算数・数学教育における学力向上の場としての言語活動のあり方

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1.学力向上の場としての言語活動

 現行の学習指導要領は、改正された教育基本法と学校教育法に基づく最初の学習指導要領になります。特に、学校教育法で学力の構成要素が具体的に指摘されたことは注目すべき点といえます。それらを筆者なりに整理するならば、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等の能力」、「主体的な学習態度」の3つになります。従来の算数・数学教育でも、これら3つは重視されていますが、知識基盤社会とよばれる現代社会では、これらを育成し向上させることが今まで以上に求められているように思います。
 そのための重要な場として強調されているのが言語活動です。算数・数学科においても、言語活動の充実という視座から、様々な指導が工夫され、その成果が着実に蓄積されてきているものと思います。その一方で、算数・数学科における言語活動のとらえ方や言語活動を重視した授業のあり方をめぐって、議論になる場にも接するようになりました。学習指導要領が全面実施となった今、算数・数学科における学力向上の場としての言語活動のあり方について、今一度、再確認しておくことが重要であるように感じています。

2.算数・数学科における言語活動のとらえ方

 算数・数学科における言語活動を検討するにあたっては、まず、算数・数学科における「言語」のとらえ方が重要になります。算数・数学科の授業では、言語(日本語)だけではなく、図や数式、グラフなど、多様な表現が用いられます。こうした様々な表現は、教師の指導の重要な手段であるとともに、子どもたちが算数・数学を理解する上でも欠かせないものです。そのため、算数・数学科の授業では、各種の表現の役割や位置づけを十分に検討することが求められます。

図1 数学教育における表現体系

図1 数学教育における表現体系

 算数・数学科における表現については、中原(1995)の「表現体系」が大変示唆的です。中原は、算数・数学の教授・学習で用いられる重要な「表現様式」として、現実的表現、操作的表現、図的表現、言語的表現、記号的表現の5つを指摘しています。そして、これら5つの表現様式の相互関係として、図1に示す「表現体系」を提唱しています(中原、1995、p.202)。
 言語活動のあり方という本稿のテーマに鑑みた際、図1の表現体系からは、次の2つの示唆を得ることができます。第一は、算数・数学科の授業では、5つの表現様式が重要であることから、算数・数学科では、「言語」を日本語に限定するのではなく、幅広くとらえることが重要になるという点です。第二は、各表現様式間の矢印や同一表現様式内の矢印に示されているように、子どもの数学的理解を促すためには、同一表現様式内の翻訳も含め、表現間の相互翻訳を図ることが重要であるという点です。
 これら2点に関して、平成20年1月の中央教育審議会(2008)答申では、算数・数学科の「改善の基本方針」として、次のような指摘がなされています。
 《数学的な思考力・表現力は、合理的、論理的に考えを進めるとともに、互いの知的なコミュニケーションを図るために重要な役割を果たすものである。このため、数学的な思考力・表現力を育成するための指導内容や活動を具体的に示すようにする。特に、根拠を明らかにし筋道を立てて体系的に考えることや、言葉や数、式、図、表、グラフなどの相互の関連を理解し、それらを適切に用いて問題を解決したり、自分の考えを分かりやすく説明したり、互いに自分の考えを表現し伝え合ったりすることなどの指導を充実する。》(下線筆者)
 このような答申の指摘もふまえたとき、算数・数学科における「言語」については、日本語による表現(つまり、言語的表現)に限定するのではなく、図1の表現体系における現実的表現、操作的表現、図的表現、記号的表現も含めて幅広くとらえるほうが適切である、と筆者は考えています。つまり、図1に示された5つの表現様式は、いわば数学的言語といえるものであり、算数・数学科では、5つの表現様式を「言語」としてとらえるべきであると考えます。そして、算数・数学科では、5つの表現様式を用いて思考したり、思考の過程や思考の結果を説明し伝え合う活動を「言語活動」ととらえることが重要であると考えます。

3.言語活動を重視した授業づくりの視点

 算数・数学科における「言語」や「言語活動」を上述のようにとらえた上で、言語活動を重視した授業づくりの視点として、ここでは次の3つを指摘しておきたいと思います。

①教材の「本質」をみきわめた言語活動の検討
②「他者の表現から考えを読む」活動の充実
③表現の「洗練プロセス」の重視

 もちろん、これら3点以外にも授業づくりの視点はあると思われますが、上述の3点は、今後、一層力を入れていくべき視点であるととらえていただければ幸いです。
 視点①については、教科書でも、子どもたちの多様な考えをもとに、それらを比較検討する言語活動が想定されており、子どもたちの多様な考えに基づく社会的相互作用の活性化は、言語活動の充実につながる授業づくりの重要なポイントといえます。ただし、言語活動の「型」といった方法論的側面の検討に偏るのではなく、当該教材の特性をふまえた「本質的な」言語活動を検討することが基本になると考えます。
 例えば、小学校第2学年の「たし算の筆算」の場合、「くり上がりのないたし算」では、「十の位からたす考え」と「一の位からたす考え」の2つの素朴な認知モデルが想定されます(山口、2012)。ただ、「くり上がりのあるたし算」では、「一の位からたす筆算」が能率的になるため、そのことを見越して、「くり上がりのないたし算」でも、「一の位からたす筆算」を教師側から早期に導入する場合もあったのではないでしょうか。
root_no11_02 しかし、「くり上がりのないたし算」における子どもたちの素朴な認知モデルにできるだけ沿うならば、「くり上がりのないたし算」では、「十の位からたす考え」と「一の位からたす考え」の2つの考えをともに認め、「くり上がりのあるたし算」において、「一の位からたす考え」の便利さや一般性を検討させる授業展開が望ましいと筆者は考えます。実際、最近の教科書では、下記のように、「くり上がりのないたし算」では、「十の位からたす考え」と「一の位からたす考え」の2つの考えに配慮した記述になっています。(『小学算数』2年上P.17)

 こうした点をふまえると、「十の位からたす考え」と「一の位からたす考え」の2つの素朴な考えを認める方向で「練り上げ」のあり方を考えるのか、それとも、「一の位からたす筆算」への早期移行を念頭に「練り上げ」のあり方を検討するかによって、「練り上げ」における言語活動の質が大きく変わってくると考えられます。このように、教材研究に基づく「本質的な」言語活動のみきわめが重要になると考えます。
root_no11_03 視点②にかかわって、一般に、授業では、「子どもたちが自分の考えを表現し他者に伝える活動」が中心になります。しかし、こうした活動に加えて、「他者の表現から考えを読む活動」を積極的に取り入れたいものです。例えば、中学校第2学年の「多角形の内角の大きさの和」に関する授業では、五角形や六角形などの内角の大きさの和を多様な方法で考えさせ、自分の考えを発表させることが多いと思います。一方、現行の教科書では、こうした活動に加え、言語活動の充実を図る視座から、次のような「他者の図的表現から考えを読む活動」も取り入れています。(『中学数学』2年P.98)

 このように、「自分の考えを表現し他者に伝える活動」だけではなく、逆に、「他者の表現から考えを読む」活動を取り入れることによって、理解を一層深めることができると考えます。中原の表現体系では、異なる表現様式間の相互翻訳や同一表現様式内の相互翻訳の重要性が示されていますが、上述の教科書の問いは、図的表現の記号的表現への翻訳によって、多角形の内角の大きさの和に関する理解を促すことをねらったものととらえることができます。
root_no11_04 視点③は、「子どもなりのインフォーマルな表現」から「慣例的に用いられているフォーマルな表現」に至る「表現の洗練プロセス」を重視することを意味しています。例えば、前述の小学校第2学年「たし算の筆算」の場合、教科書では、「くり上がりのあるたし算」の学習において、次のような「2段形式の筆算」に基づいて考えを比較検討させ、「一の位からたす考え」の便利さを理解させる場面が工夫されています。(『小学算数』2年上P.20)

 2段形式の筆算には、「十の位からたす考え」と「一の位からたす考え」という2つの考えの違いが明確になるというよさがあります。そのため、「くり上がりのないたし算」の学習の段階から、2段形式の筆算のような「形式化されていない状態のもの」(文部科学省、p.73)もあえて大切にし、「十の位からたす考え」と「一の位からたす考え」の違いを意識させながら、「位どうしをたす」というたし算の基本を十分に理解させることが重要であると考えます。また、こうした指導をふまえた上で、「くり上がりのあるたし算」では、「一の位からたす考え」の優位性を認識させつつ、「一段形式の慣例的な筆算」へとなだらかに移行させることが肝要になると考えます。
 以上のように、算数・数学科における言語活動の充実にあたっては、「数学的意味と表現の相互発達」という視座から、きめ細かな教授・学習過程を工夫することが求められているように思います。

【引用文献・参考資料】

  • 文部科学省(2008)、 『小学校学習指導要領解説・算数編』、東洋館出版社.
  • 中原忠男(1995)、『算数・数学教育における構成的アプローチの研究』、聖文社.
  • 中央教育審議会(2008)、『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指
    導要領の改善について(1月17 日)』.
  • 山口武志(2012)、『数学教育における認識論と授業実践との架橋をめぐる課題-「数学的意味と表現の相互発達」を中心に-、日本数学教育学会、第45回数学教育論文発表会論文集、第1巻』、pp.9-14


「工場ではたらく人々のしごと」Sさんのみそ・しょうゆづくり(第3学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「工場ではたらく人々のしごと」Sさんのみそ・しょうゆづくり

2.目 標

○校区にあるSさんのみそ・しょうゆ工場について理解できるようにし,地域社会の一員として自覚できる。
○工場を何度も実際に見学,調査するとともに,資料を効果的に活用し,Sさんのみそ・しょうゆ作りの特色や相互の関連などについて考える力,調べたことや考えたことを表現する力を育てることができる。

3.評価規準

○社会的事象への関心・意欲・態度
 Sさんのみそ・しょうゆ生産や販売のようすに関心をもち,それを意欲的に調べ,考えながら追究しようとする。

○社会的な思考・判断・表現                    
 見学や調査活動から学習の問題を見出して追究・解決し,生産や販売に見られる仕事の特色やそれらと自分たちの生活や他の業種との関連について考え,適切に判断している。またそれらを自分の言葉で表現している。

○観察・資料活用の技能
 地域の生産や販売に携わるSさんや工場のようすを見学することを通して具体的に観察・調査し,調べた過程や結果,考察をノートや作品に工夫してまとめようとする。

○社会的事象についての知識・理解
 地域の生産や販売の仕事にはそれぞれ特徴があり,仕事に携わる方は工夫や努力をしていたり,地域の人々の信頼を得たりしていることを捉えることができる。

4.本単元の指導にあたって

 この単元は社会科学習指導要領2-(2)地域の人々の生産や様子にかかわる単元である。本単元で取り上げるのは,しょうゆ・みそ製造と販売をおこなう工場である。
 ここは大正3(1914)年から98年間,5代続く老舗のしょうゆ・みそ工場である。この工場では古くから伝わる製造技術を守り,こだわりのしょうゆやみそを作り続けている。
 その一例として大手によるしょうゆやみその製造方法とは異なる方法をとっている。大手では温度調節をしながら6ヶ月で製造するのに比べ,しょうゆはおよそ1年半,みそはおよそ1年じっくりと長期にわたって熟成させることで,こだわりの品を作りつづけている。また,原料からこだわって製造している。そのちがいは,みその製品表示にも表れる。多くは豆みそと米みその調合の割合において種類をかえているのだが,伊勢蔵では大豆や米,みそといったそれぞれの原料を一から調合している。最初から仕込みをしていくということになり,それには手間がかかり,リスクもある。大手では真似のできないことであるが,代々おいしさやこだわりを追究していくために大切にしていることである。それらの努力が実り,この工場で作られた品の一つが「農林水産省食料産業局長賞」を受賞している。
 この工場で作られたみそやしょうゆは,子どもたちが口にする学校給食にも使われている。子どもたちには,この自信をもってあるいはこだわりをもって作りつづけ,提供してきたSさんのみそ・しょうゆ作りと直接出会わせることによって,商品にかける思いやこだわりを追究させたい。

5.単元の指導計画

学習のねらい

子どもの活動と内容

評価規準の具体例

・スーパーマーケットではなく,Sさんの工場で作られたみそやしょうゆを買っている人がいることに関心をむける。

みんなでつくった買い物調べの表を見て気づいたことを発表しよう。
・みそやしょうゆをスーパーマーケットとはちがう店で買っている。
・Sさんのお店で買っている。

・Sさんのみそ・しょうゆ工場について目をむけ課題や疑問をつくろうとする。(関心・意欲・態度)

・Sさんのみそ・しょうゆ工場について目をむけ課題や疑問をつくる。

みそやしょうゆを買っている子の話を聞き,これから見学で調べていきたいことや分からないことを出し合おう。
・工場では,みそやしょうゆをどのように作っているのだろう。
・どんなところに気をつけて仕事をしているのだろう。

・友だちの考えを聴いたり,話し合ったりして自分なりの課題や疑問を明らかにしようとする。(関心・意欲・態度)



・工場見学から課題や疑問をつくる。

Sさんのみそ・しょうゆ工場を見学し,なるほどと思ったことやえっと思ったこと,ハテナ(疑問)をつくろう。
・むす機械は大きかった。どのくらいの量を作るのかな。
・たるは98年間も使われていた。昔から使われているたるの方がおいしいみそやしょうゆが作れるのかな。
・瓶にしょうゆを均等に入れていた。

・見学を通して具体的に観察・調査し,調べた過程や結果,考察をレポートにまとめることができる。(観察・資料活用の技能)



・工場見学を通して生じた課題や疑問を交流し,見てきたことを明らかにしたり,課題をはっきりとさせたりする。

製造工場と販売店舗から,なるほどと思ったことやえっと思ったこと,ハテナ(疑問)を発表し,分からないことをはっきりさせよう。
・豆を蒸すときにどうしてぐるぐる回すのかな。
・古い道具をずっと使い続けているのはおいしいみそが作れるようにかな。
・Sさんが作るときに一番大切にしていることはどんなことかな。

・学習の問題を見出し,生産や販売に見られる仕事の特色やそれらと自分たちの生活や他の業種との関連について考えようとする。(社会的な思考・判断・表現)

・Sさんのみそ・しょうゆ工場見学で課題や疑問となったことを解決するため,さらに聞き取ったり,見学したりする。

重点的に追究したい場所(Aコース…「むす」ところ・「むろ」,Bコース…「たる」・「すりつぶす」ところ,Cコース…「ラベル」をはるところ・店舗)に分かれ,2回目の見学の準備をしよう。

・自分なりの課題や疑問を明らかにしようとする。(関心・意欲・態度)



追究したい場所に分かれ見学しよう。Sさんにどうしても聞きたいことをたずねてみよう。
・豆を均等に蒸すことができるようかまを回転しているよ。
・たるの中には,みそやしょうゆをおいしくするための菌がはいっているよ。
・お店では「いらっしゃいませ」と笑顔で対応していたよ。

・見学や調査活動から学習の問題を見出して追究・解決し,生産や販売に見られる仕事の特色やそれらと自分たちの生活や他の業種との関連について考え,適切に判断している。(社会的な思考・判断・表現)

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本時

・見てきたことの中で,一番大切にしていると思うことはどんなことかを考える。

Sさんがみそやしょうゆを作る中で,一番大切にしていることはどんなことだろう。
【作り方】
・手を抜かない。
・じっくり熟成させる。
・たぶん機械で作る作り方とはちがうのではないか。
【商品のこと】
・安全で安心な商品を作る。
・Sさんが納得できる「本当の味」
【お客さんのこと】
・お客さんの必要な分のみそやしょうゆを売る。
・お客さんに喜んでもらえるような商品を作る。

・Sさんの生産に見られる仕事の特色について考え,適切に判断している。またそれらを自分の言葉で表現している。(社会的な思考・判断・表現)

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・Sさんのみそ・しょうゆ作りについてふりかえる。

・Sさんは,お客さんによろこんでもらえるように,納得のいくみそやしょうゆを作っているな。
・Sさんのみそやしょうゆは昔から続いている作り方を大切にしているな。
・いろいろな所に配送されて食べられているよ。

・Sさんの仕事には特徴があり,工夫や努力をして,人々の信頼を得ていることを捉えている。(社会的事象についての知識・理解)

6.本時の指導について

①本時(第32時)の目標
 Sさんがみそやしょうゆを作ったり売ったりする中で,一番大切にしていることはどんなことかを考えることを通して,自分が安心できる,あるいは納得のいく商品を作ろうとしていることに気づく。

②指導過程(45分)

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料

1.Sさんの写真を貼り,課題を確かめる。

Sさんがみそやしょうゆをつくったりうったりする中で一番大切にしていることはどんなことだろうか。

○子どもたちは何度か見学をしている。見てきたことや聞いたことから大切にしていると思うことをスケッチブックに表現させておく。

Sさんの写真

2.課題について考えを出し合う。

・Sさんが納得できるものを作る。おいしいものを作る。
・古くから大切にしている道具を使う(樽)。
・木の樽を使って作る。
・手作りで作っていたよ。
・瓶詰めも均等にしている。
・長い時間をかけている。
・他のみそとちがう作り方。
・お客さんが喜ぶように作っている。
・このみそは何の料理に適しているか話していたよ。

○子どもたちがもっている事実をもとに話し合う。
○子どもたち同士で話し合いの内容を深めるため,第1発言者を指名した後,子どもたち同士で指名させる。
○板書を項目ごとに整理し,話し合いを進めやすくする。


 

3.11/19(月)に給食に出た豚汁の写真を見る。

○給食で使われているみそやしょうゆがこのお店の商品であると教えてもらった子がいる。ここでは子どもたち全員が食べているということに気づかせる。

11/19(月)の給食の写真

4.一番大切にしていることをさらに深める。

・Sさんはみそやしょうゆを小学生のみんなにも食べてほしいと思っているのじゃないかな。
・「安全・安心」ということにこだわっている。
・子どもたちだけではなく,いろいろな人に食べてもらいたい。

○2分程度グループで交流する。その後,全体で話し合い,自分の考えを明確にする。
○何度も見学したり考えたりすることで,昔からの作り方を守り続けていることや手作りにこだわり続けていること,商品について製造から販売までを一貫して取り扱っていることなどについて学んでいる。
○ここでは,こだわり続けている味をぜひ子どもたちにも食べてもらいたいという思いについても深く考えさせる。


 

5.本時の学習を振り返る。

○話し合いをしてもまだ納得がいかないことが考えられる。それぞれ納得できないことはさらに追究を続けるように言葉をかける。
○今日の話し合いをして自分が思ったことや分かったこと,納得できないことをノートに記させて,次時につなげる。


 

「物語の世界」 ~エルマーのぼうけん~(第4学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.題材名

「物語の世界」 ~エルマーのぼうけん~

2.目 標 

 「エルマーのぼうけん」の物語を読んで、心に残った場面の様子や気持ちを想像し、自分の主題に合った表し方を考えて絵に表すことができるようにする。

3.準備(材料・用具)

教師:参考作品・技法の材料と用具・フラッシュカード・色スケッチ用マーメイド紙・アイデアカード・付箋・動物や植物、景色の写真・マーメイド紙
児童:筆記用具・絵の具・スケッチペン

4.評価規準

造形への関心・意欲・態度
○物語の心に残った場面の様子や気持ちを想像し、主題を決め、絵に表すことを楽しむ。

発想や構想の能力
○物語の心に残った場面の様子や気持ちを想像し、動きや表情、場面に合った配色やぬり方を考える。

創造的な技能
○主題に合った表し方になるように、画面の中で構成するものの大きさや配置、絵の具の重色や筆のタッチなどを工夫して表す。

鑑賞の能力
○作品を友だちと見せ合って話し合い、共通点や相違点、表現の工夫などに気付く。

5.本題材の指導にあたって

 本題材で取り上げる物語、『エルマーのぼうけん』は、9歳の少年エルマーがどうぶつ島で野蛮な動物たちにとらわれているりゅうを助け出しに行く旅の物語である。分かりやすい記述や場面ごとの登場人物が限られているため、児童にとって視覚的に情景や人の動きをイメージしやすい。よって、どの児童にとっても描きたい場面を決めやすく、意欲的に取り組める題材であると考える。
 また本題材では、着彩に水彩絵の具を取り上げる。これまで学習してきた重色や技法を生かし、児童が主題に合わせて表し方を選んで工夫することで、児童一人一人が持つイメージにより近づく表現ができると考える。
 指導に当たっては、児童が自分の表したい表現方法を見つけ、自分らしい表現を追求しながら発想や構想する力を高めていけるよう、以下の3つの手立てを中心に指導を行っていく。

手立て①
人物の動きや表情、色の使い方やぬり方、それらが与えるイメージについて、児童の参考となるような資料を提示する。【図1参照】

 表現の幅が狭かったり児童同士の表現が偏ってしまったりするのは、参考作品の例示パターンが少ないためという場合もある。あえて資料を多く用意し、提示された資料から場面の様子や自分の思いを表すために児童が必要なものを取捨選択できるようにすることで、一人一人の感じ方の違いが多様なイメージとして表れ、表現の幅がひろがるものと考える。

【図1】

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動物カード

色の使い方やぬり方

色の使い方やぬり方

人物の動きや表情

人物の動きや表情

※その他「色が与えるイメージ」「構図が与えるイメージ」の参考作品 等

手立て②
場面の様子や自分の思いを形や色で表すアイデアスケッチや色スケッチ(試し活動)の場を設ける。
 アイデアスケッチのときは、「動き・表情・大きさ・位置」、色スケッチのときには「使う色またその組み合わせ・筆のタッチや技法」と、観点を明確にして取り組ませることで、児童一人ひとりが表したい自分の思いを意識しながら試行錯誤し、最も自分が表したい表現や自分らしい表現を見つけていけると考える。

手立て③
製作途中の作品を見合い、意見交換する相互鑑賞の時間を取り入れる。
 自分の表現を友だちと共有する時間を設けることは、表現の先に観る人がいることを自覚し、児童がより効果的な表し方を考えるきっかけになるであろうと考える。児童は自分の表したい感じや思いが友だちにどのように伝わるのかを確認し、自分の表現を見直したり、他の表現方法に気付いたり、さらに膨らませたりすることができるだろう。また、良いところを認め合うことで、自分の表現に自信を持てると考える。

 「これでいいですか」と教師に問うのではなく、「こうしたい」と言える児童を一人でも多く増やしたいと願っている。児童が選ぶ形や色には、根拠や意図があってほしい。その根拠や意図は、自分が表したい感じや自分の思いに基づくものであってほしい。自己決定を繰り返し、納得して次の活動へ進むことが自分らしい表現の追求となり、表現する喜びにつながっていくものと考える。

6.題材の指導計画




学習活動の流れ

指導上の留意点
(評価項目、評価方法)



○物語を読んで、心に残った場面を絵に表すことを知り、学習の見通しを持つ。

○絵に表したい場面を選び、選んだ理由と描きたい場面の様子をアイデアカードに記入する。【図2参照】

○題材との出会いの読み聞かせの際は、各場面ごとに簡単な感想を書き、あとで場面を想起しやすいようにする。
○自分が描きたい場面が決まったら、その場面で一番表したいことを文章に表したり、「どの場面で」「何が」「どこで」「いつ」「何をしているのか」を書いたり、児童自身が主題をはっきり意識できるようにする。

・絵に表したい場面を選び、アイデアカードに想像したことや自分の思いを書き出している。
【関】(アイデアカード・観察)





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鑑賞活動
●場面の様子や登場人物の気持ちを想像して、鉛筆でアイデアスケッチをする。【図2参照】

観点
・動き
・表情
・大きさ
・位置

●“チャンス!タイム”でアイデアスケッチを見合い、友だちと意見交換をする。
・全体で交流後、グループで交流する。
・表現意図を説明する。
・質問やアドバイス、表現の良いところを話す。
・困っていることや教えて欲しいことなどを相談する。
・自分が納得したアドバイスはアイデアスケッチに朱書きする。

○挿絵を抜いた文章を増し刷りし、アイデアスケッチの際、いつでも物語を読み返すことで、印象に残った叙述や言葉などに着目できるようにする。
○アイデアスケッチでは、どこから見ているのかを意識し、中心となるもの の表情・動き・大きさ・位置に着目して描けるように助言する。
○“お助けコーナー”を設け、図鑑や図案集、写真、植物などを用意し、形の描き方に困っている児童が自力解決できるようにする。
○学び合いの時間は、“チャンス!タイム”という名称で児童に伝え、関心を持って取り組めるようにする。
○描いたアイデアスケッチは教室掲示しておき、児童がお互いに見合い、困 っていることやアドバイスを書いた付 箋紙を貼って自由な鑑賞の場が生まれるようにする。

【図2】

児童A

児童A

児童B

児童B

児童C

児童C

児童D

児童D

○アイデアスケッチをもとに、中心となるものや周りのものを、大きさや配置に注意しながら、下絵を描く。

○絵本の挿絵や参考作品を見ながら、背景のテーマを考える。
○画用紙全体に主張色(空気の色)を塗る。【図3参照】

場面の様子や登場人物の気持ちが表れるような動きや表情を考えている。
【発】(観察・作品)

主題に合った表し方になるように、画面の中で構成するものの大きさや配置を工夫している。
【創】(観察・作品)

【図3】

児童A

児童A

児童B

児童B

児童C

児童C

児童D

児童D

本時


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鑑賞活動
●試し活動(色スケッチ)をする。【図4参照】

観点
・色(組み合わせ)
・ぬり方

●“チャンス!タイム”で背景のテーマと色スケッチについて、友だちと意見交換をする。【図5参照】
・全体で交流後、グループで交流する。
・表現意図を説明する。
・質問やアドバイス、表現の良いところを話す。
・困っていることや教えて欲しいことなどを相談する。
・自分が納得したアドバイスは、色スケッチにメモする。

○背景のテーマを決め、色の組み合わ せやぬり方を工夫させることにより、場面の様子や登場人物の気持ちがより効果的に表せるようにする。

○必要に応じて、たんぽやスパッタリングなどの技法も活用できるよう、用具を用意しておく。

場面の様子や登場人物の気持ちが表れるような色の組み合わせやぬり方を考え、試し活動を行いながら自分が最も表したい表現方法を見つけている。
【発】(観察・作品)

【図4】

児童A

児童A

児童B

児童B

児童C

児童C

児童D

児童D

【図5】

児童A

児童A

児童B

児童B

児童C

児童C

児童D

児童D

○色スケッチをもとに、背景色を塗る。【図6参照】

【図6】

児童A

児童A

児童D

児童D

○中心となるものと背景の色の組み合わせ に気を付けながら、着彩する。【図7参照】

主題に合った表し方になるように、技法を選び、絵の具の重色や筆のタッチなどを工夫している。
【創】(観察・作品)

【図7】

児童A

児童A

児童B

児童B

児童C

児童C

児童D

児童D




1

鑑賞活動
●自分や友だちの作品を見て、感じたことを書く。

観点
・伝わってくる感じ
・工夫しているところ

●自分や友だちの表現意図を伝え合う。

自分の作品の表現の意図や表し方の工夫を説明するとともに、お互いの表現 のよいところや伝わってくる感じを味わっている。
【鑑】(作品カード・観察)

○児童の作品をプリントし、絵本の表紙として楽しむ時間を設ける。【図8参照】

【図8】

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○表紙にした自分や友だちの絵を見合う。

7.本時の学習

①目 標
 場面の様子や登場人物の気持ちが表れるような色の組み合わせやぬり方を見つけることができる。

②学習展開


主な学習活動・内容

指導の工夫や教師の支援
★評価項目(評価方法)


1.本時のめあてを確認し、本時で行う活動を知る。

○本時の活動を確認する。

場面の様子や登場人物の気持ちが表れるような色の組み合わせやぬり方を見つけよう。

・いろいろ試したけれど、どれを背景にしようかな。
・○○な感じを表してみたけれど、友だちに伝わるかな。

○前時で使った参考作品などは、本時でも児童が確認できるよう掲示しておく。
・「よし、これで行こう!」と思える表し方を見つけるよ。

13

2.“チャンス!タイム”で背景のテーマと色スケッチについて、友だちと意見交換をする。

付箋紙の活用

付箋紙の活用

○全体で交流後、グループで交流する。
○自分が納得したアドバイスは、色スケッチにメモする。
・ライオンの怒ってる感じを出したよ。
・にごった水を表しました。
・赤とオレンジを使っていて、明るい感じが出ているね。
・波の表し方がうまくいかなくて困っています。

○いろいろな表現に触れられるよう、グループでの話し合いの前に、教室を自由に移動して色スケッチを 見合う時間を設ける。
・背景のテーマを、友だちはどんな色やぬり方で表しているかな。
・自分のテーマに近い表し方をしている友だちはいるかな。

観点
・色(組み合わせ)
・ぬり方

○話し合いをスムーズに進められるよう、形態は1グループ4人とする。
○話し合いが停滞している場合は、担任がコーディネーター役となり、観点に着目して話ができるよう支援する。
・友だちの表したい感じが、伝わってくるかな。
・もっと表したい感じが出るように、アドバイスすることはあるかな。
・参考になったところはどこかな。

C1:どんなことを言ったらいいかわからないな。

C1:この色スケッチの中で「いいな」と思うところはあるかな。

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3.どこが参考になったか、自分の作品に生かしたいことを考えて製作の続きをする。
・○○さんの色を出したいけど、わか らないから教えてもらおう。
・筆のタッチを変えてぬってみようかな。

○どこが参考になったかを明確にし、自分の作品に生かすよう伝える。
○表し方が見つかった児童は、下絵の背景をぬってもよいことを伝える。
○作業中でも、気になる表し方があったら教わったり参考作品を見に行ったりしてもよいことを伝える。
○新たに色を試したい児童のために、色スケッチ用の紙を用意しておく。
○中心になるものよりも薄い色でぬっていくよう伝える。
○絵の具の水加減や混色の指導が必要な児童には助言する。

C1:どんな色を使ったらいいのかな。

色スケッチをもとにした背景の着彩(1)

色スケッチをもとにした背景の着彩(1)

色スケッチをもとにした背景の着彩(2)

色スケッチをもとにした背景の着彩(2)

C1:どんな感じにしたいのかな。参考作品を一緒に見てみよう。自分のイメージに近い塗り方は、どれかな。

★場面の様子や登場人物の気持ちが表れるような色の組み合わせやぬり方を考え、自分が最も表したい表現方法を見つける。
【発】(作品・行動観察)


4.本時の活動を振り返る。

○数名を指名し、本時の活動の感想を話すよう促す。
○どんな活動をしたのか児童の色スケッチを紹介しながら感想を聞くようにする。

高いビルが建ち並び,地下街が広がる地域(第3学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「高いビルが建ち並び,地下街が広がる地域」

2.目 標

 大阪市の特色ある地形,土地利用の様子,交通の様子などを観察,調査したり,白地図にまとめたりして調べ,地域の様子は地形や交通,歴史的な背景によって違いがあることを理解できるようにする。

3.評価規準

○社会的事象への関心・意欲・態度
①大阪市の特色に関心をもち,それを意欲的に調べている。
②大阪市の特色について,自分なりに考えようとしている。

○社会的な思考・判断・表現
①大阪市の特色について学習問題や学習計画を考え,表現している。
②地形と土地利用の様子,交通の様子などを比較・関連付けして地域による特色の違いを考え,適切に表現している。

○観察・資料活用の技能
①地図やグラフ・文書資料を活用して,大阪市の特色について必要な情報を読み取っている。
②調べたことを,白地図・パンフレットにまとめている。

○社会的事象についての知識・理解
①大阪市の特色ある地形,土地利用の様子,交通の様子などが関連していることを理解している。
②地域による特色の違いを理解している。

4.本単元の指導にあたって

①教材について
○空中庭園展望台や環状線から,自分の目で確認することによって,学習意欲を高めることができる。
○見学したことや資料を活用したり凡例をもとに地図を読み取ったりした,土地利用の様子を,地形や交通の様子と関連づけて考えることのできる教材である。
○地図資料の読み取りや,白地図を作る作業は,絵地図から平面地図へと生活科からのつながりをもつ。社会科学習の導入において,大切な教材である。
○大阪市のそれぞれの地域の特色を理解することによって,これまで知らなかった大阪市を発見し,自分たちの町への愛情が深まる教材である。

②子どもの実態について
○前単元では,校区の様子を意欲的に調べ,場所によって違いがあることを学習することができた。
○中単元の導入では,大阪市を紹介することに興味をもち,平面地図から様々な建物を読み取っていた。しかし,知っている場所や建物にばかり着目し,地形や交通,土地利用の様子に関心をもつまでには至っていない。また,自分なりに,考えた根拠を言えるようになってきている児童もいるが,根拠を話すことに苦手意識を持っている児童もいる。
○前中単元の調べた情報を絵地図にまとめる作業では,どのようにすれば見やすいかを考えることができた。しかし,全体で考える場面が多く,まだ,一人一人の思考が表れるようなノート作りには至っていない。

③指導について
○特徴を見つける際には,何が多いのかという視点を明確にする。
○調べた社会的事象と,地形や交通などの条件と関連づけて考えることができるようにする。その際,ノート指導は見開きで使い,左のページの調べた社会的事象と,右のページの考えを関連づけた思考の流れが分かるようにする。交流の際には,考えを深めたり,広げたりしやすくするために,根拠やつながりを視覚的に板書で表し支援する。
○地図記号だけでなく,イラストや吹き出し等を書き込む作業を取り入れることによって,地図資料に慣れ親しむことができるようにする。
○単元の導入で,自分たちが知っている「大阪市の自慢」を取り上げ,単元のまとめで「大阪市紹介パンフレット」を作成することによって,「わたしたちの大阪市」という意識を一層強く育てるようにする。

5.単元の指導計画

小単元名

時数

子どもの意識の流れ

○目標 ●評価

わたしたちの大阪市

大阪市の特徴を紹介するために、学習していこう。

○大阪市の地図から大阪市の地形・土地利用・公共施設・交通,古くから残る建造物について知り、大阪市の地理的環境に関心をもつことができるようにする。

●大阪市の様子について調べようとする意欲が高まったか。(行動観察)(地図)(ノート)(関心・意欲・態度①②)[技能①]

校区は大阪市の東部にあるんだね。知っている建物もあるけど、淀川や大和川、上町台地があることは知らなかったな。

まだまだ大阪市について知らないことがありそうだ。梅田スカイビルから眺めたり、環状線に乗ったりすると、大阪市の様子がよく分かるかもしれないな。

大阪市をたんけんしよう

事前1
見学3
まとめ3

○空中庭園展望台から眺めたり、環状線に乗ったりして大阪市の様子を調べ、白地図にまとめ、学習計画をたてることができるようにする。

●大阪市の様子を、高層ビルから眺めたり、環状線に乗ったりして調べ、白地図にまとめることができ、学習計画をたてることができたか。(行動観察)(見学メモ)(白地図貼り付けノート)[技能②] [思考・判断・表現①]

調べたことを、分かりやすく白地図にまとめてみよう。

乗り換えの電車や高速道路があったよ。交通についても調べてみよう。

大阪市も場所によって様子に違いがあるんだな。紹介するために、もっと詳しく調べてみよう。

工場が多い地域

○大阪市のさまざまな地域(工場が多い地域・商店が多い地域・高いビルが建ち並び、地下街が広がる地域・公共施設や古い建物が集まる地域・田畑が広がる地域・人工の島がある地域)のそれぞれのようすを、地形図や土地利用図、交通との関わりに気付きながら、特色について考えることができるようにする。

●大阪市のさまざまな地域(工場が多い地域・商店が多い地域・高いビルが建ち並び、地下街が広がる地域・公共施設や古い建物が集まる地域・田畑が広がる地域・人工の島がある地域)のそれぞれのようすを調べ、地形図や土地利用図、交通の様子などの資料と関連させながら地域の特色を考えることができたか。(行動観察)(ノート)[思考・判断・表現②][知識・理解①]

工場が集まっている地域があるよ。詳しく調べてみよう。

海ぞいや川ぞいに工場があると船で運びやすいんだね。高速道路が近いことも便利だね。西部と東部でつくられるものが違うんだね。

商店街が多い地域

天神橋商店街は、とても長くて店が多かったよ。もっと詳しく調べてみよう。 

大阪市の中央部に商店が集まっているんだね。いろいろな駅とつながっているから他地域の人も利用しやすいんだね。

高いビルが建ち並び、地下街が広がる地域


本時

大阪駅周辺は、高いビルが並んでいたし、駅の乗り降りする人も多かったな。もっと詳しく調べてみよう。

いろいろな駅がつながっているから、人が集まりやすいんだね。ビルの下には、地下街も広がっていて、たくさんの人が利用するための工夫もされているんだね。

公共施設や古い建物が集まる地域

上町台地には公共施設や古い建物が集まっているよ。もっと詳しく調べてみよう。

市の中央部の上町台地は、昔から多くの人が住んでいたところなんだね。中之島や北浜周辺も公共施設が集まっていて便利な地域なんだね。

田畑が広がる地域

わたしたちの町のように、田や畑が広がっている地域はないのかな。詳しく調べてみよう。

中央部から離れていて、広い土地がひらかれているんだね。

人工の島がある地域

土地利用図で、「そのほか」の地域はどんな様子なんだろう。詳しく調べてみよう。

咲洲、舞洲、夢洲のような人工の島があるんだね。これからも新しい町ができていくのかな。

大阪市にはいろいろな地域があるんだね。地形や歴史、交通の様子と関わりあって、それぞれの地域の様子がちがっているんだね。

「大阪市案内パンフレット」を作ろう

○「大阪市案内パンフレット」を作り、これまで学習したことをまとめることができるようにする。

●本中単元で学習したことを振り返りながら、自分なりにまとめることができたか。(行動観察)(大阪市あんないパンフレット)[知識・理解②][技能②]

大阪市について、たくさんのことがわかって、もっと大阪を好きになったよ。わたしたちの町、大阪市についてパンフレットにまとめて、他地域の人に紹介し、交流しよう。

6.本時の学習

①目標
 高いビルが多い地域とその下に広がる地下街の様子を調べ,交通や人々の生活との関連について,考えることができるようにする。

②学習展開


○学習活動 ・学習内容

○指導上の留意点

・資料等



○大阪駅の様子について話し合う。
・高いビルが多い
・地下街

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○実際に行った大阪駅ホームの写真を提示することによって、ビルの多い地域の様子について学習しようとする意欲を高めるようにする。
○動画を用いて、ビル街から地下へ降り、ビルの下に広がる地下街にも着目できるようにする。その際、校外学習での様子を想起するようにする。

・写真「大阪駅ラッシュ時の人びとの様子」
・動画「東梅田からスカイビルまで」(自作)

大阪駅周辺には、どんな特徴があるのだろう。

調

○大阪駅周辺の様子について調べる。
<位置>
・北区、中央部

<交通>
・大阪、梅田、東梅田、西梅田,北新地駅
・たくさんの人の乗り降り
・国道や高速道路出入口・バス

<地上の様子>
・会社や商業ビル、ホテル
・ビルの周りに木

<地下の様子>
・商店や飲食店
・つながる駅、動く歩道
・バリアフリー 等

○大阪市における大阪駅の位置を確かめてから、交通地図と関連させるようにする。
○交通地図から、たくさんの駅や国道、高速道路出入口とつながっていることに気付くようにする。

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○グラフから、乗り降りする人が多いことに気付くようにする。
○調べる視点が分からない児童にはヒントカードを渡す。
○箇条書きで、できるだけ短くメモするようにする。

・地図「わたしたちの大阪市」(『わたしたちの大阪』3・4年上 付録)
・交通地図
・配付資料「大阪駅のまわりの様子」(自作)



○大阪駅周辺に、高いビルが集まっていたり地下街が広がったりしているひみつを考える。
・地下街でつながる駅
・移動しやすい
・いろいろな地域から来やすい
・会社、かい物、とまるため
・気持ちが落ちつく
・疲れたら、休める
・楽しめる
・利用しやすい

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○ノートや板書は、調べた事象と考えを関連付けるために線でつなぐなど、自由に表現できるようにする。その際、「たくさんの人」が利用している地域であることに着目することによって、人が集まりやすい立地条件であることをとらえるようにする。
○人が足を止めたり、集まってきたりしたい魅力のあるまちにする工夫がなされていることと結びつけて考えることができるようにする。   
○一人で考えたあとペアで考え、次にクラス全体で考えることによって、考えを広げたり深めたりすることができるようにする。
○ハンドサインを使うことによって、友達の考えと自分の考えを比べ、多様な考え方ができるようにする。

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○梅田の地下街は、広さ、人の数が日本最大であることを補説する。

・配付資料「大阪駅周辺の様子」(自作)




○大阪駅周辺以外のターミナルの様子について話し合う。
・つながる駅
・植えられた木
・ビル街の下に広がる地下街

○大阪駅周辺と大阪駅周辺以外のターミナルの様子を関連させて考えることができるようにする。

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・写真「難波駅周辺の様子」

7.板書

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8.資料

写真資料「大阪駅ラッシュ時の人々の様子」

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写真資料「難波周辺のビル街と地下街の様子」

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配付資料「大阪駅のまわりの様子」

大阪駅のまわりの様子

 

描写のできること

 図画工作や美術でつけたい力というと、よく出る話題が描写の問題です。中教審ではあまり話題になりませんが、現場では切実かもしれません(※1)。例えば、よく見るのが「アンケートをとる」→「図画工作・美術が嫌いな子がいる」→「上手く描けないからと答える」→「描き方を教える」です。でも描写はそれほど単純な問題ではありません。本稿ではこのアンケートに代表されるような描写の問題について検討します。

「描写の複雑性」

 美術系の大学や学科にいた人なら、石膏像の「手前側の目」と「向こう側の目」がなかなか上手く描けなかったことを覚えているでしょう。お化粧でも右目の眉を描いたら、左の眉を描くのが難しいようです(※2)。「部分は描ける、でも全体は…」、これは立体を平面に置き換える際に「部分を関係づけて配置する能力」が必要なことを示しています。描写は、単純に「対象を見て描く」という実践ではありません。部分を描く、バランスをとる、輪郭を抽出する、骨格や構造をとらえるなど複数の能力が必要です(※3)。描写は複雑な能力構造で成り立っているのです。
 では、どのような指導をしたらよいのでしょう。議論を分かりやすくするために、あえて算数で考えてみましょう(※4)。例えば、文章題ができないときにひたすら計算練習をさせる先生はいません(※5)。先生は文章題を「言葉から数量を取り出し」「その数量同士を関係付け」「頭の中で表や図にして」「それを整理して式にしていく」という要素に分けて考えます。そしてどこで躓いているかを明らかにした上で「等しいものは何か、AとBではどちらが大きいのかなどを確認する」「確認したことを図などに表す」などの指導を工夫します。何より、そのプロセス自体を子どもが主体的に進められるようにします。
 描写でも同じでしょう。例えば、描写の能力を分けて「部分を小さな紙に描いて、それを画用紙に配置する」「描写を数種類の要素に分けてメニュー化し、それを選んで、組み合わせて描く」などの工夫が考えられます。あるいは、ねらいを明確にして「中心をとらえるために、棒人間だけで描く」「輪郭を空間としてとらえるために、輪郭を描かずに、まず対象の周りを描き、次に空白で残った対象の中を描く(※6)」「光と影の関係を考えるために、真っ黒な画面から消しゴムで形を描き出す」などの工夫もあるでしょう。子どもが自分で問題を見付け出すプロセスを重視して、「複数の異なるデッサンを提示し、その描き方を自分で探り、その方法にもとづいて描く(※7)」という方法もあります。

「『思い』の不在」

 次に子どもの「思い」の問題があります。そもそも子どもが夢中になれない題材を提案しておきながら、描けないのを子どものせいにしてないか、ということです。
 あまりいい例ではありませんが、三十年前の私の経験です。中学校である方式の実践をしました。雑草を抜いてきて、脇において、少しずつ少しずつ描かせました。一見、全員が描写を追求し、出来栄えも上々に見えました。でも何か腑に落ちませんでした。そこで次の年、「40人の植物図鑑」と題して、「雑草でも命なんだよね、引っこ抜くってことは死ぬんだよね、だから雑草の命を写すように描いてみようよ」と言いました。結果的に、前年度以上の描写になりました。「なんだ、そういうことか。子どもは自分の思いが込められれば、よく観察するし、夢中になって描くんだ」と思いました。
art2_vol11_01 もう一つは、その30年後に出会ったある中学校の実践です(※8)。先生の提案は「私の宝物を持っておいで、それをデッサンしようよ」です。スパイク、ボール、ラケット、宝箱…いろいろな対象が画用紙に鉛筆で描かれていました。私は、あるランドセルに引きつけられました。鉛筆で何かを質感を描き出そうという思いを感じたからです。紹介文を読んでその理由が分かりました。「これは、亡くなったおじいちゃんが買ってくれたランドセルです。このランドセルは僕にとってはおじいちゃんそのものです。6年間しょい続けました。途中で肩の部分が外れて、途中から他のにしましたが、このランドセルは今でもしっかり保管しています。」そして周りを見渡したとき、どの子も自分の宝を描き出そうと懸命に表現を工夫していたことに気付きました。
 「思い」の問題については、多くの先生が言及しています。例えば「生徒が最初に出会うのは題材名だ。『風景を書こう』より『光のある風景』の方がいいと思う(※9)」「『ジャングルを描こう』ではだめだが、『ジャングルの「命」』なら描ける(※10)」「描けないのは技能がないからではなく、主題がないからだ」などです。いずれも描くという行為に子どもの「思い」が欠かせないことを語っています(※11)。

 もちろん、描写の問題はこれだけではありません。例えば視点や時間を固定して対象を描く方法は歴史的な産物で、その文化に属する人の固有の見方です(※12)。子どもたちはその文化とせめぎ合っている過程にあります。また、「私の見たもの」を「誰が見てもそっくりに描く」ためには、私・対象・他者という意識がはっきりと成立する必要があります。メタ認知や発達の問題が絡んでいます。その他にも描画材料との関係、教科の歴史、学力観の変化など、様々な要素が入り込んでいます。
 それなのに、子どもが「真っ白い画用紙に何か対象を描く題材」だけしか思い浮かべられない状況で、「描けない」という選択肢を用意し、その回答をもとに「描けない→技能が大切」というのは、あまりに予定調和ではないでしょうか。誘導的なアンケートや、アンケートによる大人の概念の刷り込みは勘弁してほしいものです。
 描写は面白いほど深い問題です。今、求められているのは「様々な情報の中から適切に必要な情報を選び出し、それを組み合わせて妥当な解答を、主体的に作り出す能力」です。この視点からは描写が内包する複雑な構造は、むしろ描写に関する題材の可能性、つまり描写のできることの豊かさを示しているように思います(※13)。

※1:中教審では教科の必要性や学力などの根本的な問題が話し合われるので描写は中心的な検討事項になりにくい。
※2:そういえば、かつて右の眉を抜いて、同じように左の眉を抜くと、ちょっと形が違って、また右の眉を抜いて…眉がなくなってしまったという中学生がいた(^^;)。
※3:デッサン力といっても、彫刻家のそれと画家のそれは、かなり違っている。
※4:以前も述べたが、算数・数学と図画工作・美術は似ている。様々な情報や学習経験の中から自分が使えるものを見付けて組み合わせ、妥当な解答を出す。それが唯一同じ解になるか、それぞれ個人の解になるかしか違わない。
※5:同様に「同じテーマ、同じ書き方」で作文を書かせる先生も少ない。
※6:テート美術館編集 奥村高明・長田謙一監訳「美術館活用術~鑑賞教育の手引き~」美術出版社(2012)105pより。
※7:例えば、藤江充の紹介する米国のNAEP(National Assessment of Educational Progress)が行ったエゴン=シーレとケーテ・コルヴィッツを提示し、その方法を分析させ解答させる調査(2008)。
※8:函館市立銭亀沢中学校木村伸仁の実践(2010)。
※9:文部科学省調査官東良雅人の講演から。
※10:品川区立第三日野小学校図画工作専科教諭の内野務の授業から(2010)。
※11:全員に縦笛や靴を描かせる理由が、もし「出来栄え」や「デッサン力」だけなら再考した方がいいと思う。子どもの「思い」が不在だと、その子にとって意味の薄いドリルになりかねない。
※12:例えば、今も、世界的に見れば透視図法を用いない文化、透視図法が立体に見えない人々は多い。「戦前まで日本もそうだった」という指摘もある。
※13:私自身は「知識や技能は上手に使う」という立場だ。ある学年からは、子どもが図法や技法など文化的な教育資源を主体的に選び、用いることは効果的だと思う。しかし、自分たちの前提を問い直さないまま「描けないから技法を教える」のは、自分の実践を棚に上げて子どもだけに責任を押しつけているようで、何だか子どもがかわいそうな気がする。


「あきと なかよし」(第1学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

あきと なかよし
全25時間 10月~11月

2.単元のねらい

sei003_01 駅のすぐそばにある学校で,駅の中を通りながら通学してくる子どもも多い。マンション,新興住宅地が多く,自然の少ない校区である。
 入学して半年たち,子どもたちは音楽会,運動会など大きな行事を体験し,たくましくなってきている。今までは,学校の中で最年少であるので,上級生からしてもらうこと,優しくされることが多かった。しかし,入学前まではそれぞれの園で活躍してきた子どもたちである。本単元では,そんな子どもたちの力を十分に出したい。
 学校全体で行う「ドリームフェスティバル」では,1年生がゲームのお店を出して上級生を楽しませる活動を行い,保育園・幼稚園の交流会では,年下を楽しませるという活動を行う。多くの人と交流できる機会に1年生がお店屋さんになり,相手を楽しませることを体験する。他人に楽しんでもらうためには,1年生の子どもが十分に楽しまなくてはできないことである。一人ひとりが十分に自然に楽しみ,自然のおもしろさや不思議さに浸らせたい。そこから,他人も楽しませたいと思えるように,子どもの思いを大切にしていきたい。

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3.単元の目標

○生活への関心・意欲・態度
・身近な自然の中から,進んで秋を見つけようとしている。
・落ち葉や木の実をつかって,友だちと楽しく遊ぼうとしている。

○活動や体験についての思考・表現
・諸感覚をつかって,身近な秋を観察している。
・秋の自然をつかって,遊ぶものを工夫してつくったり,友だちと楽しく遊ぶために方法を考えたりして,それを表現している。

○身近な環境や自分自身への気付き
・四季の変化や季節によって自然の様子や生活の様子が変わることに気付いている。
・友だちとかかわって遊ぶ楽しさ,友だちの良さや自分との違いに気付いている。
・友だちと一緒に遊ぶ楽しさや,秋の自然とかかわる楽しさに気付いている。

4.活動の計画

事前準備

●下見
学校周辺にある秋の自然物がある場所への下見
 自然物が相手なので,探検に行く日にちの設定を考えた。ホールは多くのどんぐりが豊富にあるのだが,今年はスズメバチが11月になっても飛んでいて,行くことができなかった。下見では,子どもたちが夢中になるであろう物,危険箇所,探検場所などの安全面も見るようにした。
校外学習の下見
 秋に一度,バスに乗って校外学習へ出る。これを秋見つけの一つに設定したため,夏休みに校外学習のコースを歩き,集合場所,トイレ,トイレの時間,活動場所などの一日の流れを設定した。

環境設定

●導入
 下見をして拾ってきたどんぐりを教室に置き,子どもたちが関心をもてるようにした。

●イメージマップの活用
 秋のイメージマップをつくって教室掲示し,どんどん増やしていけるようにした。今後,冬見つけの単元でも冬のイメージマップを作成する予定である。四季を感じさせたいと考えている。

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●掲示物
 どんぐりや紅葉する葉の種類の絵本をカラーコピーし,いつでも子どもが見ることができるように教室に掲示した。また,保幼交流会までの見通しをもつように,カレンダーの掲示をした。

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●子どもたちの活動の保障
 自分が見つけた秋について発表する時間を設けた。まつぼっくりが開いたり閉じたりすることを発見し,その実験が流行った。子どもが自由に実験したり,どんぐりから出てきた虫を飼ったりすることができるようにしたりした。

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5.単元の流れ

活動[時数]

対話に見る活動の様子(子どもの思考の流れ)

1 あき,み~っけ
[7時間]
●秋探しをする。(学校,学校の周り,校外学習)
●秋のイメージマップを作成する。
●交流をする。

「アサガオのはっぱが小さくなったし,少なくなったよ。」

『どうしてかなあ。』
「秋になったからだよ。」

『秋をさがしてみよう。』
「どんぐりは,○○神社に行けばたくさんあるよ。」

『どんなものを見つけてきたかな。』
「どんぐりです。こんなに大きいよ。」
「まつぼっくりを見つけました。」
「見て,見て。どんぐりはよくまわるよ。」  
        ↓
『見つけてきた秋の宝物をつかって遊ぼうね。』

2 あきの たからもので あそぼう
[10時間]
●秋の宝物をつかって,楽しむ(個人での活動)。
●友だちと一緒に楽しく遊べるゲームをつくる。
●秋の自然に浸る。

個人の活動の中での会話

sei003_07「よくまわるどんぐりゴマはね…」
「競争しようよ。」

『お友だちと一緒にやりたいって,お友だちが増えました。次は,お友だちと楽しいゲームをつくりましょう。』
「どんなゲームがいいかな。」

『秋の発見をしたお友だちがいます。発表をしてもらうね。』
「まつぼっくりが開いたよ。」
「僕のも!」「私のも!」「どうしてかなあ。」「本で調べたら,いいんだね。」
「ひっつき虫を見つけたよ。」
「○○君とは違うひっつき虫を見つけたよ。」

初めは生活科での活動であったが,日常的な活動になっていった。

3 あきとなかよしランドを ひらこう
[8時間]※児童会の時間を利用
●作戦会議を開き,ゲームをパワーアップさせる。
●保幼交流会に向けて,ゲームの改良をする。
●保幼交流会を行う。

『今日は,1年3組なかよしランドです。ゲームをパワーアップさせるために困ったこと,良かったことを見つけましょう。』
「けん玉は壊れやすいから,丈夫にしてほしいね。」
「宝物つりは,お客さんが多くてつりざおがからまるよ。」

『もらった困ったカードは,ゲームをパワーアップさせるヒントです。どうするのか作戦会議を開きましょう。』
「せっかくつくったけど,フィールドでどんぐりごまが回しにくいって,カードが多かったね。簡単コースもつくろうよ。」
「負けって言うと,悲しくなるって。」
「がんばれって言おうよ。」

『保育園・幼稚園のお友だちが楽しむために,ゲームをどうしたらいいですか。』
「ルールを優しくしよう。」
「お兄さんやお姉さんにツバキの実って,何ですかって,何度も聞かれたよ。見本を見せるといいよね。」

6.評価について

振り返りを大切にする

 振り返りカードを用意し,本時の活動を振り返る時間を設けた。小単元「あき み~っけ」で使用するカード,その後での制作活動を行ったときのカードの2種類を用意した。制作活動を行ったときに使用したカードでの留意点は,時間をかけないこと,がんばりや友だちとの交流が見えること,次時の活動につなげられるようにすること,グループ内の様子を把握することである。

●時間
 時間を決めた。徐々に短くしていった。

●カードの視点
 カードに書くにあたり,視点を与えた。

●交流
 子どもたち同士が交流できるように,次時の初めに,担任から数名のカードの紹介をしたり,掲示をしたりするなどして,交流に努めた。

●グループ内の様子
 たくさんのグループの様子を毎時間把握するのは困難である。カードから様子を把握し,気になるグループは次時に中心に回るようにし,子どもの様子を把握する一つの方法にした。

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7.教師の手立て

●振り返りカードの活用

●教室掲示

●子どもの気持ちをアップさせる言葉・物
秋の拾ってきた自然物 秋の宝物
秋の宝物箱の利用
作戦会議 パワーアップ

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●きれいな付箋紙
よかったカード…ピンク
こまったカード…青
好きなように張りかえができる。似た内容のカードを分類することができる。

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「見て・感じて・話し合おう -アートゲームで遊ぼう-」(第6学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.題材名

「見て・感じて・話し合おう -アートゲームで遊ぼう-」

2.目 標

○形や色、材料や表現方法をもとに自分のイメージをもち、アートゲームによる鑑賞活動を楽しんで取り組むことができる。(造形への関心・意欲・態度)
○感じたことや思ったことを友だちと話し合うことで、自分なりの作品の見方や感じ方を深めることができる。(鑑賞の能力)

3.準備(材料・用具)

教師:国立美術館アートカード・セット(国立国際美術館から借用)、ワークシート
児童:筆記用具

4.評価規準

○造形への関心・意欲・態度
 形や色、材料や表現方法をもとに、美術作品に対する自分のイメージをもつ。
 アートゲームによる鑑賞活動を楽しんで取り組む。カムの動きに関心をもち,楽しい作品をつくることに取り組もうとしている。 

○鑑賞の能力
 友だちとの話し合いを通して、美術作品のよさや美しさ、表現の意図などについての自分なりの見方や感じ方を深める。

5.本題材の指導にあたって

【児童の実態】
 本学級の児童は、図画工作科の時間が好きである。5月当初に取り組んだ「よ~くよくよく、よくみて描こう」では、自分の「くつ」を題材に構図を考え、2足の靴の空間を感じながらていねいに作品を仕上げていた。また、水彩絵の具の特徴を活かし、透明感のある色で彩色をすることができた。しかし、できあがった作品の感想を書くとき、頑張ったところ、工夫したところを具体的に書けなかったり、自分の作品を否定したりする児童が見られた。
 そこで、自分や友だちの作品、美術作品のよさや美しさを感じることができるように、鑑賞学習に取り組み始めた。美術館を訪れたり、国内外の美術作品を鑑賞したりする児童はほとんどいなかったので、クイズ形式で楽しく取り組めるアルチンボルドのだまし絵「四季」を用いて鑑賞学習を行った。初めは作品をどのように見て、感じたことをどのように言葉で表現すればよいのかわからなかった児童も、作品を鑑賞するごとに積極的に発表できるようになった。授業後の感想を書く際、「感想を書くのが苦手。」とつぶやく児童もいた。しかし、感想を読んでみると、「今までじっくり美術作品を見たことがなかったから、おもしろかった。」「もっと、いろいろな作品を見てみたい。」など作品の見方を少しずつ理解してきた児童も見られるようになった。
 4月下旬に行った「学習についてのアンケート」より、本学級の児童は、自分の考えを言ったり、発表したりするのが苦手であり、楽しいと感じられない。また、友だちの発表や考えをよく聞くことも苦手であり、自分の考えを友だちに聞いてもらっているという意識をもった児童が少ないことがわかった。このアートゲームを通して、意見を交流することの楽しさに気づくと共に、作品の見方・感じ方を深めたい。

【教材について】
 アートゲームとは、絵画作品をカード化したものを用い、ゲーム方式で遊びながら鑑賞の仕方を身につける活動である。今回使用する「国立美術館アートカード・セット」は、京都国立近代美術館、東京国立近代美術館、東京国立近代美術館工芸館、国立西洋美術館(東京)、国立国際美術館(大阪)の5つの美術館の選りすぐりの作品(13枚ずつ、合計65枚)をカードにしたものである。絵画だけでなく、写真、シルクスクリーン、工芸品など、作品の表現方法が多岐にわたっており、児童が興味・関心を抱きやすい。また、「国立美術館アートゲーム」には、「分類型」「シュミレーション型」「ことば型」など様々な視点で考案されたゲームがあり、目的や児童の実態に応じてゲームを選ぶことができる。
本題材では、アートゲームを活用した学びあいを実践するにあたり、3つの指導・支援を考えている。1つ目は、作品に対する自分のイメージがもてるように、作品をじっくり鑑賞する場を設けることである。指導計画の第1次では、児童が作品の見方・感じ方を理解できるように、クラス全体でアートゲームに取り組み、作品の見方を知らせる。また、作品に対するイメージを膨らませるために、ワークシートを用いて自分の意見を整理できるようにする。2つ目は、作品の見方や感じ方を発表し合える機会を、1時間の授業の中で必ず組み入れる。意見交流の場を設けることで、「友だちの意見を認める」「友だちの意見をもとに、自分の作品の見方・感じ方を深める」素地を育てていくようにする。そして、授業を重ねる中で、「鑑賞とは作品の造形からイメージした自由な発想を伝え合うこと」を感じさせていきたい。3つ目は、自分の考えを整理したり、友だちのよさに気づいたりできるように授業後、ふり返りカードを用いる。授業当初の作品の見方・感じ方の変化に気づき、成長を感じさせることで、今後の鑑賞学習への意欲につなげていきたい。

6.題材の指導計画

学習活動

指導上の留意点

評価の場面や方法

○国立美術館アートカードを用いて、クラス全体で「しりとりゲーム」をする。

○自分の手札の作品を、造形に気をつけて鑑賞し、作品の中から感じとれる言葉をワークシートに書くことができるようにする。

○形や色、材料や表現方法をもとに、作品の特徴に気づき、アートゲームに進んで取り組むことができる。

○国立美術館アートカードを用いて「名探偵ゲーム」をする。(本時)

○出題者がどのカードを選んだか推測するための質問が明確になるよう、造形に着目できるようにする。

○形や色、材料や表現方法をもとに、作品の特徴に気づき、アートゲームに進んで取り組むことができる。

○国立美術館アートカードを用いて「名探偵ゲーム」をする。(本時)

○出題者がどのカードを選んだか推測するための質問が明確になるよう、造形に着目できるようにする。

○形や色、材料や表現方法をもとに、作品の特徴に気づき、アートゲームに進んで取り組むことができる。

○鑑賞部会作成アートカードを使って「せりふあてゲーム」をする。

○せりふと作品の類似点に着目して、カードを探すよう助言する。

○せりふと作品の類似点や相違点などに気をつけながら、アートゲームに取り組むことができる。

○国立美術館アートカードにせりふをつける。

○造形の特徴をつかみ、リズムのよいせりふが考えられるよう、キーワードとなる言葉に着目するようにしたい。

○形や色、材料や表現方法をもとに、美術作品に対する自分のイメージをもち、せりふをつけることができる。

7.本時の学習

①目 標
○形や色、材料や表現方法をもとに自分のイメージをもち、アートゲームによる鑑賞活動を楽しんで取り組むことができる。
○活動を通して、友だちの作品の見方・感じ方に共感したところや感心したところを見つけ、発表することができる。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の留意点

評価の場面や方法

色や形、表現方法に気をつけて作品を見よう!

○「名探偵ゲーム」の方法を知る。(※PDF参照
○グループに分かれて、「名探偵ゲーム」をする。

○指導者が模範を見せることで、ゲームの見通しをもつようにする。
○1枚1枚の絵をじっくり鑑賞する時間をとることで、色や形、表現方法を意識した質問内容を考えられるようにする。
○6月8日に鑑賞しに行く国立国際美術館と関連させることで、事後学習に興味を抱くようにしたい。

○ゲームに楽しんで取り組む。

○指導者が提示したカードを見て「題名」を考える。

○作品と作品名のギャップがあるものを選ぶ。
(田中敦子「地獄門」)

○考えた「題名」を発表し合う。

○自分が考えた題名と、友だちが考えた題名を比較・分類することで、互いの作品の見方や感じ方の違いや共通点を見つけやすいようにする。

○友だちの作品の見方・感じ方で共感したところや感心したところに気がつき、発表する。

○ふり返りカードを書く。
○学習したことをふり返る。

○ふり返りカードに自己評価をすることで、事後学習への意欲につなげるようにする。
○ふり返りカードをもとに、発表を促す。

台湾アイデンティティー

(C)2013マクザム/太秦

(C)2013マクザム/太秦

 「台湾アイデンティティー」(太秦配給)というドキュメンタリー映画を見た。台湾の人たちが、6人登場する。いずれもお年寄りばかりで、自らの人生を振り返る。
 絶景である。雲のかかった山がそびえる。台湾の中部、阿里山郷の達邦(タッパン)に、原住民族のツオウ族が暮らす村がある。

(C)2013マクザム/太秦

(C)2013マクザム/太秦

 高菊花(日本名・矢多喜久子、ツオウ族名・パイツ・ヤタウヨガナ)さんは、80歳。子供のころから日本式の生活で、みそ汁を飲み、和服を着ていた。日本人と思っていたと言う。
 台湾の人口は約2300万人。その2%、約50万人が、もともと台湾に住んでいた原住民族である。日本の統治下では、生蕃、蕃人と呼ばれて、後にいろんな部族を総称して、高砂族と呼ばれた。現在、台湾政府が規定している14部族のうちのひとつがツオウ族で、約7000人。うち1000人が、達邦で暮らしている。
 高さんの父は、ツオウ族のリーダーで、原住民族の自治会をあちこちで結成したことから逮捕され、処刑される。高さんは、母親や多くの兄弟の生活を支えるために歌手となるが、国民党による尋問が続く。それでも、過去を振り返り、「幸せだった」と言う。音楽好きの父が、ピアノで「ドナウ川のさざ波」を弾いてくれた。歌手を引退後、小料理屋を開き、台湾人と結婚するが、党の尋問は続く。1971年、高さんは、「しないこともしたことにして」自首証を書き、やっと自由の身となる。

(C)2013マクザム/太秦

(C)2013マクザム/太秦

 黄茂己(日本名・春田茂正)さんは、90歳。しっかりと歩く姿は、年齢を感じさせない。中学を出た後、神奈川県の高座にあった海軍工廠(こうしょう)で働く。「雷電」という戦闘機を作る工場だ。敗戦直後、日本で結婚するが、台湾に戻り、教職に就く。1947年、二二八事件が起こる。各地で台湾人が蜂起するが、国民党が武力制圧する。「武器はない。空気銃で戦争できるわけはない」と黄さん。仲間たちは、裁判もなく、ただ嫌疑だけで、処刑されたという。「人間として認めてくれなかった。悔しかった」と黄さん。死者、行方不明者は、2万数千名だった。
 高さんの大叔父にあたる鄭茂李(日本名・手島義矩、ツオウ族名・アワイ・テアキアナ)さんは、85歳。耳や目が衰えている。18歳で志願して海軍に入る。「当時、男は兵隊になれたら名誉。日本人が可愛がってくれた」と言う。台湾からは、約21万人が日本兵として戦争に参加、3万人が死んでいる。鄭さんは「完全な日本人と思っていたが、日本人にはなれなかった」と笑うが、「日本が戦争に負けたから、私たちも負けた」と涙ぐむ。
 横浜に住む呉正男(日本名・大山正男)さんは、85歳。茨城の生まれで、東京の中学に進学。陸軍に志願して、航空通信士として従軍、北朝鮮で終戦を迎える。中央アジアの捕虜収容所で強制労働に従事、60キロの体重が40キロに減る。「帰れるという噂のたびに希望を持ったが、死ぬ可能性もあった。もう1年いたら、死んでいた」と語る。中学時代の世話になった下宿のおばさん、片思いだった少女がいたからこそ、生きて帰れたと思っている。台湾に帰りたいと思ったが、二二八事件の勃発で、帰れなかった。
 インドネシアのジャカルタに住む宮原永治(台湾名・李柏青、インドネシア名・ウマル・ハルトノ)さんは、92歳。日本の志願兵として、戦地を転々とする。終戦後、インドネシアはオランダに独立を宣言、ハーグ協定締結までの4年間、宮原さんは日本兵として戦う。約1000名の日本兵のうち、700人が亡くなった。現存する人は、いまや、宮原さんと、あともう一人だけである。「戦争、戦争で、青春時代はなかった」と語る宮原さんだが、1970年代に、日本企業の駐在員として、インドネシアと日本を何度も往復した。
 張幹男(日本名・高木幹男)さんは、82歳。父は台湾人だが、母は日本人。戦後の1958年、台湾独立派の本を翻訳しようとするが、反乱罪で逮捕される。28歳から8年間、いまは観光地となっている緑島の政治犯収容所に入れられる。1970年、旅行会社を設立、多くの政治犯を採用する。やめさせろと忠告されるが、「やめさせたら、暴動を起こすよ」と突っぱねる。台湾独立派である。「統一なんてとんでもない。統一されて死ぬよりも、反対して死んだほうがいい」、「私のアイデンティティーは、国は、台湾」と言い切る。
 海に出て、死にたかったこともあったと語る高さんは、「ラ・パロマ」を唄い、ジャズ、ヨーデルを唄い、「知床旅情」を唄う。台湾の原住民族の老女である。
 6人の語る意味は、重く、深い。日本との関わりの中で生き抜いてきた。よく「歴史を鑑に」と言うが、歴史などは施政者の都合のいいように書き改められる。市井の、時代を生き抜いた人の発言こそが、真の歴史と思う。
 監督の酒井充子は、以前、「台湾人生」というドキュメンタリー映画を撮った。いまはDVDになっている。本作と合わせて、ぜひご覧ください。登場人物の人生に寄り添う、耳を傾ける。それが、「歴史」を学ぶ第一歩だろう。

2013年7月6日(土)より、ポレポレ東中野ico_link他全国順次ロードショー!

『台湾アイデンティティー』公式Webサイトico_link

監督:酒井充子
出演者:高菊花、黄茂己、呉正男、宮原永治、張幹男
製作:マクザム、太秦
製作総指揮:菊池笛人、小林三四郎
企画:片倉佳史 
プロデューサー:植草信和、小関智和
ナレーター:東地宏樹
撮影:松根広隆 
音楽:廣木光一 
編集:糟谷富美夫
2013年/日本/カラー/HD/102分
協力:シネマ・サウンド・ワークス 大沢事務所
助成:文化芸術振興費補助金
配給:太秦


学校支援ネットワークへの着目

icon_pdf_small「日文の教育情報 No.127」PDFダウンロード(344KB)

■ 子どもの進路意識への働きかけ

 講演が終わって、会場を出たとたんのことです。ばらばらっと、5、6人の女性が走り寄ってこられました。何か問題になることを話したのか。思わず身構えました。ところが、その女性からの言葉はまったく予想外のものでした。「私たちも同じ考えを持っていました。」
 改めて、声の主に注意を向けました。推定年齢60歳前後の活気にあふれた方々でした。
 「子どもたちが社会人になってからのことが気にかかっていたのです。」「私たちの携わっている活動の意義が確認でき、勇気がわきました。」
 口々に話されることをつなぎ合わせると、この方たちが、最近の子どもたちの進路意識に不安を感じ、様々な形で学校の進路に関わる体験活動を支援されておられることが把握されました。

■ 学校支援ネットワークの取組

 これは、東京のA教育委員会主催、学校支援ネットワークフォーラムでのことです。A教育委員会では、「学校支援ネットワーク事業」を主要事業として位置づけ、地域・職場体験活動、校内での各種体験活動、出前授業などの支援を行っています。冒頭の私の講演というのは、その実践報告、情報交流の結びでのまとめの話でした。参加者は学校関係者、学校支援に関わる企業・団体の方々、学校教育に関心のある地域住民でした。
 私は、その直前に、中・高校生の進路決定に関わるという経験を持ったのですが、とにかく目の前の選考の苦しさから逃れたいという意識が強く、その先の生き方、社会との関わりの中での自己実現といった考えは希薄であるという印象を持ちました。
 私は講演の中で、最近の子どもたちにおける進路意識の希薄さ、生きることに結び付く体験の貧しさにふれました。子どもたちがそのような課題を抱えるだけに、本日のフォーラムの趣旨である体験活動は、子どもにとって大きな意味を持っていることを話しました。
 そして結びとして、学校への支援に関する様々な活動は、学校教育活動の活性化に結び付くだけでなく、地域を活性化させ、地域の人々の生きがいづくりにも役立つに違いない、といったことを話しました。
 冒頭の方たちの、「私たちの携わっている活動の意義が確認できた。」「勇気が出た。」は、話のこの部分を受けてのものだったと思われます。

■ 進路意識の成熟への働きかけ

 子どもの進路意識の成熟は、その子どもが大人の働く姿にふれ、それをどう受け止めどう行動に結び付けるかということに強く関わっています。大人社会とのふれあいによって大人とは何かを考え、生きることの方向付けに目覚めます。価値ある体験の中で、認識し、感じ、考える中で進路意識は次第に成熟していきます。
 通常の学校生活の中では、こうした体験の場の設定が難しい。それだけに、支援を生かす教育活動の工夫が大切になっています。自校の教育活動にそうした価値ある体験、学習が多様に準備されているかどうか、まずは全教育活動を見直すことが大切になっています。
 以前本情報(No.121)で引用した、平成23年7月公表「学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議提言」の「子どもを中心に据えた学校と地域の連携」の項では、次のように述べられています。
 「子どもの『生きる力』は、多様な人々と関わり、様々な経験を重ねていく中でよりはぐくまれるものであり、学校のみではぐくめるものではない。加えて、近年の社会の変化に伴い、多様化・複雑化するニーズに学校の教職員や行政の力だけで対応していくことは困難となっており、学校が地域社会においてその役割を果たしていくためには、地域の人々(保護者・地域住民等)の支えが必要となっている。」
 また、平成25年4月に公表された中央教育審議会答申「第二期教育振興基本計画」においても、社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成にふれる部分があり、小中学校において、教育活動の展開に際して、その基礎となる能力・態度の育成を視野に入れることが重要であると考えます。
 子どもの生きる力の育成を目指す学校の活性化は、学校内部の力だけでは十分な効果を上げ得ません。学校は、学校外にある多様な教育機能に着目し、ともに教育を推進し家庭・地域社会の信頼に応える学校づくりを目指すことが求められています。

日文の教育情報ロゴ

八重よ-新島襄が認めた世界から【大河を読み解くシリーズ2】

「八重の櫻」という物語

 新島八重の物語は、大河ドラマの展開とともに、世間の話題をよんでいます。このドラマには、国家から断罪され、離散した会津藩が負わされた苦闘に重ね、幕末明治の世を己の思いを貫いて生きた女性の姿を問いかけ、3・11の悲運に翻弄される東北の民が負わされている世界を描くことで、自立した女の声に託した東北応援歌を意図しているようです。3・11以後のNHKは、「日本人は何を考えてきたのか」が原発事故による放射能の飛散により東日本大震災がもつ人災を現在にもたらした近代日本の負をみつめ、日本人の生き方を問い質し、東北の民に根ざした生命の在り方を提示し、その生き方にエールを送り、ことさらに東北の目を意識しています。「八重の櫻」は、朝の連続ドラマ等にもみられるように、女の自立という当世風の課題に重ね、震災の記憶が年とともに忘れられ、失われていく世間の風に対し、記憶の蘇生と継承を問い続ける作法にほかなりません。
 新島襄は、夫として、このドラマに生かされている八重とどのような世界をつくっていたのでしょうか。襄の日記や手紙にみえる八重の世界は、今後に展開していくドラマでどのように描かれるのかは不明ですが、一人の妻として時代を生きた女性の相貌を、ドラマの展開に先立ってみておくこととします。なお、新島襄は、『新島襄全集』3・4巻(書簡編)5巻(日記・紀行編)にみられるように、記録魔といえるほどに筆まめな人物で、日々の記録にくわえ、旅日記や手紙等に旅先の風物を事細かに記録し、遺しています。これらの記録をもとに八重をめぐる世界を紹介することにします。

明治15年の旅から

 新島襄は、明治9(1876)年1月3日にアメリカン・ボード派遣宣教師J・D、ディヴィスの司式で山本覚馬(①)の妹八重(1845年生れ)、31歳と結婚します。京都で最初のキリスト教による結婚式です。新島が京都に同志社を設立できたのは京都府庁に影響力をもっていた覚馬の支援あってのことです。また、ディヴィスは、同志社に35年間身をおき、その運営をささえ、新島没後にいち早く「新島襄傳」を英文で世に問うた人物。書簡集にみられる八重宛手紙は、国内のみならず海外に赴いた旅先からのものですが、山本家への気遣いや両親、宣教師、学生への気遣いを認めています。傳道や同志社設立の募金などの国内旅行には、同伴もし、旅先における八重の行動を尊重しています。
 明治15年7月、新島は中仙道を通って郷里安中に向い、11日に安中で八重と落ち合い、18日に馬車で高崎に出立、新田義貞の城跡を眺めるなどの旅程を楽しみ、20日午後日光着。21日に「余は歩行、八重は駕籠にのり、早朝より発し、途を枉げ先裏見が滝」を見、午後華厳の滝から中禅寺、二荒神社を経て日光にもどっています。ついで7月27日に八重の故郷会津若松を訪れ、8月1日まで滞在。この旅は、夫婦にとり、お互いの里帰りをかねた新婚旅行であったといえましょう。

襄がみた八重の故郷

 襄の目がとらえた「若松地方の物産」は、戊辰敗残の翳を負うもので、次の様に紹介されています。

 塗物 北方に於て製す
 陶器 若松の西南に当り本郷と称する所に於て製す
 蝋燭 若松   
 養蚕、麻、米質は中等、其味は宜し、酒に適せず
 果物は各種、蜜柑の類なし
 魚塩は他より輸入す、魚は越後より来るものを十分の九とす
 木綿は不足、他より来る
 絹は他より来る
昨年より公立中学設立す、尚微々たるよし。義塾はなし、人々に資産なし、又教育の貴重なるを知らず
此地方の士族の家は殆ど三千二百戸、士族中多くは貧困、政府より授産金下附の沙汰あるにより、何人かの誘導ありて漸々乎と帝政党に入るものあるよし。然るに北方に於ては、農民中往々自由党に加入し頗る民権皇張を望むものあるよし。此の党は僅かの下附金により左右されざる資産持の民権家たるよし
授産金は二十八万乃至は三十万円なるよし ○新聞紙なし、又新聞を取るの人も僅少なるよし。

 ここには、県令三島通庸が12月に福島自由党を弾圧した福島事件前夜の民権派に結集する者の様相が読みとれます。新島は、8月1日に伊勢(横井)時雄(②)を同伴して若松を出立、山形県下南置賜郡関村の高湯(現米沢市関の新高湯温泉)に21日まで滞在して身心を休め、米沢で上杉鷹山を偲び、三島通庸が開鑿した栗子隧道、福島に達する三島道路を紹介しています。この間、先に一人で帰京した八重に湯治場から手紙を出しておりますが、その手紙は現存していません。湯治場での日々を知らせたものと思われます。湯治場の日々は8代将軍吉宗の御落胤をめぐる天一坊事件について熱心に調べています。ここには己の足元、傳道する民衆の心意に心よせる新島の思いがうかがえます。このような足元を読み取る眼を失っているのが現在のキリスト者の姿です。
 新島襄は、己の目で日本という大地をみつめ、日本の新生を模索していました。妻八重は、己の志を実現するために飛びまわる夫襄の健康を気遣い、「しゆふとのよめによき面(かほ)をなさぬ事」にも耐えていきます。それだけに襄は、良人として妻の身を案じ、旅先から日々の様子を事細かに知らせたのです。

 ①山本覚馬(1828-1892)
 会津藩の砲術指南。白内障で盲人となったが、明治維新後に京都府大参事、顧問として京都の近代化を推進。京都府会初代議長、京都商工会議所会頭等を歴任。旧薩摩藩邸を同志社の敷地として新島襄に斡旋。家ではラーネッドが「国富論」講じるなど政治学、経済学の講座を開き、青年の育成にあたった。
 ②伊勢時雄(1857-1927)
 横井小楠の長男、母は矢嶋楫子の姉つせ子。妻みねは山本覚馬の次女。妹みやは海老名弾正の妻。母つせ子の姉久子の子が徳富蘇峰・蘆花。一時伊勢姓を名乗る。熊本洋学校でジェーンズに学び、「西教」への信仰を宣言した奉教趣意書に署名、家を追われ同志社に学び、牧師として新島を助ける。第3代同志社社長となるも、神学上の煩悶もあり、キリスト教界に訣別、官界に転じ、政友会から代議士となるも疑獄事件で場を失う。内村鑑三は、不敬事件の心労で斃れた妻加寿子の葬儀に参列し、その居場所を失った内村を助けてくれた横井の恩義を終生忘れず、その葬儀で追悼演説をした。