もりたSDGsプロジェクト② 子どもたちから学ぶエージェンシー(中学校でPBL⑦)

 中学校における探究活動の実践を、福井市森田中学校(以下、森田中学校)の木下慶之先生の取り組みを通して見ていきましょう。今回は、2023年度に木下先生が学年主任を務めた第3学年が取り組んだ実践です。

1.⼈と交流する修学旅⾏を実現したい!

 2023年4⽉、「もりたSDGsプロジェクト」の⽣徒たちは第3学年に進級しました。⽴志のつどいを終え、3年⽣としての気持ちの⾼まりも⾒え、⽣徒会活動や部活動においても主体性のある頼もしい姿が多く⾒られるようになってきました。
 そんな彼らは年度末から5⽉の修学旅⾏に向けて企画、準備を始めていきました。コロナ禍も収まりを⾒せ、修学旅⾏前の5⽉8⽇には「5類感染症」に移⾏することもあり、修学旅⾏は数年ぶりに県外2泊3⽇で⾏うことが確定しました。
 この修学旅⾏に向けて実⾏委員が公募され、実⾏委員と教員で企画や準備を進めていきました。そんな中「観光ではなくて、東京で⼈と交流したい。」という声が出てきました。体験したり、⾒学したりする修学旅⾏のイメージが、教員の中ではいつの間にか標準的になっているのですが、⽣徒たちは「せっかくSDGsとか、インクルーシブとかをテーマにしているのだったら、それをテーマに調査とかできませんか?」「東京にいる⼈たちのSDGsに対する考えを知りたい。」「東京の学⽣さんと交流したい。」などの意⾒がミーティングや普段の会話の中で聴こえてきました。
 そこで、かつて交流のあったかえつ有明中⾼等学校(*1)を、実⾏委員の⽣徒たちの作成した企画書をもって、修学旅行の下見を兼ねて学校を訪問することになりました。経緯や生徒たちの思いを伝えると、快く引き受けてくださり、「お互いの⽣徒たちが、この⽇までにオンラインで打ち合わせしながら企画や運営ができるといいですね。」と提案してくださいました。相⼿は⾼校3年⽣になります。
 福井に戻り、実⾏委員の⽣徒たちに伝えると、提案が実現することをとても喜び、早速、放課後にオンラインで打ち合わせを始めます。「アイスブレーキングをしたほうがいいよね。」「司会はどうする?」「グループ編成は?」「こちら(かえつ⽣)は、SDGsだけじゃなくて、⼀⼈⼀⼈がプロジェクトをしているんだけどいい?」「⼤丈夫です。きっと何かつながっていると思います。」「福井の地⽅と東京の都会での共通点や違いも知ることができたらうれしいです。」と、数回のミーティングを重ね、いよいよ当⽇を迎えます。

 森⽥中⽣は⽴志のつどいで発表した「マイプロジェクト啓発録」をミニポスターとしてテーブルのメンバーに発表しました。かえつ⽣は、実際に地域や企業と関わりながら企画を実現したり、世界とつながってプロジェクトを進めたり、⾃分の卒業後の進路にもつなげていたり、起業していたりして、彼らのプロジェクトの内容とプレゼンに森田中⽣は引き込まれていきました。わくわくしながら⽣徒も教員も交流でき、貴重な時間となりました。




 修学旅⾏後、2学年主任と相談して、2学年の校外学習でのまとめの発表会と合同で、校内ラウンドテーブルを開催しました。⼩グループになって互いの学びを交流し、これからの森⽥中学校でどんなチャレンジをしていきたいかを対話する時間が⽣まれていきました。

2.⾃分たちも地域でこれまでの学びをつなげたい!

 校区の森⽥公⺠館(*2)の館⻑と公⺠館主事から「もりたSDGsプロジェクトの会議を地域の⽅々と⼀緒に企画運営しませんか」と中学⽣に提案がきました。会議はどうしても休⽇になってしまいますが、10数名の⽣徒が参画の意思を表明しました。
 これまでのもりたSDGsプロジェクトの活動は調査したことを発表したり、広報誌などで発信したりする活動が主でした。しかし、コロナ禍も収まり、地域の⽅々との関わりを増やしていこうという気持ちが⾼まりました。公⺠館会議室でのミーティングを通して「集会所やデイサービスに参加する⾼齢者の⽅々にSDGs講座を開催しよう。」「森⽥地区のごみ拾いイベントを開催しよう。」という2つのプランが⽣まれました。
 ごみ拾いイベントは、1年⽣の時に調査した地域の企業が企画する「ピカピカプラン」というゴミ拾いイベントを参考に、みんなが参画できるイベント内容を地域の⽅々と話し合いました。「どうやって広報する?」「クリーンピックという競技形式にしよう!」「ルールはどうする?」「ゴミの分別は?」「みんなで巡回してチェックしていこう!」「軽量と点数計算は?」「回収したあとのゴミはどうする?」など、⼤⼈も子どもも⼀緒になって議論していきました。これと併⾏して、中学⽣による「SDGs講座」も地区の数箇所で開催されました。中学⽣たちがリトルティーチャーとなってSDGsを広報し、地域の⽅々と対話しながら⾃分たちの学びをつなげていきました。

公⺠館でのもりたSDGsプロジェクト会議集会所での地域の⽅に対するSDGs講座

 9⽉、数ヶ⽉に渡り準備してきた「もりたクリーンピック2023」が開催されました。実⾏委員は朝早くから集まり、会場を準備し、参加者を迎え⼊れました。スタートの合図がなされ、いよいよ各チームが分別ごとに分けられた袋をもって森⽥のまちに繰りだしていきました。制限時間が設定され、ゴミの種類ごとに計測場所も分けられ、実⾏委員が計測し点数化していきました。どのチームも、楽しみながらまちを美しくした実践を共にできたことを喜び合いました。




3.中学3年⽣冬の校外学習はどう?

 9⽉、中学3年⽣にとって「学校祭が終わったら受験モード」というのが⼀般的です。そんな中、福井ラウンドテーブルに参加してきた⾦津中学校、丸岡⾼校と「学びをつなげる」ことについて、実践交流しながら⼀緒に考える会を企画してみようという案が⽣まれました。きっかけは⽣徒ポスター発表での⽣徒同⼠の交流からでした。教員同⼠もそこでつながり、連絡を取り合うようになりました。
 そして12⽉15⽇、あわら市のあわら市中央公⺠館において、「夢と探究を語るラウンドテーブル」を開催しました。3校の⽣徒がこれまで取り組んできた「探究を通した学び」を互いに実践報告し合いました。
 最初に、3校の生徒の代表が各校の実践についてプレゼンテーションを⾏いました。森⽥中学校はSDGsプロジェクト実⾏委員の⽣徒がこれまでの「もりたSDGsプロジェクトの3年間の取組」を発表しました。⾦津中学校は「あわら考古学」「個⼈探究での取組」を、丸岡⾼校は「みらい共創」や「地域協働探究」など⾼校での探究を紹介しました。
 これをもとに、丸岡⾼校の⼭内校⻑、森⽥中学校の髙間校⻑からご講評やご助⾔をいただき、グループごとのラウンドテーブルへと移っていきました。テーブルは全43、ファシリテーターは丸岡⾼校2年⽣がしてくださいました。森⽥中3年⽣は「My story」という森⽥中学校での⾃分の実践や探究の学び、将来の夢をポスターにまとめ、グループのメンバーに紹介しました。
 「森⽥中学校、⾦津中学校、丸岡⾼校がこうやってつながることで、また新しいことが⽣まれると感じた。」
 「中学⽣でもしっかりと探究に取り組んでいて、⾼校での探究もさらにいいものにしたいと刺激を受けた。」
 「⾦津中学校は⼀⼈⼀⼈がしっかりとテーマを設定して、探究に取り組んでいてすごかった。」
 「森⽥中学校は探究と⾃分のこれからの⽣き⽅についてもつなげて考えていたのがすばらしかった。」
 「森⽥中学校は地域だけでなく、ASEANやOECDなど世界とつながろうとしているのに驚いた。」など互いに感動したこと、学んだことを交流し合っていました。

 最後に福井⼤学教職⼤学院の⻄川先⽣から「中学校から⾃分でテーマを設定して、探究し、学んだことを語れることに感動しました。このような経験は将来につながる⼤切な⼒になる。また⾼校⽣活や社会でも、探究での学びを活かしてください。」とメッセージをいただきました。




 福井県内の⾼校はどの学校も「探究」をキーワードにこの数年で⾰新が進み、魅⼒ある学校⽂化やカリキュラムを構築してきています。どの学校に進学しても、そこで⽣徒⼀⼈⼀⼈が⾃分の才能を⾼め表現しようとする主体性(エージェンシー)を発揮し、仲間(⽣徒だけでなく教員、地域の⽅々、保護者、ステークホルダーなど)とつながりながら学校づくり、地域づくり、未来づくりを共に取り組み(コ・エージェンー)、⽣きていく喜びを実感していってほしいと願います。

*1:かえつ有明中・⾼等学校
https://www.ariake.kaetsu.ac.jp/
*2:森⽥ 公⺠館 SDGs通信
https://morita.cf0.jp/files/SDGs通信②%20(最終完成版).pdf

森田中学校の取り組みは、森田中学校の「学校ブログ」で紹介されています。
https://morita-jhs.edumap.jp/school-blog

Webマガジンまなびと:「学び!とPBL」Vol.73

Webマガジン:「学び!とPBL」Vol.73 “もりたSDGsプロジェクト② 子どもたちから学ぶエージェンシー(中学校でPBL⑦)”を追加しました。

「令和7年度版 中学校教科書のご案内」特設サイト:「社会 地理」「社会 歴史」「社会 公民」「デジタル教科書」を公開

「令和7年度版 中学校教科書のご案内」特設サイト:「社会 地理」「社会 歴史」「社会 公民」「デジタル教科書」を公開しました。

デジタル教科書サポートサイト:「令和7年度版 中学校向け デジタル教科書・教材」の情報を公開

デジタル教科書サポートサイト:「令和7年度版 中学校向け デジタル教科書・教材」の情報を公開しました。

第6回 やまはくセレクション展

須川埋没林の化石木(館蔵) 山形県立博物館には、教科書にも掲載中の「縄文の女神」と呼ばれる土偶が展示されています。他にも山形県の自然や歴史、くらしについてなど、多岐にわたるテーマを取り扱っています。今回は「第6回 やまはくセレクション展」を中心に、山形県立博物館の魅力について、担当の学芸員の方にお話を伺いました。

――教科書では彫刻のページで縄文の女神を取り上げ、その量感や存在感について注目し、紹介しています。山形県立博物館では縄文の女神についてどのように紹介しているのでしょうか、作品の特徴や魅力と合わせて教えてください。

押切(当時):縄文の女神は、山形県舟形町にある西ノ前遺跡から出土した、縄文時代中期の土偶です。平成4年(1994)に発掘され、平成24年(2012)に国宝に指定されました。
 一般的に土偶はムラの祭祀に使われたとされ、妊娠をした女性像を表しているものがほとんどです。本品も同じく、胸やお腹の形状から妊産婦を表現したものと思われます。高さは45㎝もあり、完形土偶の中で一番の大きさを誇ります。さらに、八頭身美人と称されるように均整のとれた形は見る人を魅了してやみません。今まで大英博物館など海外での展覧会にも多く出品されています。
 本品は、縄文中期の東北南部で出土する土偶に典型的な「出尻形」の形態を成しています。特徴ですが、まずおかっぱ頭には頭頂部に2つ、後頭部に4つの穿孔があります。また顔面の表現はありません。胸部はW字で表現され、そこからへその窪みまで正中線があります。腰部には幾何学的な文様が施され、中央部に五角形の区画が見られます。脚部は角錐状に安定的で、前後に横長の沈線がひかれています。足裏には焼きむらを抑えるために抉りが見られます。
 ある工業デザイナーは、お尻の曲線から直線的な脚部への流れは、現在の車のデザインにも通じると評価しています。また、現代アート作品の中には本品のオマージュも作られています。発掘から30年たった今でも、多方面の分野の方々から注目されています。

国宝・縄文の女神(西ノ前遺跡出土土偶)

――山形県立博物館では、山形県の自然や、歴史、くらしについてなど、様々な分野の展示に取り組んでいます。それぞれの魅力をどのように伝えているのか、展示の工夫を教えてください。

瀬戸:山形県立博物館本館は明治百年記念事業として昭和46年(1971)4月1日、山形県の自然や歴史・文化の概要を紹介する総合博物館として、山形市の中央部に位置する霞城公園(史跡山形城址)内に開館しました。後に教育資料館(分館)・自然学習園を附属施設とし、県内外に向け“やまがた”の魅力を発信する展示活動を行っています。
 本館では、県のなりたちから現代にいたる自然と人々との営みとその変遷を、自然と人文に分けて、地学・植物・動物・考古・歴史・民俗の各部門をとおして紹介しています。
 山形県立博物館では、所蔵する国宝土偶「縄文の女神」を第2展示室内の国宝展示室にて常設で展示しております。土偶の全身を全周で見られるように展示しております。展示台の照明には、山形県産の有機EL照明を採用しています。また目に見えない部分ですが、展示台自体が地震対応構造になっております。

三島通庸佩刀(館蔵)

――山形県立博物館では3月2日から5月12日まで「第6回 やまはくセレクション展」が開催されます。「第6回 やまはくセレクション展」において、どのような展示を見ることができますか。展覧会の注目ポイントを教えてください。

稲垣:山形県立博物館の大切な仕事に山形県内の自然や歴史に関する資料を集めて、研究することがあります。山形県立博物館には、令和5年度もたくさんの資料が新たに寄贈されました。また、博物館の中にはまだまだ常設展示などではご紹介しきれない資料があります。こうした資料についても、博物館の職員は普段の管理はもちろん、調査や研究を行っています。そうした成果は少しずつですが積み重なっていき、誰かに見てもらえる機会を待っています。
 そこで、山形県立博物館では3月2日(土)から5月12日(日)まで、地学・植物・動物・考古・歴史・民俗・教育の7つの分野から厳選した資料を展示する「第6回 やまはくセレクション展」を開催いたします。
 本展では7つの分野の担当者がそれぞれテーマを設けて展示して、ハイイロオオカミやギンケイ、カモシカなど様々な動物のはく製、三島通庸ゆかりの佩刀、須川で発見された化石木など、今まさに大注目の資料をご覧いただけます。
 さらに、大好評いただいた昨年のプライム企画展「高等女学校と実科高等女学校―青春の学びと生活―」に関連して、江戸時代の女子教育に使われた教科書、ドラマで注目を集めた牧野富太郎博士も収集に関わった山形大学農学部の植物標本なども展示されます。
 この春は山形県内の自然や歴史のまだあまり知られていない一面について、新発見も再発見もできる山形県立博物館に来てみてください。

ハイイロオオカミ(動物・新収蔵)

キツネヤナギ(新収蔵・展示予定)

展覧会情報

■「第6回 やまはくセレクション展」
会期:2024年3月2日(土)~5月12日(日)
会場:山形県立博物館
公式サイト:https://www.yamagata-museum.jp/
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)年末/年始(12月28日~1月4日)
開場時間:9時~16時30分(入場は16時まで)
観覧料:一般300円 学生150円 高校生以下無料

【関連作品 教科書掲載情報】

  • 令和4年度版「高校生の美術1」p56.
    土偶[土/高さ45cm 肩幅16.8cm]紀元前3,000~紀元前2,000
    山形県立博物館蔵

「令和7年度版 中学校教科書のご案内」特設サイト:道徳資料ダウンロードに「機関誌・教授用資料など/教師用指導書のご案内」追加

「令和7年度版 中学校教科書のご案内」特設サイト:道徳の資料ダウンロードに「機関誌・教授用資料など/教師用指導書のご案内」を追加しました。