平成24年度用 新版「美術」教科書特集号

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インデックス

[特集]平成24年度用 新版「美術」教科書

[巻頭言]
3.
美術の教科書との出会い
春日明夫

[新版教科書のコンセプト]
4.
「生きる力」を育む美術の学び
大橋 功

8.
新版教科書Q&A

[美術の授業と教科書]
12.
さまざまな場面で活用できる美術の教科書を目指して
小泉 薫
14.
教科書の使い方のポイント

[内容解説]
16.
個に軸を置く美術の学びとは
小澤基弘
17.
[題材事例]15の肖像
田中 晃
18.
身の回りや生活に関わる美術の学びとは

鉄矢悦朗
19.
[題材事例]ユニバーサルデザインを考える
藪 陽介
20.
社会や世界につながる美術の学びとは
岡本康明
21.
[題材事例]廃材アート ―廃材に新たな命を吹き込もう―
中平千尋
22.
自然や生命,環境に関わる美術の学びとは
泉谷淑夫
23.
[題材事例]想像の動物の形を打ち出そう ―銅板レリーフ―
中村 みどり

24.
教師用指導書のご案内

26.
平成24年度用 新版「美術」 題材一覧

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創造の種を育み「発見」を共有する

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 この夏、瀬戸内海の島々を舞台に開催中(10月31日まで)の瀬戸内国際芸術祭に「ファスナーの船」という作品を出展しました。全長11mのファスナーの形状をした船は、観客を乗せて海を走行します。船の描く航跡を海が「開く」ように見立てる試みです。
 この作品は、日常のふとした発見から始まりました。8年前、国内線の飛行機にはじめて乗った時のことです。窓から東京湾を眺めていると、突然、一隻の船が視界にとび込んできました。その瞬間、僕の目は船をファスナーに見間違えてしまったのです。
 これをきっかけに、いつか乗船できる「ファスナーの船」をみんなで眺めてみたいと思いました。しかし船をつくるなんて夢のような話。実現するにはどうしたら良いか見当もつかず、唯一考えられたのは、ラジコンの船を改造して公園の池を開いてみることでした。実験の当日、通りかかった人たちの顔から笑みがこぼれた瞬間、確かな手応えを感じました。その後、実験の映像をいろいろな人に見せたり、構想のスケッチを描いたりと、アイデアを人に伝える活動を日常的にくり返しました。
 そしてついに、瀬戸内国際芸術祭というチャンスに巡り会いました。しかし実現するためには、船の入手、制作費の工面、安全性の確保、運航するための船長さんの手配など数々な課題に直面しました。ちょうどその頃関わりのあった原美術館の方からの紹介で知り合った川崎の造船会社の社長さんがプロジェクトに賛同して下さり、漁船を一隻提供して下さいました。それをはずみに動きだし、その後も多くの人たちに支えられて、一つひとつ問題を解決していくことができました。
 「ファスナーの船」の実現によって僕があらためて感じたことは、アイデアは授かったものだということです。アイデアの神様は創造の種をみんなに配り、その種が育つチャンスを僕たちに委ねているのではないでしょうか。種をみんなと共有できるものに実らせられるかは僕たち次第。任務でもあると感じています。僕は「ファスナー」も「船」も双方が喜んでくれるようなものにしたいと思っていました。今後も見た人の記憶がいきいきとよみがえるような作品をつくっていきたいと思っています。

プロフィール
 1979年静岡県浜松市生まれ。2001年東京造形大学卒業後、映像インスタレーション「遊具の透視法」の発表をきっかけに国内外の多数の展覧会やアートフェスティバル、デザインイベントに参加。代表作「まばたきの葉」は、現在もパブリックスペースでの展開を続けている。昨年、羽田空港で開催された「空気の港」では展示全体のディレクションを担当。今夏、瀬戸内国際芸術祭に「ファスナーの船」を出展し話題を呼んだ。
鈴木康広 Webサイトico_link


平成23年度用 新版「図画工作」教科書特集号

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インデックス

1.
[巻頭言]
『学習指導要領を視覚化する教科書』
ふじえ みつる
2.
[特集]平成23年度用 新版「図画工作」教科書

『新しい教科書の考え方』
岩崎由紀夫 

内容解説
4.
造形遊びをする『子ども主体の造形活動を考える』
阿部宏行
6.
絵に表す『描くことを楽しみ、描くことで「生きる力」を育む』

林 耕史
8.
立体に表す『わかりやすい教科書を目指して』
名達英詔
10.
工作に表す『つくる面白さ、生活を楽しく豊かにする喜び』

橋本光明
12.
鑑賞する『「見ることを楽しむ」活動へ』

大泉義一
14.
特設ページ『子どもたちの感性を刺激して豊かな発想・構想へとつなぐ』

水島尚喜
18.
『教科書編纂に携わって』
20.
『平成23年度用 新版「図画工作」題材一覧』
22.
『平成23年度用 新版「図画工作」構造図』
24.
[連載]鏃YAJIRI

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図工で感じた「ものに興味を持つ」ことの大切さ

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 小さい頃から絵を描いたり物をつくったりすることが好きでした。好きな科目だけ力を注いで、嫌いな科目は放っておくタイプだったので、図工や美術は熱心に取り組んでいた記憶があります。今思うと好きだった理由には図工や美術の先生が全般的に面白い人が多かったこともあったかもしれません。これは、「好き」と「キライ」がはっきりしてる子どもにとっては結構重要で、図工に限らず、好きな先生がいる科目というのは何だか成績もよかった気がします(笑)。その中でも印象に残っている先生の授業は、教科書を使わず、まず「素材」を見せ、それで好きなものをつくらせるといったものでした。本来なら先に見せるはずの教科書は後に見せるのです。私たちはまず自由に素材に触れ、作品に取り組み、それから教科書の中の世界に入る。ちょっとした順番のちがいですが、それだけで教科書の中の作品がぐっと自分の世界と近くなり、教科書を読むことが楽しくなった。興味を持つスタートは、自らとの接点を感じることから始まるのかもしれません。
 「興味を持つこと・実感すること」が重要だということは、仕事をしていてもよく感じます。例えば子どもたちとのものづくりワークショップ。工作でも料理でも、子どもたちは実際に素材に触れて、感じて、つくることでその作品に対して興味がどんどん湧くし、何より自分がつくったものに対してとても愛着が湧くようです。ある日の食のワークショップ時、「僕これキライだから食べないよ」と言ってた子が試食の時に「キライ」なものを笑顔で食べてたのを見た時は「自分の手でつくる」ことの大事さを改めて教えられました。体験することで、自分の価値観(好きキライ)さえ変えてしまうようなパワーがあるってことですから!
 「食」とものづくりの仕事をしていて思うのは、きっかけづくりをしたいということ。私たちの活動を通して、食への興味、つくることへの興味を持ってもらえたらとても嬉しい。図工の授業で感じた「ものへの興味を持つ」スタートを、自分たちの活動の中で生まれさせることができるようになったら素晴らしいなと思うのです。

プロフィール
 1998年にアラキミカ、遠藤順子、中村亮子の3人で結成した料理創作ユニット。日常の楽しいことや嬉しいことを「食」というテーマで表現し、様々な形にして製造中。現在の活動としては、料理、雑貨デザイン・製作を単行本や雑誌などの媒体で発表する他、近年で美術館などでのものづくりワークショップにも力を入れている。
 2002年からは、フランスでフードや雑貨の展覧会を開催したりと海外での活動も視野に入れたり、2006年にはNHK教育テレビで食育番組のコーナーを持つなど、活動の幅を広げている。近著に「Gomaのてづくり歳時記」(講談社刊)。
料理創作ユニット Goma|ゴマWebサイトico_link


描くこころの起源

形forme291表1

 彼女は画用紙の前に座ると,手元に並んだペンから1本をとり,キャップをはずして描きだした。手首のやわらな動きからリズミカルに曲線が生みだされる。ピンク色,黄色,水色……。7色の線がうねりながら交差し,紙全体に広がった。
 –なぐり描きをする小さな子ども,あるいは抽象画を描く画家が思い浮かんだかもしれません。ところがこの彼女,京都大学霊長類研究所のチンパンジー,アイなのです。

 ヒトはなぜ描くことをはじめたのか。描くこころの起源を探るため,進化の隣人であるチンパンジーとヒト幼児の描画行動について研究しています。
 チンパンジーの絵にはそれぞれ個性があり,アイのように曲線を紙全体に展開するチンパンジーもいれば,細かいタッチで色ごとに塗りわけるチンパンジーもいます。その筆さばきはなかなかのもの。描かれた線をなぞることもできます。
 ヒトの子どもだと,なぐりがきにはじまり,体と心が協調的に発達するにつれて絵が変化していきます。線をなぞるぐらい動きを調整できる子は,具体的な物の形を描きはじめているのがふつうです。けれど器用に線をなぞるチンパンジーでも,物の形を描くことがありません。線画の顔を見分けたり,文字や数字を覚えたりできるのに比べると,少し意外な気もします。
 そこで画用紙に顔を描き,片方の目だけ消しておいてみました。ヒトの場合,まだ丸がうまく描けない子でさえ「目がない」と言って目を描きいれようとします。ところがチンパンジーは,描いて「ある」目に丁寧にしるしづけることはあっても,「ない」目を補うことはなかったのです。
 2本の縦線に横線を交差させるだけで線路を描き,丸のなかに丸を組みあわせるだけでアンパンマンを描くヒトの子どもたち。一筆加えるごとに浮かぶ新たなイメージに,絵が次々と変化することも少なくありません。今ここに「ない」ものをイメージして,補う。想像力こそ,ヒトでとくに発達した能力であり,描くことの起源に関わっているのではないかと考えています。

プロフィール
 京都大学理学部を卒業後,同大学院医学研究科の修士課程を修了。東京藝術大学大学院美術研究科に進学し,博士学位を取得。日本学術振興会特別研究員を経て,現在,科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)研究員。東京藝術大学非常勤講師。チンパンジーとヒトの比較認知心理学的な研究をおこなっている。著書に『恋う・癒す・究める 脳科学と芸術』(小泉英明編,共著/工作舎)。


現実世界での経験が創作を生み出してくれる

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 私は布や紙,砂,クレヨンなど様々な素材をつかったアニメーションを制作しています。アニメーションは,普段私たちがよく目にしているテレビ番組のセルアニメやデジタル3Dなどだけではなく,立体の人形や油絵の具,石や木,歯ブラシやコップにいたるまで,私たちの身近にあるものすべて動かすことができる可能性を秘めた表現方法です。
 私がアニメーションの世界に魅力を感じたのは,大学で友達と観たチェコのアニメーションがきっかけでした。のびのびと絵を描くように展開していく作品たちに衝撃を受け,それから見よう見まねで人形のアニメーションを撮ってみました。自分が持っていた身近な人形が,アニメーションとなって画面の中でひとりで動くのをみた時,動かないものが自分の手をかけることで,「動く」=「魂を得る」ことを体感し,アニメーションを創造することのよろこびを知ったのです。それからこれまで様々な方法でアニメーションをつくり続けています。
 そんな私の創作の原点となるアイデアや想いは,小さい頃からの経験や人との出会いの中から生まれてきているのだと感じています。自分の中にないものは表現できないし,どこか上辺だけの伝わらないものになってしまいます。自分が日々感じていることや美しいと思うこと,興味をもったこと,くやしいこと,悲しいこと,そうした本当に些細な生活の一場面に私が追い求めることは潜んでいて,ちょっとしたきっかけや人との出会いによって創造の出発点となり,私にとっての「表現」が始まっていくのだと思います。
 人の想像力が「創造」を生み出します。それは果てしなく無限に広がっていて,その面白さは絶えず私を惹きつけてやみません。自分のつくったものを観て,だれかが驚いたり,笑ったり,喜んだり,そういう瞬間に,どんなにつくるのが大変だったとしても,「つくっていてよかったな」と表現することのよろこびを感じます。  
 現実世界には,辛いことや思い通りにならないこともたくさんありますが,創作の中でしか味わえないこうした深いよろこびがあるからこそ,これからも自分自身を,そして創造することを追い求めていきたいと思うのです。

プロフィール
 福岡県出身。東京芸術大学並び大学院染織専攻卒業。アニメーション,イラストレーションなどの作品を制作。木曜時代劇「次郎長背負い富士」(NHK総合)「Beau TV」openingmovie(テレビ朝日)など。切り絵によるアニメーション,プチプチ・アニメ「王さまものがたり」(NHK教育)は現在放送中。


アーティストの力を借りませんか?

表紙

 いま私は,NPOのスタッフとして,子どもたちが学校で,アーティストの授業を体験する機会をつくる調整役のような仕事をしています。
 写真にあるのは,2008年10月,横浜市内の公立小学校で実施したアーティストによる授業で5年生の子どもたちが描いた絵です。子どもたちは,水彩絵の具の色彩そのものが表現になることを発見し,さらに,色の並べ方を工夫し,技法を試すことにより自分が考えた以上の表現ができることを楽しみながら体験しました。
 この授業は,子どもたちがアーティストと触れあうこと,また,鑑賞の学習を校内に広めたいという学校側の要望があり,それに,菊池敏直さんという画家の見識や視点をあわせて内容を調整し実現したものです。
 絵を描くことや鑑賞することについては,たとえば,教科書に載っている水彩絵の具の色彩や技法について知り,試し,自分でかっこいいと思う絵を描いてみること,そして,自分の作品をみて「これいい!」と思う自分がいるかどうかが大切なのではないでしょうか?自分の絵をみるまなざしがあり,その先に,他者が描いた絵を鑑賞する視点が伴うのだと思います。そのために,絵を描く意志と技術をもち,自分や他者の描いた絵を見る見方のヒントも与えることのできるアーティストの存在が役に立つと思います。もちろん,子どもの発達段階に応じた,教える言葉や態度をもったアーティストであることが前提ではありますが…。
 水彩画に限らず,子どもたちがより深く美術を楽しく体験する授業を,アーティストの協力によってつくりたいと考える学校の先生がいる場合に,先生とアーティストの間に立ち,それが実現できるよう調整する活動をしているNPOや芸術団体があります。微力ですが私もその一人です。そして,これからも,アーティスト,子どもたち,先生,それぞれの間で,やわらかく揺れ,考え,通訳し,つなぐ役割を担いたいと思っています。子どもたちのためにアーティストの力を借りているのは,一番に私なのかもしれませんね…。

水彩画

プロフィール
 斎藤記念川口現代美術館,神奈川県民ホールギャラリーの学芸員として,現代美術の展覧会およびワークショップを企画運営する。作品と観客をつなぐ,美術館と学校をつなぐ仕事をライフワークとすべくNPO法人STスポット横浜アート教育事業部の仕事をはじめる。

(肩書は,2009年1月31日現在)