鳥獣戯画の世界を味わおう(鑑賞学習)(第6学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.題材名

鳥獣戯画の世界を味わおう(鑑賞学習)~表現のよさやおもしろさをみつけよう~

2.題材の目標

(1)『鳥獣戯画』の鑑賞学習を通して,その作品のよさやおもしろさなどを自分の思いをもって味わおうとする。(造形への関心・意欲・態度)

(2)感じたことや思ったことを自分の言葉や絵で表現したり,友達と話し合ったりしながら,表し方の変化,表現の意図や特徴をとらえ,よさやおもしろさなどを感じ取っている。(鑑賞の能力)

3.題材について

 本題材は,図画工作科の鑑賞領域の学習であるが,国語科「『鳥獣戯画』を読む」「この絵,わたしはこう見る」の土台にもしたいと考える。本題材で『鳥獣戯画』を鑑賞し,初めて出会った作品に対する感動や思いをもって,国語科の題材文の筆者である高畑勲が,どのようにこの作品をとらえ,その感動をどのように文章で表しているか,その表現の手法などに気づくための豊かな情操部分を蓄えておきたいとの思いからである。しかし,この『鳥獣戯画』作品は難しい表現要素もあり,一見しただけではそのよさを感じ取りにくい部分もある。国語科では,さらに「この絵,わたしはこう見る」の題材で自分なりに絵をどうとらえ,どのような思いを抱いたかを他者に的確に伝えるかという題材に続く。『鳥獣戯画』の全体を楽しく鑑賞することができれば,自ずと鑑賞文を書きたいという必然性もわき起こると考える。そういう図画工作科と国語科のよりよいコラボレーションを児童に感じさせながら学習をすすめたい。第6学年においては,このような教科内での限定した学習だけにとどまらない,教科の枠を超えた学習も効果的であるという考えのもと,この題材を設定した。

4.指導について

(1)児童の実態(男子9名 女子17名 計26名)
 児童は,図画工作科の授業への意欲・関心が高い。6年生になってからは,鑑賞の領域では浮世絵についての学習を積んでいる。その際,文化の意義や交流,創造などについて考えを深める子もおり,各教科などを通して多方面から考察をする場面もあった。社会科の歴史学習への意欲・関心も高く,文化についても考える機会もあったことをふまえると,今回の『鳥獣戯画』という日本の美術文化に関わりの深い作品についても興味をもつ児童が多いのではないかと考える。

(2)指導の手だて
◆単元構成の工夫

 後述の視点に基づいて,統合単元的に組む。そうすることで,児童の中では思考がつながり,途切れにくいというメリットがあると思われる。反面,長期にわたり,関心・意欲を保ち続けるには,難しい部分もあると言える。そのため,適時目新しい資料や提案を入れ,意欲が持続するように支援したい。最後の総合学習「にじっ子美術館へようこそ!!」では,出来上がった鑑賞文や国語科や図画工作科で学んだことを活かして書いた他の作品の鑑賞文を全校に展示するなどして,自分達の美術館をつくる活動を行う予定である。学習の成果を発表できる場であると同時に,「活用」を感じられる場になるようにしたい。そういった一連の必然性のある流れをつくることで,さらに鑑賞への意欲や国語科や図画工作科の表現への意欲を高めたり,問題解決への資質・能力を高められたりできるようにしたい。

◆文化理解・創造の軸をもたせる
 国語科においては思いを言語で表現するが,図画工作科では色や形・線によって表現するという教科の特異性がある。一人の表現者として,文化を理解し創造する楽しみを味わわせることを大事にしたいと考える。どちらかの表現手法に苦手意識をもっている児童も,2つの学習により,表現という面においては,思いを満たすことができるのではないかと考える。また,相互の教科をうまくリンクできれば,発想の広がりや鑑賞の深まりにつながり,文化理解や鑑賞・表現のおもしろさを感じることにもつながっていくだろうと期待している。
◆鑑賞学習の工夫
 鑑賞と表現は相加相乗効果をもって造形教育の礎をなす。鑑賞の学習は大まかに,①表現よりの鑑賞(相互鑑賞・自己鑑賞),②表現と接続する鑑賞(表現から鑑賞へ・鑑賞から表現へ),③独立した鑑賞(美術作品の鑑賞・生活からの鑑賞)の3つのカテゴリーになると考えられる。児童のこれまでの学習経験からも,表現の体験・実感を伴う学習は効果的であったことから,ここでは,表現と鑑賞を一体化する(接続する)鑑賞を行いたい。児童は,「鑑賞から表現」,「表現から鑑賞」へのスパイラルにより,鑑賞は深められ,関心・意欲も高まると考える。

5.本時の評価規準

関心・意欲・態度

『鳥獣戯画』のよさやおもしろさなどを,自分の思いをもって楽しく感じ取ろうとしている。(発言・ワークシート)

鑑賞の能力

感じたことや思ったことを進んで話したり,友達と話し合ったりしながら表現の意図や特徴などをとらえ,自分なりに『鳥獣戯画』のよさやおもしろさなどを感じ取っている。(発言・作品・ワークシート)

6.指導計画(3時間 配当)…本時 1/3

 第1時…『鳥獣戯画』の世界を味わおう(本時)
 第2時…MY『鳥獣戯画』にチャレンジ!!
 第3時…『風神雷神図屏風』を見る ~三人の琳派~

7.本時の学習

(1)目 標
 自分の思いを話したり,友達と話し合ったりしながら,『鳥獣戯画』の特徴やよさ,美しさを味わい,鑑賞活動を楽しんでいる。

(2)準備物
教師側:
『鳥獣戯画』写真図版・絵巻物(複製),『鳥獣戯画』ミニ巻物(複製)児童数分,ワークシート,『鳥獣戯画』柄の浴衣
児童側:小筆,墨,半紙など

(3)学習過程

学習活動と予想される児童の反応

支援と評価(評)



○学習のめあてをつかむ。

『鳥獣戯画』の世界を味わおう
~表現のよさやおもしろさをみつけよう~



○『鳥獣戯画』の鑑賞画を見て話し合い,感じたことや気づいたことを発表する。

・作品図版を見せる。
・自由に発言させ,自分の思いを表出しやすい雰囲気づくりをする。

○絵巻物の『鳥獣戯画』を見て(グループごと)気づいたことを話し合い,発表する。

・一続きの漫画みたいになっている。
・流れがある。
・途中に継ぎ目がある。

・1人1人のパーツをつなげると1つの絵巻物になるようにしておく。
・絵巻物の見方を紹介する。

(評)進んで話したり,友達と話し合ったりして楽しく鑑賞できたか。
(発言)

○いろいろな場面を取り出しみんなで鑑賞する。

◆すもうの場面(異時同図)
◆水遊びの場面 など

・身体で表現してみたり,見合ったりしてもよいことを知らせる。
・楽しく味わいながら絵巻物のおもしろさを感じられるようにする。
・ミニレプリカを参考にしたり,模写したりしてもよいことを知らせる。

(評)自分なりに自由に試しがきしながら楽しく鑑賞できたか。
(発言・ワークシート)

・友達の作品のよいところを伝え合うようにする。
・簡単な紹介文を友達の作品につけることで,国語の題材へのプレ学習となるように支援する。

○見たい部分を自分なりに自由に味わう。

○お気に入りの場面をかいて楽しむ。

○自分達がかいた作品を鑑賞し合い,うまくいったことを紹介したり,キャッチコピーをつけてあげたりする。




○感想を発表する。

○今に生き続けている日本文化の一端となっていることを紹介する。
・アニメーション,映画,パラパラ漫画,紙芝居
・着物の柄

・高畑勲著の書物や関連する図書・作品資料などを示す。

8.完成作品

森美術館10周年記念展 アンディ・ウォーホル展:永遠の15分

①「マリリン・モンロー(マリリン)」

①「マリリン・モンロー(マリリン)」 紙にスクリーンプリント/91.4×91.4 cm /1967 アンディ・ウォーホル美術館蔵
© 2014 The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. / Artists Rights Society (ARS), New York Marilyn Monroe™; Rights of Publicity and Persona Rights: The Estate of Marilyn Monroe, LLC marilynmonroe.com

 アンディ・ウォーホルは、1920年代のアメリカに生まれ、消費社会と大衆文化の時代を背景に活躍した20世紀後半を代表する作家の一人です。1950年代に商業デザイナー/イラストレーターとして成功を収めた彼は、1960年頃からアーティスト活動を開始しました。おりしもアメリカは大衆文化花盛りの時代です。ウォーホルは大量生産や大量消費される商品やタレントなどのイメージを作品として制作し、ポップ・アートの旗手として頭角を表していきます。
 ここで紹介する「マリリン・モンロー(マリリン)」や「キャンベル・スープⅠ:チキン・ヌードル」は彼の代表作と言われる作品です。スクリーンプリント(シルクスクリーン)の技法を用いて量産されたこれらの作品は、世界中のさまざまな美術館に所蔵されており、大量消費者社会におけるイメージの反復を象徴的に表現しています。マリリン・モンローの作品は、彼女の死に触発されて制作されたと言われており、版が同じで、色の違うバージョンが多く存在します。また、キャンベル・スープをモチーフとして選んだきっかけは、自分が毎日食べるものだからとのことです。この展覧会にはこの二点と同様に、イメージの反復を用いた作品が数多く展示されています。そこからはウォーホルの一貫したテーマが感じ取れるでしょう。

②「キャンベル・スープⅠ:チキン・ヌードル」

②「キャンベル・スープⅠ:チキン・ヌードル」 紙にスクリーンプリント/88.9×58.7 cm/1968アンディ・ウォーホル美術館蔵
© 2014 The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. / Artists Rights Society (ARS), New York

 ウォーホルはニューヨークの東47丁目231番地にあったスタジオ(通称ファクトリー)で作品制作を行っていました。そこは当時のニューヨークアンダーグラウンド・カルチャーのサロンでもあり、ミュージシャンやモデル、アーティストなど、さまざまな人間が出入りしていたことが知られています。そのファクトリーの内装の一部を美術館の中に再現しているのも、今回の展示の特徴です。また、ウォーホルは坂本龍一のポートレイトなど、日本人をモチーフとした作品をいくつか手掛けています。そういった作品から当時の文化的な交流を感じ取ることができるのも、この展覧会の魅力の一つと言えるでしょう。

※今回紹介する作品は厳密には教科書掲載作品と同じものではありませんが、シルクスクリーンで大量生産された同じシリーズの作品です。

(編集部)

 

<展覧会情報>

  • 森美術館10周年記念展 アンディ・ウォーホル展:永遠の15分
  • 2014年2月1日(土)~5月6日(火)

展覧会概要

  • 初期から晩年までのウォーホルの作品と資料を包括的に紹介する、日本では過去最大級の回顧展です。作品と資料をあわせて約700点を展示、作家の主要シリーズをほぼ網羅しつつ、日本初公開の作品も多数展示しています。

森美術館ico_link

  • 所在地 東京都港区六本木6−10−1 六本木ヒルズ森タワー 53F
  • TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 休館日 会期中は無休

<次回展覧会予定>

  • 「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」
  • 2014年5月31日(土)~8月31日(日)

その他、詳細は森美術館ico_linkでご覧ください。