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月別アーカイブ: 2022年1月
こんなときどうしよう?③ 見方・考え方を働かせるって?
(1)見方・考え方を働かせた姿
平成29年告示の学習指導要領では、全ての教科目標に「見方・考え方」が入りました。では社会科における見方・考え方を働かせた姿とは、子どものどんな姿をいうのでしょう。それは例えば…
というように、単元を通して学習してきたことからどんなことが分かったのかということです。いわゆる他のところでも同じように使っていくことができる知識(汎用性のある知識)といえます。これを、概念的知識といったり、深い学びといったりします。それでは、どうしたら深い学びになっていくのでしょうか。そこには、「見方・考え方」が関係してきます。それでは第5学年「日本の国土と人々のくらし」の単元を例にして進めたいと思います。
(2)「見方・考え方」を働かせた実践例
【寒い土地のくらしー北海道旭川市―】
「2月の北海道旭川市のようす」の写真を見て、このような問いが生まれました。
これらに着目して調べていくと、社会的事象の意味や本質に迫ることができるということです。見方・考え方とは、社会的事象の事実をきちんと読み取ることができるということです。このような視点で見ていくと、例えば地域を見る見方ができ、子どもたちは、他の地域を見るときに、その見方を使って自分で学びを進めていくことができるようになります。その次の段階では、捉えた事実を比較・分類したり総合させたりしていきます。
○旭川市の人々は、気候に合わせて、どのようなくらしをしているのだろう。
○旭川市では、気候を生かしてどのような農業をおこなっているのだろう。
○旭川市は、なぜ冬でも多くの観光客がおとずれるのだろう。
この段階では捉えた社会的事象を比較・関連付け、総合などして、あるいは地域の人々や国民の生活、つまり社会と関連付けて社会的事象の特色や意味に迫ります。
(3)「見方・考え方」とは?
学習指導要領によると、「社会的事象の見方・考え方」は、次のように捉えています。
つまり、位置や空間的な広がり(地理的環境と人々の生活)、時期や時間の経過(歴史と人々の生活)、事象や人々の相互関係(現代社会の仕組みや働きと人々の生活)に着目して問いを立てて考えることです。例えば、先ほどの第5学年「日本の国土と人々のくらし(寒い土地のくらし)」を例にします。この単元は、地理的環境と人々の生活になるので、「位置や空間的な広がり」の視点を中心に時間や相互関係も活用して問題解決をおこなっていくことが考えられます。
(4)見方・考え方を支えるには「問いを工夫すること」
これまで見方・考え方について紹介してきましたが、次は、その見方・考え方を使って、深い学び=汎用性のある知識にしていくには、どうしたらよいのか考えていきましょう。
(2)の「寒い土地のくらし」の例では、位置や空間的な広がりに関する問いの解決を積み重ね、その後、解決した内容を人々の生活等と関連付けて社会事象の本質や意味に迫りました。このことから問いが重要な役割を果たしていることが分かると思います。次は、問いについて考えていきましょう。
「問い」は、児童が自らもつようになれば理想的ですが、いきなりできるようになることは期待できません。初めは、教師から問いかけることも必要です。また、単元を通す「学習問題」や本時の課題も含め、すべて「問い」と考えることができると「学習指導要領解説 社会編」にも示されています。
(3)の図2で示した図に合わせて、問いの例を考えてみましょう。
○位置や空間的な広がり(「場所」「分布」「範囲」)に着目して
「どのような場所にあるか?」
「どのように広がっているか?」
○時期や時間的な経過(「起源」「継承」「変化」)に着目して
「なぜ始まったのか?」
「どのように変わってきたのか?」
○事象や人々の相互関係(「工夫・努力」「関わり」「協力」)に着目して
「なぜこのような工夫をしているのか?」
「~はどのようなくらしをしているか?」
社会的事象の様子や仕組みなどを捉えるように、意図的に問いを構成して授業をおこなうことが大切です。
また、問いは「事実を問う問い」と「意味を問う問い」に分けることができます。
|
位置や空間的な広がり・ |
事象や人々の相互関係 |
|
|---|---|---|
|
「事実」 |
・~はどのような場所にあるか? |
・~はどのようなくらしをしているか? |
|
「意味」 |
・なぜそこにあるのだろう? |
・なぜ~しているのだろうか? |
図3 旭川市をおとずれる観光客数
(2018年 旭川市役所資料) 例えば、「北海道旭川市は、どのようなところなのだろう。」と事実を問うことで、「月別平均気温が0度を下まわる月が4か月ある」「雪がふる月が8か月あり、80cmの雪が積もる日がある」ということが分かります。さまざまな事実を調べた後に、「旭川市をおとずれる観光客数」のグラフを見せ、「なぜ冬でも観光客がおとずれるのだろうか?」と意味を問うと、寒い気候や雪がふることを生かして観光客を増やそうとしていることや、気候や地形を生かして人々が生活していることに気が付きます。
このように教師が「問い」を大切にして授業を設計していくことで、児童が「見方・考え方」を働かせて、主体的に追究し、汎用性のある知識(=深い学び)に達することが期待できます。
Webマガジンまなびと:「学び!と社会」Vol.05
Webマガジン:「学び!と社会」Vol.05 “こんなときどうしよう?③ 見方・考え方を働かせるって?” を公開しました。
こころのひろば「和菓子を通じて子どもたちへ伝えたいことがある[高田海道]」 ほか
機関誌・教育情報:「どうとくのひろば」No.31
機関誌・教育情報:「どうとくのひろば」No.31 “こころのひろば「和菓子を通じて子どもたちへ伝えたいことがある[高田海道]」 ほか” を追加しました。
滋賀大学教育学部附属小学校 第75回 教育研究発表協議会
滋賀大学教育学部附属小学校 第75回 教育研究発表協議会を追加しました。
小学校 生活:「生き活きうぃーくる」第109回
生活科ブログ「子どもがかわる 授業がかわる『生き活きうぃーくる』」:第109回「どう習慣化する?『児童の家庭学習』と『教職員のICT活用』」
を追加しました。
Webマガジンまなびと:「学び!と共生社会」Vol.24
Webマガジン:「学び!と共生社会」Vol.24 “北欧諸国に学ぶインクルーシブ教育の本質”を追加しました。
北欧諸国に学ぶインクルーシブ教育の本質
今回は、北欧のフィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの4か国のインクルーシブ教育への取り組みを取り上げます。障害のある子どもとない子どもが共に学ぶことが即インクルーシブ教育ではありません。小学校、中学校の先生方にはこのことを知っていただきたいのですが、北欧諸国の取り組みは「インクルーシブ教育の本質」を教えてくれます。(*1)
各国のインクルーシブ教育への取り組みの特徴
フィンランド
フィンランドは、日本でいう特別支援学校は残しつつも、できるだけ多くの子どもが地域の学校で学ぶことができる仕組みを整えてきました。つまり、特別支援学校はあるもののニーズがあるからといって安易にそこへの就学を進めるのではなく、基礎学校(小・中学校)での支援を強化することに力を注いでいるのです。そのために三段階支援という仕組みやCo-teaching(協働による指導)という方法が用意されています。三段階支援は段階的にインクルーシブ教育を促進しようとするものです。まずは、「一般支援」として通常の学級の担任がすべての在籍児の困難に早期対応し(第一段階)、それが十分ではないと評価された場合は「強化支援」を行う(第二段階)、それでも十分でない場合は個別に「特別支援」を行う(第三段階)という仕組みです。Co-teachingというのは、複数の教員が協力し合って授業を行うという形態です。フィンランドは、PISA調査において優秀な成績を残していますが、こうした支援の積極的活用も功を奏してしているようです。
スウェーデン
スウェーデンも特別支援学校はありますが、原則として場にかかわらず児童生徒一人一人のニーズに応じた教育内容を保障することを重視しています。特徴的なのは特別支援学校が知的障害のみを対象としていることです(*2)。それ以外の障害のある子ども(聴覚障害を除く)は、教員や補助教員の指導の工夫の下で原則として通常の学校で学び、コメディカルスタッフ(編集部注:医師・看護師以外の医療従事者)がそろった専門機関が支援するという形態をとっています。
また、特別支援学校の多くが、通常の学校と敷地を共有している点も大いに示唆を与えてくれます。様々な形態で共に学習が生活をすることが可能となり、インクルーシブな教育環境となるように配慮されているといえます。
ノルウェー
ノルウェーでは、イタリアと同様に特別支援学校が原則廃止されています。学習指導要領を一元化し、特別なニーズがある子どもは自治体の教育心理研究所の支援を受けて通常の学校で学んでいます。そのために常に教育環境を分析して、望ましい学習環境を開発していこうとする取り組み(LPモデル)に力が注がれています。一人一人の子どもを取り巻く環境(家庭・学校・教員・医療機関等)を組織的に整えることで、子どもの可能性を伸ばそうとしているのです。環境の中では教師の指導力が最も重要だということは言うまでもありません。
また、「積極的行動とメンタルヘルス(PALS)」という、学校全体で取り組む研修・指導モデルもあります。積極的行動支援のために肯定的な言動や適切な行動の教示によってより良い学習環境を構築することをねらいとしたものです。
デンマーク
デンマークには特別支援学校や特別支援学級もありますが、多様な形態で地域性を反映したニーズに柔軟に対応した教育が行われています。全ての子どもへ個別の配慮からスタートし、特別支援教育で対応するかどうかの判断は、教育心理研究所(PPR)の心理士、言語療法士、社会福祉士等の専門スタッフが行っています。子どものニーズを判定し、教員や保護者に学校や家庭での様子についても聞き取り、指導計画作成も行います。また、デンマークには、ペダゴーという指導員の制度があり、校内で特別な支援が必要な子どもの支援にあたっています。ペダゴーは教員同様に大学の専門課程で養成されていて、学校では、一人一人の子どもの生活支援や近年では学習の支援も行うようになっています。行動・情緒面の支援を専門に行う教員(AKT)も養成され、学校での重要な役割を担っています。ノルウェーのLPモデルやPALSも活用されています。
北欧のインクルーシブ教育から学ぶこと
北欧諸国のインクルーシブ教育への取り組みの一端を紹介してきましたが、形態は異なっていても、特別支援からスタートするのではなく、すべての子どもへの支援という視点からスタートするところが各国で共通しています。インクルーシブ教育は多様な子どもが存在することを前提としているのであって、通常の学級が従来の形態のまま特別な支援を必要とする子どもを受け入れるということではないのです。
また、学校がすべてのことを担うのではなく、学校内外の多職種の人材がチームで関わっているところも各国で共通しています。日本でも専門家との関わりの機会は増えてきています。専門的なところは専門家に任せ、小・中学校の教員であってもそれをしっかり活用できる力をつけることが大事だということを教えてくれています。
最後に、参考にした書物からインクルーシブ教育の本質を突いている北欧の研究者の感想を紹介しておきたいと思います。
「日本の学校を訪問する機会があった。(中略)来客者にはスリッパが用意されていた。綺麗にされていて素晴らしいと思う反面、ワンサイズのスリッパしか用意されておらず、筆者もそして他の男性研究者も足が入らなくて困ってしまった。インクルーシブ教育を研究している者の視点では、『ある学校の中に一つのサイズのスリッパしかないのはインクルーシブ教育ではなく、いろいろな場面や設定に対して柔軟でなければならない。』」(*1)
「思いやり」や「おもてなし」という心地よい響きとは裏腹に、日本のインクルーシブ教育が見逃しがちな一面(画一的、同調主義)を指摘しているようにも思えます。
【引用文献】
*1:今回の紹介に際しては、石田祥代・是永かな子・眞城知己編著『インクルーシブな学校をつくる 北欧の研究と実践に学びながら』を主に参考にしました。この本は、長年の現地調査の基づいた研究蓄積に加えて、北欧各国の研究者らも参加したシンポジウム報告などを基に刊行されたもので、信頼度が高いと判断したからです。
*2:https://www.jiji.com/jc/v4?id=202008stsg0005
サリネンれい子「学びと発達の権利」とは? 福祉の国、スウェーデンの特別支援学校事情」
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