研究授業の参観のコツ(2)

 前回の続きです。授業参観で子どもを見たとして、そこからどう指導の改善につなげるかという話です。結論からいえば「その子から、教育の資源をたどれば分かる」です。一つの事例を見ながら考えてみましょう。

 ある鑑賞の授業でした。教室前面には大きな絵が掲示してあります(上図参照)。子どもたちは四人グループをつくっています。私が見ていたのはA子です。例によって教室入口からすぐに見える子でした。授業は六つの質問をもとに作品を鑑賞するもので、先生は最初の三つの質問を全体で軽く検討した後「今度はグループで話し合おう」と指示し、ワークシートを一人一人に配布しました。そして、子どもたちは一斉にワークシートに書き始めました。話し合いは起こりません。私の見ているA子は、鉛筆を持ったままじっとしていました。時折、隣の子どもを覗くだけです。あれ?先生の指示は「グループで話し合う」でしたよね。なぜグループで話し合わず、A子は一人ぼっちなのでしょう(※1)。

 まず、ワークシートは、基本的に子ども同士の関係性を切り離す特性を持っています。算数や国語でもそうですが、それまでどんなに快活に話し合っていても、プリントを配ったとたん、子どもは一人で学習を始めます。「グループで話し合いなさい」と「一人一人にワークシートを配布する」を同時に指示することは矛盾しています。子どもたちが話し合おうとしなかったのは当然なのです。次に、ワークシートを見てみましょう。ワークシートには六つの質問がすべて掲載されています。さらに、教室前面に掲示してある作品がフルカラーで精緻に印刷されています。質問と、その質問に答えるための資源がすべて盛り込まれているというわけです。ワークシートだけで学習が完結するのであれば、誰も顔を上げなかったことが納得できます。A子だけがワークシートに書くことが思いつかず孤立したのでしょう。

 さて、どうすればよかったのでしょうか。まずワークシートの絵を取り去ることが考えられます。そもそも教室前面に大きな図版が掲示してあるのですから、それを見ればすむことです。また、話し合いによって鑑賞を高めるのであれば、ワークシートの必要性も疑問です(※2)。一つ一つの質問がカードになった六枚の束が、それぞれグループに一つあればよいと思います。教室前面の絵、グループ、質問カード、この配置であれば、次のような学習が行われていたでしょう。

 「では、次に四番目の質問にいきます。この絵は何を表しているでしょう」
 「ぼくは海だと思うんだけど…」
 「どうして?」
 「(指さしながら)絵のあそこが波みたいだから」
 「あ~、なるほど」

 誰かが司会をし、誰かが書記し、誰かが絵を指さすことで、みんなで同じ場所を見ながら話し合いが展開できたと思います。話し合いという「言語活動の充実」を通して思考・判断が活性化し、結果的に一人で行う以上の作品鑑賞ができたでしょう。そのような場でも、A子は一人ぼっちだったでしょうか? おそらく静かだったとしても、まわりの意見を聞きながら、いっしょに考えたことでしょう。もしかして一回くらい自分の意見を発言したかもしれません。そうです。A子を「一人」にしていたのは、A子自身の属性というよりも、ワークシートや教室環境を含めた学習のデザインだったのです。

 子どもはまわりの資源との関係で「その子」として成立しています。網の目のように広がる資源と状況の中で、子どもは「子ども」になります。材料や用具、指導案や題材、教室や学級、学校制度、子ども教育の対象として見る社会や文化などが「その子」を「そのような子」にしているのです。そこで、資源を見つけ、そのつながりや組み合わせを探る。そこから指導の改善を考える。目の前の子どもという具体的な根拠をもって語る。それが授業研究会です(※3)。そんなことを130年も続けている国は日本だけです。そして、その伝統に大きく貢献してきたのが、普段から子どもや作品などを根拠にしながら、具体的に授業を考えてきた図画工作や美術だろうと思っています。

 

※1:ここで大切なことは「子どものせいにしない」ということだ。ここで「A子は勉強が苦手」「グループの仲が悪い」などのように、原因を「子どもに帰す」のは簡単である。でもその途端、指導の改善は不問になる。指導がうまくいかないのを、毎度、子どものせいにされたら、子どもはたまったものではない。一方、「子どもってすごい」と何もかもその子の能力のように語るのも同じことである。子どもは真空状態に存在しているわけではない。問うべきは「その子をその子たらしめている複数の資源」である。
※2:振り返りをしたければ、別の時点で、別の内容になる。授業においてこの場面は思考・判断の場面であった。
※3:もっぱら自分の考えや経験から、話し合うのは指導案検討会である。

「国民の代表者による選挙」(第6学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「国民の代表者による選挙」

2.目 標

 国民の代表者による政治に関心をもち,三権分立や選挙などについて調べ,人びとのくらしと政治との関わりについて考えることを通して,市や府・国の政治が人びとの生活の安定と向上を図るために大切な働きをしていることを理解できるようにする。

3.評価基準

社会的事象への関心・意欲・態度
○日本の政治の働きに関心をもち,人びとの生活の安定と向上のために,地方公共団体や国の政治の働きが反映していることを意欲的に調べることができる。

社会的な思考・判断・表現
○人びとの積極的な政治参加が民主政治を支えていることに気づき,人びとの政治参加の方法と公正な選挙の重要性について考え,調べた過程や結果を目的に応じてわかりやすく工夫し,表現できる。

観察・資料活用の技能
○日本の政治の仕組みや働きを的確に調査し,資料を効果的に活用して具体的に調べ,調べた結果や過程や結果をまとめることできる。

社会的事象についての知識・理解
○選挙のしくみや国会の働きなどを調べて,現在の政治は国民の選んだ代表者による議会政治によって成り立っていることを,国民主権と関連づけて理解できる。

4.本単元の指導にあたって

 児童は,日本の政治に関して,政党の名前や総理大臣の名前をマスメディアを通して知ってはいるが,政治と自分たちの生活との関わりについては,ほとんど気づいていない。テレビでの外国の大統領就任演説の様子を通して,選挙による代表者の選出や,人びとと政治とのつながりに少し関心を持ち始めている児童も本学級にはいる。
 本単元では,国会・内閣・裁判所のしくみやそれぞれの働きを調べることを通して,人びとの暮らしと政治を民主主義の意義と結びつけて考えることができる。また,国民の代表者として選ばれた国会議員が国民生活の安定と向上に努めることや,住民が代表者を選ぶために正しく選挙権を行使することが大切であることを考えることを通して,選挙のしくみについて理解し,人びとの積極的な政治参加が民主政治を支えていることにも気づくこともできる学習である。
 そこで,資料集やインターネットを活用して,国会・内閣・裁判所の仕事やしくみについて調べ,人びとの権利と自由を守るために三権分立の仕組みをとっていることを理解できるようにする。また,選挙について調べる学習では,模擬投票を行うことを通して選挙のしくみについて理解し,公正な選挙を行うための工夫や責任をもって人を選ぶことの大切さを考えることができるようにする。そして,投票率の低下のグラフを活用して選挙の現状について知り,選挙に関心をもつことが大切であることに気づくことができるようにする。
 本単元全体を通して,国の政治が人びとの生活の安定と向上を図るために大切な働きをしていることが理解できるようにしたい。

5.本単元の指導計画

学習のねらい

子どもの活動と内容

評価規準の具体例

1

2

国会・内閣・裁判所の仕事やしくみについて調べ,国民の願いを実現するための国会・内閣・裁判所の働きについてまとめることができるようにする。

国の政治は,どのように進められているのだろう。

国会・内閣・裁判所の仕事やしくみについて意欲的に調べている。
(関心・意欲・態度)

国会・内閣・裁判所の仕事やしくみについて調べたことを,国民とのつながりを考えながらわかりやすくまとめることができている。
(思考・判断・表現)

○国会の本会議の様子や最高裁判所の様子の写真を見て気づいたことを話し合う。
○国会・内閣・裁判所のうち1つを選び,インターネットや資料集などを活用して,それぞれの機関のしくみと主な仕事について調べる。
○国会・内閣・裁判所のそれぞれの機関と国民の願いとの関係についてまとめる。

3

4

国会・内閣・裁判所の相互の関わりについて調べ,国の政治を三つの機関が分担してすすめていることを理解できるようにする。

国の政治が三権に分かれているのはなぜだろうか。

国の政治は,人びとの願いを実現していくために,三権分立のしくみをとっていることが理解できている。
(知識・理解)

○国会・内閣・裁判所の相互の関係と,国民との関係について図式化して,話し合う。
○国の政治が三権に分かれているわけを考える。
○国民の政治への参加について話し合う。

5
本時

選挙のしくみについて調べ,選挙は人びとの願いや要求の実現をめざす重要な機会であることを理解し,人々の政治参加の方法と公正な選挙の重要性について考えることができるようにする。

人びとの願いや要求を実現するための選挙はどのように行われているのだろう。

人びとの願いを実現する選挙のしくみについて調べ,人びとの政治参加の方法と公正な選挙の重要性について考え,適切に表現している。
(思考・判断・表現)

○投票箱や記載台の実物を見て,選挙について知っていることや気づいたことを話し合う。
○選挙のしくみについて調べる。
○選挙を行うためにいろいろな工夫がされている理由について考える。
○選挙における現状について話し合う。

6.本時の学習

①目 標
 選挙のしくみについて調べ,選挙は人びとの願いや要求の実現をめざす重要な機会であることを理解し,人びとの政治参加の方法と公正な選挙の重要性について適切に判断する。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

資料

○投票所について話し合う。
・投票箱の鍵
・記載台のしきり

○投票箱や記載台の実物を提示し,気づいたことを話し合うようにする。

・実物「投票箱・記載台」

○選挙のしくみについて調べる。
・模擬投票
・20歳以上の日本国民に選挙権
・一人一票
・無記名
・時間制限
・投票箱の確認

○投票所の見取り図を提示し,投票の流れについて知ることができるようにする。
○選挙権について教科書で調べるようにする。

・投票所の見取り図

○『私たちの住む生野区の代表を選ぼう』という仮設定の模擬投票を体験して,気がついたことをノートに書かせるようにする。

・候補者のポスター
・投票用紙

○選挙を行うためにいろいろな工夫がされている理由について考える。
・公正な選挙
・投票の自由
・平等な選挙

○模擬投票の開票を行い,調べた事柄の中から,選挙をする上で,一番大切だと思うものを選び,その理由を話し合うようにする。
○公正な選挙について考え,一票の重さに気づくことができるようにする。

・模擬投票の開票

○選挙における現状について話し合う。
・投票率の低下
・外国人の参政権の問題

○人びとの願いや要求を実現していくために,選挙に関心をもつことが大切であることに気づくことができるようにする。

・表「投票率の移り変わり」

7.板書計画

投票箱

記載台

日本という国のかたち(2)

「平民国」日本へのまなざし

 日本は、世界に数ある帝国のなかで、地球上における唯一つの大君主である天皇を戴く「大帝爵国」と自称し、他の「帝国」を「偽帝国」とみなし、「大皇国」であることに存在の根拠を主張することで、万国が対峙し、世界制覇を競う国際社会に登場していきます。明治維新は、「大皇国」日本を実現すべく、皇室の下に民心を結集することで、欧米列強の圧力に抗しうる国家をめざした革命です。
 革命の主体勢力であった薩長藩閥勢力は、国家独立のために人民の権利よりも権力の確立強化を優先したがために、人民の政治参加こそが国権確立に欠かせないと説く自由民権を主張する在野勢力と激しく対立します。この国権と民権の対立抗争する時代を凝視し、「将来の日本」像を1886年(明治19)に提示したのが徳富蘇峰でした。徳富蘇峰の『将来之日本』は、89年の大日本帝国憲法発布、90年の国会開設を前にした時代の声に応じ、国家のあるべき姿を「平民的の社会」の実現に見いだすことで、知識青年に歓迎されたベストセラー作品です。

 吾人はわが皇室の尊栄と安寧とを保ちたまわんを欲し、わが国家の隆盛ならんことを欲し、わが政府の鞏保ならんことを欲するものなり。これを欲するの至情に至りては、あえて天下人士の後にあらざることを信ず。然れども国民なるものは実に茅屋の中に住する者に存し、もしこの国民にして安寧と自由と幸福とを得ざる時においては国家は一日も存在するあたわざるを信ずるなり。しかしてわが茅屋の中に住する人民をして、この恩沢に浴せしむるは実にわが社会をして生産的の社会たらしめ、その必然の結果たる平民的の社会たらしむるにあることを信ずるなり。すなわち我邦をして平和主義を採り、もって商業国たらしめ平民国たらしむるは実にわが国家の生活を保ち、皇室の尊栄も、国家の威勢も、政府の鞏固も、もって遥々たる将来に維持するのもっとも善き手段にして、国家将来の大経綸なるものは、ただこの一手段を実践するにあるを信ずるなり。

 蘇峰は、皇室の尊栄と安寧も保つためにも、「平和主義」にもとづく「商業国」「平民国」を将来の日本像として提示しております。そこでは、「茅屋の中に住する者」たる国民の安寧・自由・幸福を保証する国家の在り方を、「商業国」「平民国」「生産的の社会」―産業資本主義に立脚するブルジョワデモクラシーの国とみなそうとしています。この言説は、未だ資本主義の激烈な競争場裏を目の当たりしていないなかで、牧歌的な響きで語られたものといえましょう。しかし日本の現実は、欧米列強との苛烈な競争に立ち向かい、国家富強の道を歩まねばなりませんでした。そのため「茅屋の中に住する者」たる「平民」には国家富強の捨て石となることが求められていたのです。

一国富強への道

 政府は、「皇室の尊栄と安寧も保つ」ためのに、蘇峰が提示した世界ではなく、一国富強をめざすドラスチックな方策を選択しました。その方策は、開化の風浪に奔流されていた教育を再構築することで、茅屋の民たる国民を国家の民となし、一国富強の担い手とすることです。ここに教育では、「万国和親」の下で「万国史略」、世界史を講じていた教育を否定し、1881年(明治14)の小学校教則綱領、小学校教員心得で尊皇愛国の精神に貫かれた「熟練」「懇切」「黽勉」という徳の養成をかかげ、「尊皇愛国の志気を振興し忠孝節義の風尚を涵養せんことを要す」ことが歴史教育に求められました。
 初代文部大臣森有礼は、1889年1月28日に直轄学校長に「諸学校を維持するも畢竟国家の為なり」「学政上に於ては生徒其人の為にするに非ずして国家の為にすることを始終記憶せざるべからず」と説示し、閣議にはかった意見書で「今夫国の品位をして進んで列国の際に対立し以て永遠の偉業を固くせんと欲せば国民の志気を培養発達するを以て其根本と為さゝることを得ず」、と国家の教育目的を次のように述べています。

 今は文明の風駸々として行われ、日用百般の事物漸く変遷し進む。然るに我が国民の志気果して能く錬養陶成する所ありて、難きに堪え苦を忍び、前途永遠の重任を負担するに足る歟。二十年の進歩は果して真確精醇深く人心に涵漸し、以て立国の本を鞏固ならしむるに足る歟。加ふるに我國中古以来文武の業に従い躬国事に任ずるは偏に士族の専有する所たり。而して今に至り開進の運動を主持する者僅かに国民の一部分に止まり、其他多数の人民は或は茫然として立国の何たるを解せざる者多し。
 顧みるに我国万世一王天地と共に極限なく上古以来威武の輝く所未だ曾て一たひも外国の屈辱を受けたることあらず。而して人民護国の精神忠武恭順の風は祖宗以来の漸磨の陶冶する所未た地に墜るに至らす。是即ち一国富強の基を成すか為に無二の資本至大の宝庫にして、以て人民の品性を進め教育の準的を達するに於て他に求むることを仮らさるべき者なり。蓋国民をして忠君愛国の気に篤く、品性堅定志操純一にして、人々怯弱を恥ち屈辱を悪むことを知り、深く骨髄に入らしめは、精神の嚮ふ所万波一注以て久しきに耐ゆべく、以て難きを忍ぶべく、以て協力同志して事業を興すべし。督責を待たずして学を力め智を研き、一国の文明を進むる者此気力なり。生産に労働して富源を開発する者此気力なり。生産に労働して富源を開発する者此気力なり。凡そ万般の障碍を芟除して国運の進歩を迅速ならしむる者総て此気力に倚らざるはなし。長者は此気力を以て之を幼者に授け、父祖は此気力を以て之を子孫に伝え、人々相承け家々相化し、一国の気風一定して永久動かすべからざるに至らば国本強固ならざるを欲すとも得べからざるべし。

 ここに日本の教育は、「万世一王」、万世一系の皇国の民たる気力を鼓舞することで、生産に労働に励む国家の民を育成することを至上の価値としたのです。この国家至上の教育は、蘇峰の思いとは逆に、「茅屋の民」をして国家躍進の捨て石、皇国の埋め草にすることでもありました。まさに「大皇国」の民は、「民草」にふさわしく、国家の風になびく草として生かされたのです。この国家至上の教育を支えるものとして期待されたのが教育勅語でした。まさに教育勅語は、「維新以来教育之主旨定まらす国民之方向殆んと支離滅裂に至らんとする」状況に対し、森がめざした教育を具体化したものにほかなりません。
 このような国の在り方は、根源的に問い質されることなく、愛国心教育の欠落をことさらに説く昨今の風潮に重ねてみると、未だ日本の大地に深くねざす遺伝子として日本人の心を呪縛しているのではないでしょうか。

 

参考文献

  • 『ナショナリズム』現代日本思想体系4 筑摩書房 1964年
  • 『学制百年史』 文部省 1972年

学校を生き生きとした人間教育の場に

1 道徳教育は平和な国づくりの根本

 道徳教育が、いよいよ動き出します。と言いますと、警戒心を持つ人がいます。
 では、お聞きします。戦後のわが国は、日本国憲法において、世界の平和と人類の福祉に貢献できる国づくりを、世界に向かって高々と宣言しました。それをどのように実現していくのでしょうか。いうまでもなく、国民一人一人の自覚と実践によってです。そのためには、一人一人の生き方に問いかける指導が不可欠です。それが、道徳教育です。日本は民主主義国家です。過去の過ちを繰り返さないためにも、生き方の根幹を育む道徳教育を中核として教育を確立しなければならないのです。
 平成18年に改正された教育基本法は、そのことを明確に示しています。国民一人一人が生涯にわたり人格を磨き、そのことによって豊かな人生を送ることができるような教育のあり方を提案しています。豊かな人生とは、幸せな一生であり、共に幸せに生きられる社会を創ることです。その根幹に人格の形成・錬磨があるというのです。その人格の基盤が道徳性であり、その道徳性の育成を計画的・発展的に行うのが道徳教育なのです。そして、その要に道徳の時間が位置づけられているのです。

2 特別の教科「道徳」提案の意図

 では、その道徳の時間が学校現場において機能しているのでしょうか。確かに、道徳の時間を学校ぐるみで取り組んでいる学校はありますし、そこでは確実に成果を上げています。しかし、ほとんどの先生方が、学校間格差や教師間格差に気づかれているはずです。
 教育の根幹を担う道徳教育がそのような状況でいいのでしょうか。何とか改善を図らねばなりません。その大きな対応策として道徳の教科化が提案されるようになりました。
 道徳の教科化ありきではないのです。道徳教育を充実させ、学校教育の本来の役割を果たせるようにするには、どうしても要となる時間の充実が不可欠だというのです。いじめなどの子どもたちの問題行動の多発もこのことに起因していると捉えます。そして同時に、教科化することによって、様々な充実方策を行うことができます。例えば、教科書の発行や予算の確保、指導者及び指導者養成の充実、評価観の改善などです。
 しかし、懸念も考えられます。教科にすることによって、他の教科と同様に知識理解や実践指導を重視した授業になるのではないか。教科書を使うことで今まで開発してきた資料が使えなくなるのではないか。免許を持った教師だけの指導になってしまうのではないか。点数による評価が行われるのではないか、等々。これらは道徳教育の根幹にかかわる問題でもあります。こういった懸念を払しょくするためにも、特別の教科「道徳」という名称が提案されているのです。

3 特別の教科「道徳」はどのようなものか

 そもそも道徳教育は、一般に言われる教科とは異なります。教科はそれぞれに専門分化したものですが、道徳教育は総合されたものです。道徳教育の要である道徳の時間も同様です。したがって、道徳は、各教科全体を包み込んで人間として生きる根幹となる道徳的価値の自覚を計画的発展的に図るという意味で特別の教科なのです。そのために、どのようなものにしていくべきなのか。道徳の時間の実態をも考慮しながら考えていく必要があります。

→「教育情報No.3」全編は、当サイトの機関誌・教育情報「教育情報」にて公開中です!

押谷由夫
昭和女子大学大学院教授・放送大学客員教授
1952年滋賀県生まれ。広島大学大学院卒業(教育学博士)、高松短大、高知女子大学、文部省・文部科学省、国立教育政策研究所等を経て、現職。日本道徳教育学会会長、小さな親切運動本部顧問。現在文部科学省「道徳教育の充実に関する懇談会」の副座長を務めている。

被災地からのことばのハンカチ展

アンケート記入風景(宮城県七の市商店街)

 やさしいハンカチ展は東日本大震災復興支援のために企画された展覧会で、今年で第三回目を迎えます。第一回展では現役で活躍するグラフィックデザイナーの作品が、第二回展では岩手・宮城・福島の小学生の絵を基にデザイナーがデザインした作品が展示・販売されるなど企画の幅が広げられています。第三回展のテーマは「ことば」です。同3県の商店街で復興に関わる方々の「ことば」を基にデザインした作品が展示・販売されます。
 商店街で今なお復興に携わる人々がどのような言葉を紡いでいるでしょうか。今回つくられたハンカチは326種類。前向きなもの、明るいばかりではない現実を直視するものなど言葉はさまざまでそれ自体読み応えがありますし、その言葉に反応し与えられた色や形が実に多様であるのを見ても驚かされます。

展覧会場風景

 この展覧会が問いかけるのは復興支援のために何ができるかという考え方そのものかもしれません。生活の糧を与えるという支援は簡単ですが、10年先も復興活動は続くであろうことを考えれば、いずれ最前線でそれを担う子供たちには、「何が必要なのか」ゼロから自分たちで考え出す力が必要になるでしょう。第二回展では展覧会の収益金は被災地に贈られ、その使途を考えることも子供たち自身の課題としました。楢葉南北小学校(福島県)では、学校の鼓笛隊を復活させるために楽器を購入することに決めたと言います。第三回展ではさらに、産業をいかに被災地に呼び戻すかを考え復興商店街に焦点を当てたりして経済の問題へと視野を広げるなど、震災の記憶を現在、そしてこれからへと伝えてくれます。

(編集部)

 

<展覧会情報>

  • JAGDAやさしいハンカチ展Part 3 被災地からのことばのハンカチ展
  • 東京展 ~2014年2月23日(日) 東京ミッドタウン・デザインハブ
  • 神奈川展 2014年4月29日(火)~2014年5月5日(月) ヨコハマ創造都市センター3F
  • 広島展 2014年6月14日(土)~2014年6月29日(日) 旧日本銀行広島支店

展覧会概要

  • 岩手県・宮城県・福島県、東北3県の4つの復興商店街で「いまの思い」をテーマにして寄せられた言葉を基にデザインしたハンカチを展示・販売します。販売収益は、各商店街に還元されます。詳細は特設サイトico_linkをご覧ください。

東京ミッドタウン・デザインハブico_link

  • 所在地 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F
  • TEL 03-5770-7509(公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会/JAGDA)
  • 休館日 会期中無休

その他、詳細は東京ミッドタウン・デザインハブico_linkでご覧ください。