか考える。
・教科書,資料集をもとにさまざまな表現技法を知る。

2

◯空想画を描くための素材を集める。(「鑑賞」)

◯空想画を描くための素材をイラストメモとして残す。
・動植物図鑑やWeb上に存在する風景写真や画像(著作権フリーイラスト等)から気になる写真やイラストをスケッチする。

3

◯自己のテーマにもとづきアイデアスケッチをする。又はアイデアスケッチしながら自己のテーマを見いだす。(「表現」)
・空想画を描くための素材をもとにイメージを広げ,自己のテーマに向けた空想画のアイデアスケッチができる。

◯自己のテーマに近づけるためのアイデアスケッチの制作。
・前時までに描いたイラストのスケッチから想起されるイメージを追加したり,加工するなど再構成しながら自己のテーマに近づけるためのアイデアスケッチをしたりする。

4

◯自己のテーマにもとづいた空想画の下絵を描く。(「表現」)
・アイデアスケッチをもとに,空想画の下絵を完成させる。

◯自己のテーマにもとづいた空想画の下絵を描く。
・自己のアイデアスケッチをトリミングしたり,イメージの修正を加え空想画の下絵を完成させる。

5
本時

◯他者との意見交流を通して自己のイメージを広げ表現するとともに,さまざまな表現の面白さに気付く。
・他のクラスの生徒が描いている空想画下絵のクリティカルな読み解き。

◯空想画の下絵の続きを描けない生徒の作品を対話型鑑賞法で鑑賞し,作品の解釈をする。その後,自分が続きを描くと仮定し形で表現する活動を通して他者と意見交流させることで自分のイメージが広がることに気付くことができる。
・空想画の下絵が行き詰まって描けないで困っている生徒の作品を対話型鑑賞し何を表現しようとしているのか推測する。
・自分だったら作品の続きをどう描くか考え形で表現する。

6

◯空想画下絵を完成させる。(「表現」)

◯空想画下絵に改善の余地が無いか検討し下絵を完成させる。

7

◯アーティストの作品を鑑賞することを通して形や色彩がもたらす感情を考え,作品に込められた想いを推測する。(「鑑賞」)
・新潟市美術館における企画展オディオン・ルドンの作品鑑賞。(美術館の活用)

◯オディオン・ルドンの作品を通して,形や色彩がもたらす感情を考え,ルドンが作品に込めた想いを推測することができる。
・新潟市美術館では3グループに分かれ以下の作品をローテーションしギャラリートーク(対話型鑑賞)をする。終わったグループから自由鑑賞。

①『神秘的な対話』『黄色いケープ,あるいはカバラの祭司』
②『・・・頭を持たない眼が軟体動物のように漂っていた』
③『アポロンの戦車』3作品

ローテーションは以下の通り
学芸員A ①→②→③
学芸員B ②→③→①
志藤 ③→①→②

8

11

◯空想画の着色をする。(「表現」)

◯自己のテーマにもとづいた空想画の着色をする。
・ドリッピングや吹き流しなど多様な技法から自己のイメージに合う表現方法を見いだし着色する。
・アクリルガッシュ,おはながみなどの画材から自己のイメージに合う素材を見いだし着色する。

12

◯クラスメイトの作品のよさに気付くとともに,作品に込められた思いを推測する。(「鑑賞」)

◯さまざまな作品の表現の違い,それぞれのよさに気付き,お気に入りの作品を選び,その作品に込められた作者のメッセージを推測できる。
・クラスメイトの作品の中から直感的にお気に入りの作品を選ぶ。
・技法や画材の違い,形や色彩がもたらす感情をもとに分析的に作品を鑑賞し,作品に込められたメッセージを推測する。

6.本時の学習(5時間目/全12時間)

(1)本時のねらい
 他者との意見交流を通して自己のイメージを広げ言葉や絵で表し,さまざまな表現があることに気付く。

(2)本時の構想
①第一段階(「鑑賞」)
 描きかけの美術作品に表現された形の特徴をもとに,他者との対話を通して何を描こうとしているか推測する。
②第二段階(「表現」)
 第一段階で出て来た,さまざまな意見をもとに,作品の続きを自分が描くと仮定し表現する。

(3)本時の展開と評価

学習内容・活動

主な教師の働きかけと生徒の反応

指導上の留意点と評価

◯本時の学習の準備と確認
8分

・印刷した作品,ワークシートと鉛筆を配布
・本時の活動の確認
・本時の学習課題の提示

<評価規準・観点>
・学習準備(4人グループで机をつける,学習課題の把握)ができたか。

学習課題
「多様な意見をもとにイメージを広げてさまざまな表現があることに気付こう」

・補助発問
「制作に困っている人の作品を読み取り,表現の可能性をみんなで探ろう」

◯作品の「情報の取り出し」
10(5×2)分

【発問1】
「作品に何が描かれているだろう」

・補助発問
「作品の方向はどちらから見ればいいだろう」
「模様や形を手がかりに何を描こうとしているのか推測しよう」

・指示
グループの半数を他のグループに移動させる。
その後,新しいメンバーで発問1と同様の取り組みを行う。

【生徒の反応】
多様なとらえ方が出る。

<評価規準・観点>
・描きかけの作品の形をもとに,何が描かれているか推測し,言語表現できたか。

<留意点>
1つの考え方でなく,多様なとらえが出るよう留意する。

【評価方法】
・観察

◯作品の「解釈」
5分

・指示
グループの半数を他のグループに移動させる。

【発問2】
「作品のタイトルを考えよう」

【生徒の反応】
多様なタイトルが出る。

<評価規準・観点>
・出て来たさまざまな意見をもとに,自分の考えを導き出しワークシートに記入できたか。

【評価方法】
・話合いの観察 
・ワークシート

◯作品の「熟考・評価」
20分

【発問3】
「描きかけの作品の続きを考えよう」

・指示
「班で話し合ったことや,自分で考えたタイトルをもとに,作品の続きを自分が描くと仮定し表現しなさい」

・指示
 教室内を異動しクラスメイトの描いた作品を鑑賞させる。

<評価規準・観点>
・自他の考えをもとに,作品の続きを推測し,続きを描くことができたか。

【評価材料】
・ワークシート

◯まとめ
7分

まとめ
「本時の活動を振り返り気付いたこと感じたことをまとめよう」

<評価規準・観点>
・自他の表現の違いやよさに気付くことができたか。

【評価材料】
・ワークシート

・指示
 意見交流したこと,その後の自分の表現を振り返り,気付いたことをワークシートに書かせる。

【生徒の反応】
・それぞれによさや面白さが存在する。
・意見交換することで自分のイメージが広がる。

(4)本時の評価
 ①自己のイメージを広げ自己の想いを表現できたか。
 ②自他の表現の違いやよさに気付くことができたか。

第Ⅱ部 本時の記録と結果

1.授業の様子(画像記録及び生徒のワークシートの記述)

(1)写真

①導入の様子

使用したワークシート(他クラスの生徒作品)

使用したワークシート(他クラスの生徒作品)

②作品の「情報の取り出し」  【発問1】「作品に何が描かれているだろう」

③作品の「解釈」  【発問2】「作品のタイトルを考えよう」

④作品の「熟考・評価」  【発問3】「描きかけの作品の続きを考えよう」と相互鑑賞

⑤生徒が考えた作品の続き

無機的な形を取り入れた生徒

有機的な形を取り入れた生徒

(2)ワークシートの記述より
 「本時の活動を振り返り気付いたこと」の質問に対する生徒の回答(自由記述)から6種類の感想を抽出することができた。それぞれ代表的な記述を記す。

①自他の表現や見方の違いの存在について述べた生徒

「この絵は生き物が出て来て楽しそうな絵だけど,私の絵は生き物が出てこないさびしい絵です。ですが私の絵が暗くてダメだと思ったのではなく,この絵と私の絵は違って当然,同じ年齢でも絵の内容が全く違って当然なことを,この絵を通して再確認しました」
「話し合いやクラスメイトの作品を見て分かったことは,人によって見方,考え方が違うということ。『◯◯は△△じゃない』『いや◯◯は××にも見えるよ』などと,人それぞれ感じ方が違うんだなと思いました。自分の作品は自然をもとにした空想で,この作品は機械的な感じの空想だと思いました」
「他の人は自分と全然違うのを描いていたけど,どれもどの絵の続きに合っているような絵ですごかった。自分の絵と比べると同じ所が1つもなくて,同じ空想の絵でも同じ所が一つもない。違いがたくさんあっておもしろいと思った」
「いろいろな人と意見を交換すると,いろんな意見がたくさんあって,言われると納得したり,とてもおもしろいことが分かったりして,人と意見交換すると,個人の発想は一人一人違うんだと思いました」
「こうやってみると自分とは違う角度でみていたり,『あっ』と思うような絵もあったりして,同じ絵でも少し加えると一人一人違う絵になっておもしろいと思った」
「自分では『◯◯に見える!』と思ってもメンバーの人が『私は◯◯に見えるよー』と言って,自分だけの意見じゃなくて周りの人達の意見も聞けてすごく楽しかったです。友達の描いた絵を見たら,すごく細かく描いていて自分のとは違うところがたくさんあって面白かったです。その人がなにを想像して描いているのかって思って見てみたらすごく面白かったです」
「いろいろな人の作品を見てまわって,自分と似ているところがあったり,なるほど!と思ったところもたくさんあったので,いいところは吸収したりして,これからの作品をつくる時に参考にしていきたいと思います」
「作者が描いている絵と見る人では見方が違うのではと思いました。他の作品を見てもいろいろな見方があるんじゃないかと思いました。一番感じたのは一人一人違う見方があるということです」
「見方を変えるといろいろなものに見えてくることが分かりました。たとえば歯を描いていると思ったところはカッターになっていたり,チェンソーになっていたりしました。そういうのはすごく面白いと思いました」
「クラスメイトの描いたものを見て,それぞれの絵をどう感じるかは自由なんだと思いました」

②他者と同じ見方をしたことを述べた生徒

「班の中の人とは同じ意見だった」

③自分の作品との比較について述べた生徒

「自分の描いた絵は現実感のあるものだった。他の人はいろいろな発想があってすごいと思った」
「自分の描いたものと比べると,友達の発想の方が面白かった。こんな感じにも描けるんだと思った」
「私の空想画はあまり細かく描いていなくて,これは何を描いているか分かるものばかりだったけどこの絵はよく分からないものが描いてあったりたまに細かいものがあったり見ていると不思議に思えてくる」

④他者との関わりから自己のイメージの広がりを実感した生徒

「話し合いを通して,自分が見えなかったものを言われることで他の見方ができた」
「1回目の話し合いでは出なかった言葉(単語)が二回目,三回目につれすごく増えていた」
「話し合いの中でいろいろな題名の案が出てきた」

⑤作品の続きを描いたことについて述べた生徒

「絵の続きを描いたり,工夫したりと,とても楽しく描くことができた」
「続きを描くのは難しいと思った。自分の思ったことが描けないところもある。これに苦労するが乗り越えると達成感があると思う」
「自分の絵を考えるより,人の絵の続きを描く方が先の事をいろいろ想像できるし楽しかった」
「描き方が昔の壁画のようだと思った。絵の内容は未来の工業又はエネルギー発生装置みたいなものの仕組みを描いたものに見えた」

第Ⅲ部 考察

 本時の学習活動のねらいを踏まえたクラス全体を総括した評価を述べる。

(1)本時の評価「自己のイメージを広げ表現できたか」について。
 全員が自己のイメージを言葉や絵を通して何らかの表現をし,自己のイメージをつくり出していたことがワークシートや授業後の感想を通して読み取ることができた。
 アンケートは「本時の活動を振り返り気付いたこと」と漠然とした質問であったが,活動後の感想の中で「話し合いを通して,自分が見えなかったものを言われることで他の見方ができた」と「1回目の話し合いでは出なかった言葉(単語)が二回目,三回目につれすごく増えていた」「話し合いの中でいろいろな題名の案が出てきた」と回答した生徒が3名いた。これらの生徒は他者のイメージが自己のイメージを広げることに明らかに影響したことを認知できた生徒である。それ以外にも,自分又は他者の発想又は発言を起点としイメージを広げることができた生徒がいた可能性はあるだろう。また,自分のイメージを他者が受け取り新たなイメージを形成し,そこからさらなる自分のイメージの広がり(他者のイメージを受け取り自分のイメージを形成し,そこからさらなる他者のイメージの広がり)につながった姿を確認することができた。作品の続きを描いたことについて述べた生徒に「自分の絵を考えるより,人の絵の続きを描く方が先の事をいろいろ想像できるし楽しかった」とコメントした生徒がいる。これも他者の描きかけのアイデアスケッチが自己の発想の起点となり新たなイメージを形成することにつながった。これは,個別での学習活動形態の授業の中ではあり得なかった。

(2)本時の評価「自他の表現の違いやよさに気付くことができたか」について。
 アンケート結果を見ると「いろいろな人と意見を交換すると,いろんな意見がたくさんあって,言われると納得したり,とてもおもしろいことが分かったりして,人と意見交換すると,個人の発想は一人一人違うんだと思いました」「話し合いやクラスメイトの作品を見て分かったことは,人によって見方,考え方が違うということ。『◯◯は△△じゃない』『いや◯◯は××にも見えるよ』などと,人それぞれ感じ方が違うんだなと思いました。自分の作品は自然をもとにした空想で,この作品は機械的な感じの空想だと思いました」のように自他の表現や見方の違いの存在を肯定的に受け止める回答が多数存在した。1つの正答でなく多くの正答が存在することに生徒が気付き,その違いに面白さを見いだすことができた。これも個別での学習形態の授業の中ではあり得なかったものである。
 以上のことから,授業で解決しようとしていた課題「生徒は他者と関わりをきっかけとし,自己のイメージを増幅できるようになるのではないだろうか」の有効性を確認できたといえる。

研究授業の参観のコツ(3)

 学習は、人や材料などの多種多様な資源の組み合わせによって成り立っています。そして、その環境の中で子どもは学んでいます。図画工作でいえば、資源は、先生や友達、材料や用具、ワークシート、机、材料置き場など様々です(※1)。子どもはそれを取り入れたり、用いたりしながら、造形活動を続けています。

写真1

写真2

写真3

写真4

 授業研究会は、この“学習の資源”の妥当性を見極める実践です。どれが効果的で、何と何の組み合わせが有効なのか、先生の役割、材料の性質、机の並びは適切かなどを確かめます。また、資源の有効性を一番分かっているのは、資源を用いて造形活動をしている当の子ども自身ですから、先生よりも子どもを観察する必要があります(※2)。

 このような見方で授業を見ていると、先生の意図していなかった資源が、子どもの造形活動を決定的に左右していることに気付かされることがあります。本稿では、その具体例として「紙の大きさ」を取り上げてみましょう。

 「紙の大きさ」とはサイズという意味ではありません。子どもの身体と紙の比率という意味です。例えば、四つ切りは、大人には作品展の定番でしょう。しかし、写真1を見れば分かるように、大人にとっての四つ切りが、子どもにとっての八つ切りです。ということは、子供にとっての四つ切りは、大人にとってはその二倍、ほぼ模造紙の半分くらいになります。その紙を前に「さあ、そこにお母さんの顔を書こうね」と言われたら…多くの大人はぞっとするでしょう。身体の比率と学習内容を十分に考慮した上で、紙の大きさを検討してほしいものです。

 紙と体の動きの関係を考えることも重要です。例えば、写真2は「液体粘土を使って体全体を働かせて描く」という内容です。指先で丁寧に描いています。授業のねらいとは違っていますが、賢明な判断だと思います。なぜなら、肘を起点に手を動かせば、画用紙のサイズ以上の動きになるからです。写真3のように、となりの男子はしっかり紙からはみ出してしまっています。この活動で八つ切りは小さすぎるのです。先生は何度も「手を使って大きくかこう!体全体で!」と言いますが、いや、はみ出すでしょう…。ねらいのような造形活動をしたいのであれば、机いっぱいの大きさで、グループで触発し合いながらの実践が妥当だっただろうと思います。

 紙と他の資源をどう配置するかも大切です。ロール画用紙を廊下に長く広げ、ローラーを使って造形活動を行うという授業がありました。絵の具やローラーなどの材料や用具、ロール画用紙、子どもはそれぞれ図のような配置です。紙は、自分の身体よりはるかに大きいサイズです。そのため、子どもはまず“自分の描く場所”を決めます。そして、材料や用具と紙の間を行き来しながら描きます。自然に画用紙手前のヘリが下(地)、画用紙の向こう側が上(天)になります。結果的に子どもの活動はその天地に制限されたものになりました。先生の意図は、写真4のように色や線が自在に重なり合うイメージだったようです。しかし、それには「紙が模造紙大」「子どもたちが四方向からアプローチできる」「絵の具とローラーがすぐ脇にある」という資源の配置が必要です。紙の大きさは、他の資源との関係ではじめて有効性を発揮するのです。

 図画工作は、子どもが自らの判断で動くことの多い教科です。子ども自身が主体的に学習することよって、教科目標を達成しようとする教科です。教育課程上は、ずいぶん「まれ」な存在だと思います。だからこそ、発達や描画材、題材、材料や用具など、様々な資源を掛け合わせるように考え、そこで子どもを活躍させたいものです。「学習を成立させている資源は何で、それはどう配置されているか」「そこで子どもはどのように学んでいるのか」そんな視点で授業参観してはいかがでしょうか(※3)。

 

※1:広くは学校制度や教育課程なども入ってきますが、学習者自身が意識することは少ないので、授業研究会ではあえて学習者が実感できる資源に限定して見ています。
※2:授業研究会では、学習者の立場から授業をとらえることが重要です。
※3:授業者側は「子どもはこう動くだろうなぁ」「じゃあ、ここにこんなものを用意しておこうかなぁ」となります。

シネマパラダイス★ピョンヤン

(C)Lianain Films

 日本の報道では、その真相、実体のわかりにくい北朝鮮に、ドキュメンタリー映画のカメラが入り北朝鮮の映画製作の実体に迫ったという「シネマパラダイス★ピョンヤン」(33BLOCKS配給)を見た。

(C)Lianain Films

 韓国への脱北者、ミサイル打ち上げ、派手な軍事パレード、ヒステリックな報道キャスター、スタジアムいっぱいのマスゲームなどの報道はともかく、いったいに、あまり知られていない北朝鮮だが、国家プロパガンダたっぷりの映画製作が行われている。
 2008年、シンガポールのドキュメンタリー映像作家ジェイムス・ロンとリン・リーは、ピョンヤンで開催の国際映画祭に招待される。そこで、なんとか北朝鮮の映画事情の実態を撮影できないものかを当局に交渉する。なんどもなんどもメールのやりとりの末、やっと2009年に許可が出る。ただし、撮影にはすべて当局の関係者が同行する。また、撮影した映像は当日に検閲する、という二つの条件が出る。
 カメラが回り始める。演劇映画大学で勉強している若者がふたり登場する。男性はウンボム。父は映画監督、母は女優である。クラスメートの女性はユンミ。父は科学者だが、反対を押し切って映画俳優への道を選ぶ。ふたりとも、いわばエリート、恵まれた環境の若者である。授業が始まる。偉大な将軍様(金正日)の映画への情熱が教え込まれる。演劇映画大学は、映画は娯楽ではなく、北朝鮮という国の考え方を広く伝えるための組織である。教授は言う。「将軍様の思想哲学にのっとって、物語を考え、脚本を書き、愛国の精神で演出し、演技する」と。
 俳優たるものは、演技だけでなく、踊り、歌と、何でも出来なくてはならない。ユンミはダンスを習うが、やや肥りすぎ。ダイエットが必要であるが、そこは若者、つい甘いものに手が出る。ウンボムは、若い医師役の映画の撮影にのぞむ。演技に重みがない、声が軽い、としごかれる。「将軍様に喜びを捧げる俳優になりたい」と言う。俳優になるのを反対していた母親も、いまでは息子を応援する。
 映画監督のピョ・グァンが登場し、広大な撮影所を案内する。いろんな町並みのオープンセットがある。1930年代の中国、1950年代の韓国、1960年代の日本と、すべて将軍様の造ったセットだ。「海外に行って撮影する必要がない」と、ピョ・グァン監督は誇らしげに語る。日本の植民地支配のころ祖父母がひどい目にあったと語る監督は、おだやかな表情なのに、「日本人は人間ではない、獣だ」と言う。いまは「先軍政治50周年」を記念する映画を撮影中だ。日本の圧力で軍が解散になるシーンを撮っている。実際の兵士や若者たちがエキストラで参加している。みんなにやにや笑っている。監督の怒号がとぶ。監督は、「祖国を奪われたシーンだ、笑うな、泣け!」と、みんなの志気を高めようと、必死である。

(C)Lianain Films

 映画は、北朝鮮からオーケーが出た被写体と、検閲をパスしたシーンだけで構成、編集されている。北朝鮮にとって都合のいいところばかり。登場する若者ふたりも、映画監督も、いわばエリート、選ばれた少数の人たちだ。インタビューでは、将軍様や北朝鮮を賛美するコメントばかり。彼らは、他国の映画事情をまったく知らないわけではないと思うが、一切触れていない。
 図らずも、この表面的な現実を見ることは、隠された真実を十分に想像できる。象徴的なのは、途中で何度も停電するシーンがある。検閲で問題になったらしいが、停電などはどの国にでもあるとのことで、検閲をパスしたらしい。
 制限のあるなかで撮られた映画だが、「教育」や「洗脳」の果たす結果が窺えて、いささかの恐ろしさを覚える。批判の許さない国家は、なにも北朝鮮に限ったことではない。中国もいろんな検閲があるし、日本の一部の法案などは、国民にとって何が秘密なのかを秘密にする。もう、批判のしようがない。
 本作を監督したジェイムス・ロンとリン・リーのメッセージにこうある。「多くの人は私たちの撮影対象が“演じている”と言うだろう。しかし、辛抱強く様子を伺いながら、できる限り目立たぬようにすることによって、彼らのあからさまなむき出しの姿をとらえた瞬間はあると思っている」。
 「シネマパラダイス★ピョンヤン」からは、瞬時だが、北朝鮮の「むき出しの姿」を見ることができる。図らずも、裏にひそむ「真実」を垣間見ることになる。

2014年3月8日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラムico_linkほか全国順次公開!

『シネマパラダイス★ピョンヤン』公式Webサイトico_link

監督:ジェイムス・ロン、リン・リー『アキ・ラーの少年たち』
2012年/シンガポール/朝鮮語・日英字幕/93分
原題:The Great North Korean Picture Show
配給:33 BLOCKS