先輩からのアドバイス vol.28
【マンガ】「造形的な視点」とはどういうこと?

指導や授業で、つまづきがちな悩みや疑問をとりあげ、ベテラン教師から読者と同じ目線で問題解決へのアドバイスを提案します。

ここがポイント

造形的な視点とは
 鑑賞を例に考えてみましょう。
 造形的な作品や造形的な行為には、作者の目から見た対象の感じ取り方や価値観、そこからわき上がるイメージ、作者の心情が込められています。人はその作品を鑑賞したときに、自分の価値観と一致する点を見つめます。しかし、必ずしも作者の込めた思いとは一致しません。
 形や色彩、材料や光などの造形的な要素の中で、どのような点が鑑賞者を魅了したのでしょうか? 作品を鑑賞した人は、心の中にどのようなイメージを作り上げたのでしょうか?
 ①作者が表そうとする動機となった対象、②作者の造形的な行為、③生み出された作品、④鑑賞する人、この4点の微妙な関係性の中で、鑑賞は成り立っていると言えます。この4点を結びつけるラインこそ「造形的な視点」と言えます。鑑賞者以外はすでに存在しているわけですから、この鑑賞を豊かにするか否かは鑑賞者自身が、いかに豊かな視点を持つかどうかにかかっているのです。解説書を読み解説書に書かれている作品観を自分の価値観とすり替えて鑑賞とするのはもったいないですね。解説もよいのですが、一元的な見方に固着することなく、ここは自分の目と受け取る心に自信を持ちたいものです。

子どもたちと造形的な視点
 「造形的な視点」は、何も作品の鑑賞するときのみのお話ではありません。作者が対象と対峙し、受けたイメージに思いを込めたように、造形的な視点は個々の対象に対する感じ取り方、イメージの広げ方、主題を基に表現に込めた思いで、結びついています。ですから、子どもたちには授業の中でそれぞれの味わい方や発見、見えてきたものやことを大切に育んであげることが大切です。そして子どもたちの動機の先駆けになるのは教師の投げかける授業でのアプローチです。美しい「ものやこと」を見いだすのはどこに視点を置くかによって決まります。教師自身の価値観の刷り込みならないように注意し、対象に対して一人一人の個性的な見方、感じ取り方をクローズアップできる題材を考えたいですね。

(シナリオ・監修、文 川合 克彦)