「見て、感じて、話して」~西洋の絵、日本の絵、比べて~(第5学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.基礎データ

題材・単元名

「見て、感じて、話して」~西洋の絵、日本の絵、比べて~

時間数

2時間

題材・単元の
特徴

国内外の美術作品を対話をとおして鑑賞し、主に日本の美術史や歴史の流れ、日本に住む人々のものの捉え方、感じ方に思いを馳せる授業。
【キーワード】モチーフ、表現方法、捉える、感じる

授業環境

活動環境

教室

人数

教師1名 児童30名

教材や用具

教師:みる美術、ノートパソコン、液晶プロジェクタ、スクリーン、ワークシート、児童の絵画作品、マンガやアニメのポスター
児童:筆記用具

コンピュータ
動作環境

使用デジタル教材

提示型デジタル教材『みる美術』
西洋美術 フランス国立美術館連合 編,
日本美術 名品コレクション 編

OSバージョン

Windows 7

その他

自作ワークシート

2.活用事例及び展開

①ねらい
 国内外の歴史的に重要と考えられている美術作品を対話をとおして鑑賞し、西洋と日本の美術作品を比較しながら、主に日本の美術史や歴史の流れ、日本に住む人々のものの捉え方、感じ方について考え、思いを馳せようとする。

②『みる美術』利用の意図
 『みる美術』は日本及び西洋の重要と考えられる美術作品を多く収録し、選択、比較がソフトウェアとして実装されており、容易に使用することができる。
また、比較的高精細な画像データのため、拡大しても鑑賞に堪えうるデータを収録している。

③評価について
美術への関心・意欲・態度

・作品のおもしろさに気づき、気づいたことを言葉で表そうとする

発想や構想の能力
・作品に描かれているものや色や形、友だちの発言から、見つけたり、組みあせたりして、自分なりにおもしろさを感じ取ろうとする。
・作品を比較することで、描かれていたものや描き方の違い、作者の意図などに思いを巡らせようとする。

鑑賞の能力
・作品や友だちの発言から、西洋と日本の作品の相違点を見出し、自分なりに味わおうとする。

④指導計画(総時数:2時間 本時)

学習活動の流れ

指導上の留意点,評価方法

・西洋と国内の作品を鑑賞し、似ている点、異なる点に気づき、おもしろさに気づく。

・楽しく、自由に話せる雰囲気をつくる。
・モチーフ、表現方法に留意させるような作品の提示、発問する。
・比較が容易にできるように、著名なポートレイト、静物画、風景画を選択する。
・作品や友だちの発言から、西洋と日本の作品の相違点を見出し、楽しんで自分なりに味わおうとする。
(発言、表情、ワークシート)

※次年度の社会の歴史学習へ連携させる。

3.本時の展開

①目 標
 国内外の歴史的に重要と考えられている美術作品を対話をとおして鑑賞し、西洋と日本の美術作品を比較しながら、主に日本の美術史や歴史の流れ、日本に住む人々のものの捉え方、感じ方について考え、思いを馳せようとする。

②『みる美術』を活用した授業の展開

学習活動の流れ

指導上の留意点、評価方法


1.めあてを聞き、本時の概要を知る。

◇あたたかで自由に話し合える雰囲気作りをしておく。
◇授業の概要を知らせ、ワークシートに自身のめあてを書かせる。

今日の図工で、どんなことをできたらすてきだと思いますか?



1

2.西洋の作品を鑑賞する。
・アルチンボルド
・ゴッホ
・デューラー
・ドガ
・レオナルド・ダ・ヴィンチ
・ドラクロア
・ルノアール
・セザンヌ
・フェルメール
・レンブラントなど

◇アルチンボルドの作品をはじめに見せ、どのようなもので絵が描かれているのか、見ること、発言することに興味が持てるような雰囲気をつくる。
◇教師自らが子どもの発話をよく聴き、大切に話をつないでいくようにする。
◇何が描かれているかだけでなく、自分の絵の描き方を想起させながら、描き方の違いに気づかせていく。

◆作品や友だちの発話から、作品のおもしろさに気づこうとし、発話しようとしているか。(表情、発言)



2

3.国内の作品を鑑賞する。
・歌川国芳
・写楽
・北斎
・雪舟
・渡辺崋山
・尾形光琳
・黒田清輝
・上村松園
・伝源頼朝像など

◇西洋の作品描き方なども想起させながら、輪郭線を使った日本の描き方と塊を面でとらえて描く西洋の描き方の違いに気づくようにさせる。
◆作品や友だちの発話から、作品のおもしろさに気づこうとし、発話しようとしているか。
(表情、発言)



4.ふりかえりをする。
・自分の気づき
・友だちがいて うれしかったこと

◇ワークシートを使って、今日気づいたこと、よかったこと、がんばれたこと、うれしかったことなど肯定的内容を言語化していく。
◆作品や友だちの発話から、作品のおもしろさに気づこうとし、発話しようとしているか。
(ワークシート)

【ワークシート】

ワークシート

③指導のポイント
・アルチンボルドや国芳の作品をはじめに観せることで、より楽しんで鑑賞をしていこうとする雰囲気づくりをした。
・『みる美術』西洋美術編と日本美術編を同時に起動させ、必要に応じて行き来し、比較させる。
・自由に気楽に話せる雰囲気をつくり、子どもたちの気づきをつないでいくことに留意する。
・今年度秋に描いた児童の絵画作品、子どもたちの好きな有名なマンガやアニメのポスターを用意することで、自分たちの描き方、自分たちの好きな現在のマンガやアニメの描き方をもとに、名画をより比較しやすくした。

④感想等
 『みる美術』は名画と言われる作品を中心に高精細の良質の鑑賞が簡単におこなうことができる。拡大や縮小が容易にできるため、見せたい部分を拡大して見せることができたことはおおきなメリットだった。
西洋編では、子どもたちにとって見たことのある作品、立体感をより感じられる作品、日本編で選択する作品に通じるテーマの作品を選んだ。子どもたちは「見たことあるー!」「きれい!」「本物みたい!」と感想を口にしていった。
 続いて日本美術編は、国芳の作品などアルチンボルドの作風に近いものから見せていき、こちらも子どもたちが見たことのありそうな作品を見せていった。
 ある程度作品一つ一つを見ていってから、「前見た外国の作品と同じところはあるかな?そして違うところあるかな?」と問いかけをした。すると、似たところには「(人、景色など)同じモチーフが描かれている」というものが多かった。
 一方、違いの方では、西洋編で示したもののすべてがヨーロッパのものであるということを伝えた。すると、ヨーロッパと日本、同じ人物や風景、動植物であっても、描かれ方が違うという話を一部の子たちがし始めていった。すると別な子が「(日本の作品の描かれ方は)マンガみたい…」とつぶやいた。するとほかの幾人かの子たちも、その子の気づきに賛同していった。
 そこで、教師が「なんでマンガと似ていると思えるのだろう?」と問いかけ直しをしていった。すると子どもたちは輪郭線に気づいていった。
 特に今回は、西洋美術編と日本美術編の2つを同時に起動させ、比較しながら鑑賞を進めた。子どもたちが意識することなく使っていた輪郭線は、西洋ではほとんど見られないことに気づき、また日本の絵画の歴史の上に、自分たちの好きなマンガやアニメ、そして自分たちの表現があることにも子どもたち自身の対話の中から気づくことができ、話が展開する実践となった。

「おおくぼたんけんだん!~まちじまんカルタをつくろう~」(第2学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名/時数・実施時期

おおくぼたんけんだん!~まちじまんカルタをつくろう~/全20時間 1月~2月

2.単元のねらい

 本校はスーパーやコンビニ,居酒屋,チェーン店などが立ち並んでいる繁華街の中心に位置している。飲食店が多く,店舗の入れ替えが頻繁に行われる。観光客など人の出入りも激しい。一方で,昔からこの地域に住み,地域への愛着や思いを抱いている方も多い。しかし,そのことは子どもたちにとっては無自覚のものであり,そのよさにはなかなか気付いていない。
 本単元は,地域の探検にでかけ,町の人や場所と関わることで自らの思いや願いをもち,地域への愛着をもつことをねらいとしている。地域の人の思いや町への愛情にふれることで,自らも町のよさに気付き,愛着を抱くことができるようにしたい。そこで,本単元では,地域の方と地域交流会を行ったり,一緒にまち探検にでかけたりした。また,まち探検という体験活動を通して気付いたことをカルタづくりやカルタ遊びで表現するという活動を取り入れた。体験と表現という活動が「カルタをつくる」というめあてに向けて双方向に作用する。体験と表現がカルタによって効果的につながれていくことで,児童の気付きの質を高めたり,地域への愛着を深めたりすることができると考えた。

3.単元の目標

・生活への関心・意欲・態度
 地域の様子,学校生活を支えている人々や地域の人に関心をもち,かかわろうとしている。

・活動や体験についての思考・表現
 公共施設の利用や,地域の人とのかかわりなどについて,自分なりに考えたり,振り返ったりして,それをすなおに表現している。

・身近な環境や自分自身についての気付き
 地域の様子や,地域に愛着や思いをもっている人のことがわかり,それらと自分とのかかわりに気付いている。

4.事前準備,活動計画,学習環境の設定

●他教科との関連
 本単元の導入場面では,国語科「冬を楽しもう」を活用した。カルタを楽しむ活動を体験することで,児童は自ら「カルタづくりをしよう」と課題を設定した。自分たちでめあてを決めたことで,児童は主体的に,探究的に活動することができた。

●指導計画の工夫
 体験活動と表現活動が相互に作用するように単元を構成した。地域体験を繰り返し行い,また児童同士の伝え合いの場面や振り返りなどの表現場面を意図的に設定する。本単元では,「とっておきのカルタをしょうかいしよう」というカルタを発表する活動を単元の中間地点に設定した。「これはみんな知らないだろう」とか,「このことはみんなに教えてあげたい!」という「とっておきのカルタ」をグループごとにひとつ選び出す。児童はグループの共通体験をもとにわくわくしながら一枚のカルタを選びだした。「私たちのグループのとっておきのカルタはこれです。公園でみつけた○○がおもしろいと思いました。私たちは知らなかったので驚きました」と発表グループの児童が説明すると,聞いている児童からは「どこにあったんですか?」「知らなかった!」「面白いと思いました!」「いいなぁ!行ってみたい!」など,感想や質問が活発に交流された。個々の気付きをクラス全体で共有することができた。
 体験活動(まち探検)と表現活動(カルタづくり・発表)のスパイラルを繰り返していくことで,単元を通して児童は気付きの質を高めていった。それはカルタの内容をみるとよくわかった。最初の探検で「かたまった かわいいつめたい しもばしら」と書いていた児童が,4度目の体験後には「○○のどうぶつはかせ ひみつを教えてくれたよ」と,その気付きが目に見える事象だけではなく,まちの人やその内面に触れていたからである。振り返りにも「そこには日本語がうまい人ややさしい人がいました。それでわたしはとても安心しました」「さいしょにつくったカルタは文がじまんじゃなかったけど,2回目とかはじまんとひみつがかかれているからいいなと思いました」とあるように,児童自身がまちたんけんの質的な高まりを実感しているようであった。
 こうして体験と表現を意図的に構成していくことで児童の「気付きの質」も高まっていく。

●環境設定
○地域マップ
 地域マップを拡大したものを教室に掲示しておく。マップには新しく見付けた場所などを書き込んだり,探検に行った場所や人の写真や絵を貼り付けたりしていくようにする。

○50音表
 カルタづくりを続けるうちに「50音全部つくりたい」という願いを児童がもつだろう。そこで,50音表を用意し,使った言葉にシールを貼っていく。「今日はこの言葉で始まるカルタをつくるぞ」「まだ7つことばが残っているからまちのじまんをたくさん発見しなきゃ」という願いや思いをもち,複数回の探検も意欲的に臨むことができる。

○カルタ
 カルタは読み札を色画用紙,取り札を厚紙にした。色画用紙は,1回目の探検は青を。2回目は緑,3回目はピンクと,探検ごとに色を変える。そうすることで探検ごとの児童の気付きの変容が見取りやすくなる。また,読み札と同じ色のシールをマップ上に貼る。これまでにどこに探検に行き,カルタにしているかが色とシールの量で把握することができる。このシールは,50音順の表を埋めていく際にも活用する。シールで埋めていく活動を楽しむことができるとともに,児童が,今どの言葉がカルタになっていないかを視覚的に理解することができる。シールで埋めていくこのような活動を低学年の児童はとても楽しむことができる。こうしたことからも児童の意欲の向上が期待できる。

5.単元の流れ

活動[時数]

対話にみる活動の様子(子どもの思考の流れ)

1.おすすめの場所にいこう[3時間]
●地域マップにおすすめの場所を書き込む。
●おすすめの場所にみんなでいく

『大久保のおすすめの場所や好きな場所はありますか?』
「僕はここにあるおおくぼつつじが好きだなぁ」
「通りにあるペットショップがおもしろいよ!」
「八雲公園!」

『みんなでおすすめの場所に行ってみましょう』

2.まちのじまんをみつけよう[7時間]
●まち探検の計画を立てる。
●まち探検をする。
●まち探検で気付いたことや見つけたことをもとに「まちじまんカルタ」をつくる。
●もっと知りたい場所や新しく行きたい場所について話し合い,探検の計画を立てる。

『グループごとにどこにまち探検に行くか相談しましょう』
「僕は消防署の方に行きたいなぁ」
「ペットショップの店員さんにお話が聞きたいよ」

『まち探検でみつけたまちのじまんをカルタにしましょう』
「八雲公園にある小泉八雲の銅像がすごかったよ」
<カルタ:ものすごい はくりょくの こいずみやくもの どうぞう>
「まちにはおおくぼつつじがたくさん植えてあるのがいいと思ったよ。」
<カルタ:ロマンチックな おおくぼつつじ>

3.みつけたまちのじまんを伝えよう[3時間]
●まち探検で気付いたことをもとに「まちじまんカルタ」をつくる。
●つくった「とっておきのカルタ」について発表し,グループごとに遊ぶ。
●地域の方を招き,地域の人とカルタで遊ぶ。

(児)「ちいきのみなさん,今日はぼくたちのつくったまちじまんカルタで一緒にあそびましょう」

(地)「今日はありがとう。私たちも知らなかったまちのことがカルタになっていてとても面白かったです」
「気になるなぁと思ったことがあったらすぐ地域の人に聞いて,まちのことをもっともっと知っていこうね」
「まちの物やお店のことが多いから,地域の「人」をカルタにするのも面白いかもしれませんね」

(児)「今日はアドバイスありがとうございました!もっとまち探検に行きたくなりました。またカルタで勝負してください!」

4.すてきだなわたしがすむまち[7時間]
●地域の人に会いにまち探検しよう。
●地域の人のアドバイスをもとにカルタをつくる。
●探検で関わった地域の人に手紙やカルタを送る。
●まち探検を振り返る。

『地域の人のアドバイスを生かしてカルタづくりができるといいですね』
「ペットショップに行ったら,動物にすごく詳しい動物博士がいて,たくさんお話を聞かせてくれたよ」
<カルタ:プロの動物はかせは すごいぞ!>

『カルタが完成したら,したいことはありますか?』
「友だちのカルタで遊びたい!」
「地域の人が,完成したら教えてねって言っていたし,ありがとうの手紙が書きたい!」

6.評価について

1.カルタから児童の気付きの変容を見とる!
●2回目で<めいろだ 大久保北公園の いすにあったよ>というカルタをつくっていた児童が,3回目のカルタづくりでは,<ゆいいつ きせきてきに のこったから なくならないでほしい>と,まちへの自らの思いをカルタで表現していた。カルタは児童が探検をして感じたことや気付いたことが如実に表れている。まちのどこ(何)を写真に撮り,カルタにしているのか。読み札に書かれている文章から児童の気付きの質の変化や深まりを見とることができる。児童の気付きは探検の回数を増すごとに広がりと深まりをみせた。

2.ふりかえりカードから
●単元のまとめの場面では,ふりかえりカードを書くようにする。ふりかえりカードは絵だけのもの,文字だけのもの,絵と文字が書き込めるものなど,数種類用意しておく。児童は,カードを自ら選択,決定することができる。振り返りは単元のまとめの場面と,中間地点の「とっておきのカルタを発表しよう」で行った。

●児童の振り返り
 「みんながつくったカルタは,写真も文も心がこもっていました。おもしろかったり,頑張ってつくったり,色んな人に色んな事を聞いてつくっていました。(中略)みんな「カルタをつくろう」と思って探検していました。まちたんけんの間,たくさんの人に色々してもらいました。カルタをもっとつくりたいです。これからもカルタを大切にしたいです」
 振り返りには,これからの探検や活動への思いや願い,友だちのグループのカルタを聞いた感想などが書かれていた。また,まとめの場面の振り返りでは,地域の方への感謝の気持ち,カルタが完成したことへの喜びの言葉がみられた。

3.地域の方とのかかわりから
 探検では,地域の方にご同行していただいたり,地域交流会を開いたりと,地域の方とかかわる場面を意図的に設定している。児童は探検を数回繰り返すことで,地域の方との関係を深めていった。自ら積極的にコミュニケーションをとったり,自然と会話したりする姿がみられた。単元のまとめの場面で児童は「地域の人にありがとうの手紙を書きたい」と考えた。地域の方にあてた手紙には「わたしはUさんが大好きです」「またカルタで勝負しましょう」「Mさんのおかげでおもしろいカルタができました」というように,地域の方への愛着や思い,感謝の言葉があふれていた。

7.教師の手立て

●じまんはっけんカメラ!
 探検に出かける際,児童一人一人に手づくりのカメラを「まちのじまんが見つかる不思議なカメラだよ」といって配布した。児童はとても喜び「ほんとだ!」「がんばるぞ!」とつぶやきながら意欲的に活動していた。こうした「探検グッズ」のようなツールは特に低学年の児童にとって楽しいものであり,意欲の向上が期待できる。

●地域の方とまち探検を!
 探検活動では,地域の人に御同行して頂いた。それは地域の方とかかわることで地域への愛着を抱いて欲しかったからである。地域の方と探検を行うことで「Uさん(地域の方)とまたいきたいなぁ」「Mさんといくと楽しいなぁ」と地域の方への親近感をもつ児童がどんどん増えていった。また,地域の方からも「探検がすごく上手になった」「ふだん気付かないことや長年住んでいる私たちでも知らないことがカルタになっていてとてもおもしろいと思った」と活動に初めからかかわって頂いたことで,児童の成長を実感し,褒めてくださった。外部評価を得た子どもたちは本当にうれしそうにしていた。

●地域交流会を開こう!
 単元の中間地点では,地域の方と交流会を行った。地域の方には,児童の意識が地域の「物・こと」から「人」へと向かうようお話して頂いた。アドバイスを受けた児童たちはその後の2回の探検で地域の人を意識するようになった。カルタには地域で気付いた物事だけではなく,「八百屋のおじさん 元気です」というように,人をテーマにしたカルタも増えていった。地域の方との交流会後,児童は「Tさんとまたカルタがしたい」「今日はIさんに会えるかな」と,地域の方と交流することをとても楽しみにしていた。
 ある日,探検をしていたら地域の神社の神主さんが歩いていた。以前お話を聞きに行っていた児童は自然と挨拶を交わす。また,別の日には最寄りの消防署の隊員の方とすれ違った。その方々は以前訪れた際にはお会いしていなかったが,子どもたちは自然と挨拶を交わす。まち探検という活動そのものが児童と地域の人をつないでいるのだと感じた。児童がこんなことをつぶやいていた。「いきなり入ったのに超ラッキー! 消防署もそうだったし,まちの人がみんなやさしくしてくれてすごくうれしい! 大久保っていいなぁ」
探検をしている際,まちの人が大変親切にしてくださったのでとても喜んでいたのだ。これは一度や二度の探検では抱かなかった「地域への愛着」であるといえるだろう。繰り返し体験し,表現すること。人と触れ合い,体験と表現を繰り返すことが児童のこうした思いや願いを育んだと考える。

富岡物語(2)

工女の募集

画像提供 富岡市・富岡製糸場

 大蔵省勧農寮は、富岡製糸場の完成を前にした1872(明治5)年5月、「諭告書」で「御国製糸の品万国に勝れ永遠の御国益と相成り、全国民をして富強の利に潤ぜんが為」と、蚕が金の卵であり、富国の基となることを説き聞かせ、工女の募集を始めました。しかし、応募者がなかったがため、政府は、9月に勧奨状を頒布し、次のように申し渡したのです。

「其管内に於ても従来製糸等営来り業前未熟の者は、別紙工女雇入心得書に照し、人選の上名前取調べ差出可申。尤も追ては養蚕多分有之地方へは製糸場も施設致度、其節は繰糸の教師にも可相成人物の儀に付、夫是差含人選方針取計来十一月二十九日迄に当人富岡製糸場へ差出可申事」

 かつ「富岡製糸場繰糸伝習工女雇入心得書」で、富岡で働く「伝習工女」の年齢を15歳から30歳までとなし、政府―県―戸長役場と行政組織を通じて地域ごとに10人から15人までを半強制的に割当ました。工女の応募者がなかったのは、(1)製糸技術改良の意味が理解されていなかったこと、(2)外国人に生血を吸われるというような流言によって、異人の監督下で働かされることへの恐怖感が増幅されたこと、(3)若い娘が家を離れて他国に出て、西洋人が「親方」である工場の寄宿舎で暮らすという未知な体験への不安が強かったことによります。
 ここに富岡製糸場長尾崎惇忠は、このような不安を払拭すべく、郷里の入間県(現埼玉県)から娘ゆう13歳を呼び寄せ、範を示したのです。

横田英の思い出

 信州松代(現長野市松代町)の戸長横田数馬は、富岡に女子を出せとの県からの布達にもかかわらず、「人身御供にでも上がる様に思いまして一人も応じる者も有ません」という状況に苦慮し、娘の英(えい)を行かせることにします。娘英は、この富岡行きのことどもを、後に「明治六,七年松代出身工女富岡入場中の略記」(『富岡日記』)として描いております。

やはり血をとられるのあぶらをしぼられるのと大評判に成まして、中には、「区長の所に丁度年頃の娘が有に出さぬが何より証拠だ」と申様に成ました。それで父も決心致まして、私を出す事に致ました。私も予て親類の娘が東京へメリヤスを製します事を習いに行きました時、私も行きたい申しましたが、私より下に四人兄弟が有りまして中々忙しう有りましたから許しません。残念に思って居りました所で有りましたから、大喜びで一人でも宜しいから行たいと申しました。祖父は大喜びで申しますには、たとい女子たりとも、天下の御為に成事なら参るが宜しい。入場致候上は諸事心を用い人後に成らぬ様精々はげみ、あする様と申されました時の私の喜びはとても筆には尽されません。

 英は、富岡行きを主体的に受けとめ、「天下の御為に成事」に参画できる喜びを語っていますように、開化の世を全身で受けとめることができた女性でした。富岡の工女にはこのような女性がいたのです。松代からは、英の応募で参加希望者が続出、16名が選ばれて富岡に行くこととなりました。その年齢的内訳は最年少が13歳、14歳が3名、15歳、16歳が各1名、17歳が英を入れて5名、18歳、21歳が各2名、25歳が1名。
 出立を前に父数馬は、英に「国の名、家の名を落さぬ様に心を用る様」にと申し渡し、英は「心さへ慥に持居ますれば身を汚し御両親のお顔のさはる様な事は決して致しませぬ」と母に誓いを述べ出立の日に備えたのです。ここには、国家の存在がきわめて身近なもの、国家を私の手でつくるのだという意識が素直に吐露されているのではないでしょうか。それは、富岡に入場することで、若い国家の形成に参加しているとの思いを支える想いにほかなりません。

富岡入場者の姿

 英は、戊辰内乱の際に父数馬が着た中黒ラシャの筒袖を身にまとう男装姿で、1873年3月末に松代衆16名の一行として出立。この4月に長野県からの入場者180名は、各県が5,6名から多くて20名程度というなかで、地元群馬県につぐ大勢力で、「信州の人」と何かと名ざされたがため、「松代」であることにこだわった由。強い郷党意識が工女を支える意地でもあったのです。
 ちなみに73年4月現在の府県別入場者は、群馬170人、長野180人、入間82人、栃木6人、東京2人、置賜(山形)14人、酒田(山形)6人、宮城15人、水沢(岩手)8人、静岡13人、浜松13人、石川1人、播磨(兵庫)4人、奈良6人、山口36人の計556人。その出身階層は、78年在籍の寄宿工女371人中の148人、約4割が士族出身の子女。そこには、井上馨の姪鶴子・仲子姉妹、長井雅楽の長女貞子ら旧長州藩、山口県の有力者の一族をはじめとする士族とともに、熊本県の郷士徳富家の音羽、蘇峰の姉を見いだすことができます。製糸場では、これら士族とともに職人・商人の子女、被差別部落出身の娘もいました。
 これらの工女には、富岡で最先端をいく「西洋の糸きかい」の技術習得をめざす伝習工女として、全国に小富岡を生み出す尖兵となることが期待されていたのです。このことは、74年に郷里の埴科郡西条村字六工(現松代町)に六工社(ろっこうしゃ)が設立されたのを機に、横田英ら松代出身工女が「教婦」として帰郷するにあたり、場長尾高惇忠が「繰婦勝兵隊」の5字を大書して前途を祝した思いにうかがえましょう。
 六工社は、松代県士族らの出資金に小野組が資金援助をして創立された50人繰のフランス式器械製糸工場でした。工場は「蚕の化せし金貨を求め」る営みでしたが、「教婦」として帰郷した英ら富岡工女はその設備の落差に困惑せねばなりませんでした。それでも英らは、「国益になる糸」を取ることが村の開化につらなり、国益になるとの想いで励みます。

 

参考文献

  • 和田英『富岡日記』ちくま文庫 2014年6月5日

 

六工社の場所はこちらico_linkから確認できます。

フューチャースクールの“その先”へ(前編)

1.「一人一台」時代の幕開け

 「一人一台の情報端末」の環境のもと実施された大規模な実証調査事業、総務省「フューチャースクール推進事業」と文部科学省「学びのイノベーション事業」。これらの事業では、一般的な公立の小学校の普通教室に、一人一台のタブレットPC、電子黒板、無線LAN、クラウドなどで構成されたICT環境が構築されました。当時は、タブレットPCも一般的なものではなかったため、大きな驚きとともに、少し遠い未来の取組みとして捉えられていたように思います。
 4年間に渡る実証校の創意工夫による取組みは、従来のパソコン教室とは異なる、新たな情報通信技術(ICT)を活用した授業モデルを産み出しました。誤解を恐れずに言えば、ハイテクなイメージを抱かせない、コンピュータを普段使いの道具として活用する実践的なモデルです。ICTの特性に合わせて授業をするのではなく、授業の目的に合わせてICTを活用する。そして、何よりも子ども達がいきいきと楽しく学べるようICTを活用する。実証校でみられたこれらの取組みが、教育現場における新たなICT活用の方向性を示したのだと思います。上記の事業は、教育の情報化のあり方を大きく転換させる契機となりました。

2.ICTを活用した新たな授業モデル

 新たな授業モデルとして、3つの学習形態が提示されました。指導者が多数の学習者に対して一斉に指導する「一斉学習」、個々の習熟度に応じて学習する「個別学習」、そして新たな学習形態である、学習者同士が教え合い・学び合う「協働学習」です。
 一斉学習では、主に電子黒板を、黒板と併用して活用します。黒板には、授業の内容を最初から最後まで俯瞰できるよう、ポイントや小課題(めあて)を板書します。電子黒板には、個々のポイントをより効果的に伝達するため、市販のデジタル教材、教員の自作教材、書画カメラの映像等を表示します。電子黒板は、黒板を置き換えるものではありません。その場に「残る情報(黒板)」と「残らない情報(電子黒板)」の特性を踏まえ、両者を使い分けることが重要だということが明らかになりました。
 個別学習では、手書き入力が可能なタブレットPCの特性を活かし、漢字や計算等のドリルを、個々の進捗に合わせて学習することができます。個別に指導することが困難な漢字の書き順などの指導を、コンピュータが代替します。学習履歴を管理することで、苦手な問題を繰り返し解くなど、学習効果を高めることができます。
 協働学習では、タブレットPCと電子黒板を主に活用します。個々のタブレットPCに書き込んだ「考え」は、瞬時に電子黒板に集約し、表示することができます。活性化するコミュニケーション活動を授業の目的に沿ってどのようにコントロールするのか、新たな課題が生じました。初めての取組み故、試行錯誤を重ねましたが、基本形とも呼べる一つのモデルが生み出されました。“課題をつかむ→個人の考え→グループの考え→全体の考え→まとめ”という展開を基本としたモデルです。今までのICT活用とは異なる、コミュニケーション活動に着目した新たな学びのモデルです。

3.一人一台が変えたこと

 ICTは授業にどのような変化をもたらしたのでしょうか。主に3点があげられます。
 第一に「情報量の増加」です。教科書などの紙の教材に加え、紙では表現できない音声、動画などのマルチメディア教材を活用することで、理解を深め易くなりました。また、図形の問題をタブレットPC上で試行錯誤を重ねるなど、体験を通じて学ぶこともできるようになりました。
 第二に「時間の有効活用」です。ICTが持つ、転送・表示が瞬時に行える特性を活かし、資料の準備・提示・配布・回収などの時間を、大幅に短縮できるようになりました。例えば、今まで45分間かかっていた内容の授業を40分間でできるようになり、新たに生まれた5分間を、振り返りや、次の授業のための説明などに使うことができるようになりました。
 第三に「コミュニケーションの活性化」です。やり取りが増える量的な変化のみならず、質的な変化もありました。それは今まで実現できなかった、思考過程の可視化です。課題の「答え」だけでなく、その答えに至ったプロセス、すなわち「何故そのように考えたのか」を限られた時間の中でも共有できるようになりました。学習効果を高めるだけでなく、お互いをより知ることにつながり、ある実証校からはいじめがなくなったとの話もうかがいました。これは、事業開始時に予想もしなかった効果です。ICTというと、機械的な冷たい印象がありますが、人と人とのつながりといった、暖かい部分での効果があったのだと実感しています。

 

蛯子 准吏(エビコ ヒトシ)
北海道大学公共政策大学院教授
ボーズ株式会社入社、長野オリンピック冬季競技大会組織委員会情報通信部通信課主事への出向を経て、富士通に入社し富士通総研出向。内閣府地方分権改革推進委員会事務局上席政策調査員出向

ママはレスリング・クイーン

(c)2013 KARE PRODUCTIONS – LA PETITE REINE – M6 FILMS – ORANGE STUDIO – CN2 PRODUCTION

 映画のタイトル「ママはレスリング・クイーン」(コムストック・グループ配給、クロックワークス配給協力)からは、つい見るのをパスしそうな、いかにもB級、C級のキワモノ映画を連想するが、とんでもない。息子との関係を回復するために、素人の女性がプロレスに挑戦する。静かな感動がじわりと押し寄せてくる。最近では「わたしはロランス」で、ロランスの母親役を演じた大好きな女優ナタリー・バイが、主役となる4人のオバサン・レスラーの一人に扮し、4人のオバサンは、見事なレスリングを披露する。
 北フランスの田舎町、ローズ(マリルー・ベル)は、ある些細な罪で、5年の服役を終えて出所してくる。代理母に面倒をみてもらっていた実の息子ミカエルと再会するが、ミカエルはローズに懐かない。息子と暮らすためには、ともかくローズは働かなければならない。ローズはなんとかあるスーパーで雇われることになる。息子はプロレスの大ファンで、ローズは、自分がプロレスラーになれば息子が心を開いてくれるかも知れない、と考える。ローズは早速、地元で元ヒーローだったプロレスラー、リシャール(アンドレ・デュソリエ)のジムを訪ねる。リシャールは素人同然のローズに、「仲間を集めて来い」と難題をふっかけて諦めさせようとする。ところが、ローズの決心は固い。ローズは、同じスーパーのレジ仲間に声をかける。いずれも意地悪な社長の下で、日頃のストレスが溜まっていて、それぞれ訳ありの人生を送っているオバサンたちだ。
 浮気な亭主を持つ五十路のコレット(ナタリー・バイ)、セクシーな風貌で男好きのジェシカ(オドレイ・フルーロ)、大柄な容姿にコンプレックスのあるヴィヴィアン(コリンヌ・マシエロ)の3人が、ローズの許に集結する。やる気十分の4人を前に、リシャールはコーチを引き受けることになる。
 小さな町である。オバサン4人のプロレス挑戦は、大ニュースとなる。当然、4人の抱えている仕事や私生活に、さまざまな問題がのしかかってくる。それでもオバサンたちは負けない。レスリングのトレーニングが続く。
 フランス映画の滋味がたっぷり。自らの不遇な人生から、少しでも抜け出そうとする気迫に満ちたエピソードが連続する。見ているうちに、つい4人にエールを送りたくなる。
 ローズを始め、コレット、ジェシカ、ヴィヴィアンのそれぞれの人物像、人生が、過不足なく巧みに描かれる。コーチ役のリシャールに扮したアンドレ・デュソリエは名優である。「ミックマック」や、先頃亡くなったアラン・レネ監督の「風にそよぐ草」などで渋い演技を披露している。息子を思う母親の心情を、「闘う」ことで示そうとしたローズ役のマリルー・ベリは、子役の頃からのキャリアが豊富、達者である。
 フランスのプロレスラーでは、アンドレ・ザ・ジャイアントが日本では人気があったようだが、フランスでもプロレスのファン層は厚いようだ。4人のオバサン・チームは、メキシコのチームと対戦する。そのメキシコもまた、仮面のレスラー、ミル・マスカラスといった人気者を輩出するプロレスの盛んな国である。
 女性のプロレスラーを描いた映画に、ピーター・フォーク主演、ロバート・アルドリッチ監督の「カリフォルニア・ドールズ」という傑作があったが、本作も負けてはいないほどの感動作である。監督は、テレビ・ドラマ畑のジャン=マルク・ルドニツキ。本作が映画監督のデビューとなる。
 息子と母親の確執が発端だが、4人のオバサンは不遇を嘆いているだけではない。一歩踏みだし、幸せになるよう邁進する。心震えるフランス映画だ。

2014年7月19日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ico_linkほか全国ロードショー

■『ママはレスリング・クイーン』

監督:ジャン=マルク・ルドニツキ
音楽:フレッド・アヴリル
製作:トラ・ラングマン
出演:マリルー・ベリ、ナタリー・バイ、アンドレ・デュソリエ・オドレイ・フルーロ、コリンヌ・マシエロ、イザベル・ナンティ
フランス/97分/カラー/デジタル
原題:Les Reines du ring
配給:コムストック・グループ
配給協力:クロックワークス
協力:WWEスタジオ

年間指導計画の役割


 「図画工作の評価に困ります」「言語活動をどうすればいいですか」など、よくある質問のほとんどは「年間」という視点を持つことで解消します。今回は、年間指導計画の役割について考えてみましょう。

1.はじめに

 子どもには得手不得手があります。平面は得意だけど立体は苦手、大胆に筆を動かすのは好きだけど精密な描写は嫌いなどです。先生も同じです。どんな題材でも授業がうまくいくわけではありません。絵の指導は得意だけど、工作の指導に困ってしまうという人はいるでしょう(※1)。
 それでいいのです。それが人間です。だから、1年間で絵や立体、工作、造形遊び(※2)など、いろんな題材が経験できるようになっているのです。一つの題材だけで図画工作を語ってはいけません。うまくいったり、いかなかったり、でも年間通せば、案外うまくいっているものです。「1年間で図画工作科」そうとらえることがはじまりです(※3)。

2.評価を年間で考える

 「みんなよく頑張ったから全員Aでもいいですか?」
 気持ちは理解できますが、ちょっと短絡的です。4観点で分析的に評価するのが現行の制度です。
 でも、一つの題材で、全ての観点を評価するのは難しいことです。例えば、2時間で終了する題材の場合、すべてを見ようとすると4観点×40人=160の個別データが必要となります。まず、物理的に不可能です。また、一つの題材で全ての能力を伸ばせる「万能題材」はありません。「発想や構想の能力」に重点をおく題材、「創造的な技能」が活性化する題材など、それぞれに特徴があるのです。
 そこで「1年間かけましょう(※4)」「いろいろな題材を関連付けながら、能力を伸ばしましょう」となります。「ある題材ではB、でも次にはA」などのように、継続的に子どもを見つめ、評価していくことも必要でしょう。それを担保するのが年間指導計画です。

3.手立てを年間で考える

 「相互鑑賞は、本時のどこに入れればいいですか?ワークシートに書かせなくていいですか?」
 なぜ1時間だけで考えようとするのかなと思います。そもそも題材は2時間、4時間、6時間などのまとまりで出来ています。その全体を通して、発想や構想、鑑賞の能力などを育てます。相互鑑賞や書く活動などの手立ては、題材の中で、それが最も効果的なタイミングや方法があるはずです。1時間単位で手立てを考えるのではなく、題材全体を見通して位置付けることが適切でしょう(※5)。
 それでも、単独で見れば題材の手立ては不完全です。相互鑑賞の必要がない題材、話し合う活動が必要な題材など、それぞれに特徴があります。そこで、題材同士を関連させ、手立てをバランスよく配置する必要がでてきます。それを実現しているのが年間指導計画なのです。

4.おわりに

 どの時間、題材でも「最善を尽くす」のは当たり前です。でも、「あーダメだったなあ、」「あー意欲なくしているなあ」が実際です。「全部成功させる」「子どもに万能を求める」のは無理なのです。でも、年間指導計画が私たちを支えてくれるでしょう。「よし!次は先生頑張る」「次はいい顔見せてくれるはず」そう考えれば楽になりませんか?
 年間指導計画は、様々なノウハウを個人ではなく組織やまとまりとして維持・保全する優れた方法です(※6)。それは、先生や子どもの能力の違い、評価活動が本来持つ不十分さ、手立てのバランスなどを補ってくれます。1年かけて子どもを伸ばすという視点をもって、安心して目前の題材に取り組みたいものです。

 

※1:「国語の物語文は好きだけど作文指導は苦手」「算数の図形は得意だけど計算指導が苦手」と同じだろう。
※2:平成20年の指導要領の改訂で「造形遊び」は正式な用語となった。教科書でも明示してほしい。
※3:「造形遊びが分からないからしない」「絵が好きだから工作を減らす」はやめてほしい。
※4:そもそも「関心・意欲・態度」は1学期や複数の題材など、ある程度の幅を持って評価する観点である。
※5:国語や算数でも「全単元で毎回計算練習が入る」「判で押したように作文を書く」はない。
※6:端的に具現化しているのは教科書だ。日本の教科書は、何もかも詰め込んだ海外の教科書とは異なり、年間の指導を上手く体現している。

おれ「日」(第3学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

おれ「日」

2.目 標

○「おれ」の筆使いを理解することができる。
○始筆の位置や接筆のしかたを考え,字形を整え丁寧に書くことができる。

3.評価規準

関心・意欲・態度
○筆使いを意識して書こうとする。

知識・理解
○「おれ」の筆使いがわかる。

技能
○接筆のしかたや「おれ」の筆使いに気をつけて書いている。

思考・判断・表現
○横画の上下の間隔に気をつけて書いている。

4.本単元の指導にあたって

 本学級の児童は,前時までに「一」「川」の学習をしており,横画・縦画・画の止め方については既習である。しかし,「おれ」の筆使いについては全員が初めてであることや,今後,漢字や片仮名を書くうえでよく使う筆使いであることから,より丁寧な指導が必要であると思われる。
 本教材は「おれ」の筆使いを理解するとともに,接筆のしかたについても考えながら,字形を整え丁寧に書くことをねらいとしている。3画目,4画目の始筆の位置や接し方を考えることで,よりバランスのよい整った字になることに気づかせていきたい。
 「おれ」の指導の際には水書用黒板で大きく範書し,始筆の位置や接し方を指導する際は書画カメラと電子黒板を使い,ポイントを丁寧に押さえながら繰り返し範書していく。必要に応じて併用もしていく。このことにより,児童はまずしっかりと見て,ポイントを理解する。そして,そのポイントを意識しながら練習に取り組めるようにしていく。

5.単元の指導計画(全2時間)

学習のねらい

子どもの活動と内容

評価規準の具体例
準備物など

1

「おれ」の筆使いに気をつけて丁寧に書こう。

1.「日」の試し書きをする。
・教科書のお手本を見ながら書くようにする。

・半紙1枚
・教科書

2.「おれ」の筆使いの方法を知る。
・実際に水書用黒板に範書しながらポイントをおさえる。
①穂先は時計の10時の方向
②やや右上がりに筆を進める
③「おれ」は横画の終筆と縦画の始筆が重なったものであること
④一度筆を止め,左上に押し返すようにしておれる
⑤終筆は筆を止め,穂先をつくようにする

・水書用黒板
(マグネット式2枚)

3.「おれ」の練習をする。
・「日」の2画目のみを練習する。
・始筆,おれ,終筆のポイントに気をつけて,繰り返し練習する。

・半紙3枚

4.「おれ」の清書をする。
・全員の作品を黒板に掲示し,お互いの良さを見つけあう。

・半紙1枚
※「おれ」の筆使いに気をつけて書こうとしている。

2
本時

「日」の字形を整えて,丁寧に書こう。

1.前時の学習をふり返り,本時の課題をつかむ。

・教科書
・電子黒板
・書画カメラ
・水書用黒板
(マグネット式2枚)
※始筆・「おれ」・終筆の筆使いや,画の接し方に気をつけて書こうとしている。
・半紙4~6枚

2.「日」の接筆のポイントを知る。
①穂先は常に時計の10時の方向
②2画目はやや長く
③3画目は,縦画の半分よりやや上から始める
④4画目は縦画の内側に接する

3.「日」の練習をする。
・最低4枚は練習する。

4.「日」の清書をする。
・前時に試し書きをしたものと見比べ,自己評価をする。
・全員の作品を黒板に掲示し,お互いの良さを見つけあう。

・半紙2枚
※整った「日」を書いている。
※お互いの良さを見つけあい,自己評価や相互評価ができる。

6.本時の学習

①目 標
○接筆のしかたや「おれ」の筆使いに気をつけて書くことができる。
○書いた「日」を友だちと見せ合いながら,お互いの作品の良さについて考えることができる。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料・準備物

1.「おれ」の筆使いをふり返り,本時の課題をつかむ。

・「おれ」のポイントを確かめながら,範書する。
・3画目と4画目によって「日」のバランスが変わることに気づかせる。

・教科書
・電子黒板
・書画カメラ

画のせっし方に気をつけて,バランスよく「日」を書こう。

2.接筆のポイントを知る。

・水書用黒板に範書しながら,本時のポイントを確認する。
①穂先は常に時計の10時の方向
②2画目はやや長く
③3画目は,縦画の半分よりや上から始める
④4画目は縦画の内側に接する

・水書用黒板
(マグネット式2枚)

3.「日」の練習をする。

・静かに,集中して最低4枚は練習できるようにする。

・半紙4~6枚

4.「日」の清書をする。

・前時に試し書きをしたものと見比べ,自己評価をする。

・全員の作品を黒板に掲示し,お互いの良さを見つけあう。

・2枚清書をし,よりバランス良く書けた方に名前を書くようにする。

・試し書きの「日」と見比べ,良くなった点を発表させる。
・作品を机に置き,その間に片づけをさせる。

・作品が乾いたら,黒板に掲示する。
・友だちの作品の良さについて交流する。

・半紙2枚
・マグネット
(人数分)

ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展―印象派を魅了した日本の美

「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」 竪大判錦絵/37.2×24.3㎝/江戸時代 安政4年(1857)11月/ボストン美術館蔵
William Sturgis Bigelow Collection 11.20206
Photograph©2014 Museum of Fine Arts, Boston

 1639年より鎖国状態にあった日本は1850年代に開国します。世界との貿易が始まると、日本の陶磁器、掛け軸、浮世絵、団扇といった輸出工芸品は西洋人の関心をとらえ、流行となりました。その頃の西洋における日本趣味をジャポニスムと呼びます。
 浮世絵の構図や色彩などは当時の西洋の画家に多大なインパクトを与えたことが知られています。特に印象主義の画家たちは大いに影響を受け、自己の作品に生かしました。クロード・モネ(フランス・1840~1926)、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(フランス・1864~1901)、フィンセント・ファン・ゴッホ(オランダ・1853~1890)の作品には、浮世絵の色彩や構図を参考にしたものや、作品の背景に描き込んだもの,模写がいくつも残されています。
 さて、ここで紹介する歌川広重(1797~1858)の「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」は開国して間もない1857年に発表されました。近景、中景、遠景と奥行き方向に区分された構図を持ち、近景に画面からはみ出すほど大きく梅の枝を描いているのが特徴です。中景と遠景の対象は小さく描かれており、近景のクローズアップを強調しています。この作品がフランスに住んでいたゴッホの目に留まるのは約30年後のこと。1887年にゴッホはこの作品を油彩で模写しました。
 西洋美術に影響を与えた浮世絵ですが、実は当時の日本美術も西洋美術から影響を受けています。鎖国状態の日本もオランダとは貿易を続けており、海外文化を蘭学として取り入れていました。同時に西洋の絵画技法も伝えられたのです。例えば、蘭学の普及期ともいえる1759年頃、円山応挙(1733~1795)は一点透視図法に従って描いた「三十三間堂通し矢図」を残しています。葛飾北斎(1760~1849)も三つわりの法という、消失点や水平線が複数存在する独自の透視図法を編み出し、北斎漫画に記録を残しているのです。広重も多くの作品で西洋的な遠近法を構図に取り入れています。
 東西の文化が互いに影響し合ってきた歴史を踏まえて、本展覧会を見ると、鑑賞がより深まるはずです。

(編集部)

 

<展覧会情報>

  • ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展
  • 2014年6月28日(土)~9月15日(月・祝)

展覧会概要

  • 19世紀後半から20世紀初頭にかけて日本美術が西洋で流行し、多くの芸術家に影響を与えました。その現象はジャポニスムと呼ばれています。本展ではボストン美術館の所蔵品から、ジャポニスム関連の作品,150点を展示し、西洋美術に日本美術が何をもたらし、何が生まれたのかについて迫ります。

世田谷美術館ico_link

  • 所在地 世田谷区砧公園1-2
  • TEL 03-3415-6011
  • 休館日 月曜日(7月21、9月15日は開館、7月22日は閉館)

<次回展覧会予定>

  • 松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて
  • 2014年9月30日(火)~11月24日(月)(予定)

その他、詳細は世田谷美術館Webサイトico_linkでご覧ください。