Webマガジンまなびと:「学び!とPBL」Vol.51

Webマガジン:「学び!とPBL」Vol.51 “福島市高校生フェスティバル2019”を追加しました。

福島市高校生フェスティバル2019

1.3人からのスタート

図1 前夜祭 イルミネーションに集まる人々 高校生フェスティバル2019を、高校生の言葉でふり返ってみましょう。まずは、副実行委員長の言葉です。この年の実行委員は3人からスタートしました。

 目的が明確になるほど、本当に3人では何もできないと実感し、どうしたら仲間が集まるか本格的に考えました。普段高校生が使うSNS、特にInstagram、LINEに目をつけたところ、最初はとても手こずりましたが、コツをつかんでからはあっという間に3人から8月には40人に、10月には60人以上の規模に増やすことができました。
 8月中旬には企画が大まかに決まってきたのですが、中身をよく見ると目的にフィットしていない企画になっていて8月後半に目的を再確認した後、新しくまた1から企画案を組み立てることになってしまいました。そのために、改めて目的の大切さや、私たちが高校生フェスティバルで何を伝えたいのかをメンバー全員で確認することができました。

2.それぞれの特技を活かして

図2 自分たちで設計し作り上げたロゴ 次は、初参加の工業高校の生徒の言葉です。作図やものづくりが得意な高校生です。

 当初は「材料さえ揃えばすぐにできる」と楽観視していました。ですが実際に作業に移ると、材料が変形しやすい素材で寸法通り行かなかったり、構造上組み立てが難しかったりとなかなか一筋縄では行かず苦戦をすることも多く、その都度先生や大学生の方々からアドバイスや協力を頂き何とか完成にこぎつけることができました。
 高校生フェスティバル前日の試験点灯の際、通りかかった人々がイルミネーションにカメラやスマートフォンを向けている姿を目にし、大きな達成感と喜びを感じました。
 今回は限られた期間の中で0から形にする創造力そして実行力、問題に取り組む解決力、1つのことに対して皆で取り組む団結力、突然のことにも臨機応変に対処できる対応力などオブジェを通して様々な力を身につけることができたと実感しています。また、ものづくりを学ぶ者として作り上げることの難しさだけでなく出来上がった“もの”が人々に与える感動や喜びといった学校の授業だけでは学べない本質的な部分についても大きな学びとなりました。

3.高校生がまちづくりを考える

図3 クラウドファンディングで作ったTシャツ 「高フェス2019」の目玉に位置づけていた「福島市を盛り上げる作戦会議」の責任者の言葉です。彼の本気度には目を見張るものがありました。

 この会議はどのように行っていくかの全体共有がうまくいかず、当日ギリギリまで話し合う状態でした。前日には、当日スムーズに進めることができるように北海道の高校生と一緒に10のFを一つ一つグループ分かれて土台の部分を考えました。ですが、なかなか意見が出ずうまく進みませんでした。しかし、北海道の高校生が福島市に住んでいる私たちにはあまり気づかないことを出してくれて、客観的に物事を考えることが重要だと感じました。「福島市民は優しい」や「過ごしやすい」など、普段当たり前のように生活している私たちには分からないことを教えてもらえた良い機会になりました。
図4 福島市を盛り上げる作戦会議の様子 そうして迎えた当日、実行委員の高校生だけではなく来場していただいた方々にも参加していただき一緒に考えてもらいました。最初は初対面ということや年齢の差のために、話すことを躊躇ってしまうこともありました。しかし、時間が経ち、話が盛り上がってくると、意見の交換も活発になり、とても中身の深い話し合いとなりました。その中で出た意見をいくつか紹介します。
Future…若者が自信や誇りを持てる街
Fun…自分も相手も楽しめるようなイベントがある街
Favorites…「田舎っぽさ」と「都会っぽさ」のバランスが取れた街
Fresh…残すベき考え方と若者の新しい考えを融合させた街

4.実行委員長の総括

図5 台風19号と大震災を関連付ける 最後が、実行委員長の総括です。このプロジェクトに中学生の時から参加し、5年間もこのチームを支えてきました。

 今年も「福島市高校生フェスティバル2019」が無事に開催されました。今回は、台風19号によって被害を受けた地域も多く、開催自体が危ぶまれましたが、こんな状況だからこそ高校生のみなぎるパワーを福島に届けたいという思いから開催に踏み切りました。フェスティバル開催に際して、当日に「あなたたちが福島を担ってくれれば未来は明るいね!」と言われたり、今年から始めたクラウドファンディングで「ネット環境がないのだが、どうにかしてあなたたちを応援したい」と言われたりととても感動し温かい気持ちでいっぱいになりました。あの1日は本当にあっという間でした。あれほどに長い時間を費やして考えた企画も、惜しいと思うほどに一瞬で過ぎ去っていきました。たとえ外から見てそれが「未完成」であっても、私たち自身が最後まで本気(ガチ)でやり遂げられたことは、私たち一人ひとりにとって大きな自信になりました。
図6 高校生のパフォーマンスに大きな期待 この活動で得られる経験は、机に向かって一生懸命に勉強したことと同じくらい、あるいはそれより大事なものだと私は感じています。未だにこの活動を自分の言葉で一言で相手に伝えられないのは難点ですが、私がこれまで約5年間にわたって携わってきた、続けてきた意味がここにあります。たしかに、みんな同じ授業をみんな同じように受けて、テストを受けて学力を身につけ、進学して、順調に人生を歩んでいくことも立派なことかもしれません。しかしその中で、自分が本当にやりたいと思って受ける授業、やりたいと思ってやったこと、自分で考えて失敗を恐れることなく挑戦すること、そのための仲間と出会うことができる機会はどれほどあるでしょうか。自分から進んでその機会を見つけなければ、それに出会うことは、私を含め現代の高校生にとってそれほど多くはないのかもしれません。私はこの活動を通して、自分のやりたいことを見つけ、仲間と出会い、それに挑戦し、大きく成長しました。この活動が本当に素晴らしいからこそ、より多くの人が携わり私たちを超える感動を味わってくれる人が増えることを願っています。

図7 今年も札幌の高校生がラストを飾る 実行委員の中には、不登校でずっと学校に行っていない生徒も何人かいます。彼らは、ここでなら自分らしさを発揮できると、終始がんばってくれました。それを学校側も理解し応援し、高校生フェスティバルの活動が少しずつ市民や行政にも受け入れられた証だと思います。

九九の ひょう〔かけ算の きまりを 見つけよう〕(第2学年)

1.単元名

「九九の ひょう〔かけ算の きまりを 見つけよう〕」(第2学年)

2.単元目標

 乗法に関して成り立つ性質について理解し、数量の関係や既習の乗法に着目して簡単な場合の2位数と1位数との乗法の計算の仕方を考え説明するとともに、九九の表の考察を振り返り、身の回りから乗法の場面を見つけ用いようとする態度を養う。

3.評価規準

【知識・技能】

乗法について成り立つ性質(乗数が1増えると、積は被乗数の分だけ増えること、交換法則、分配法則)を理解し、簡単な場合の2位数と1位数のかけ算の計算の仕方を知っている。

【思考力・判断力・表現力】

乗数、被乗数、積の数量の関係に着目して乗法の性質を考え説明したり、既習の乗法やその構成の仕方をもとに、簡単な場合の2位数と1位数との乗法の計算の仕方を考えたりするとともに、乗法を活用して日常生活などの場面の問題を解決している。

【主体的に学習に取り組む態度】

九九の表をもとに乗法の性質について考えた過程を振り返り、簡単な場合の2位数と1位数との乗法の計算の仕方を発展的に考えようとするとともに、身の回りから乗法の場面を見つけ用いようとしている。

4.本単元の指導にあたって

九九といえば、暗唱することに重点をおかれてしまいがちであるが、習熟させるだけでなく、九九を自分で構成していくことも大切に学習を進めたいと考える。この単元は九九の習熟を図るとともに、「乗法に関して成り立つ性質」の理解を一層深めたり、数の見方を深めたりすることを目標としている。そして、ここでの学習をもとに、3年では乗法の交換法則や結合法則、筆算形式による計算の仕方を学習する。

本単元でも、前単元で見つけたかけ算のきまりや性質に加え、同じ数をかけた九九はそれぞれの段に1つずつあることも発見すると考える。また、基準量(かたまり)が違えば式が違うこと、2位数×1位数(12×5)も今まで学習したことをもとに考えることができること、一つの数を2つの数の積としてみることなどを、さし絵やアレイ図、式、言葉と結びつけながら練り上げていく。このような活動を通して、総合的な考え方、豊かな見方・考え方ができる児童に育ってほしいと思う。

5.単元の指導計画

学習のねらい

おもな学習内容

1
本時

・九九の表の考察を通して、乗数、被乗数、積の関係に着目し、乗法の性質について考え、理解する。

・九九の表を調べ、分かったことを発表し合う。
・乗数、被乗数、積の関係を調べる。

2

・乗法の交換法則を理解する。

・乗法の交換性を調べる。

3

・簡単な場合の2位数と1位数のかけ算の計算の仕方を考える。

・12程度の2位数と1位数のかけ算の仕方を考える。

4

・ものの数をさまざまなまとまりに着目し、乗法を用いて考えを説明することができる。

・乗法を使って、いすの総数を求める。
・どの数のまとまりに着目して考えたのか発表する。

5

・ものの数を、乗法が適応できるように工夫し、乗法を活用した多様な方法で考えを説明することができる。

・L字型に並んだボールの数を、乗法を使った多様な考え方で求める。

6

・「たしかめポイント」に取り組み、学習内容の理解を確認する。

・「たしかめポイント」に取り組み、学習内容の理解を確認する。

6.本時の学習

①ねらい
 九九の表の考察を通して、乗数、被乗数、積の関係に着目し、乗法の性質について考え、理解する。

②指導の実際
ア 「導入」の場面(5分)

 まず、デジタル教科書のデジタルコンテンツである九九の表を使用し、各段の九九を唱えながら画面をタップしてかけ算の習熟の時間とする。タップすると、答えが表示されるため、児童は下がり九九を言ったり、バラバラ九九を言ったりして、自分の習熟度に合う九九の暗唱を楽しみながら取り組むことができた。取り組みの最中に児童は、「こことここの場所の数字同じや。」と発言し、今日の本時のめあてである「九九のヒミツ」に迫っている児童もいた。(写真1)

(写真1)

 次に九九の表を見せ、教師は「この九九の表に、実はヒミツが隠れています。今日はそれをみんなで探しましょう。」と本時のめあてを伝えた。児童の中には、「もう知ってるよ。」と発言したり、「いくつもあるよ。」と複数あることに気づいていたりした。

イ 「展開」の場面(25分)
≪展開前半部分≫
 授業支援ソフトを使用し、九九の表が貼り付けられているカードをクラス全員に配布し、気づいたヒミツを書くようにした。児童には、どこを見たのかが分かるように表に印を書き込むことと、説明も記述することを伝えた。この場面では、じっくりと一人で考える時間とする。留意点として、タブレットでの表現が苦手な児童もいるため、紙に印刷した九九の表も用意して、どちらかを自分で選んで学習できるように学習の個別化を図るようにした。児童は、タブレット上で何度も消したり、付け足したりして様々なヒミツを見つけていた。(写真2、写真3)

(写真2)(写真3)

 一人で考える時間を取った後、考えたカードを全て共有した。(写真4)

(写真4)

≪展開後半部分≫
 次に、自分の見つけたヒミツを友達に伝える時間とした。見つけたことを友達に伝えられる人や考えが分からないから友達に聞きたい人は立って意見を聞くように伝えた。ただし、まだ、じっくり一人で考えたい児童はそのまま席で考えてもよいことも合わせて伝えた。
 児童は、自分の考えを友達に伝えながら頭の中を整理することができた。友達に考えを言いながらカードにくわしく付け加えたり、友達から考え方のアドバイスをもらったりする児童もいた。また、友達の意見を聞いて、自分では思いつかなかった視点での考えに出会うことができた。友達から教えてもらったヒミツは自分のカードにも書いておくようにした。その際に友達から聞いた考えだと分かるようにカードの色を変えるようにした。(写真5~10)

(写真5)(写真6)

(写真7)(写真8)

(写真9)(写真10)

ウ 「まとめ」の場面(15分)
 代表的な考えを発表し、全体で練り上げを行った。

3の段は3ずつふえる(写真11)

かけられる数とかける数を入れ替えても答えは同じ(写真12)

分配法則:4の段と5の段を足すと9の段になる(写真13)

九九の表のななめに同じ数字がある(写真14)

(写真11)(写真12)

(写真13)(写真14)

 1人が前に出て、考えを発表する。大型モニターで児童の考えを映し、また発表を聞いている児童のタブレットにも画面共有をして、手元でも見られるようにした。(写真15、16)

(写真15)(写真16)

 クラス全体がその発表に意識が向き、考えを共有できるように、聞いている児童は発表者に質問をする。例えば①の「3の段は3つずつ増えています。」と発表した後、「ほかの段でも3ずつふえるの?」や、「どうして3つずつ増えるってわかったの?」と質問が出た。発表者や同じ考えをしていた児童が「3の段は全部+3になっています。3+3=6、6+3=9……」「4の段は4ずつ増えていて、8の段は8ずつ増えているよ。」と答えることで、どのように考えてヒミツを見つけたのかを教室全体で考え、深く知ることができた。
 児童は発表を聞きながら、それぞれの考えの違いや似ているところを探しながら聞くこともできていた。「○○さんは3の段で考えたけど、私は8の段で考えて同じヒミツを思いつきました。」と自分の考えと比べながら発言することもできていた。④のななめに同じ数字があると発表した後には、「7×5=35と5×7=35の考えは、②の入れ替えても同じのヒミツと同じや。」という発言が出て、考えが似ていることに気づき、グループ化することができた。

 最後に、今日の学習のまとめとして授業支援ソフトで、タブレットを使って解く宿題を出した(写真17)。机にミカンが並んでいて、2通りの考えとそれに合う式をカードに記入し、提出ボックスへ出すことを伝えて授業は終了した。

(写真17)

7.指導を終えて

 デジタル教科書には、図形を自分で動かしたり、カードをめくったりすることができるコンテンツがある。児童のペースに合わせて学習を進めることができ、児童の意欲にもつながっている。今回は、九九の表の全てのマスが埋まるように友達と競いながら早く言い合っていたり、苦手な段を集中的に唱えて覚えようとしていたりと自分に合うやり方でかけ算に向き合う気持ちを高めていた。また、2の段と5の段だけの答えを出していた児童が「これ、足したら7の段になるよな」とかけ算表の性質に気づき始めていた。今までは紙の全ての答えが出ているカードを使用していて気づきにくかったことが、デジタル教科書のコンテンツを利用することで児童の気づきが変わったように感じた。
 タブレット端末を使用することで、消したり色を変えたりすることが容易なため、その作業にかかる時間が短縮され、じっくり考える時間を確保することができた。また、全員が自分の考えを持っている状態で友達と交流することができた。やり直しが簡単にできるため、児童は思いついた考えをどんどん書き込んでいく姿が見られた。カードの枚数を増やしたりカードの色を変えたりの操作を自由自在に扱っていた。タブレット端末があることで子どもたちの思考を止めない活動につながった。
 自分の考えを友達に伝えることを意識させてカードを書き込ませたことで、マーカーの色を分けたり必要ではない部分の数字を消したりして見やすいように工夫していた。協働学習を取り入れ、クラスの友達に自分の考えを伝えに行く。どう考えていいかわからない児童にとって、友達からのヒントは大切な手がかりになるため、子どもたちは、この時間をとても楽しみにしていて、「今から考えを伝え合います」と言うと、すぐに席から立ち上がりタブレットを持って友達に考えを伝えに行っていた。自分の考えを伝えて、友達がわかってくれる喜びを感じているようだった。協働学習の最大の良さは新しい視点との出会いである。九九の表でななめに同じ答えがあるという考えはクラスでも3人ほどしか気づいていなかったが、教え合いの時間の後のカードを見ると、15人以上にその考えが広まっていた。友達と関わることで見つけた新しい考え方に出会い、自分の視野を広げることができたと思う。

Webマガジンまなびと:「学び!とESD」Vol.30

Webマガジン:「学び!とESD」Vol.30 “「フリースペースえん」の実践 ~「いのち」に寄り添う「居場所」づくり~”を追加しました。

「フリースペースえん」の実践 ~「いのち」に寄り添う「居場所」づくり~

「生きている」ただそれだけで祝福される場

 「誰もが『生きている』ただそれだけで祝福される、そんな場をみんなでつくっていきたい。」このような思いをもちながら、30年もの間、学校や家庭、地域に居場所を見出せない子どもたちに寄り添ってきた場所があります。「フリースペースえん(以下、「えん」)」と呼ばれる公設民営のフリースペースです。神奈川県の「川崎市子ども夢パーク」の一角にあり、認定NPO法人フリースペースたまりばが運営しています。冒頭の言葉がまさに体現される「えん」の姿は、SDGsの掲げる「No one will be left behind.(誰一人取り残さない)」と大きく重なります。実際に「えん」での活動は、SDGsゴールの4(質の高い教育をみんなに)の観点から、神奈川県の紹介する「SDGsアクション in かながわ」で取り上げられています。優良なESDの事例として、「ESDグッドプラクティス10事例」の一つに選ばれたこともあります。今回は、この「えん」の実践をご紹介します。
 「えん」の子どもたちは、来る時間も帰る時間も、どのようにして過ごすかも、すべて自分で決めることができます。一見すると、様々な子どもたちが様々なところで様々なことをしている、「混沌」とした場です。なぜ「えん」での実践が、持続可能な社会の実現につながると言えるのでしょうか。

「いのち」を中心に据えた場

 第一に、「えん」では「いのち」が何よりも尊重され、すべての子どもたちが否定されたり排除されたりせずに、ありのまま「存在」しています。土台にあるのは、既存の制度に子どもを押し込めようとするのではなく、「子どもの『いのち』のほうに制度や仕組みを引き寄せる」という考え方です。学校的な評価のまなざしはもちろん、世間の当たり前による比較も区別も存在しません。障害の有無や国籍の違いを超えて、多様な個性があたかかく受け入れられています。「いのち」や多様性の尊重は、ESDの中でも大切にされる価値観です。このような場は子どもたちの安心・安全を保障し、「やりたいこと」への一歩を後押しする力ももっています。
 子どもたちの最善の利益を守るために、「えん」が拠り所としているのは、「川崎市子どもの権利に関する条例」です。この条例は子どもの権利条約を土台として、市民や子どもを巻き込んだ話し合いのもとにつくられました。

写真1 「川崎市子ども夢パーク」や「えん」の至る所に「川崎市子どもの権利条例」についての掲示がある(筆者撮影)

① 安心して生きる権利
② ありのままの自分でいられる権利
③ 自分を守り、守られる権利
④ 自分を豊かに、力づけられる権利
⑤ 自分の決める権利
⑥ 参加する権利
⑦ 個別の必要に応じて支援を受ける権利

表1 「川崎市子どもの権利に関する条例」が保障する子どもの権利

「えん」での学びを支える「つながり」

 第二に、「えん」にはたくさんの「つながり」があります。「つながり」はESDでも重視される観点です。「えん」の「混沌」の中に居心地の良さがあるのは、異質な個性が緩やかにつながり合っているからでしょう。子どもたちと過ごしていると、「どんなこともできる自由な存在」、「どこかに弱さを抱えた存在」として、お互いを認識し合っている感じがします。それは大人に対しても、動植物のような人間以外の存在に対しても、例外ではないようです。「えん」では日々の暮らしを丁寧に積み重ね、夢中になって遊ぶことを通して、五感を存分に使い学んでいます。その中には、「えん」に出入りする大人たちも参加します。多様な立場や世代の人と共に参加体験型で学ぶことは、ESDでも推奨されている学びの方法です。日常の暮らしや多様性、五感など、従来の学校教育からこぼれてしまったものとの「つながり」が、「えん」での学びを支えています。

食に見る「えん」での「ケア」

 第三に、「えん」には「ケア」が行き渡っています。持続可能な開発に「ケア」は不可欠な概念です。「えん」で特に大切にされる「食」は、最も「ケア」に溢れていると感じられる一場面です。「えん」での昼食は、誰でも250円で食べられます。食材には、買い出しに行ったり畑で採れた野菜を使ったり。寄贈された物を使うこともあります。その日の食材を眺めながら「どうやって食べようか。」と対話が始まり、栄養バランスも考えながら献立が決まります。完成すると子どもたちが集まってきて、机を囲いながらみんなでいただきます。食べ終えた後の生ごみは、コンポストへ入れられます。一連の様子から、自分や他者、そして環境にも配慮しながら、日々の暮らしの中心である「食」が営まれていることが分かります。
 「えん」では子どもと大人で話し合って、毎月11日を「震災めしの日」と決めています。その日は買い出しをせずにあるものだけでつくり、昼食代を被災地への支援に充てます。どこまでも「いのち」に寄り添う姿勢が伝わります。

写真2 畑の横に置かれたコンポスト(筆者撮影)

 ESDの課題として、環境面でのケアに比べて社会・経済面でのケアが弱いという指摘もありますが、「えん」では子どもの「いのち」を出発点に、奥深いバランスのとれたESDが展開されています。全国に20万人近くいると言われる不登校の子どもたちを含め、「誰一人取り残さない」教育へ向けて、「えん」の実践には多くのヒントがありそうです。

  • 「えん」をはじめとする認定NPOフリースペースたまりばの活動については、次のリンクをご覧ください。
    https://www.tamariba.org/
  • 7月に『ゆめパのじかん』という映画が公開されます。「川崎市子どもの権利に関する条例」に守られ、「川崎市子ども夢パーク」で自分らしく過ごす子どもたちの姿から、さらに多くを学ぶことができるでしょう。公式ホームページは次のリンクから見ることができます。
    http://yumepa-no-jikan.com/