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月別アーカイブ: 2021年6月
「第三次とりまとめ【補足資料】」の示唆するもの
著者近影 この連載では、SDGsや新型コロナウィルス、世界各地での差別事象と人権運動の広がりなどを受けて、これからの人権教育がいかにあるべきかを考えていきます。2011年に国連の採択した「人権教育・研修に関する国連宣言」においても人権教育とは「人権に関する教育」「人権を通じた教育」「人権をめざす教育」といった側面があるとされています。すなわち人権教育とは、教育内容だけではなく、教育の方法や環境、教育目標(行動力)などをカバーするものだということです。国連などの動きも受けて、日本国内でもいろいろな動きが生まれています。この連載では、そうした国内外の動きを味方にしつつ現代的人権教育のあり方を考えることが課題です。
2021年3月、文部科学省は「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]補足資料」(以下、「補足資料」と略)を発表しました。2008年に「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]」(以下、「第三次とりまとめ」と略)が発表され、注目されてきました。それから12年がたち、国内外にさまざまな動きがあるもとで、「第三次とりまとめ」を現代的に読み解く必要が出てきました。それを文書化したのが、この「補足資料」です。
したがって、「補足資料」には、「第三次とりまとめ」には出ていなかった論点がさまざまに盛り込まれています。この連載の第1回では、「補足資料」を手がかりとしながら、現代的人権教育がいかにあるべきかを3つの観点から論じたいと思います。
①新学習指導要領と人権教育は緊密な関係
第1の観点は、学習指導要領と人権教育との関係がどうなっているかという問題です。「人権教育に取り組もうとしてもどの教科や領域で取り組めばよいのか?」といった疑問がよく出されます。工夫している学校では、すでにさまざまな時間を活用して人権教育に取り組んでいるのですが、文部科学省はどう考えているのかがここでは問題です。
この点について、「補足資料」(4ページ)は「第三次とりまとめ」の次の箇所を紹介しています。
教育課程においては、各教科等の形で「人権教育」が設定されていないため、学校における人権教育は、各教科や「特別の教科 道徳」、総合的な学習(探究)の時間、特別活動、教科外活動等のそれぞれの特質を踏まえつつ、教育活動全体を通じて行うこととなる。
また、現在の学習指導要領に関連しては、新学習指導要領で初めて「前文」がつけられ、そのなかで次のように述べられている箇所(4~5ページ)を引用して、「人権教育の理念とも共通している」と論じています。
これからの学校には、こうした教育の目的及び目標の達成を目指しつつ、一人一人の児童(生徒)が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる
さらに、次の3つの領域と課題について特に必要とされる内容も論じています。3つの領域と課題とは、(1)人権教育の充実を目指した教育課程の編成、(2)人権尊重の理念に立った生徒指導、(3)人権尊重の視点に立った学級経営や学校づくり、のことを指しています。
これらのことからわかるのは、人権教育は人権学習だけを指すのではなく生徒指導や学級経営をも含むということ、新学習指導要領は「第三次とりまとめ」と軌を一にしているということ、学校は組織を上げて人権教育に取り組むよう文部科学省から求められているということです。
②個別人権課題に重点
第2の観点は、個別人権課題に重点を置くということです。文部科学省は、2008年と2012年の2回にわたって全国の小・中・高校を対象に「人権教育の取組状況調査」をおこないました。この2回の調査で浮き彫りになったのは、日本における人権教育が、ともすれば自己肯定感や多様性尊重など、情緒的ともいえる点を重視して進められ、知識やスキルを軽視しているのではないかということです。この点については、調査の中心となった「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議」の席上でも危惧の念が表明されました。
それに対して「補足資料」では、個別人権課題をとりあげ、それぞれについて近年の動向を振り返っています。それらのうちでも、部落差別、アイヌ民族、在日外国人、ハンセン病については、令和3年度向け「人権教育研究推進事業公募要領」において、次のように述べています。
本事業において取り扱う人権課題については、全ての事業で「子供」を必ず取り扱うこととする。本項(1)④及び(2)④で扱う重点課題は、「同和問題」、「アイヌの人々」、「外国人」、「ハンセン病患者等」とし、重点課題を取り扱う企画提案書を優先的に採択する(以下「優先採択」という)。なお、重点課題以外の人権課題について企画提案することを妨げない。
つまり、文部科学省が推進する人権教育にあっては、これら「同和問題」を筆頭とする4種類の課題に積極的に取り組むことが奨励されているということです。
③行動力育成こそが現代的課題
第3の観点は、行動力こそが現代的な目標だということです。従来、人権教育の目標は「差別してはいけない」と教えることだと誤解されてきた面があります。先に述べた情緒的目標の端的な例です。1947年に日本国憲法が施行されて以来、「差別してはいけない」ということそれ自体は多くの国民にとって「常識」となってきました。「教えられなくてもわかっている」事柄になったということです。それ以後の人権教育の課題は、「差別してはいけない」ということではなく、どうすれば差別をなくせるのか、そのために自分が何をすればよいのか、といった点を学ぶことになりました。子どもたちの側はそのような内容を期待しているにもかかわらず、学校の人権学習では「差別してはいけない」という結論にとどまることが多いのが実情です。近年になればなるほど、教員と子どもとのこのギャップが大きくなっているようです。
これからの人権教育では、身の回りで差別的な言動が起こったときに自分がどうすればよいのか、社会のどういう面に差別の根っこがあるのか、差別のある社会を変えるために自分に何ができるのか、といった点を考えるべきだということになります。
「補足資料」では以上のような点を特に重視しています。では、わたしたちの学校では、具体的にどうしていけばよいのでしょうか。これがこの連載の課題です。その点を考えるために第2回では、SDGsについて論じてみたいと思います。
資料:国連人権教育・研修宣言
Webマガジンまなびと:「学び!と人権」Vol.01
Webマガジン:「まなびと」にて、大阪教育大学教育学部名誉教授 森実先生による新連載「学び!と人権 ―現代的人権教育をめぐる課題―」がスタート! Vol.01 “「第三次とりまとめ【補足資料】」の示唆するもの” を公開しました。
Webマガジン「まなびと」にて、大阪教育大学教育学部名誉教授 森実先生による新連載「学び!と人権 ―現代的人権教育をめぐる課題―」がスタートしました!
[ここに注目!]シンキングツールの活かし方
機関誌・教育情報:「社会科NAVI」Vol.28
機関誌・教育情報:「社会科NAVI(小・中学校 社会)」Vol.28 “[ここに注目!]シンキングツールの活かし方” を追加しました。
機関誌・教育情報:「その他の教育資料」No.55
機関誌・教育情報:「その他の教育資料」No.55 “図工のお悩み相談室 No.3” を追加しました。
図工のお悩み相談室 No.3
my実践事例:小学校 社会 No.024
my実践事例:小学校 社会 No.024 “「住みよいくらし」(第4学年)”を追加しました。
「住みよいくらし」(第4学年)
1.単元名
「住みよいくらし」(水はどこから)
2.目標
私たちの生活に必要な飲料水(水道水)を提供する事業について、供給の仕組みや経路、東京都内外の人々の協力などに着目し、見学・調査したり地図などの資料で調べたりし、それらの事業が果たす役割を考え、表現することを通して、飲料水(水道水)を提供する事業は、安全で安定的に供給できるように進められてきたことや、地域の人々の健康な生活の維持と向上を支えていることを理解できるようにする。私たちの生活に必要な飲料水(水道水)を提供する事業について、学習問題を主体的に調べ、解決しようとするとともに、学習したことを基に、水を大切な資源として捉え、他のライフライン(ガス、電気)の使い方も見直し、有効に利用しようとする態度を養う。
3.評価規準
・飲料水を提供する事業について、供給の仕組みや経路、東京都内外の人々の協力などを基に飲料水の供給にかかわる事業は、安全で安定的に供給できるように進められているとともに、それにより、地域の人々の健康な生活の維持と向上に役立っていることを理解している。
・地域の人々にとって必要な飲料水の供給のための諸活動について、見学、調査したり地図などの資料で調べ、必要な情報を集めて読み取ったり白地図や図表にまとめたりしている。
・ごみの処理の仕組みや再利用の様子、県内外の人々の協力などを基に、ごみの処理や再利用の事業にみられる仕組みや人々の協力関係と地域の人々の生活環境の維持・向上を関連付けて考え、その事業が果たす役割を文章や関係図に表している。
・学習したことを基に、地域の人々の健康や生活環境を守るためにライフライン(水、電気、ガス)等の使い方のきまり等を考え、地域社会の一員として、自分たちができることを考えたり、選択・判断している。
・飲料水を供給する事業の仕組みに関心をもち、現在に至るまでにどのように安全で安定的に供給できるよう改善されたのか、予想をもとに学習計画を立て、問題解決の見通しをもって主体的に学習問題を追究・解決しようとしている。
・地域の人々にとって必要な水やライフライン(ガス、電気)などを確保するために、水などを資源として捉え、節水等に向けて地域の一員として自分たちができることを考え、協力しようとしている。
4.本単元の指導にあたって
本小単元は、内容(2)の「人々の健康や生活環境を支える事業について」に関する内容で構成している。事例としては、ライフラインについて簡単に概要を学習し、飲料水を提供する事業を中心に学習を行う。また、「いかす」段階でガスを供給する事業について取り上げることで、ガスも飲料水と同じように地域の人々の生活の維持と向上(安全・安心)に努めていることを理解することで、節水や節電等の自分たちができることを選択・判断することに繋がると考える。
単元計画のつかむ段階では、東京水のペットボトルの写真資料を取り扱う。売られている水が、身近な蛇口から出ていることを理解させ、普段飲んでいる水がどこから来ているのか、また、どのようにきれいな水にしているのか疑問をもたせ、学習問題をつくる。水道水源林から蛇口までの資料を見せ、どこを調べれば良いか学習計画を考える。
そこから、水道水源林、ダムやせき、浄水場、給水所、を調べていく。調べていく中で、水をきれいにする工夫やたくさん送る工夫を学習し、学習問題に対する自分の考えをまとめる。
「いかす」段階では、ガスを供給する事業について取り上げ、既習の飲料水を供給する事業者との共通点や相違点を見つけることで、水、ガスなどのライフラインは、私たちの生活に欠かせなく、安心・安全に届けられていることを理解する。この学習をすることで次時のライフラインを持続可能にするために自分たちができることを選択・判断する活動がより良く考えられる。
5.単元指導計画(全11時間)
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小単元名 |
時 |
子どもの意識の流れ |
○目標 ●評価 |
|---|---|---|---|
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1 |
私たちの生活は、水、電気、ガスをたくさん使っている。ライフライン(水、電気、ガス)がないと生きていけない。 |
○私たちの生活に、ライフラインが欠かせないこと、に興味・関心をもつ |
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学習問題、学習計画を立てる |
2 |
ペットボトルで売っている水が蛇口から出るなんて知らなかった。蛇口の水がどこから来ているのか調べたい。 |
○水道の仕組みに着目し、飲料水の大切さから問題を見出し、学習問題、学習計画をつくる。 |
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3 |
水道水源林が、雨水をきれいにしていることがわかった。 |
○水道水源林の働きについて理解する。 |
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ダム・せきの働き |
4 |
ダムは、水をためて川に流す水を調節していることがわかった。 |
○ダム・せき林の働きについて理解する。 |
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浄水場の働き |
5 |
浄水場は、水を高度浄水処理できれいにしていることがわかった。 |
○浄水場の働きについて理解する。 |
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水道管、給水所の働き |
6 |
水道管が、水漏れしないように点検したり、給水所から水を調節したりしていることがわかった。 |
○水道管、給水所の働きについて理解する。 |
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水をきれいにする工夫 |
7 |
多くの検査をして、安全な水を届けていることがわかった。 |
○水を安全に供給する工夫について理解する。 |
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水をたくさん届ける工夫 |
8 |
水をたくさん届けられるように導水路などがあることがわかった。 |
○安定的に水を供給する工夫について理解する |
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9 |
水は、安全・安定的に届けられていることがわかった。 |
○学習問題に対する自分の考えをまとめる。 |
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10 |
ガスも水と同じように、安全で安定的に私たちの所に届けられていることがわかった。 |
○ガスの供給について、飲料水と同様に安全で安定的に供給していることを考えることができる。 |
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水、電気、ガスのライフラインを、これからも使うために自分たちができることを考える。 |
11 |
ガスや水などのライフラインは、これからも使っていくために私たちが、節水やガスの無駄遣いが無いようにしていきたい。 |
○ライフラインを今後どのように使うのか考える。 |
※本単元は、一般社団法人日本ガス協会の授業支援パッケージ(単元オリエンテーション、「飲料水の学習」を生かしてガスについて取り扱った発展的学習「Aプラン」を参考に作成。
(URL)http://www.kyoiku-gas.com/top/index.html
(URL)https://www.gas.or.jp/kyoiku/
6.本時の学習
ガスを供給する事業について、飲料水の供給に関する学習で獲得した概念(安全で安定的に供給していること)を活用して具体的な事実を調べ、ガスも飲料水と同様に安全で安定的に供給していることを考えることができる。
※前時(「飲料水」の学習のまとめの時間)には、飲料水を届けるための具体的な工夫 をもとに「安全で安定的に供給していること」を押さえておく。
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主な発問・指示/予想される子どもの反応 |
*資料 ・指導上の留意点 ◎評価 |
|---|---|
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(9)今日の課題について、わかったことをまとめましょう。 |
・まとめさせるときには、本時の課題を改めて確認させる。ここでは、「安全性と安定性」がガスについても言えるのか、言えないのか、本時の始めの考えと比べて最終の考え(結論)を書いてから、その理由や根拠を書かせるようにする。 ◎飲料水の学習で獲得した概念(安定性と安全性)をガスの供給において応用・転移することができたかどうかを評価する。 |
8.資料
※資料は、一般社団法人日本ガス協会の授業支援パッケージ(無償)を利用。
(URL)http://www.kyoiku-gas.com/top/index.html
(URL)https://www.gas.or.jp/kyoiku/



