Webマガジン:「学び!とシネマ」Vol.197 “1640日の家族”を追加しました。
月別アーカイブ: 2022年7月
1640日の家族
© 2021 Deuxième Ligne Films – Petit Film All rights reserved.
よく「生みの親より育ての親」というが、まさにそう思わざるを得ないフランス映画が「1640日の家族」(ロングライド配給)だ。
プールで家族5人が遊んでいる。アンナ(メラニー・ティエリー)には、夫のドリス(リエ・サレム)との間に、アドリとジュールというふたりの男の子がいるが、4年半ほど前に、1歳半のシモンという子どもを里子に迎えている。
6歳になったシモン(ガブリエル・パヴィ)はすっかり家族の一員で、子どもたちは、いつもいっしょに遊んでいる。
シモンのほんとうの父親エディ(フェリックス・モアティ)は、シモンが生まれてすぐに妻を亡くし、やむを得ず、福祉の里親制度を利用して、シモンを里子に出す。制度では、月に一回の面接が許されていて、父子交流が続いている。
そんなある日、エディはシモンとの生活を再開したいと申し出る。アンナは、里親制度に従って、シモンに個室を用意したり、実の子以上に、シモンをたいせつに育ててきた。
アドリはもう子どもから少年期を迎えている。いきさつを知ったアドリは、自分の部屋が欲しかった不満をもらす。
© 2021 Deuxième Ligne Films – Petit Film All rights reserved. 児童社会援助局が、段階的にさまざまな施策を用意する。まずは、週末を父子で暮らすこと。はじめはスムーズでなかった父子だが、シモンは少しずつエディにこころを開いていく。
シモンは、エディの持っていた写真を持ち帰る。そこには、シモンの洗礼式の家族が写っている。これを見たアンナは、愕然とする。シモンは里子であって、自分の実の息子ではないことを。
やがてクリスマス休暇が近づいてくる。そんなさなか、アンナは、児童社会援助局の、ある約束を破ってしまう。果たしてシモンはいったいどうなるのか。
フランスには、まだまだ課題がありつつも、一応、きちんとした制度が用意されているように思える。日本では、里子に出される実数が少ないせいか、いまのところ、目だったトラブルは聞こえてこないようだ。
日本では、とうの昔から少子化が進み、国は、少子化対策とやらで、こども庁やら、こども家庭庁といった役所を作ることで、少子化に歯止めをかけようと、いろんな施策を用意しているようだが、遅すぎる。こんな、どうせタテ割り行政に拍車をかけるような役所は、不要である。まるで、病気になってから、薬や注射を探すようで、はなはだ、こころもとない。
少子化とならないよう、若い人たちが、安心して結婚、出産できるような社会がまっとうだと思う。そして、もっともっと、社会全体が子どもを育み、愛することが重要だろう。
© 2021 Deuxième Ligne Films – Petit Film All rights reserved. さまざまな家族の形があると思う。要は、社会全体が、弱者である子どもたちをたいせつにすることだろう。実の子どもたちをひどい目に合わせている親たちの実態を知るにつけ、いまの日本はどうなっているのか、暗澹たる気分になる。
監督、脚本は、ファビアン・ゴルジュアール。いくつかの短編を撮った後、5年ほど前に、代理母出産の女性を描いた「ディア―ヌならできる」を撮っている。1976年生まれの監督がまだ子どもだったころ、じっさいに1歳半の里子を迎え、6歳までいっしょに暮らしたという。映画の設定とまったく同じである。
脚本化にあたって参考にした映画は、チャールズ・チャップリンの「キッド」、ロバート・ベントンの「クレイマー、クレイマー」、スティーヴン・スピルバーグの「E.T.」。なるほどと思う。
映画の成功は、アンナを演じたメラニー・ティエリーとシモンを演じたガブリエル・パヴィの、実の親子のような、リアルな演技だろう。ことに2014年生まれで、映画初出演のガブリエル・パヴィの、健気そのものの表情、仕草は、絶品である。
実の子どもではないのに、育ての親として子どもに叱り躾けることも含めて、愛情を持って接する。これが当然のことであってほしい。
2022年7月29日(金)より、TOHOシネマズシャンテ
ほか全国公開
■『1640日の家族』公式Webサイト
監督・脚本:ファビアン・ゴルジュアール
出演:メラニー・ティエリー、リエ・サレム、フェリックス・モアティ、ガブリエル・パヴィ
2021年/フランス/仏語/102分/1.85ビスタ/5.1ch/原題:La vraie famille/英題:The Family/日本語字幕:横井和子
配給:ロングライド
幼稚園・小学校受験、7割以上の親が「コロナ禍で考え方が変わった」=アイキュー調べ=
幼稚園・小学校受験、7割以上の親が「コロナ禍で考え方が変わった」=アイキュー調べ=(ICT教育ニュース)
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社会科と「共生社会」
「障害の社会モデル」の理解
2006年に国連総会において「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」が採択され、日本は、8年後の2014年に批准しています。この条約には、障害の社会モデルの考えが示されています。障害の社会モデルとは、障害やマイノリティの不利益や困難は、個人に責任があるのではなく、障害がない人を前提に作られた社会に原因があるという考え方です。
この考え方に基づく対応が法的にも求められていることから、日本はその法整備を待って批准したということになります。そして、この考え方に基づいた「障害者差別解消法」が2016年4月から施行されています。
また、この考え方を推進する政府主導の取組も進められています。例えば、パラリンピックを契機として、2017年には、 “ユニバーサルデザイン2020行動計画”(ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議)(*1)が示されました。そこには、心のバリアフリーを推進するための重要な柱が次のように示されています。
①障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」を理解すること。
②障害のある人(及びその家族)への差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。
③自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと。
「共生社会」の実現と社会科
このように国として、障害の社会モデルを踏まえた共生社会の実現を目指した取組が展開されているのですが、学校教育においても様々な形で取組が進められていることについてはこれまでも紹介してきたとおりです。
教科について見ると、こうした内容に最も密接に関係しているのは、社会科ではないかと思われます。
学習指導要領では、社会科の目標を次のように掲げています。
「第1 目標
社会生活についての理解を図り,我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て,国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う。」
(小学校学習指導要領第2章各教科第2節社会)
そこで、平成29年(2017)に改訂された学習指導要領には、共生社会の実現に向けてどのような記載があるか確かめてみました。
小学校学習指導要領(平成29年告示)解説を見ると、「共生社会」という記述は認められませんでした。「障害」という記述は6か所に登場しています。そのうち内容に関わるのは1か所のみで、以下のように示されています。「障害の社会モデル」に直結するものではありませんでした。
「社会保障の取組を取り上げる場合には,例えば,高齢者や
(小学校学習指導要領解説社会第3章2内容の取扱い(1)のウ)
中学校学習指導要領では、「障害」が24か所登場していましたが、内容に関連するものは0で、「共生社会」や「障害の社会モデル」にまで言及した記述は認められませんでした。
このように学習指導要領に具体的な記述は認められないものの、社会科教科書では様々な形で取り上げられています。
例えば、久保(2020)の調査によると(*2)、2008年版の中学校社会科の公民的分野と歴史的分野の文部科学省検定済教科書21冊を調べた結果、「障害解消のアプローチ」が合計85か所で扱われていたということです。
2008年の時点でこれだけ扱われているということは、現行の教科書ではより多く、丁寧に扱われているものと推察できます。したがって、学校現場における社会科の授業では、「共生社会」や障害の「社会モデル」に関連する事項の扱いが進んできていると考えてよいのではないかと思われます。
「障害の社会モデル」とICF
長期的展望に立つと、共生社会への実現に向けた内容が社会科の学習指導要領にも反映され、広く学校教育の中で扱われていくようになるものと思われます。しかしながら現状では、通常の学校の先生方にも「障害の社会モデル」ということが十分に膾炙されていないのではないかと思われます。以下にその骨子を紹介しておきたいと思います。
内閣府では、「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」をすべての人が理解し、それを自らの意識に反映していくことが重要としていますが、かつては、障害を個人の問題としてとらえる考え方が主流でした。医学モデルとも言われています。つまり、障害は、病気・外傷などの個人の健康状態から直接的に生じるものであり、障害への対処は、治癒あるいは個人のよりよい適応と行動変容を目標になされるというものです。「心身機能」や「健康状態」を過大視し、それによって「活動」も「参加」も決まってしまうかのように考え、また環境の影響も一部しか考えない見方であると言えます。
それに対して、社会モデルは障害を個人の特性ではなく、主として社会によって作られた問題ととらえ、社会が作り出している「障害」を解消するのは社会の責務ととらえるものですが、こちらも気を付けないと社会的な「参加」と「環境因子」が強調されすぎるということが生じてしまいます。こうしたことから、社会モデルを取り入れていくためには、ICF(国際生活機能分類)の考え方を熟知しておくことが大切ではないかと思います(*3)。
ICFは、2001年5月、世界保健機関(WHO)総会において、人間の生活機能と障害を分類する方法として採択されたものです。それまでの国際障害分類(ICIDH)は、障害の側面からマイナス面を分類するという医学モデルの考え方が中心であったのに対し、ICFは、障害の有無にかかわらず一人の人間として生きるという観点に立って生活機能というプラス面から見るように視点を転換しました。さらに環境因子や個人因子の観点が加わり、「人間全体」を見ようとするところに特徴があります。また、ICFは「共通言語」の機能を有していて、例えば「障害の程度」等を教育、福祉、医療の枠を超えて共有できるようになるため、領域間に立ちはだかる障壁を超える役割も果たせるようになることが期待できます。
社会科で障害の「社会モデル」をより深く扱っていくためには、ICFに関する知見も深めていただきたいと思います。
*1:ユニバーサルデザイン2020行動計画
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/ud2020kkkaigi/pdf/2020_keikaku.pdf
*2:久保美奈「社会科教科書は「障害」をどのように解消しているのか」. 障害学会第17回大会報告, 2020.
http://www.arsvi.com/2020/20200919kh.htm
*3:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0805-1.html
Webマガジンまなびと:「学び!と共生社会」Vol.30
Webマガジン:「学び!と共生社会」Vol.30 “社会科と「共生社会」”を追加しました。
第7回 東京学芸大附属竹早小・道徳教育研究会 「語ルシス」夏季セミナー
文部科学省EDU-Portニッポン トピックセミナー(特別活動)
文部科学省EDU-Portニッポン トピックセミナー(特別活動)を追加しました。
宮城教育大学附属小学校 夏季研修会
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小学校 生活:「生き活きうぃーくる」第121回
生活科ブログ「子どもがかわる 授業がかわる『生き活きうぃーくる』」:第121回「SNSトラブル、どう指導する?」
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