「彫刻美術館探偵」(第3学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.題材名

「彫刻美術館探偵」/47時間

2.はじめに

 平成23年全面実施の小学校学習指導要領図画工作において,博物館との「連携・協力」が明記されたことも含め,美術館においても教育普及への必要性が高まってきている。美術館内部で教育部門が独立している館は少なく,なかなか受け入れ態勢が整っていないという現状はあるものの,各館が模索しながら博学連携が行われている。そうした現状は本郷新記念札幌彫刻美術館(以下,彫刻美術館)も同様であり,美術館と学校の協力による互恵性のある活動が目指されている。
 彫刻美術館では,近隣の札幌市立三角山小学校(以下,三角山小学校)と共に,同校の第3学年総合的な学習の時間において協力した活動を行っている。これは,彫刻美術館と三角山小学校は徒歩で約5分という距離にあり,アクセスが容易であるという恵まれた環境にあることも大きい。
 今年度は1年間を通して「彫刻美術館探偵」として活動を行い,平成25年度の第3学年49名が彫刻美術館に来館し,彫刻作品を鑑賞したり,本館の職員に話を聞いたりなどして自分たちの地域にある美術館について理解を深めてきた。本稿では「彫刻美術館探偵」の活動の中から「わたしたち,子ども学芸員」の実践を紹介する。美術館と小学校の連携や協力において模索している美術館関係者,学校関係者のみなさまに活動の一例として参考にしていただければ幸いである。

3.活動の目標

 本郷新の作品や彫刻美術館の職員の方との出会いや交流を通して,彫刻美術館について愛着を深め,身近な人や地域の人たちに,彫刻美術館について伝えることで,地域のよさを感じる。

4.評価規準

〈学習方法に関すること〉
○問題解決に向かって,見通しをもって考えたり,調べたり,伝えたりする力…『見通す力』『調べる力』『伝える力』

・体験を通して問題を見付け,その解決のために必要な内容や活動を自分で決める力。(見通す力)
・問題解決に向けて,必要な情報,資料を収集,活用しながら追求し,まとめる力。(調べる力)
・調べたいことやまとめたことをもとにして,自分の思いや考えを伝えたい相手に分かりやすく表現する力。(伝える力)

〈自分自身に関すること〉
○「今の自分」を見つめ直し「これからの自分」について考える力…『見つめる力』

・学習を振り返って自分や様々な人たちのよさが分かり,自分の生活とこれからの自分について考える力。

〈他者や社会とのかかわりに関すること〉
○自らをとりまく人・もの・ことにかかわり追求する力…『かかわる力』

・友だちや家庭,地域社会,自然に進んでかかわり活動する力。

5.活動計画

彫刻美術館探偵(47時間)

前期

★オリエンテーション(1時間)
 *総合的な学習の時間で,学ぶことは

★彫刻美術館の?や!を見つけよう(10時間)
 *自分のお気に入りの彫刻を見つけよう
 *教えて館長さん!!

★大好き!彫刻美術館(10時間)
 *名前を付けてお話をしてみよう
 *彫刻と仲良し
 *本郷さんはどんな人?

後期

★彫刻美術館のことなどを,たくさんの人に知らせよう 
<三角山発表会>(12時間)

★わたしたち,子ども学芸員(10時間)
 *キャンドルナイトを開こう
 *わたしたちの作品をたくさんの人に見てもらおう
 *学芸員さんになってみよう

★美術館,館長さん,ありがとう(4時間)
 *感謝を伝えよう

6.単元名

「わたしたち,子ども学芸員」/10時間

7.単元について

 本単元は,総合的な学習の時間「彫刻美術館探偵」の集大成ともいえる活動である。児童は,これまでに彫刻美術館を訪れ,「彫刻美術館はどんなところか?」「彫刻作品とは何なのか?」「本郷新はどんな人だったのか?」「彫刻美術館ではどんな人が働いているのか?」ということを通して,『かかわる力』『調べる力』『見通す力』を培ってきており,学習のまとめとして〈三角山発表会〉で,保護者や2年生に彫刻美術館のよさをわかりやすく伝える活動を行い,『伝える力』を高めてきている。
 本単元は,今までの活動を踏まえた上で自らの作品を「展示」することを通して,「人と人がつながる」とは何なのかを考えることがねらいである。
 これまでの活動では,彫刻美術館に対する自分自身の関心を高めたり,身近な人に彫刻美術館のよさを伝えたりするものであった。本単元においては,作品を見てくれるお客さんの立場になって考えることが重要なポイントとなる。展示は,作品を置いて終わるのではなく,いかに作品を相手に関心をもって見てもらうかが大切となる。そのため,作品展のチラシ作成も行い,お家の方への宣伝を行う広報活動も行う。「相手意識」「つながり」というキーワードをもとに自分たちの活動の価値を感じとることができるようになることを期待している。

8.単元の学習

(1)目標
・自分の作品を見てくれる方々に関心をもってもらえるように,自分ができることを考えることができる。
・友だちと協力して,見通しをもって展示の方法について考えることができる。
・自分の展示の意図や,友だちの展示のよさを分かりやすく伝えることができる。
・彫刻美術館の職員や友だちの考えを聞き,自分ができるようになったことや学んだことについて考えることができる。

(2)学習展開
事前学習①…課題意識をもって学芸員にインタビューし,学芸員の仕事や展示について理解を深める。
事前学習②…作品を展示する場所や,自分たちの使う展示台を確認し,展示への見通しをもつ。
作品展示…学芸員から教えてもらったことや自分たちが計画したことを踏まえて,自らの作品を展示したり,作品展のチラシを作成したりする。
片付け,感想発表…展示された作品の中で自分が気に入った作品や工夫した点について友だちに分かりやすく伝える。

※また,5日間の作品展示期間を設け,作品展「三角山のなかまたち」として一般に公開し児童の活動を広く紹介する。

(3)場所:札幌市立三角山小学校,本郷新記念札幌彫刻美術館研修室

(4)準備物
美術館:展示台
小学校:展示作品(粘土作品,木の作品,木のオブジェ,キャプション,箱,布など)

学習の流れ

評価・留意点(手立て)

事前学習①
日時:1月31日
場所:札幌市立三角山小学校

◎学芸員の仕事や展示のひみつを探ろう!

○学芸員の仕事について

Q:学芸員はどんな仕事をしているのですか?
A:美術館での展覧会を企画したり,作品や芸術家について調べたり,みんなに美術館を好きになってもらうように一緒に勉強します。

Q:作品の並べ方はどのように考えているのですか?
A:作品の大きさや,同じような作品か,違う作品か,または展覧会のテーマから考えています。

Q:展示の時に一番気を付けていることは何ですか?
A:見やすくて分かりやすいように,作品の展示場所や向きを工夫することです。

○展示について

Q:発泡スチロールや木を飾りに使ってよいのですか?
A:大丈夫です。どうしたら見る人がすごいな,すてきだな,カッコイイと思える工夫をしてください。

Q:壁やテープは使っていいのですか?
A:大丈夫です。壁を使うなど,展示の工夫をすることはとても大切です。使う時は先生や私に相談しましょう。

●学芸員が何をしているのか,児童が彫刻美術館で見てきたことを思い出せるように促す。

●児童が鑑賞してきた本郷新の彫刻を例に,「人の彫刻でまとめる」「大きい作品と小さい作品をそろえる」など,展示のイメージを促す。

●美術館での展示は,お客さんに見てもらうことだと気付くように促す。

※作品展示の際は,お客さんのことを考え,よりよく見せるためにはどうすればいいのか気付くことができたか。

※展示のアイディアや気をつけていることなど具体的な話を通して,自分たちの展示へ生かそうとすることができたか。

☆今日は学芸員の仕事や展示のひみつを知ることができましたね。みんなも学芸員になって展示をするのを楽しみにして下さい。

学芸員の仕事はいろいろあるんだね。作品を展示するにはたくさんの準備が必要だね。必要なことやものを考えていこう。

事前学習②
日時:2月5日
場所:本郷新記念札幌彫刻美術館研修室

◎作品を展示する場所や展示の方法についてイメージしよう!

○児童が図工の時間で製作した粘土「三角山のなかまたち」),学校周辺の木々を集めてつくった作品やオブジェを美術館研修室に搬入。

○作品の展示の工夫について考える。
・美術館の展示室にある作品はどんな置き方がされていたかな。
・前から見ればよく見えるけど,横からだとよく見えないな。
・作品の置く角度をななめにしたらどうだろう?
・作品が近すぎるね。作品の大きさや形を考えて展示のバランスを考えてみよう。

○展示台に触り,大きさを知り,どこに自分の作品を置きたいか展示のイメージをもつ。
・展示台の大きさはどのくらいかな。手の平のいくつぶんだろう。
・展示台が近すぎるとお客さんが通れないね。

●「子ども学芸員」として,展示をするという意識をもてるように声掛けをする。
→「みんな私と同じ学芸員として展示の方法を考えましょう。」

●美術館の展示室を思い出せるように声掛けする。

●さまざまな角度で置いたり,大きさの違う作品の隣に置いたりするなど,何パターンかの置き方を提示する。

●児童にも自分が良いと思う展示を試してもらう。

●お客さんの目になって展示を見直してみるように促す。

●展示台を動かしたり,触ったりすることで展示場所や展示台の大きさを実感し,展示のイメージをもてるように促す。

※どうすればお客さんが関心をもつ展示になるかを,考えることができたか。

☆作品を展示する場所の広さや,展示台の大きさについてイメージすることができましたね。どこに何を展示するか,何を準備するかをもう一度確認し,よい展示にしましょう。

限られた場所や展示台で,うまく展示しないといけないんだね。お客さんのことを考えて
展示のイメージをまとめよう。

作品展示
日時:2月6日
場所:本郷新記念札幌彫刻美術館研修室

◎子ども学芸員になって,作品を展示しよう!

○森・土・秋・冬・春エリアと空・海・夏・冬エリアに分けた研修室の展示レイアウトを事前に計画。

○展示レイアウトを参考に展示台の配置。

○学校で考えてきた展示レイアウトをもとに,どうしたら作品がよく見えるのかを試しながら展示。
・展示台の間がやっぱり近すぎるかな。動かしてみよう。
・作品はここに置いた方がよく見えるよ。
・スペースが空いているからここに置こう。
・ここに作品を置いたら作品が重なるからお客さんから見れないよ。
・縦長の作品は立て掛けたらよいと思う。

●「子ども学芸員」として,展示をするという意識を持てるように声掛けする。
→「いままで勉強してきたことをもとに,同じ学芸員としてよい展示にしましょう!」

●一度で決めずに,何種類か試してみるように促す。

●友だちと協力し,どうすれば作品がよく見えるか相談するように促す。

●お客さんの立場になって展示を見てみるように促す。

○展示を終えて,自分が気に入った作品や工夫した点を紹介。
・空のエリアが本当に空を飛んでいるような展示になっていて気に入っている。
・森のエリアのダンボールを使った展示が工夫されていてすごい。
・ここからだと作品が全部見えるから気に入っている。
・お客さんが全部の作品を見ることができるように工夫した。


※計画してきたことや,学習してきたことを参考に,協力しながら展示を行うことができたか。

※自分の気に入った展示について,自分なりの考えをもって,友だちに紹介することができたか。

☆今まで学習してきたことをもとに素晴らしい展示になりましたね。自分の仕事に自信をもってお家の人にも宣伝してみましょう。

限られた場所や展示台で,うまく展示しないといけないんだね。お客さんのことを考えて展示のイメージをまとめよう。

展示期間
日時:2月7日~12日の5日間
※10日は休館日

◎作品は,2月7日(金)~2月12日(水)

○児童は作品展のチラシを作成し,家庭に持ち帰って広報活動を行った。



片付け,感想発表

◎「わたしたち,子ども学芸員」をふり返ろう。

○片付け

○感想発表
・作品を置いて終わりじゃなくて,作品を見てくれる人のことを考えて,作品の向きや,並べ方を工夫することが分かった。これからも,教室の展示などで生かしていきたい。

●作品を片付けるまでが学芸員の仕事だということを伝える。

※作品を見てくれる人の立場になって考えることの大切さについて考えることができたか。

☆美術館での展示は,多くの準備が必要であり,お客さんのことも考える必要があることを学びました。大変かもしれませんが,多くの人が自分の展示を見てくれると思うと嬉しいですよね。美術館では展示を通して人と人がつながっているのです。

美術館の作品展を通してたくさんのことを学んだね。これからも,相手の立場になって考えることができるようにがんばっていこう。

9.おわりに

 本郷新記念札幌彫刻美術館は,その名の通り札幌生まれの彫刻家・本郷新(ほんごう しん/1905‐1980)の美術館である。美術館は主に彫刻を中心とした企画展を行う本館と本郷の作品を展示している記念館に分かれている。館が分かれていると言っても大きな規模ではなく,5人の職員(内,学芸員1人)で運営している。
 本郷新は生前に「私を乗り越えて若い芸術家がどんどん生まれて欲しい」と語っており,彫刻美術館ではその想いを受けて,若手育成をポリシーとし,若手作家の紹介や教育事業に力を入れている。小学生の作品展に関しても継続して続けられており,彫刻美術館の研修室で展示されてきた。
 しかし,これまでの作品展は,小学校から児童作品を借りてきて,美術館の職員が展示していたため,作品展と児童の関係が希薄であった。したがって,作品展開催中も子どもや家族が美術館を訪れることが少なかった。今までの展示は「美術館で展示すること」が目的となってしまい展示と児童の間には学びが生まれていなかった。「わたしたち,子ども学芸員」では,展示と児童の結び付きを深め「自分たちの作品展を他の人にも見てもらいたい」という意識をもってもらい,作品鑑賞とは異なる視点で美術館の事を理解してもらうことが美術館のねらいでもあった。
 三角山小学校に事前学習に行った際には,児童は美術館で作品展をすることに対して,まだあまりイメージができていなかったように思う。しかし,「学芸員として一緒に働こう!」と声を掛けながら学習を重ねるごとに,児童の表情は変化し,美術館で展示をすることに対する意識が変わってきたことが窺えた。展示当日は目を輝かせ,今か今かと楽しみにしている様子が印象的であった。展示を終えた時,先生の「自分の好きな場所に行ってみよう」という声掛けに対し,自分の気に入った作品の場所へ行き,自信をもって感想を述べることができていた。
 また,作品展の広報について,児童がチラシをつくってお家の方に宣伝してみては,という美術館の提案に,先生が快諾してくれたこともあり,児童は自らチラシをつくって広報にも取り組むことになった。美術館の広報活動の一環を学んでもらうと共に,広報をすることで責任感が増したようであった。その効果もあり,作品の展示期間中には,保護者と共に来館する児童や,児童だけで来館する姿も見られ,自分たちの展示について話し合ったり紹介したりしている場面が見られた。
 「わたしたち,子ども学芸員」では,広報も含めた美術館の展示にかかる一連のプロセスを学ぶ機会になったと言える。課題であった展示と児童の結びつきも深めることができたと考えている。展示期間中に保護者や児童が足を運んできてくれたことは正にその成果と言えるだろう。本活動は,「美術館の展示とは何か?」という分かりそうで,やってみないと分からない問いに対して,実践を通して難しさや楽しさ,責任,自信を得ることができた意義のある活動であった。児童の美術館や美術に対する見方が変わっていき,再び彫刻美術館に足を延ばしてくれることを期待している。
 本活動は,美術館だけでは実現することができず,三角山小学校の密接な協力のもとに実現している。平成25年度は,「わたしたち,子ども学芸員」をはじめとして有意義な活動を行うことができた。1年間担当してくださった,市立三角山小学校の加瀬美幸先生をはじめとする先生方の熱心な活動と,全面的なご協力に対し,この場を借りて厚く御礼申し上げます。

「おやつだ~いすき!」(第3学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名/時数・実施時期

「おやつだ~いすき!」/全18時間 9月~12月

2.単元設定の理由

 4月19日(金)に遠足で府中市郷土の森に行った。持ち物にある「おやつ」を子どもたちは楽しみにしており,多くの児童がたくさんのお菓子を持参していた。学校行事ということで,より自分好みのおやつを持ってきていた。中には,大好きな甘いお菓子に偏って持ってきている児童もいた。
 そこで,この遠足をきっかけとして,自分たちにとって身近な「おやつ」について取り上げることとした。食に関することであるので,児童が興味・関心をもち課題を設定することができると考えた。また,本学級には学童に通っている児童が多くいる。学童では「ヨーグルト」や「するめ」など,栄養を考慮したおやつが提供されているので,情報収集の際にはよい情報源となり,より探究的な学習になると考え,本単元を設定した。
 本単元では,よりよいおやつを「心も体も元気になるおやつ」ととらえ,今と昔のおやつを比較しながら,「心の元気」と「体の元気」の要素がたくさん詰まったおやつを手づくりする。日常のおやつを食べる生活の中で「体の元気」まで意識している児童はほとんどいない。「好きなお菓子」をおやつとしている児童がほとんどである。給食も好き嫌いがある児童も,自分の好きなことが食べられるおやつの時間を楽しみにしているようだ。この単元を通し,おやつは「心の元気」だけでなく「体の元気」も意識することが大切であることを知り,実際に,自分たちが考えた「心も体も元気になるおやつ」をつくる活動を通して,生き生きと健康な生活について考えさせていきたい。
 また,本単元は,総合的な学習の時間の初めの学習である。自分にとって身近なおやつについて,「課題設定」から「まとめ・表現」までの一連の探究学習の流れを体験的に楽しく学ぶことで,探究活動が楽しく進められるようにしていきたい。

3.単元の目標

 さまざまなおやつについて調べることを通して,心や体によいおやつについて考える。実際に,心や体によいおやつをつくることを通して,自分の生活に生かしていこうとする。

4.単元の評価規準

評価の視点

本単元で育てたい力

○評価規準 ・具体的な子どもの姿

学習方法に関すること

・課題を見つける力
・情報を集める力
・情報を整理する力
・まとめる力

○「心と体によいおやつ」を見付けるために必要な情報を収集し,それらの情報を整理していく過程で,自分の考えを見付け,表現している。
・遠足に持っていったおやつや,普段食べているおやつから,おやつに対する自分なりの課題を見付けている。
・自分の身近な人から,おやつについての情報を集めている。
・集めた情報を,視点に基づいて整理・分析している。
・自分たちの考えをレシピ集にまとめている。

他者や社会に関すること

・コミュニケーション力
・協同的に学習を進める力

○自分の身近な人や,おやつを提供している人と関わりをもったり,グループの友だちと協同的に話し合いを進めたりしている。
・家族との会話を通して,それぞれの時代のおやつについて調べている。
・おやつを提供している保育園の人たちから,心と体のことを考えたおやつについて聞いている。
・自分たちのおやつづくりのために,グループで協同的にメニューを考えている。

自分自身に関すること

・自分自身について考える力

○調べたことを,これからの生活に生かしたり,自分の食について考えたりすることができる。
・今後生活の中で食べるおやつについて考えている。

5-1.学習過程ごとの主な学習活動

学習過程

主な学習活動

課題設定

おやつっていったいなんだろう?[3時間]
・遠足のおやつに持っていったおやつについて振り返る。
・普段よく食べるおやつを振り返り,自分にとっておやつがどのようなものなのかグループで話し合う。
・栄養士さんをゲストティーチャーとして招き,おやつの役割について知る。

情報収集

心にも体にもいいおやつを探そう①
~どんなおやつがあるのだろう~[3時間]

・1週間のおやつ記録を持ち寄り,自分たちのおやつについての情報を集める。
・自分の家族(親世代・祖父母世代)が子どものころ食べていたおやつの情報を集める。
・集めてきた情報を「手づくり」「買ったもの」に分類する。

心にも体にもいいおやつを探そう②
~手づくりのおやつってどんなものがある?~[4時間]

・手づくりのおやつを提供していそうなところを考え,どんな情報を得たらいいか話し合う。
・インタビューの基本について知る。
・保育園の栄養士さん,学童の先生にインタビューをする。
・インタビューの結果を報告し合う。

整理・分析

集めてきた情報から心も体も元気になるおやつを見付けて,実際につくってみよう[6時間]
・自分たちがつくって食べてみたいおやつのメニューを決める。
・自分たちがつくって食べてみたいおやつのレシピを持ち寄り,どのレシピを採用するか話し合う。
・つくる計画を立てる。
・「おやつ先生」を招いて,自分たちが考えてきたことについてのアドバイスをもらう。
・実際におやつづくりをし,食べてみる。

まとめ・表現

これからのおやつとの関わり方[2時間]
・活動を振り返る作文を書く。

5-2.授業の実際

【課題設定】
心と体にいいおやつって,どんなものなのだろうか。

○「おやつ」にどんな役割があるのか知る。
 4月の遠足に行く前に,おやつカードを配布して,遠足に持っていくおやつを記入した。遠足から戻った日の宿題として,持っていったおやつについて,「全部食べた」「半分ぐらい食べた」「全く食べなかった」という振り返りをした。また,全部食べられなかったおやつについては,「どうして全部食べられなかったのか」という理由をカードに記入させた。 食べられなかった理由の多くは,「おなかがいっぱいだった」「持っていきすぎた」というものであった。
 そこで,「そもそもおやつとは何なの?」という根本的な問いを,学校栄養士にすることにした。栄養士は,カルビーの食育教材を活用しながら,おやつの役割について話をした。おやつは,「心の元気と体の元気」につながることや,「補食」の役割があることを学習した。
 遠足のおやつを振り返ることと,栄養士の話を聞いたことから,心と体にはどんなおやつがいいのか興味をもち始めた。

【情報収集】
心と体にいいおやつを探すために情報を集めよう

○家族から情報を収集する

 「お父さん・お母さん」「おじいちゃん・おばあちゃん」は身近で話を聞きやすいという児童の意見から,まずは家族を対象に情報を集めることとした。「子どものころ,どんなおやつを食べていましたか?」という質問をし,ワークシートに記入した。
 また事前指導として「集めた情報はあとで整理整頓するよ」と,情報の整理・分析段階を示唆し,学習の見通しを指導した。
 情報を集める途中で,「買ったおやつ」と「手づくりのおやつ」があることに気付いていったので,情報を集めながら両者を分類することにした。集まってきた情報を年代別にカード化し,「買ったおやつ」と「手づくりのおやつ」に分類しながら整理してみると,ある傾向が見えてきた。

 年代が上がっていくに連れて,「手づくりのおやつ」が増えていっているということであった。児童たちの中には,「手づくりのおやつの方が体によさそうだ」という感覚があり,「手づくりおやつを提供しているところ」にインタビューをしてみたいと動き出した。
 どこに行くか検討する話合いをしたところ「保育園のときにおやつが出ていたから,もしかするといい情報が得られるかも」「学童でおやつ出るよ」という意見が出てきたので,学区内の保育園にインタビューをしにいくこととなった。
 本単元は総合的な学習の時間の初めての単元ということを鑑み,ここで,インタビューの仕方について指導する時間を設けた。

○保育園の栄養士さんから情報を得る
 保育園でのインタビューの内容は,以下のようなものである。

  1. 保育園では,どんなおやつを出していますか?
  2. それは,買っていますか? それとも手づくりですか?
  3. 人気のあるおやつは何ですか?
  4. おやつのことで気を付けていることはありますか?
  5. アレルギーの人にはどうしていますか?

 2の質問については,「うちの保育園ではすべて手づくりです」という回答をもらい,子供たちからは「やっぱり手づくりって体にいいのか」という声が上がっていた。「手づくり」という観点だけではなく,4・5の質問からも,保育園の栄養士さんが,いかに体のことを考慮したおやつを提供しているのか,知ることができた。
 平行して,学童でも同じ質問で,インタビューを行った。学童では,保育園とは違い,手づくりのおやつはないようだった。しかし,共通点として,ただ子どもたちの好きなものを提供するだけではなく,みんなが好きなもので体の栄養にもなるものという部分は共通していた。
 集めてきた情報は,報告会を開いて,クラスで共有した。
 ここまでの活動で,おやつは「心の栄養」と「体の栄養」になることが大切であることや,手づくりおやつにはどのようなものがあるのか,ということが分かってきた。

○自分たちがつくるおやつを決める

【整理・分析】
心と体にいいおやつをつくる! そこでグループで何をつくるか決めよう!


 活動の最中にも,「おなかすいた~」とか「食べた~い」という声が上がっていた。また,その中には,「つくったことないから,つくって食べてみたい」という意見が多く上がってきた。そこで,校長先生に許可をいただき,つくる計画を立てていくことにした。
 たくさんの情報が集まったので,いざつくるとなると,その中から1つに絞らなければならない。子どもたちの次の課題は,「つくるおやつを決める」ということになった。
 たくさんの情報の中から1つに絞っていく話し合いの過程が目で見て分かるように,「ピラミッド型」の思考ツールを活用した。
 思考ツールを使うことが初めてなので,中段にはランチョンマット,上段にはトレーを用いて,イメージしやすいようにした。
 グループでの話し合いは,「1人1人がつくって食べてみたいおやつ」を4~5種類中段に上げ,最上段は,その中から「みんなが好きで食べたいもの」を選んでいた。
 あるグループでは,2つのものを融合させた折衷案を考え,「フレンチりんごトースト」という新しいメニューを生み出していた。
 メニューが決まると,それぞれでレシピを持ち寄り,どれだったら自分たちでもできるか話し合いをした。自分たちの算数の知識を振り絞り1人分の分量を考えたり,必要な道具を考えたりした。それを画用紙にまとめた。

○おやつ先生にアドバイスをもらう
 おやつづくりの経験がない中で考えているので,誰かに聞いてみたいということを子どもたちが言い始めた。そこで,いつも料理をしてくれているお母さん(保護者)を「おやつ先生」として教室に招くことにした。

 おやつ先生に自分たちが考えてきたことを発表し,アドバイスをもらった。アドバイスの中には,使う道具のことや分量のこと,手順のことなどがあった。
 この時間に新しく知って,計画を修正したことは,黄色の画用紙に箇条書きにまとめた。

《授業後の児童の感想》
○おやつ先生にアドバイスをもらったことで,自信がもてました。
○人に聞くことは大切だと思いました。
○おやつ先生が道具の安全な使い方を教えてくれたので,心配なことが減りました。

《おやつ先生の感想》
○一生懸命になって考えている子どもたちにアドバイスするために,私もいろいろと考えました。自分たちで考えて,分からないことを解決していったり,知りたいと思ったりすることが大切だということを感じました。とても楽しかったです。

○おやつづくり実践
 実践の時間もおやつ先生をお招きし,教えてもらいながらおやつづくりをした。
 つくるおやつは,「心にも体にもいいおやつ」ということが前提となっているので,食べているときには,「おいしい!」とか,「これなら元気に大きくなりそうだ!」という声が上がってきた。
 一方で,量が多く「これでは夕食が食べられそうにないな」という声や,「野菜ばかりでおやつのような気がしないね」という声も上がった。

《児童の感想》
 普段,おやつのことは何も考えていませんでした。でも,総合の勉強をする中で,栄養のことと笑顔のことが大切なのだと知りました。おやつづくりは,そんなことを考えてやりました。つくって食べるおやつもすごくいいです。つくるときは,おやつ先生がやけどをしない方法を教えてくれました。
 今度はフレンチトーストをつくってみたいです。おうちでつくって,お母さんや兄弟に食べてもらいたいです。

6.成果と課題

《児童にとっての成果と課題》
 本単元は,3年生にとってはじめての「総合的な学習の時間」であった。したがって,子どもたちにとって学習の見通しがもちやすく,楽しく探究活動が進められるように,単元構成を考えた。
 情報収集の段階では,たくさんの人とかかわりをもつことができた。入門期であることを鑑み,インタビューの仕方を指導する時間を設けたことで,自信をもって取り組むことができた。
 整理・分析の段階では,付箋を用いた。色を分けたり,貼るところを工夫したりすることで,たくさんの情報を,見やすく整理することのよさに気付くことができた。今回の経験をきっかけに,情報を整理するための手段や方法を増やしていけるようにしたい。
 おやつをつくる活動を取り入れたことで,学習に対する意欲を持続させることができた。自分たちの計画に自分たちで取り組んでいくことが楽しいということを体感できた。

《教師側からみた成果と課題》
 本単元では,思考ツールを用いて整理分析をした。本単元において,ピラミッド型の思考ツールでは整理する視点が不明瞭で,各班の好みによってつくるおやつが決定していった。楽しく活動を進めるために機能したとは思うが,栄養素に着目したり,つくる相手を決めたりすることで,より視点を明確にして,思考ツールを使えたと考えられる。
 ゲストティーチャーとして保護者をお招きしたことは,児童・保護者にとってよい経験となった。人と関わりながら探究を進められ,安全面にもより配慮が行き届くことから,今後とも保護者との関わりは大切にしていきたい。

自然の変化に敏感に気付く防災教育(第3学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

防災教育って,なんでしょうか?

「避難訓練のことでしょ?」
「9月1日に地域で行う防災訓練のことだよ。」
「災害から逃げ方を訓練する教育のことでしょ。」
「じゃあ,避難訓練以外に何をすればいいの?」
「安全指導と違うの?」
「不審者対応訓練と防災教育は関係ないでしょ。」

 私は,すべてノーと考えます。(もちろん,立場によってすべて正解です。)防災教育は,安全教育と本質を同じにしており,「自分の命を守る教育」であると考えます。

防災教育でめざすべき姿はなんでしょうか?

 ごく簡単に言えば,「自然や環境の変化に敏感に気付き,どう行動したらよいかを知っていて判断でき,実際に自分の命を守る行動ができること。」さらに,「他人の命を助けることもできること。」と考えました。

 これって,もともと教育でめざしている姿を多く含んでいると思いませんか。そうなんです。防災教育の本質は,普段の教育で取り上げていることを有意味的に関連させ,命を守る知識や方法として教え,理解させることです。その上で,逃げ方を確実に身に付けるために,避難訓練等として特別に行うことです。

では,どうやって教えればいいのですか?

 私の所属校は,水害に遭いやすい地域のため,洪水を取り上げました。担任している3年生の子どもが理解できるよう,次のようなポイントで実施しました。
1)防災教育プログラムで知識を系統的に教える。
2)普段の学校生活の中で,気付きを促す学習を行う。
3)社会科の校外学習で現場を観察する。
4)学習参観で,保護者の前で防災の学習をする。

 ~それでは,1)と2)について,実践を紹介します。

1)新潟県防災教育プログラムの実施
 新潟県では,防災教育プログラムが作成されています。小学校1年から中学校3年の子どもたちにプログラムを実施することで,どこにいても,どの災害からも,自分の命を守れる知識と判断力を付けることが目的です。(※注1)
 公開授業で実施した3年生の洪水に関する学習プログラムの概要と資料を示します。

【表1】授業の概要
◆ねらい 「雨の降り方や洪水について知る」~洪水災害に関する現象についての理解を深める。

学習活動

提示資料・留意点

1.大雨時の身を守る方法について,復習する。
高いところにいる
流れる水には近付かない
情報に注意する

・前時の学習内容の復習として,具体的な避難方法を提示する。

2.雨の日が多いのは何月か考え,雨の降り方の特徴を知る。
・梅雨 ・台風の時期

・洪水の時期を考えるため,新潟県の月別雨量のグラフを提示する。

3.街が洪水になる訳を考える。
・小川や側溝が溢れる。
・土地の低いところに水がたまる。
・大きな川が溢れる。
・上流の大雨で,大きな川が溢れることがある。

・所属校が遭遇した道路の流水動画を視聴する。
・五十嵐川決壊時の動画を視聴する。(三条市消防署作成DVD)
・山で大雨が降ると下流で洪水が起こる動画を視聴する。
・溢れる原理や現象について児童にわかりやすい言葉で表す。
・災害の複合性について,雷,たまり水,突風のニュース映像等を提示する。

4.大雨の際,洪水の他に起こる現象を考える。
・停電 ・落雷 ・渋滞

5.学習してわかったことをワークシートに記入し,確認する。

※新潟県防災教育プログラム洪水編(試行版)A-3中学年(1/2)の概要に使用した資料を加えたもの

【図1】平成23年夏 所属校前を水が流れる様子

【図2】防災学習(洪水)の板書

 「できるだけリアルな資料を用意し,子どもたちが生活感覚としてイメージしやすいようにする」,「知識が混在しないように,掲示物を工夫して提示し,視覚に訴えながら知識や判断基準が整然と理解できるようにする」とよいことがわかりました。課題は,学習がすべて頭の中での思考や理解の範囲にとどまっているということです。学んだことが生きてはたらく場を用意しなければなりません。そこで次に,自分で情報収集し,判断・実行し,うまくいったかどうか評価する活動を実施しました。

2)自然についての気付きを促す取り組み~「かさ当て名人の取り組み」の実施
 「学んだことを実生活で活用すること」,「自己決定・自己判断・自己評価をさせること」をねらうため,かさ当て名人の取り組みを行いました。

【「かさ当て名人になろう」のやり方】
 天気予報を見る,家の人に聞くなど,自分で情報収集し,登校時に傘を持ってくるかどうかを決めます。下校時に,傘のあるなしにかかわらず,天気と自分の朝の判断が合っていれば○とします。指導時間は,登校後と下校前の短学活の時間です。担任は記録カードを用意し,天気の話題をしながら,「きのうのかさ当てゲームは当たった?カードに記録しましょう。」と指示します。

【図3】かさ当て名人の取り組みに用いたカード

 その結果,こんな姿が現れました。
・子どもの言葉から…
 ―「天気予報を見て,かさを持たないって自分で決めたんだ。」
 ―「雨が降るけど,塾でお迎えが来るから,かさはいらないんだ。」
 ―「雨が強そうだから,長靴を履いてきた。」
・実践後,3年生は,傘の持ち帰り忘れが激減した。
・朝の短学活で,災害ニュースや自然現象の話題が,子どもからよく出されるようになった。
・突風,強い雨,虹などが発生すると,授業中でもみんなで注目するようになった。

 私の実践:「防災教育=自然の変化に対して敏感に反応して行動決定する子どもの育成」
 こんな考え方はいかがですか?現在,地域に残る伝説から,災害について考えさせる方法はないか探索中です。みなさんのご意見を聞かせてもらえると嬉しいです。

 

※問い合わせ先:古田純 
E-mail:togeso8313@hotmail.co.jp
※注1:財団法人新潟県中越大震災復興基金「新潟県防災教育プログラム洪水編(試行版)」(協力 新潟県教育委員会 新潟県防災局)平成25年2月

地域の人を交えた「パートナー会議」

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

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「パートナー会議」とは…

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図1 「パートナー会議」を設定した単元の流れ

 地域社会への貢献をめざして「サービス活動」を進めていくためには、常に社会のニーズに立ち戻る必要がある。アンケートやインタビューによる調査を行うのはもちろんだが、単元を通して、地域の人と共に活動を展開していけば、より地域社会と深くかかわっていけるだろう。そこで、ここでは児童と共通の願いをもち、それを実現させるために能動的に活動を進めていく人をパートナーとする。
 「パートナー会議」は、児童とパートナーが対等に意見を出し合い、協同して解決することを確認する場である。全体、グループと会議の形態は様々だが、共通理解、方向付け、振り返り等が必要な時に単元を通して教師が意図的に仕組んだり児童の要求に応じて設定したりする(図1)。

「パートナー会議」の意義

 「パートナー会議」では、様々な視点で検討しながらよりよい「サービス活動」をつくり出していく。そのため、互いの意見が合わずにぶつかることがあるが、それが探究的な学習において重要な意味をもつ。
 例えば、広い視野をもつパートナーからの質問や意見によって、計画や準備の不十分なところが明らかになり、より具体的な見通しをもって目の前の課題を解決していくことができる。つまりパートナーからの指摘が児童の考え方を広げたり深めたりすると同時に、児童にとって乗り越えるべき壁となり、自己を成長させるよい機会になるのである。
 パートナーや友達と協同して一つ一つの壁を乗り越えた児童は、「みんなと力を合わせて取り組んでよかった」「自分がやっていることは地域に役立っている」等、地域社会にかかわる喜びを味わうことができる。その時、パートナーからの評価が加われば、「自分はこんなこともできるようになった」と自分のよさや可能性に気づき、その成長に自信をもつことになると考える。

「パートナー会議」を取り入れた実践例

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1 単元の目標

 地域の人々が佐賀市の活性化のために様々な活動をしていることに関心をもち、自分達にできる「佐賀をそして日本を元気づけるプロジェクト」として「第40回佐賀城下 栄の国まつり」をもり上げることにねらいをしぼり、地域の方と共に考え、実行することができる。

2 単元を通して育てたい資質や能力及び態度と評価規準

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3 単元の実際

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(1)「パートナー会議」における児童の様相

●第1回パートナー会議(6/16)にて

佐賀市観光振興課の方との「パートナー会議」

佐賀市観光振興課の方との「パートナー会議」

 「栄の国まつり」ってどんなまつりだろう…。
 子どもたちの疑問に答えるために、「栄の国まつり」の主催者である佐賀市観光振興課の方を迎えて、まつりの概要を話してもらった。「まつりがしたいな」という漠然とした思いだった子どもたちが、「栄の国まつり」が人々の思いを集めて続いてきたものであることを聞いて、「自分達がまつりをもり上げることで商店街を豊かにできる」 「佐賀を広くアピールできる」「そして日本を元気づけることにつながる」というはっきりした目的意識をもつことができた

●第2回パートナー会議(6/29)にて

webjirei_ssougou_vol001_10  「S・A・S」のみなさんから、みこしのデザイン(鯱)を提案してもらった(写真上)。子どもたちも一人一人考えてきた案を発表した。「佐賀城築城400年記念」をみこしのテーマにしたい考えは共通していた。
 そこで互いの考えを合わせて「佐賀城と鯱」をモチーフにみこしをつくっていくことに決定した。
 しかし、つくるみこしの数を決める際には、子どもたちから2つ、4つ、8つ…という案が出され、意見がまとまらなかった。webjirei_ssougou_vol001_11そこで「S・A・S」の方から「みんなの気持ちも分かるけど、本番までの時間がないよ。みんなの力を1つのみこしに集めた方がきっといいものができると思うけど…」という意見が出された(写真下)。このようにパートナーは、子どもの意見を受け入れるだけでなく、対等に意見を出す存在なのである。パートナーからのこの一言は、みこしづくりだけでなく、それ以外の活動にもその後大きく影響を及ぼした。「自分達には時間がない!」と強く意識したのである。それからというもの、グループ内でもめ事を重ねていた子どもたちが、目の色を変えて、朝や休み時間、自分達で声を掛け合って話し合いや作業を主体的に進めていった。

●第4回パートナー会議(7/6)にて

海外でも活躍中の鍋島三十六萬石大名行列

海外でも活躍中の鍋島三十六萬石大名行列

 強力な新パートナーの仲間入り!
 PR活動を担当しているグループの中で「自分達だけでは、新聞やテレビに取り上げてもらえないかもしれない。どうしたら、もっと注目してもらえるかな?一緒にパレードに出てくれる人を募集しようか…」という意見が出ていた。そこで浮上したのが佐賀で大名行列をしている「鍋島三十六萬石大名行列まつり推進委員会」の存在だった。さっそく子どもたちが直接電話をかけてこの計画を話してみた。そして実現したのがこの「第4回パートナー会議」である。代表の方の話は、「自分達と同じ思いだ」「一緒にパレードに出たら、佐賀を元気にできそう」見通しが明らかになり、ますますプロジェクトが波に乗ってきたことを感じることができた。

●第5~7回パートナー会議(7/8、13、15)にて
 次のように各グループの活動がパートナーと共に進んでいった。

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 このように、パートナーと共にプロジェクトを進めていくことで、課題が明らかになり、具体的な見通しをもって活動することができた。
 美術の知識や技能、経験をいかしてアドバイスや意見をくれる「S・A・S」のみなさん、大名行列の知識や経験、佐賀のよさをアピールしたいという情熱をもつ「鍋島三十六萬石大名行列推進委員会」の方とのふれあいは、確実に子どもたちを変化させていった。以下、その主な姿を紹介する。

●随時「パートナー会議」を設定することで、パートナーさんに認めてもらいたいという思いが強く、「いつまでに」 「何を」「どのように」という見通しをもって活動できるようになった。
→朝の時間や休み時間、担当グループごとに声をかけ合い、主体的に活動していた。
→グループ内でのもめ事がなくなり、協力して活動することができるようになった。
→担当している活動に責任をもって取り組むことができた。
→「総合的な学習の時間」での集中力が、他教科等でも発揮されるようになった。
●「パートナー会議」によって、地域と常につながりをもつことができ、自分達が「佐賀をそして日本を元気づける!」という強い目的意識を継続することができた。
●パートナーと共に「サービス活動」を展開することで身に付けた資質や能力を他教科等で生かすことができた。
(例)
・図画工作「パレードの衣装製作」・・・形や色へのこだわり、発想・構想のヒントにつながった。
・算数「表とグラフ」・・・地域へのインタビュー結果を集計する際に表やグラフに表した。 等

(2)「第40回佐賀城下栄の国まつり」パレード本番(8/6)の様子

 パートナーである「S・A・S」や「鍋島三十六萬石大名行列推進委員会」のみなさんと一緒に佐賀市の中央大通りを大名行列風にパレードした。
 「S・A・S」の協力で仕上がった「佐賀城と鯱のみこし」には、佐賀や日本を元気づけるメッセージが綴られている。

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 また、パレードの先頭と最後尾には、メッセージをかいた旗を掲げた。
 地元のテレビにも取り上げられ、このメッセージを多くの人に届けることができた。
 子どもたちの衣装は、図画工作の時間にそれぞれが制作したものである。夏の暑さやパフォーマンスの動きを考えながら布を主材料として造形活動を展開した。

先頭を歩くメッセージの旗

先頭を歩くメッセージの旗

最後尾からもしっかりアピール

最後尾からもしっかりアピール

 パレードは大成功を収めた。
 元気な子どもたちの歌やかけ声が佐賀の大通りに響き、応援して下さった商店街のみなさまからも大きな拍手をもらった。
 子どもたちは、約2ヶ月前から準備してきたこのプロジェクトを終えて、やり遂げた達成感や充実感を味わうことができた。その後、アンケートやインタビューをして地域の方の声を集めたが、自分達のがんばりを認めてもらったことでさらにその思いを強めた。

大通りに子どもたちの元気な歌とかけ声が響く

大通りに子どもたちの元気な歌とかけ声が響く

パートナーさん達と共に・・・

パートナーさん達と共に・・・

(3)「振り返りシート」の記述に見る児童の変容

●主体的に活動し始めたR児
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 「佐賀鍋島の歴史をこのまま埋もれさせてはいけない!」という強い思いから、最初は一人で大名行列を復活させる運動を起こした「大名行列まつり推進員会」の代表の方に憧れと尊敬の念を寄せている。パートナーのこうした生き方にふれ、自分達を見直し、やる気を奮い立たせている。
 その後、R児は、学校帰り近くの幼稚園に立ち寄り、自分が描いたPRポスターを貼ってもらえるようにお願いに行き、承諾してもらえた。小さな成功体験がR児に自信を持たせ、その後も主体的に活動する姿が多く見られるようになった。

●自分を表現できるようになったS児
kansou_2  自分の考えを出すことが苦手だったS児が、この活動をきっかけにして、どんどん積極的になってきた。パートナーに認めて欲しいという思いが力になっている。他教科でも挙手することが増えてきた。
 グループでのまとまりも見られるようになって限られた時間の中で、いかに協力して活動していくかを考え、それを伝えようとするようになってきた。S児のように自分を表現できるようになった児童は多く、それぞれが担当した活動に自信を持って取り組んでいた。

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●パートナーから他教科(図画工作)の知識を得たT児
kansou_3 「S・A・S」の方に鱗を何色にするかを相談したT児は、配色のポイントについて学んだ。そしてパートナーのよさを改めて実感している。
 T児は、その後図画工作でパレード衣装を制作した際にこの時のアドバイスを思い出し、裃のデザインに応用していた。このようにパートナーから専門知識を得て、それを他教科の学習場面で活用することができ、学びが広がったと言えよう。

地域社会と密着した「サービス活動」をめざした研究をふり返って…

1 成果

  • 各教科等で身に付けた知識や技能等を総合的に関連させて「サービス活動」で発揮することができ、改めて各教科等の学習の大切さを実感し、学習意欲を高めることができた。
  • 社会のニーズを調査したり、地域の人をパートナーにして活動を展開したりしたことで、社会に貢献できた喜びを味わい、学びの価値を感じることができた。
  • 地域の人と協同して「サービス活動」を行うことで、問題解決の学び方やものの考え方を広げたり深めたりすることができた。
  • 地域の人による他者評価が、自己の成長に気づかせることにつながった。

2 今後の展望

 総合的な学習の時間と生活科との関連を研究するとともに、中学校3年間を見通した総合的な学習の時間で育てたい資質・能力を明らかにしていきたい。

「栄の国まつり」パレード後の集合写真

「栄の国まつり」パレード後の集合写真

達成感にあふれる子どもたちの笑顔

達成感にあふれる子どもたちの笑顔