「超福祉の学校2022@SHIBUYA」に学ぶ

 今回は、11月4日から6日まで、渋谷のヒカリエ8階で開催された、令和4年度の「超福祉の学校2022@SHIBUYA」について紹介します。

「超福祉の学校@SHIBUYA」とは

 このイベントは、障害の有無にかかわらず、共に学び生きる共生社会の実現と障害者の生涯学習の推進を目指して、ピープルデザイン研究所主催、文部科学省、渋谷区共催で開催されているものです。もともと「超福祉」の日常を体験しようと、障害のある方、支援者、教育関係者、教育関係者などがシンポジウムやトークセッションを通じて思いを発表し学び合う場として2019年から開催されていたのですが、2021年からは、文部科学省と渋谷区の共催となり「超福祉の学校@SHIBUYA」としてリスタートしたということです。

「超福祉の学校2022@SHIBUYA」の概要

 今年のテーマは、「超福祉の学校2022@SHIBUYA~障がいの有無を飛び越えて、つながる学び舎~」でした。概要については、文部科学省のサイト(*1)や特別サイト(*2)から確認していただけます。
 障害の有無にかかわらず、共に学び、共に生きる共生社会の実現を目指し、全国各地の共生社会の実現に向けた具体的なアクションや障害者の生涯学習などに関する13のプログラムがオンライン、オフラインで渋谷から全国に発信されました。そのプログラムは以下の通りでした。

  1. 留学?移住?海外では知的障がいのある人はどう学んでいるの?
  2. 豊かに生きるための生涯学習
  3. インクルーシブ社会や文化の構築~大阪・関西万博に向けた動き(お茶や音楽を通じた協奏社会)
  4. 生涯に学ぶ。生涯で学ぶ。~それぞれの学びのデザイン~
  5. 超福祉の学校プロジェクト成果報告会
  6. 共に生きる?共に学ぶ?~共に生きるための学びをどうつくるか~
  7. 共に学び、共につくるハッピーな未来~これからの超福祉教育~
  8. ココロとカラダにちょうどいい、未来のインクルーシブを語ろう!
  9. 人と性の多様性から学び、育む。子どもたちが輝ける未来社会へ
  10. アートでおしゃべり~サイレント~
  11. 読書支援の最先端~よむことが困難な人のために~
  12. 視覚障がい者と表現するよろこびを探求する
  13. 神奈川発!みんなにとっての「学び」の意義・可能性を考えよう

 これらのプログラムのうち、いくつかはYouTubeでも配信されています(*2)。視聴いただけると共生社会の実現に向けた学校での対応についてのヒントが得られるのではないかと思います。

「超福祉の学校2022@SHIBUYA」のセッションから

 どのセッションも興味深かったのですが、その中でも共生社会の実現と学校教育との関わりで特に印象に残った2つのプログラムについて、紹介しておきたいと思います。

1.留学?移住?海外では知的障がいのある人はどう学んでいるの?

 このセッションは、古市理代さん(NPO法⼈アクセプションズ 代表理事、NPO法⼈ピープルデザイン研究所 理事)の司会で進められました。ダウン症のあるお子さんを育てているニューヨーク在住の町塚聖⼦さん(総合内科専⾨医、オンライン参加)と⻑⾕部真奈⾒さん(経済キャスター、NPO法⼈アクセプションズ理事)のお二人からご経験とアメリカの⼤学の障害のある学生向けのプログラムが紹介され、知的障害のある⼈の学びの可能性について語られました。
 町塚さんからは、アメリカのSpecial Educationが紹介されました。アメリカの教育ではソーシャルエモーションラーニングが重視されていること、また近年は、Diversiy(多様性),Equity(公正),Inclusion(包含)も重視され、多くの学校や企業がこの「DEI」を組織のポリシーと掲げるようになってきていることが示されました。平等と公平ということが学校教育にも反映され、その上にインクルーシブ教育が成立していることも示されました。つまり公正(equity)が担保されてこそ平等(equality)が成り立つということです。日本では公正と平等の捉え方が明確でなく、それがニーズのある子どもの教育にも影響を与えているところがあるのではないかと受け止めました。
 また、アメリカの「知的障害者向け大学プログラム」の紹介も目を見張るものがありました。具体的にはジョージ・メイソン大学の「Mason LIFEプログラム」で、知的障害がある学生向けの高等教育プログラムです。このプログラムの特徴は『共に学び、共に働き、共に生活するという経験は、全ての学生に相互に利益をもたらす』ということが基礎になっていること、入学した学生は学問だけでなく、自立した生活を送り、社会と関わり、働くためのトータルスキルを学ぶこと、単位を取得しなければ卒業資格は得られないが、ダウン症で学士号を取得した学生も出てきていることなどを知ることができました。
 また、Think College(*3)というインクルーシブな高等教育における研究と実践の開発、拡大、改善に取り組んでいるサイトが立ち上げられていることも紹介されました。知的障害がある学生の大学進学に関するリソースなどが提供されており、2022年時点で全米の313校が登録しているそうです。
 日本では、一般学生の7割以上が高等教育機関に進学しているのに対して、障害がある学生の進路は大きく異なっています。過半数が社会福祉施設に入所・通所し、3割が就職しています。大学等への進学は2%ほどに過ぎません。アメリカの教育については、批判的にとらえる声も聞かれますが、通常の教育における障害がある生徒の受け入れが進み、それが知的障害がある学生の大学進学にまでに達しているというファクトについては、多くの教育関係者に知っておいてほしいものです。
 長谷部さんからは、ダウン症のあるお子さんのハワイでのサマースクール体験が語られました。保育園までは一緒に生活していたお子さんが、特別支援学級に入学することになったら、入学式は別々に入場、集合写真も別に撮影と入学初日から日本の特別支援教育に大きな衝撃を受けたということです、その後にインクルーシブな対応もお願いしたものの定着することはなかったということから、長谷部さんは海外の学校で教育を受けられるような選択肢を作ってあげたいと思われるようになりました。また、障害の有無にかかわらず、多様性を受け入れる、辛抱強くなるなど海外経験で学べることがあるのではないかという思いもあったそうです。
 「障害がある子どもが海外留学できるのか」という不安からスタートしたものの、現地の学校は大歓迎で付き添いも求めず、「ノーバリア」で一般の子どもと同じように過ごすことができた5週間だったということです。長谷部さんは、ハワイまで来てやっとインクルーシブ教育を体験することができたと語っておられました。
 昨今、障害がある子どもの将来を考えて海外への留学や移住などを視野に準備をする家庭も増えているということですが、改めて共生社会の実現への道のりの厳しさについて考えさせられました。

6.共に生きる?共に学ぶ?~共に生きるための学びをどうつくるか~

 このセッションは、⻘⼭鉄兵さん(⽂教⼤学⼈間科学部)の司会で、そもそも共に生きるとは、共に学ぶとはといった、よくあるスローガンを問い直すというチャレンジングな目的で開催されました。障害がある人が地域で共に楽しむ、遊ぶ、ありのままに暮らす活動に取り組んでいるNPO法⼈クリエイティブサポートレッツ理事⻑の久保⽥翠さん、NPO法⼈ポラリス代表理事の⽥⼝ひろみさん、⼀般社団法⼈みんなの⼤学校代表理事の引地達也さんの3人からそれぞれの活動が紹介されました。
 それぞれの組織での活動は、学ぶことが予定調和的に考えられ進められている学校教育には大変厳しく、多くの学校教育に携わる人々には受け入れがたいと思われる取り組みもありました。
 久保田さんは、いわゆる重度の障害があるお子さん、たけしさんの保護者でもあるのですが、現在26歳になるたけしさんのこれまでの学びを次のように振り返っておられます。

 「特別支援学校の12年間、本当にいい先生に恵まれていたが、獲得できたものは何もなかった。身辺自立もできないし、排泄もできない。唯一、入れ物に石を入れてたたきつける行為だけが残った。特別支援学校では、それが問題行動とされてすごした。そのように決めつけてはいけないのではないか。」

 そうした親の気持ちから、久保田さんはたけしさん中心のプロジェクトを開始されます。

 《重度の障がいのある「くぼたけし」という一個人の示す「やりたいことをやりきる熱意」を新たな文化創造の軸ととらえる考え方です。その個人が熱心に取り組むこと(それが教育分野で言われる問題行動だとしても)に敬意を示し、受け入れていくことは、職業、経験、経歴、地位、名声、障がいの有無、収入、住居、家族といった、人々が持つ固定観念や、価値観を変えていく機会となります。たけし文化センターはその人の「存在」を全面的に肯定することからはじめます。》

 文部科学省は「特別支援教育」について、「障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うもの」であるとしています。
 しかし、すべての児童生徒に対して、「その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う」ことは、現状のままの学校教育のシステムでは難しいことです。久保田さんのたけしプロジェクト宣言は、インクルーシブ教育システムの構築のためには、学校教育全体の仕組みを土台から見直していく必要があることを言外に示しているように受け止めました。

 このセッションで提起された内容を整理すると以下のようになるかと思います。
 真の共生社会を実現するためには障害がある人を隠さないことが大切であり、山の奥の施設や、学校、施設の中にいるだけでは、誰にも何もわかってもらうことはできない。何でもオープンにし、コミュニケーションを豊かにすること、物事や特性を一つの物差しで測ろうとしないこと、一方通行ではなく互いに学び合い支え合うことなどにより理解が深まり、互いの距離も縮まっていく。そこには、摩擦が生じざるを得ない。インクルーシブな社会の実現のためには、常に摩擦や「もやもや」が付きまとうことを覚悟しなければならない。優しさも必要だ。そして、障害がある人が外に出ていくためには、既存の道を歩かせようとするのではなく、それぞれに合った道を作っていくという努力も大切である。そのプロセスが共生社会の実現、共に生きることにつながる。

まとめ

 文部科学省のサイトには「超福祉の学校~障がいの有無をこえて共に学び、つくる共生社会フォーラム~」について、次のように記されています(*4)
 「文部科学省は、障がいの有無にかかわらず、共に学び、生きる「共生社会」の実現を目指しています。
 本フォーラムでは、「共生社会」の実現に向けて、障がいのある人、支援者、教育関係者等が日頃の活動や思いを発表・表現し、学び合います。障がいのある人もない人も、ちがいを超えて交流・対話し、共生社会の実現に向けて考える機会です。」
 共催している文部科学省の担当部門が、「総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課障害者学習支援推進室」になっているように、このイベントは、学校教育に焦点を絞ったものではありません。しかし、共に学び、共に生きる共生社会の実現を目指して、各地で取り組まれている優れた実践事例は、学校教育とも密接に関係し、学校教育での現実的な対応や今後の展望に示唆を与えてくれるものと思います。

*1:令和4年度「超福祉の学校2022@SHIBUYA~障がいの有無を飛び超えて、つながる学び舎~」
https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/1419088_00003.htm
*2:飛び超えて学ぼう。学んでつながろう。
https://peopledesign.or.jp/school/
*3:Think College
https://thinkcollege.net/
*4:「超福祉の学校~障がいの有無をこえて共に学び、つくる共生社会フォーラム~」について
https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/1414119.htm

「なんじ なんぷん」(第1学年)

1.単元名

「なんじ なんぷん」(第1学年)

2.単元の目標

 時計の短針と長針の位置をもとに、それぞれの針が示す数と時刻を表す数との対応を理解し、日常生活と結びつけて時刻を読むことができること。
 時刻を表す単位に着目し、短針や長針の役割(何時、何分)について考察し、時刻を読んだり、時刻と日常生活を関連付けたりすること。

3.評価規準

【知識・技能】
 短針は「何時」、長針は「何分」を表していることを理解し、時計を読んだり、時計で時刻を表したりすることができる。

【思考・判断・表現】
 時刻を表す「時」と「分」の単位に着目し、時計の目盛りと長針、短針の位置関係をもとに、時刻の読み方を考えている。

【主体的に学習に取り組む態度】
 生活の行動を決めたり、時間割を守ったりすることができるといった時刻を用いるよさに気付き、日常生活の中で時刻を用いようとしている。

4.本単元の指導にあたって

 本学級の子どもたちは、これまでに、何時や、何時半といった短針が2つの数字の真ん中にある場合は、最後に通過した数字を読むこと、長針が12の場合は読まず、6の場合は「半」と読むことを捉えている。そこで、20より大きい数を読むことができるようになるこの期に本単元を取り上げる。そして、子どもの日常生活場面と時刻とを関連させながら、時刻を読むことができるようにする。
 また、本単元の指導にあたっては、時刻を表す単位に着目し、短針や長針の役割(何時、何分)について時刻と関連付けて捉えることができるようにする。そのために、児童の日常生活での様々な場面の時刻について調べる中で、時刻を表す単位の「時」と「分」に着目して、短針と長針が指す数字と時刻の関係を調べていく教材を取り上げる。
 そして、デジタルコンテンツの効果的な活用場面としては、短針と長針の位置と時刻の「時」を単位とする数値と「分」を単位とする数値とを視覚的に対応させることで、短針と長針の表す数値の意味を捉える場面で活用する。

5.単元の指導計画

学習のねらい

おもな学習内容

1
本時

短針と長針が指す数字をもとに日常の生活と関連付けて時刻の読み方を捉える。

短針と長針が示す目盛りとデジタル時計の表す数字の対応について調べる。

デジタルコンテンツ
デジタル教科書

2

短針と長針が指す数字をもとに日常の生活と関連付けて時刻の効率的な読み方を捉える。

素早く時刻を表したり、読んだりする方法について調べる。

デジタルコンテンツ
デジタル教科書

6.本時の学習

①ねらい
 時刻は、短針が最後に通過した数の0~12の「時」を単位とした数と、長針が指す目盛りの0~59の「分」を単位とした数をもとにして読み取るとよいことを捉えることができるようにする。
日常生活の活動を始める時刻を説明する場面で、時刻の単位に着目し、アナログ時計の短針と長針の位置とデジタル時計の数値をつなぐ活動を通して、時刻の読み方を説明することができるようにする。

②指導の実際
(1)導入段階

 この段階では、今までの「何時」や「何時半」で読むことができない時刻を調べたいというめあてを持たせることをねらいとした。
 そのために、まず、以下のすべての日常場面とそのときの時刻を表す時計を提示した。そして、❶の既習の時計の読み方を振り返り、7時半が7時30分と表されていることに気付く活動を位置づけた。

(画像1)アナログ時計とデジタル時計の比較 ここでは、デジタルコンテンツを活用して、アナログ時計の7時半とデジタル時計の「7:30」を並べて比較する場を設定した(画像1)。
 子どもたちは、「7時半が7時30分になっていて、7時は同じだが、『半』を数字で表している違いがあること」、「何を数えると、30分になるのか」といった今までとの違いから問いを持ち、本時問題を捉えることができた。

(2)展開段階
 まず、展開前段では、長針が「分」を単位とした時計の目盛りの数字を示していることを捉えさせることをねらいとした。
 そのために、「30分」は何を数えると「30」となるのかを調べたり、❷の長針が数字上にある時刻を調べたりする活動を位置づけた。
 ここでは、デジタルコンテンツを活用して、時計の短針と長針が示す目盛りとデジタル時計が表す数字を見比べながら操作し、長針の位置がアナログ時計の「分」を単位とする目盛りの数を表していることに気付かせることができるようにした。
 子どもたちは、画像2のようにアナログ時計の目盛りとデジタル時計の数値を交互に指し示しながら、「長い針を動かすと『分』の数字が変わるよ」や「長い針は、小さい目盛りの数を表しているんだ」と、「アナログ時計とデジタル時計を見比べる」活動を通して長針が示す数の意味を理解することができた。

(画像2)目盛りと数値を関連付ける子ども

 次に、展開後段では、長針の位置がアナログ時計の目盛りの数を表していることの捉えを確かにすることをねらいとした。
 そのために、❷の長針が数字上にある教科書の問題を取り上げ、画像3のように「8時2分」と誤答を提示し、間違いについて話し合わせる活動を位置づけた。

(画像3)誤答を長針の数値をもとに説明する子ども

 ここでは8時10分の正しさを説明させた後に、時刻の正しさの根拠としてデジタルコンテンツの操作をもとに確認ができるようにした。
 子どもたちは、短針については今までのように「7時半のときと同じように、短針が通った数字をもとに『何時』を表していること」を説明することができた。長針は、「目盛りの数をもとに『何分』を表していること」を説明することができ、長針が示す数の意味の捉えを確かにすることができた。

(3)終末段階

 この段階では、展開段階で捉えた短針と長針の意味を用いて、日常生活の場面と時刻を関連付けながら様々な時刻を読むことをねらいとした。
 そのために、本時の2つ目の主な活動として、教科書に掲載されている❸のアナログ時計の数字上に長針がない時刻を読む活動から、自分の日常生活の時間を友達にクイズとして出し合う活動を位置づけた。
 ここでは、デジタルコンテンツを活用して、アナログ時計の時刻を読み取るときの答えの根拠として、デジタル時計の数値を示すようにした。
 子どもたちは、日常の生活場面と関連付けながら、時刻を読むときには、短針と長針が示す数を区別しながら捉えることができた。

(画像4)お互い問題を出し合う子ども

7.指導を終えて

【デジタルコンテンツの活用について】
 本単元に関するデジタルコンテンツの活用について、効果的な活用場面を2つ見いだすことができた。
 1つは、時刻の読み方における短針と長針の位置が示す数の違いの捉えが容易になることである。短針と長針の示す数の指導は、教師が教えることが多い。しかし、アナログ時計の針がデジタル時計の数値に連動しているデジタルコンテンツを提示することで、既習の一対一対応をもとに、「デジタル時計の数はアナログ時計の何に対応しているのか」を探そうとする子どもの姿が見られた。これは、動的な針の動きとデジタル時計の時刻の数値の変化を関連付けることができ、子どもが短針と長針の示す数の違いを捉える上で効果的であった。また、デジタル時計を「けす」をクリックすることで隠すことができるので、子ども同士で時計の問題を出し合う場面においても、デジタル時計を根拠に答え合わせをすることができ、自分たちで時計の問題を進める上でも効果的であった。
 もう1つは、長針と短針の関係である。長針を回すとデジタル時計の「分」の数値が増えていき、一回転するときに「時」の数値が1つ上がるといった「時」と「分」の単位の関係を視覚的に捉える上で効果的であった。これは、第2学年の「時間の単位」の学習につながっていく。

【デジタル教科書の活用について】
 画像5のように、デジタル教科書の時計の画像をICTの提示機能で子どもたちと共有することで、子どもたちはアナログ時計の目盛りを読みやすいように拡大させて、目盛りを書きながら考えることができた。拡大できることで、数え間違えるといった誤答を大幅に減らすことができた。

(画像5)アナログ時計を拡大してみる子ども

シスター 夏のわかれ道

© 2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved

 見知らぬ弟が、急に現れて、姉になる。弟は6歳、姉は看護師をしながら、医者になるために、北京の医科大の大学院を目指している。一人っ子政策が背景にあっての姉と弟の存在である。
 映画「シスター 夏のわかれ道」(松竹配給)の舞台は、中国・四川省の成都。
 アン・ラン(チャン・ツィフォン)は、医者を目指して、受験勉強に励んでいる。大学入試を勝手に決められた両親とは疎遠で、いまは看護師として働いている。
 突然の車の事故で、アン・ランの両親が亡くなる。6歳の弟ズーハン(ダレン・キム)の存在を知って、驚くアン・ラン。
 跡継ぎの欲しかった両親は、アン・ランが家を出た後、待望の男の子、ズーハンをもうける。
 葬儀が終わる。父方の伯母、アン・ロンロン(ジュー・ユエンユエン)と、母方の叔父、ウー・ドンフォン(シャオ・ヤン)は、ズーハンを育てるのは、姉のアン・ランだと決めつける。
© 2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved 悩んだ末、アン・ランの結論は、ズーハンを養子に出すことだった。
 養子先が見つかるまでは、とりあえず、アン・ランがズーハンの面倒をみることになる。
 うまくいくはずがない。両親の死の意味をまだ理解できないズーハンは、食事ひとつでも、わがままそのもの。「ママに会いたい、パパに会いたい」と叫ぶ。
 アン・ランには、病院での仕事もある。叔父の助けも借りながらの子育ては、やっかいなことばかり。
 ある日、養子先が見つかるのだが…。
 アン・ランは、自分の決めた道を選ぶのか、ズーハンとともに暮らすのか、人生の大きな岐路にさしかかることになる。
 時代は、まだ一人っ子政策が有効だった頃である。なぜ、複数の子どもが可能だったかの理由は、映画の中で、きちんと説明されている。
 また、いまだ、家父長制そのものが存在し、そこそこの家庭では、男子が家督を継ぐのが当然と思われている。
 当然、女性だからという理由だけで、自由な人生を選べない。
© 2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved 映画は、姉と弟の、とりあえずは短い日々を描きつつ、中国という国の、確かな実情を、丁寧に掬いとっていく。
 ズーハンを演じたダレン・キムが、短いけれど、場にぴったりのセリフで、涙を誘う。これが映画初出演、すでに名子役らしい。
 アン・ランを演じたチャン・ツィフォンは、「唐人街探偵 東京MISSION」に出ていたので、覚えている人も多いと思う。役の設定より、いくぶん若く感じるが、気強く生きる女性を、カラッと演じて、好感度大。まだ、北京電影学院に在学中とのこと。
 麻雀好きの叔父役のシャオ・ヤンは、俳優、監督、脚本家で、ミュージシャンでもある才人だ。
 伯母さんに扮したジュー・ユエンユエンが、控えめながら、貫禄の演技。家督継続の犠牲になる過去がありながら、姉弟に寄り添う難役を、演じきる。
 8年前になるが、舞台となった成都に、5日ほど滞在したが、雨の多い街だった。年に100日ほど雨が降るという。この時も、小雨ではあるが、2日ほど、雨だった。
 映画でも、何度か、雨のシーンが出てくる。観客の心に、じんわりと訴えてくる。まるで、涙を誘うかのように。
 こんなすてきな映画を撮ったのは、イン・ルオシンという女性で、これがまだ、長編2作目という。
 子どもをめぐっての映画は、中国に限らず、これからも多く作られることと思う。多くの傑作が生まれるといいなあ。

『シスター 夏のわかれ道』公式Webサイト

監督:イン・ルオシン
脚本:ヨウ・シャオイン
出演:チャン・ツィフォン、シャオ・ヤン、ジュー・ユエンユエン、ダレン・キム

2021年/中国語/127分/スコープ/カラー/5.1ch/原題:我的姐姐/日本語字幕:島根磯美
配給:松竹

「プログラミング」(第1学年)

1.はじめに

 本校は青森県弘前市にある私立の高等学校で、2022年に創立150周年を迎えた。全校生徒は630名程度で、それぞれの卒業後の進路に合わせ、3つのコースに分かれている。「情報Ⅰ」は3コースとも1年生で履修している。
 新学習指導要領の実施に伴い、「社会と情報」から「情報Ⅰ」へと科目が移行したが、内容が大きく変わることから、思い切ってそれまでの一斉授業をなくし、新しい指導計画を立てることにした。
 一斉授業をなくすことで、生徒の個別最適化が図られるのと同時に、自ら学ぶ力が育まれると考えた。年間の指導は次のような構成になっている。

 年間を通じて、まず基本となるのが、教科書の記述内容をまとめる活動である。単にまとめるのではなく、発表するまでのパフォーマンス課題として設定している。教員側は先々まで取り組める課題をあらかじめ用意しておき、生徒は自分のペースで用意された課題に取り組む。
 生徒はまず出席番号に基づいて指定された教科書のページ(単元)の「まとめ」に取り組む。最初の「まとめ」は、『ロイロノート・スクール』(*1)を用いて10枚の規定枚数でプレゼン資料を作成する。

 ロイロノートでの提出は仮提出と位置づけ、本提出は『Google Classroom』(無料)で行う。本提出にあたっては、課題と一緒にルーブリックを配信し、ロイロノートで作成した資料をルーブリックに基づいて改善する。期限内にルーブリックで示された要件を満たす内容が作成できれば満点とし、修正が必要な場合は限定コメントでアドバイスをし、再提出させる。ルーブリックによって、生徒たちは何をすればよいかが理解できる。換言すれば、自分に不足している力が何であるかが明らかになる。個人が直面する課題はさまざまだが、自分に足りないことが明らかなため、生徒は課題を解消しようと自発的に学習に向き合う。
 生徒たちはこの学習に一年を通じて各自が取り組む。各課題の提出期間は1か月程度と十分な期間を設けており、生徒は自分のペースで進めることができるように配慮している。さらに、後述するが、この学習と併行して、個人あるいはグループでさまざまな課題に適宜取り組む。
 なお、教師は、授業中に机間巡視を行い、個別に質問に答えて生徒の疑問を解消させる。ただし、だんだん生徒の情報検索能力が高くなっていくため、日を追うごとに質問が少なくなる傾向がある。
 その一方で、教科書の内容によっては、自力での学習がむずかしい場合もある。その場合は、教科書の「まとめ」をするまえに反転授業形式で動画を視聴させている。動画は『Edpuzzle』(*2)を使用し、Google Classroomで配信する。Edpuzzleは『YouTube』にある教育教材を好みの箇所でカットすることができる。また、生徒がどの程度、学習に取り組んでいるかがパーセンテージで表示されるため、学習への取り組み状況に応じて、個人に合わせた声がけもできる。さらに、Edpuzzle経由でYouTubeの動画を観る場合は「早送り」できないように設定できるため、じっくり視聴してもらいたいときにも好都合である。そのうえ、問題も挿入でき、その解答を点数化することもできる。

 生徒たちはこの教科書のまとめ課題を基本学習とし、併行してさまざまな課題に取り組む。たとえば、情報デザインの単元として、本校が所有する白黒写真を『Adobe Photoshop』(有料)のAI機能を利用してカラー化する課題や、情報通信ネットワークの単元では、カテゴリ5eのLANケーブル作成課題(▶生徒用の説明動画 )などに取り組む。そのため、ある時点でクラスを見渡すと、教科書のまとめを行う生徒もいれば、情報デザイン単元の課題に取り組む生徒もいるし、プログラミング単元の課題に取り組む生徒もおり、それぞれがまったく異なる課題に取り組んでいる。

▼『Adobe Photoshop』で白黒写真をカラー化(左:元写真、右:カラー化した画像)

▼LANケーブル作成課題

※Photoshopでカラー化した画像は、『Adobe Express』(小中高は無料)の機能を用いてWebページを作成し、一般公開している。 
『東奥義塾高等学校 創立150周年記念』

 さて、今回取り上げるのはプログラミングの単元になる。
 プログラミング教育は、2020年度から小学校で、’21年度から中学校、’22年度から高等学校ではじまった。開始当初の高校生は、まったくといってよいほどプログラミング教育を受けておらず、教科書に載っている内容をすぐに実施しにくい状況であった。プログラミングは、とくに言語の規則性を理解する必要があるが、生徒が理解するペースは一律ではない。一斉授業であれば十分な時間をとることができず、理解が遅い生徒は理解できないまま授業が進んでしまう。プログラミングの単元は個別最適化がとくに重要な単元であり、この実現にはe-ラーニングの導入が大いに役立った。
 同単元の導入では、Googleが提供しているブラウザベースの『Blockly Games 』(無料)や『MOONBlock 』(無料)のビジュアルプログラミングを利用し、プログラミング的思考を身につけさせようと試みた。Blockly Gamesは、理解到達段階を丁寧に踏んだ課題が各種用意されている。とくに、課題『迷路』は「順次処理」、「分岐処理」、「反復処理」の3つの組み合わせでプログラムが実現できることを理解させるのに最適である。
 もう一方のMOONBlockは、Scratchとよく似ているが、ゲームを作ることに特化しており、簡単にゲームを作ることができる。生徒たちには「ゲームクリエーターになろう」と投げかけ、プログラミングの楽しさを知ってもらうことも狙いとしている。
 これらの取り組みでビジュアルプログラミングにある程度慣れたところで、実際のプログラム言語へと移行する。
 このとき、本校では『Progate』(*3)を利用している。はじめに情報デザインの学習を趣旨としてマークアップ言語である『HTML&CSS』を実施し、テキストを使った記述に慣れさせてからプログラム言語『Python』に取り組む。Progateの最大の特長は、自分が記述した文字列と模範解答の文字列を簡単に比較でき、間違っているところはハイライトで表示されるところである。生徒は自分の間違いをすぐに確認できるため、大部分の生徒がつまずくことなく自分のペースで進めることができる。

*1 ロイロノート・スクール……教員のみで使用する場合は無料。職員会議等の職員間での情報共有や電子黒板での教材提示も無料で使用可能。生徒用端末での使用は、生徒数による課金制。
*2 Edpuzzle……動画は20コンテンツまで無料で作成できる。本数制限なしの場合は有料になる。
*3 Progate……学校(小中高)として契約することで、原則無料で2つの言語まで進捗管理機能付きで登録が可能。

2.単元の目標

【知識及び技能】

  • プログラミングを学ぶことによって、コンピュータを活用する方法について理解し、プログラムの基本構造を理解したうえで、簡単なプログラムを作成する技能を身に付ける。

【思考力・判断力・表現力等】

  • 社会や自然にある事象を、プログラミングを手段として用いることで表現できる。

【学びに向かう力・人間性等】

  • 自ら作成したプログラムや既存のプログラムの課題を発見し、自分が作成したプログラムの改善につなげる態度を養う。

3.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考・判断・表現

ウ 主体的に学習に
取り組む態度

・アルゴリズムの基本構造について理解している。

・プログラムの構成要素である変数、データ型、演算の意味や種類を理解している。

・基本構造を組み合わせてアルゴリズムを構造化することができる。

・演算例をもとにして、プログラミングの構成要素について考え、正しい結果を出力することができる。

・処理内容を自分で考え、アルゴリズムを構造化、可視化しようとしている。

・既存のプログラムを改良することで、プログラミングの理解を深めようとしている。

4.単元の指導と評価の計画

(ア:知識・技能/イ:思考・判断・表現/ウ:主体的に学習に取り組む態度)

 Blockly Games、MOONBlockといったビジュアルプログラミングは、小中学校でプログラミング教育を受けてこなかったときの橋渡し教材として位置づけている。逆に、小中で十分にプログラミングを学習しているときは、Progate(HTML & CSSやPythonなど)からスタートしてもまったく問題はないと考える。
 また、本校では、Microsoftの『マインクラフト』(有料)も導入している。こちらは『Microsoft MakeCode』(無料)を利用してマインクラフトのエージェントにブロックを置かせるプログラムを作成させている。MakeCodeでは、ブロックで作成したコードを、ボタン1つでPythonのコードに変換、表示できる。マインクラフトは大半の生徒にとって馴染みがあることから、テキスト型プログラミング言語に興味を持たせるためのしかけとしても有効である。なお、このとき本校では青森県津軽に古くから伝わる伝統芸能の「こぎん刺し」の模様を表現することを課題に設定している。場合によっては、家庭科で作成したオリジナルデザインを情報の授業でプログラミングしてもよいだろう。
<参考>こぎん刺し(かちゃらず) https://www.youtube.com/watch?v=1x-tbezaT5k
<参考>こぎん刺し(石畳) https://www.youtube.com/watch?v=UQ1L9k6g-G8

学習活動・内容

評価の観点

評価の方法

1

・Google Blockly Games (ビジュアルプログラミング)

行動観察
成果物
https://www.youtube.com/playlist?list=PLgMXw6a_Zkz6zhrrnwrbde2wF6GsxMFgF

2

MOONBlock (ビジュアルプログラミング)

行動観察
成果物
https://www.youtube.com/watch?v=2OnErvwct18

3
|
10

Progate (HTML & CSS、Python)
※HTML & CSSとPythonを実施する。HTMLとCSSについては教科書「2章 コミュニケーションと情報デザイン」で事前に座学で学習する。その後「3章 コンピュータとプログラミング」としてProgate で再度取り組む。

行動観察
成果物

5.単元の流れ

【1限目】『Blockly Games』

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

導入
5分

・アルゴリズムの基本構造について理解する。
・『Blockly Games』内にある課題「パズル」を選択しビジュアルプログラミングの操作について理解する。

・ブラウザベースのため端末に依存しないことを確認する。

展開
40分

・課題『迷路』に取り組み、「順次構造」、「分岐構造」、「反復構造」の3つの組み合わせでプログラムが実現できることを理解する。
・クリアすると表示される「JavaScript」を確認し、ビジュアルプログラミングのブロックがソースコードとしてどのように表現されるかを理解する。

・「迷路」の後半は比較的難しいため、事前に教師側が正解動画を収録し用意しておくと、生徒の理解に役立つ。

まとめ
5分

・アルゴリズムの基本構造について振り返る。

・「順次構造」、「分岐構造」、「反復構造」の3つの組み合わせでプログラムが実現できることを理解する。

【2限目】『MOONBlock』

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

導入
5分

・基本操作について理解する。

・ブラウザベースのため端末に依存しないことを確認する。

展開
40分

・見本の「くまさんのりんごがりゲーム」を作成する。
※このゲームは、キャラクター(くまさん)を動かし、画面上にたくさん表示されたリンゴに触れると点数が加算されるという単純なゲームである。
・見本を作成できたら、各自がプログラミングを改変する。

・見本を作成後、プログラミングを改変し、どのように変化するかを体験させ、プログラムの構成を理解させる。

まとめ
5分

・プログラムを改変する際、一箇所の変更だけでなく関連する複数箇所の変更が必要になることを確認する。

・「順次構造」、「分岐構造」、「反復構造」の3つの組み合わせでプログラムが実現できることを確認する。

【3~10限目】「HTML & CSS」と「Python」

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

8時間
程度

・座学として一度学習した「HTML & CSS」をProgateで実施する。
・Progateで「Python」を実施する。

・途中で困ったら「答えをみる」をクリックし「自分のコードと比べてみる」を押し、模範解答と自分のコードを比較させる。

6.まとめ

 一斉授業をしないためには、年間授業計画をしっかり立てる必要がある。初年度は、年間を通じた課題をあらかじめ用意しておく必要があり、準備に大変時間がかかるが、一度作成さえすれば、その後は部分的にブラッシュアップすればよいのでむしろ負担は少ない。
 理解の早い生徒は次々に課題を進めることができる。フォローする教員は年間すべての学習内容を頭に入れておく必要があるが、先々まで自発的に学習するその様子を見ると、一斉授業を止めたことの成果を強く感じることができた。
 とくに、個別最適化においてe-ラーニングの利用は大変有効である。とりわけプログラミングの単元ではそれが顕著であり、たとえばProgateでは、学習の進捗状況を教員側で管理できる。そのため、長期にわたる課題でも、学習が遅れている生徒を見逃すことがなく、適切なタイミングで声がけできた。そのうえ、学校として同サービスを契約しており、履修年だけでなく、2年生に進級しても、在学中はいつでも自分のペースでプログラミング言語の学習に取り組める環境を用意できた。Progateでは、こちらが授業計画に盛り込んだHTML & CSSとPythonだけでなく、JavaScriptやRuby、SQL、PHP、Javaなど16の言語を学ぶことができる。理解の早い生徒がHTML & CSSとPython以外の言語を学習する様子を見られたのも、同サービスを導入した大きな成果だったと考える。
 Progateにかぎらず、Blockly GamesもMOONBlockも、同様にそれぞれに特長がある。生徒の学習到達に応じて活用すれば非常に有用であり、個別最適化をはかるうえでこれらのe-ラーニングの導入は非常に有効だったと考えている。

お役立ちツール:「日文オリジナルイラスト集」

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