多面的・多角的に考える授業「よわむし太郎」(第4学年)

1.はじめに

 平成30年度から完全実施となる「特別の教科 道徳」に向けて、授業方法や評価についてさまざまな取り組みが行われている。私は週1回の道徳の授業を子どもたちと共に考え、つくり上げていくことを大切にしたい。そして年間35時間の授業を確実に行っていきたい。

2.実践紹介

(1)主題名 「自分が正しいと思うこと」  A[善悪の判断、自律、自由と責任]

(2)教材名 「よわむし太郎」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)主題設定の理由

A ねらいとする道徳的価値
 私たちの周りには生き方についてさまざまな選択肢があり、常に自分の判断のもとに問題解決を図りながら行為を選択して生きている。そして、その判断基準は、今までの人生経験や置かれている環境、周囲の人とのかかわりなどによって培われたものである。
 今、私たちが置かれている社会で主体的に生きていく上では、よいこと悪いこととの区別が的確にできるようにすることは重要である。また、自分が正しいと思うことを自らの力で判断し行動に移すことは、人としてもとても大切なことである。
 しかし、そのような中でも、人は周りの状況やその時の自分の思いによって正しいと思うことを行動に移すことができなかったり、見失ったりすることもある。そのようなときほど、人に左右されることなく、自らの判断を信じ、それを行動に移す強い意思が必要である。
 本授業では、中学年という発達段階において、自分が正しいと思うことを行動に移すことの大切さや、自らを信じることのよさについて考えさせたい。そして、どのような状況におかれてもその思いを貫き通す強さにも気付かせたい。

B 児童の実態
 学校や学級という多くのかかわり中で、児童は「正しいこと」「正しくないこと」について、日々実感している。そして、“正しい行動をすることで、自分もみんなも気持ちよく生活することができる” “正しくないことをすると、自分だけでなくみんなが困り、悲しい気持ちになる”ということも、生活経験から学んでいる児童も多い。
 また、事前に、「自分が正しいと思ったことは、自信をもって行うことができるか」というアンケートを実施した。「できる」と答えた児童が19人/27人中、「できない」と答えた児童は8人/27だった(※座席表指導案参照)。正しいことをしようとする気持ちが全体的に強いと考える。しかし、実際の生活では、「できない」と答えた児童と同じように行動に移すことの難しさも感じているはずである。周りに流されてしまったり、自分の弱さに負けてしまったり、また、そのときの状況や相手によって気持ちや行動が変わってしまったりすることもある。
 本授業では、自分自身を見つめながら、自分が正しいと思うことを行動に移すことの大切さを改めて感じとらせたい。そして、自らの力を信じることや心の強さにも気付かせ、自信をもって行おうとする気持ちを育みたい。

C 教材について
 ある村に「よわむし太郎」とよばれる男がいた。ある日、この国の殿様が村へやってきた。狩好きな殿様は、子どもたちとよわむし太郎が大切に世話をしていた白い鳥を討とうとする。その時、太郎は殿様の前へ立ちはだかった。そして、大きな涙をこぼしながら鳥を助けるよう頼み、最後まで鳥を守った。
 子どもたちのため、自分のために、自らが正しいと思ったことを行動に移し、最後までその思いを貫き通した太郎。その姿から、相手がどのような立場の人であっても、自分を信じ、正しいと思うことを行動に移す気持ちの強さ、そしてその大切さを感じることができる。
 本授業では、太郎の気持ちを考えることを通して、どのような状況においても、自分が正しいと思うことを自らの力を信じて行っていこうとする気持ちを育みたい。

(4)授業の工夫

○児童の主体的な学びに近づけるために

「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」の2-(3)

(3)児童が自らの道徳性を養う中で、自らを振り返って成長を実感したり、これからの課題や目標を見付けたりすることができるよう工夫すること。その際、道徳性を養うことの意義について、児童自らが考え、理解し、主体的に学習に取り組むことができるようにすること。

(小学校学習指導要領 第3章 特別の教科 道徳より)※下線筆者

≪主体的に取り組むために大切なこと≫
学習の始めに児童自らが学びたいという課題意識や課題追及への意欲を高め、学習の見通しなどをもたせること。
一定の道徳的価値に関わる物事を多面的・多角的に捉えることができるようにすること。
理解した道徳的価値から自分の生活を振り返り、自らの成長を実感したり、これからの課題や目標を見つけたりすること。
そのために、一人一人が意欲的で主体的に取り組むことができる表現活動や話合い活動を仕組んだり、学んだ道徳的価値に照らして、自らの生活や考えを見つめるための具体的な振り返り活動を工夫したりすることが必要である。

(小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編より)

 授業では、主体的に学習に取り組むことができるよう、以下の手立てを考えた。
◆児童の課題意識や課題追及への意欲を高めるために、「考えてみたい」「気になる」「他の友達はどのように思うのだろう」という気持ちを大切にしたい。そのために、児童自らが感じる「問い」と教師が本時のねらいとする道徳的価値とを関係づけながら、教師が本時の課題を設定する。
◆物事を多面的・多角的に捉えることができるよう、話合い活動の時間を確保する。
 話し合うことは、自分自身の考えをより明確にしたり、相手の考えを深めたりすることができる。その話合いを深まりのあるものにするために、本学級では「つなぎ言葉」を活用している。

【児童の発言例】
「私は、~だと思います」「○○さんの考えに付け足しです」「○○さんの考えと違って」「○○さんが言いたかったことは~だと思います」「○○さんと似ていて」 他

 教師も児童の発問をさらに深めるために、切り返しの発問も意識している。

【教師の発問例】
「もう少しくわしく教えて」「どうしてそのように思ったの」「この考えについて、みなさんはどう思いますか」「自分の思いと似ているなと思うところはありますか」「これらの思いで共通しているものは」 他

◆児童自らの生活を振り返ることができるよう、「心のノート」を活用する。
 「心のノート」は、主に道徳の授業で自分の生活や考えを振り返るときに活用している。児童の思いや考えを書き残すことができるとともに、いつでも今までの自分を振り返ることができる。継続的に取り組むことで、児童の成長も感じることができる。

(5)評価

「道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己(人間として)の生き方についての考えを深める」という学習活動における児童生徒の具体的な取組状況を、一定のまとまりの中で、児童生徒が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を適切に設定しつつ、学習活動全体を通して見取ること。

(小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編より)

≪大切なこと≫
◇他者との考え方や議論に触れ、自律的に思考する中で、一面的な見方から児童がより多面的・多角的な見方へと発展しているか。
◇多面的・多角的な思考の中で、道徳的諸価値の理解と自分自身との関わりの中で深めているか。

(小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編より)

 本時では、道徳的価値の理解と自分自身との関わりの中では、「心のノート」を活用し、今までの自分やこれからの自分を見つめさせる。また、児童の「自己評価」を取り入れる。本時の授業への取り組みや、自分の考えを伝えることができたか、また、友達の考えから自己の見方が広がったかなどを評価する。
◆評価の方法として
・発言(話し合い)・心のノート・自己評価を活用して児童の考えについて評価する。
 「自己評価」については、5つの項目の中から、特に今日の授業でがんばったことや学んだことを2つ選ばせる。

□ 自分の考えをもち、進んで伝えることができた。
□ 友達の考えを聞いて、「そういう考えがあるんだ」「なるほどな」など、考えることができた。
□ 友達の考えを聞いて、新たな考えをもつことができた。(自分の考えが広がった)
□ 登場人物の気持ちを考えることができた。
□ 今日、学習したことについて「自分はどうかな」「自分も、似たようなことがあったかな」と、自分を振り返ることができた。

 これらを継続的に行い「個々の内容項目ごとではなく、大くくりなまとまりを踏まえた評価」「成長を励ます個人内評価」につなげていきたい。

「よわむし太郎」 教材分析表

A 場面の概要・keyword

B よわむし太郎の内面

C 発問

①1行目~3行目
<太郎の様子>
背はとても高く、力も人一倍あるのに、子どもたちからどんなにばかにされても笑っている。

②3行目~13行目
子どもたちがどんないたずらをしても、太郎はにこにこと笑っている。

・やっぱり子どもはかわいい。
・子どものことだから、いろんなことをやるもんだ。
・次はどんなことをしてくるのだろう。

③14行目~21行目
白い大きな鳥を、子どもたちと太郎は大切にしている。

・子どものためにも、この鳥を大切にしよう。
・どんどん餌をたべて、大きくなってほしい。

基本発問
子どもたちの大切な鳥を、太郎はどのような思いで世話をしていましたか。

④22行目~29行目
狩り好きのとの様が現われる。

【との様の内面】
・なぜ、なにも捕まえられないのか。

⑤30行目~38行目
との様が白い大きな鳥に向かって弓をかまえたとき、太郎は「うってはだめだ」と立ちはだかった。

・何をするんだ。・やめてくれ。
・どんなんことがあっても、うってはいけない。
・お願だ。わかってくれ。
・この鳥は、子どもたちにとっても自分にとっても大切な鳥なんだ。

⑥39行目~42行目
との様は大声をあげたが、太郎は動かなかった。

・なんとしてでも、この鳥を守るんだ。
・との様に何を言われても、この場を動くものか。
・何を言われても構わない。

⑦43行目~45行目
「助けてやってください」と、太郎は大きな涙をこぼしとの様にたのんだ。

・子どもたちが世話をしている鳥を、どうかうたないでくれ。
・子どもたちの思いをわかってくれ。大切な鳥なんだ。
・うたせてたまるか。
・なんとしてでも、守り抜こう。
・もしかしたら、この場で鳥がうたれてしまうかもしれない……そんなことがあってなるものか。
・自分もうたれてしまうかもしれないがそれでもいい。

中心発問
「どうか助けてやってください」と目から大きな涙をこぼしてとの様の前に立っていたとき、太郎はどのような思いだったでしょう。

⑧46行目~47行目
との様は、しばらくすると弓を下にむけた。

・最後まで、あきらめないぞ。
・との様にこの思いが伝わったのだろうか。

⑨48行目~50行目
との様が、城に向かって帰っていった。

・鳥を守ることができて、本当によかった。
・これで、安心だ。

⑩51行目~54行目
子どもたちが、太郎の周りに走りよってきた。

・鳥を守ることができて、よかった。
・子どもたちのうれしそうで、よかった。
・自分もうれしいよ。
【子どもたち】
・太郎はすごい。強い人だな。
・鳥を守ってくれてありがとう。
・もう「よわむし太郎」なんて言わない。今までごめんね。

基本発問
太郎の姿を見ていた子どもたちは、どのようなことを思ったでしょう。

⑪55行目~56行目
それから後は、「よわむし太郎」という名前は、この村から消えた。

(6)学習指導過程

A 本時のねらい
 自分が正しいと思ったことは、自信をもって行おうとする道徳的心情を育てる。

B 本時の展開

学習活動

・指導上の留意点 ◇評価


1 「自分が正しいと思うこと」について話し合う。
○自分が正しいと思うことを相手に伝えたり、行動に移したりできますか。
・いけないなと思うこといけないと伝えることができる。
・気持ちはあるけど、簡単にはできない。

・日常の生活で、正しいことだと分かっていてもなかなか行動に移せなかったり、勇気をもって伝えることができたりしたことを想起させる。


2 教材「よわむし太郎」を読んで、話し合う。

①子どもたちの大切な鳥を、太郎はどのような思いで世話をしていましたか。
・児童のためにも、この鳥を大切にしよう。
・どんどん餌をたべて、大きくなってほしい。

・「子どもたちのために」と、子どもたちを大切に思う太郎の気持ちを押さえる。

②「どうか助けてやってください」と目から大きな涙をこぼしてとの様の前に立っていたとき、太郎はどのような思いだったでしょう。
・子どもたちが世話をしている鳥を、どうかうたないでくれ。
・子どもたちの思いをわかってくれ。大切な鳥なんだ。
・うたせてたまるか。
・なんとしてでも、守り抜こう。
・もしかしたら、この場で鳥がうたれてしまうかもしれない……そんなことがあってなるものか。
・自分もうたれてしまうかもしれないがそれでもいい。

・相手が殿様であっても、自分が正しいと判断して行動に移した太郎の思いを考えさせる。
・さらに「太郎の中で迷いはなかったのか」「簡単にできることではないのでは」と問い、自分を信じる気持ちや正しいと思ったことは行動に移そうとする思いの強さについて考えさせる。
◇殿様にたのむ太郎の気持ちを考えることができたか。
(発言・話し合いより)

③太郎の姿を見ていた子どもたちは、どのようなことを思ったでしょう。
・太郎はすごい。強い人だな。
・鳥を守ってくれてありがとう。
・もう「よわむし太郎」なんて言わない。今までごめんね。

・今まで「よわむし」と言っていた子どもたちが、太郎の行動から感じたことや学んだことを考えさせる。

3 今までの自分を見つめる。
○自分が正しいと思うことを、行動に移したことはありますか。そのとき、どのような思いでしたか。

・「心のノート」を活用する。
◇自分が正しいと思い行動に移すことについて今までの自分を見つめ直すことができたか。(ノートより)


4 教師の説話を聞く。

・担任の中学生のときに、自分が正しいと思って行動に移したときの話をする。

3.授業記録

【導入(学習問題作り)】

T 自分が正しいと思うことを相手に伝えたり、行動に移したりできますか。
C 自分で考えはあっても、なかなか言えないなあ。
C 言えるときと言えないときがある。
→「言えるときと言えないときがある」という児童の発言から、相手が「友達だったとき」「自分より年が上だったとき」と条件を設定し、その場合の気持ちを問いかけた。また、伝えようとする気持ちを共有するために、視覚的にもわかる「心情円グラフ」を全体で活用した。
T 友達が何かいけないことをしていたときに、自分だったら教えるよという気持ちはありますか。
C 3分の2くらい。
C 4分の3くらい……。
C 友達だったらできるかも。
T では、相手が自分より年上、大人だったらどう?
C もっと青(できない)が多い。
C やっぱり心の中ではだめだよって思っているけど、それをさすがに言えない。
たとえば、ベンチを独り占めしている人に心の中では言えるけど、実際は言えない。
C いやできる!
T 人によると思うけど……今友達だったらこれくらいできるって言っていたけど(円グラフ確認)、知らない人や大人だったら(円グラフ確認)これくらいかな。
C 青の方が多いね。
→円グラフを活用して全体で確認をし、友達だったら言えるが、大人だったらなかなか言えないことを確かめた。そして、本時の授業への問題意識をもたせるために、次の発問をした。
T 「正しいことを伝える」ということは、大切なことではないですか?
→円グラフで、「正しいことは相手によってそう簡単に言うことはできない」という児童の思いと、「正しいことを伝える大切さ」という道徳的価値への意識で児童は迷い始めた。
C 年上の人たちに言えば直ると思うけど、言おうとしても言い返されちゃうかもしれない。
C 大人っていう考えだとちょっと違うのですけど、知らない人だとちょっと違う気がする。
T 何が違うの?
C できるっていうところが違う。知らない人にはなかなか言えない。
C 友達とか家族、知っている人なら気軽に話せるけど、知らない人や初めての人はそんなに話せないから、いくら正しくても言えない。
→児童の「伝えることは大切だとわかっているが、なかなか言えないときもある」という思いに共感しながら、本時の課題を提示した。
課題「自分が正しいと思うことを伝えるためには、何が大切なのか。」
教材範読後、児童の思いを問いかけた。
T どんなことを感じたり考えたりしましたか。
C 相手が殿様なのに、太郎はすごい勇気がある。
C 殿様なのに、しかも「お前もいっしょに射ってしまうぞ」と言われている中で、動かずに立ち向かえる太郎がすごい。
C 子どもたちにいたずらされていて普通に強い人だったら言い返すのに、太郎は笑って相手をしていたから本当に強い人、すごい人なんだなって。
C どうしてよわむし太郎は子どもにいたずらされていたのにニコニコしていたんだろう。
C なんで殿様の前でも立ちはだかることができたのかな。
→児童から教材に対しての気になること「殿様に言われても立ちはだかった太郎」「子どもたちからいたずらされても怒ることをせず、ニコニコしていた太郎」それはどのような思いからか、なぜそのようなことができたのかという思いがあった。
これらは、教師が本時の授業でねらうところでもあり、中心発問として「殿様に言われてまで立ちはだかった太郎の思いとは」について十分に触れることにした。

【展開】

T 太郎は、子どもから言われてもニコニコしていたよね。いやじゃなかったのかな。
C 太郎は子どものことが好きだから。子どもに言われても我慢ができた。強い人ほどやさしい。
C 子どものことだから仕方がないと思ってまったく怒らなかった。よわむし太郎は子どもが好き。子どもが悲しむ姿は見たくなかった。
T その太郎は、子どもたちと一緒に白い鳥を世話していたね。どのような気持ちで世話をしていたのだろう。
C 太郎は、子どもが好きだし、みんなと一緒に育てようと思っていた。
C 子どもが好きで、鳥がいれば子どもが喜んでくれる。
T 子どもが好きだからという気持ちが強いのかな。
→太郎の「子どもが好き」という思いを押さえ、本時の中心発問を問いかけた。
T 太郎は、白い鳥を大切に世話していました。そのような中で殿様が来て、大切な白い鳥を撃ってしまおうとします。そのとき太郎は殿様に向かって、体全身で鳥を守りました。そして、「どうか助けてやってください」と言って大きな涙をこぼして殿様に頼みました。このとき、太郎はどんな思いで殿様の前に立ちはだかったのでしょう。
~ペアトーク~
C 動物の命をなくすのもいや。子どもたちの笑顔をなくすのものいや。だから守らないと。
C 太郎は、撃たれるかもしれない恐怖はあったかもしれないけど、子どもが好きという気持ちの方が大きかった。
C 鳥が撃たれるなら、自分の命は後でもいいと、一瞬そのときは思った。
T 一瞬って?
C そのあとに、撃たれてしまったら終わりだけれど、その時はできる限りやろうと思った。
C 自分が死んだら鳥も死ぬ。でも、自分の命も大切だけど鳥の命も大切。
T 自分の命が撃たれたとしても守りたいくらい、鳥が大切ということかな。
C 子どもたちの悲しい顔が見たくない。もし撃たれたら、子どもたちもどうしてあんなことをしたんだろうっていう気持ちになって悲しむ。太郎も、悲しい気持ちになる。
→子どもたちは、「太郎は子どもたちが好きだから」「動物を守りたい」という思いからこのような行動に至ったという考え多かった。
そこで、相手が「殿様」であることをもう一度おさえた。これは、導入で児童から発言があったように“たとえ立場の異なる相手でも、正しいことを伝えることができるか”という視点と重なる。また、ねらいとする価値にも迫ることができる。
T みんなは、動物の命、子どもたちの思いを守りたいという思いでこのような行動をとったといっているけれど、相手は殿様だよ。こういうこと簡単にできますか。
C 言えない。絶対、言えない。
C 太郎もさすがに、全部が全部そういう気持ちではなく、怖さはあったと思う。でも、本当にいやなことをされたら、本当に怖さを忘れることってあると思う。ぼくもそういうことある。
C 子どもたちを笑顔にできるんだったら、何を言われても、何をされても、なんとか言おうという気持ちがあったと思う。子どもたちのため。鳥のために。
C 白い鳥の命は、子どもたちの笑顔とつながる。その笑顔を守りたい。
C 相手が殿様と忘れるくらい、そのときは鳥や子どもたちのことを考えていたのだと思う。
→児童は、たとえ相手が殿様であっても行動に移すことができた太郎の思いの強さを考えていた。また、怖さを忘れるくらい強く鳥を守ろうという気持ちであったことも児童は共感していた。
次に、その姿を見た村の子どもたちの思いを問いかけた。
T それを見ていた、子どもたちはどんな思いだったでしょう。
C 太郎は勇気がある。だから、よわむし太郎ではない。
C よわむし太郎といってごめんね。
C 本当は勇気があってやさしい。
C もうよわむし太郎とは言わない。強い太郎だ。
C 殿様にも言えるなんて、ぼくたちにはできないな。
C 勇気があってすごい。
→児童は、太郎の「勇気」「感謝」「優しさ」について、自分たちの思いを村の子どもたちの思いに重ねて伝えていた。特に、「勇気」は本時のキーワードでもあった。これは、本時の課題でもある
「自分が正しいと思うことを伝えるためには、何が大切なのか。」
についての「大切なこと」につながると考える。
その後、太郎のように強い気持ちで正しいと思ったことを行動に移したことがあるかどうかを問い、自己を見つめさせた。

~児童の心のノートより~
○たまに、歩いていたりすると、ながらスマホをしていたり、音楽を聴きながら歩いている人を見る。いけないとわかってしてしまう。なので、太郎はやっぱりすごいと思う。
○わたしは太郎のようにえらい人や年上の人に向かって注意できたことはない。理由は、年上の人は自分よりも力が強いから。でも、クラスではだいたい言えることは言っている。そこをのばして太郎のように関係なく正しいことができるようにしたい。

【終末】
(教師が中学生だったころ、「いけないことはいけない」と思って行動に移した

4.考察

 児童は「自分が正しいと思ったことは、自信をもって行う」ということについて、自分とのかかわりで多様な視点から考えていた。
 本教材の太郎が考える「正しいこと」とは、「相手が誰であろうと、自分が守るべき大切なものを守り通すこと」であると考える。ここでは、相手が殿様であろうと誰であろうと、子どもたちが大切にしていた鳥を守り通すことである。自分の命までも討たれるかもしれない中、そう簡単にできることではないが、殿様の前に立ちはだかった太郎は、それだけ「勇気」「優しさ」そして「強さ」があることを全体で話し合うことができた。
 また、教材を通して本時の課題である「自分が正しいと思うことを伝えるためには、何が大切なのか」を自分とのかかわりで考えることができた。児童は太郎の姿から「勇気」「優しさ」「強さ」の外にも「守るべきものがある」ということも伝えるための支えとなることに気付くことができた。そして、「自分もそうでありたい」というこれからの思いをもつ児童もおり、それぞれの納得解を感じることができた授業だった。
 今後も引き続き児童の思いを大切にしながら、児童が物事を多面的・多角的に考え、道徳的諸価値の理解と自分自身との関わりの中で深めることができるよう授業を工夫していきたい。

◆座席表指導案

心を揺さぶる教材との出会い ~教材「いのりの手」の実践を通して~(第4学年)

1.教材との出会いを大切に

 児童が道徳の時間を楽しみ、友達と語り合い、よりよい学びにつなげるためには、心を揺さぶる教材との出会いは不可欠です。児童と教材との出会いを大切にした工夫を報告します。

①教材提示はドラマチックに!
 導入では児童の作品へのイメージを膨らませるために、「祈る手」の絵とハンマーを用意しました。「祈る手」の絵は、額縁に入れ、イーゼルに飾り、布をかぶせておきました。授業前から児童の関心を引きつけておくためです。また、ハンマーは事前に児童に握らせ、重さを実感させました。その上で、教材提示の途中に指導者が振り上げる動作を行えば、ハンスの苦労を想像する助けになると考えました。
 教材提示は、プレゼンテーションソフトとプロジェクターを使って、スクリーンに場面絵を映します。そして、語り口調は穏やかに、児童の目を見ながら、ゆっくり教材を読み聞かせます。時には、指導者が作品の動作化をしながら教材を語ります。物語のクライマックスには、BGMを使い、雰囲気を盛り上げました。

②図工の先生にも協力を!!
 教材に出てくる「祈る手」を含めた作品やアルブレヒト・デューラーの説明を図工専科の先生にしてもらいました。専科の先生が作品や人物の紹介を行うことで、児童にデューラーが世界的に有名な画家であることを深く伝えることができると考えたからです。そうすることで、教材への関心や理解が深まり、児童が教材の世界に浸りやすくなると考えました。

2.実践報告

(1)主題名 「大切な友達」  B[信頼、友情]

(2)教材名 「いのりの手」(日本文教出版)

(3)ねらい 友達と互いに理解し、信頼し、助け合う心を育てる。
 ハンスの友情に応えようとするデューラーの気持ちを、自分との関わりで考えることで、友達のかけがえのなさに気付き、その存在を大切にしていこうとする道徳的心情を育てる。

(4)学習指導過程

学習活動
○主な発問 ・予想される児童の反応

◇指導上の留意点 ☆評価


1 教材への導入を図る。
○この絵の手は、どんな人の手だろう。
・祈っている手
・何かをつかもうとしている手
・何かをお願いしている手
・外国人の手

◇「祈る手」の絵画を提示する。
◇図工専科の先生に、「祈る手」「アルブレヒト・デューラー」「代表作」についての専門的な説明を受けることで、教材への関心を高める。


2 教材「いのりの手」を読み、話し合う。
○「自分でよいと思うまで、しっかり勉強したまえ。」という励ましの手紙とお金をもらった時、デューラーはどんなことを考えたのでしょう。
・いつもぼくのためにありがとう。(日頃の感謝)
・なんでぼくのためにこんなにしてくれるのだろう。(疑問)
・ハンス、なんていい人なんだ。(ハンスへの賞讃)
・ハンスの手紙に勇気をもらった。もっと頑張ろう。(鼓舞する気持ち)
・ハンスは本当は勉強したいだろうな。申し訳ない。
・なかなか代われない。ごめん。(謝罪)
・だいじょうぶかな。(心配)

◇教材提示前に登場人物を簡単に紹介し、デューラーの気持ちになって話を聞くように伝える。
◇教材提示は、ICT機器を使って指導者の語りによって行う。
◇初発問は、児童による相互指名で行う。
◇勉強し始めてから、長い年月がたったという事実を押さえた上で発問を行う。
◇ハンスへの感謝の気持ちがあることを確認する。また、この時のデューラーのもっと勉強していたいという気持ちも同時に気付かせる。

○ハンスの手をにぎりしめたまま、おいおいと泣きだしたデューラーはどんな気持ちだったのでしょう。
・こんな手になってしまったのか。ぼくのせいだ。(事実を知ったことへの驚き)
・ぼくは、もっと早く帰ってくるべきだった。君の夢をうばってしまった。何てことをしてしまったのだ。(後悔・反省)
・許してくれ、ハンス。(謝罪)
・こんな手になるまで、ぼくのために働いてくれていたのか。この手のおかげで、ぼくの成功があったのか。ありがとう。(感謝)

◇第2発問に入る前に、「ごつごつした手」ではどうして絵筆がもてないのか想像させる。
◇ハンスがデューラーのために夢をあきらめた事実を押さえる。
◇第2発問は教師が意図的に指名する。
◇デューラーの罪悪感による自分の行いへの後悔の念や、謝罪の気持ちがあったことを想像させる。

◎デューラーはどんな気持ちを込めて、ハンスの手を描いたのでしょう。
・ぼくを助けてくれたこの手を忘れないように絵を描こう。(友情)
・この手のおかげで、ぼくの成功があった。(感謝)
・こんな手になってしまったのか。ぼくのせいだ。ごめんなさい。(謝罪)
・ぼくは、もっと早く帰ってくるべきだった。(反省)
・君の夢を奪ってしまった。(後悔)
・絵が描けなくなったハンスの代わりに絵を描いていこう。(決意)

◇謝罪の考えに対して、「ハンスは怒っているのか。」と問い返すことで、心が満たされているハンスの気持ちを想像させる。
◇児童の発言に、「デューラーがハンスの手をなぜ題材としたのか。」と補助発問することで、デューラーのハンスへの思いをより考えさせることができる。
☆ハンスの友情に対し、少しでも自分ができることを誠意を込めて行おうとするデューラーの気持ちを自分との関わりで考えることができたか。(発言)


3 自分の友達について振り返る。
○友達の事を思い出してください。「友達っていいな。」って思ったことは、どんなことでしたか。
・わたしは、その子の笑顔が好きです。わたしが困っている時や悲しんでいる時に、その笑顔で励ましてくれるからです。これから友達が困っている時は、わたしも笑顔で元気にさせたいです。
・音楽クラブで友達になった子は、楽器が壊れたら直してくれたり、楽器洗いの時はどこに何を塗ったらいいのか教えてくれたりして、嬉しかったです。ずっと友達でいたいです。そして、その友達に教えてもらったことを、これから入ってくる3年生に教えてあげられたらいいと思います。

◇道徳ノートを活用し、学習の積み重ねを大切にする。
◇相手の何かしらの行為や気持ちに対して、何か返してあげたいという振り返りをしている児童を指名し、発表させる。
☆友達の事を振り返り、その大切さについて考えることができたか。(道徳ノート)


4 教師の説話を聞く。

(5)本時の評価
○ハンスの友情に応えようとするデューラーの気持ちを考えることができたか。(中心発問)
○友達のかけがえのなさに気付き、その存在を大切にしていこうとする心情をもつことができたか。(道徳ノート等)

(6)板書

(7)授業記録 ※抜粋

【導入】

T (白い布を取りながら)みなさん、この絵を見てどう思いますか。
数名の児童 「拍手」「高級そう」「うまい」「有名人の手」「手が大きい」「いただきます」「おそうしきの手」
T 実はこの学校にはこの絵に詳しい先生がいます。図工の先生にこの絵の説明していただきます。
~図工専科による説明~
T 今日は、この「いのる手」を書いたデューラーにまつわるお話です。デューラーとハンスという友達が出てきます。デューラーの気持ちをよく考えながら、お話を聞きましょう。

【教材提示】(部屋を暗くし、提示する。)

【展開前段】

T (ストーリーの振り返りをして、場面絵を示しながら)
お金と一緒に手紙をもらったデューラーはどんな気持ちだったのだったのでしょう。
児童の
主な反応
早く終わらせて、ハンスにかわらなきゃ。ハンスありがとう。ハンスは何て優しいんだ。自分は絵、ハンスはつらい仕事、なのにこんな手紙を。ありがたい。ハンスは大丈夫かな。ハンスが先に勉強すればよかったのに。勉強しなきゃ。ハンスが頑張ってくれているから、自分も頑張ろう。
T やっと終わってハンスと出会ったデューラー。抱きしめあったのかもしれないね。しかしその時、デューラーはおいおいと泣きだした。どうしてだっけ。
児童 ごつごつとしていたから。
T うん。どんな手なんだろう……。マメがいっぱいできているのかな。こわばって、うまく開かなかったり、伸ばせなかったりしたのかな。絵筆が握れないってどういうこと。
児童 上手く動かない。しっかり筆がもてない。
T
うん。その手をにぎったデューラーは、どんな気持ちだったのだろう。
児童の
主な反応
ハンスを先に勉強させておけば、こんなことにはならなかった。早く絵を終わらせればよかった。
ごめんね、ハンス。なんで早く帰らなかったのか。こんなになるまで、自分は待たせてしまったのか。
T ハンスの手は急にこんな手になったのかな。ハンスの夢はもともと何だったのかな。
児童 絵かき。
T 「ハンス、君の手をぼくにかかせてくれ。」というデューラーは言った。「心をこめて」描いたんだよね。
どんな心をこめて描いたのかな。
(心をこめて と板書する。)
児童の
主な反応
ハンスの筆の持てない手の代わりに。がんばって働いてくれた、ありがとう。
自分が有名になるまでがんばり続けてくれて、ありがたい。ハンスの手を忘れたくない。
自分のために頑張ってくれた手を残したい。
T ふつうは顔を描くんじゃないかな。なんで手を描いたのかな。
児童 今までこんなになるまで頑張ってくれた。自分を助けてくれた手だから。
T ハンスは仕事のために頑張っていたのかな。
児童 デューラー!!
T ハンスはデューラーにとってどんな存在だったのかな。
児童 大切。
T みなさんにも、大切な友達はいますか。その子の事をすこし考えてみて下さい。どんな所が好きですか。その子とどんな風にこれから付き合っていきたいですか。ワークシートに書きましょう。
C1 わたしは友達の笑顔が好きです。わたしが困っている時や悲しんでいる時にその笑顔ではげましてくれるからです。これから友達が困っている時は、わたしも笑顔で元気にさせたいです。
C2 音楽クラブで友達になった子は、楽器がこわれたら直してくれたり、楽器洗いの時はどこに何を塗ったらいいか教えてくれたりして、うれしかったです。ずっと友達でいたいです。そして、その友達に教えてもらったことを、後から入ってくる3年生に教えてあげられたらいいと思います。
C3 いつも笑顔でニコニコして優しいところ。放課後や中休み、昼休みに一緒に遊んで今よりももっと仲よくなりたいです。中学校に行っても仲良くしたいです。

3.考察

 教材提示に際して、事前に何度も資料を読み、暗唱できるほどになりました。そのため、児童の顔をじっくり見ながら余裕をもって教材提示を行うことができました。どの子の顔も真剣に画面を見つめていました。多くの児童が、授業中の発言に意欲的になりました。
 4年生の終了時に、「道徳の時間で心に残った教材は?」と聞くと、多くの児童から、「いのりの手」という声があがりました。

「皇国」日本という幻想

「皇国」という言説

 札幌農学校に入学する新渡戸稲造は、1877年(明治10)8月17日に養父太田時敏宛書簡に蝦夷地といわれた新開地北海道に行く決意を詠んでいます。

たらつねにはやうわかれて遠国へ 行く不幸も只た皇国之為免
北国もいとわず開らく稲の花 国益を恩ひば軽ろく我が命

 「皇国之為免」なる想いこそは、戊辰敗残の南部藩士末裔として、新国家に場をしめるための「遠国」行きこそが、「国益を恩ひば軽ろく我が命」なる決意をささえたものです。まさに「皇国」日本なる意識こそは、新渡戸のみならず、欧米列強の圧力下に生きようとした青年の心をささえたものにほかなりません。
 日本列島の住民は、欧米列強の風圧にさらされていくなかで、己が邦日本とは何かを想起したとき、天皇の国「皇国」であることに国家の存在根拠を見出し、ここに列強の圧力に対峙しうる場を見出したのです。「皇国」日本なる観念こそは、圧倒的な力で襲来してくる欧米文明に対峙し、「日本人」たる「我」を確認し、その存在を確かにせしむる言説をささえました。それだけに「皇国」という言説は、天皇が政治的主体となる制度的枠組-「天皇制」が整備されるよりはやく、独り歩きをはじめていたのです。
 戊辰内乱に勝利した新政府は、福井藩に招聘されたE・グリフィスが日本滞在中に見聞した世界を「ミカド主義」として提示した『ミカド―日本の内なる力』(亀井俊介訳/1995年)に読みとることができます。

新政府には金がなく、日本には実質的統一がなく、普通の日本人には真の愛国心がなかった。どこの国に生まれたかときかれれば、日本人の素直な返事は、その事情に応じて、「越前」とか「土佐」とか「薩摩」とかであった。個人的には、国家の意識は当時非常に弱かったのである。このようなばらばらの状態では、いつ内乱が起るかわからなかった。

 まさに日本人なる存在は、人心を結合する器とてもなく、「国家」を国家とする存在の場を見出せず、彷徨していたのです。この危機意識こそは「皇国」という言葉に託して己の場を確かめさせたものにほかなりません。

政府ありて国民なし

 福澤諭吉は、このような日本の在り方をして、「日本には政府ありて国民(ネーション)なし」と指摘しています。この「国民」造型という課題は、万世一系の皇統という物語にもとづく「皇国」であることを過剰なまでに強調せしめたものにほかなりません。「皇国」なる観念こそは、民族の一体性を可能とする国民国家の器となしうるイデオロギーとみなされ、「国体」の原器だと位置づけられたのです。
 この国体は、「一種族の人民相集て憂楽を共にし、他国人に対して自他の別を作り、自から互に視ること他国人を視るよりも厚くし、自から互に力を尽すこと他国人の為にするよりも勉め、一政府の下に居て自から支配し他の政府の制御を受るを好まず、禍福共に自から担当して独立する者を云ふなり」(『文明論之概略』)と福沢が説きましたように、西洋のnationalityに相当します。まさに日本のnationalityは、「皇国」なるイデオロギーを信仰にまで高めることで、はじめてを確立しえたのです。このことは、危機の時代において、過剰なまでに国体信仰を宣揚する言説を横溢せしめることとなります。それだけに日本におけるNation-stateは、民族的一体感を「皇国」の民であるという唯一性を強調することで増幅しているように、その意味で「民族国民国家」ともいうべき相貌が強く刻印された存在だといえましょう。
 いわば新政府は、この「国体」「皇国」が提示する世界をして、記紀神話が説く「万世一系」につらなる天皇の物語を見出し、西洋の君主制度を選択的に導入していくことで制度的枠組み封じこみ、日本型の立憲君主制度としての「天皇制」の構築をめざしたのです。いわば「天皇」を根軸とした国家制度、「天皇制」は日本の「文明化」と一体となって生み出されたものにほかなりません。かくて天皇は、大日本帝国憲法と皇室典範という統治制度の枠組に封じ込められることで、政治的主体者となった己の場を確保しえたのです。

人心の結集―Nationalityの器とは

 天皇という存在を国家の根軸に位置つける制度設計は、西南戦争で西郷隆盛の軍団が壊滅したことを受け、板垣退助らの国会開設を大義にかかげる自由民権派を懐柔していくなかですすめられていきました。その主導者は、「維新三傑」といわれた西郷亡き後、木戸孝允が病没、大久保利通が暗殺されたことで、伊藤博文となっていきました。
 伊藤は、新生日本を欧米文明国を範とする立憲国家とすべく、日本に相応しい憲法制定をめざしました。そこで問われたのは、日本列島に暮らす人びとの心を一つにまとめる器とは何かということでした。日本に問われたのは、「グナイスト氏談話」(1885年、伏見宮貞愛親王が聞いた講義記録)が問いかけているように、

 人間自由ノ社会ヲ成サントスルニハ一ノ結付ヲ為スモノアルヲ要ス。即チ宗教ナル者アリテ人々互ニ相愛シ相保ツノ道ヲ教ヘ以テ人心ヲ一致結合スルモノナカル可カラザル所以ナリ。宗教ノ内自由ノ人民ニ其ノ善ク適当とすべきものを可成丈ケ保護シ、民心ヲ誘導シ、寺院ヲ起シ、神戒ヲ説教シ、深ク宗旨ヲ人心ニ入ラシムルニ非レバ、真ニ鞏固ナル国を成スコトヲ得ズ。兵ノ死ヲ顧ミズシテ国ノ為メニ身ヲ犠牲ニ供スルモ亦只此義ニ外ナラザルナリ。静ニ欧州ノ内富強ト称スル国ヲ見ル可シ。先ズ寺院ヲ興シ、宗教ヲ盛ニセザルハナシ。皆宗教ニ依テ国ヲ立ツルモノト知ル可し

と、日本の人心を結合せしむる精神の器を何に求めるかということでした。
 ここに伊藤博文は、憲法制定における課題につき、1888年6月18日の枢密院の憲法審議冒頭に問いかけました。憲法の制定は、「先ス我国ノ機軸ヲ求メ我国ノ機軸ハ何ナリヤト云フ事ヲ確定セサルヘカラス」となし、「機軸ナクシテ政治ヲ人民ノ妄議ニ任ス時ハ、政其統紀ヲ失ヒ、国家亦隨テ廃亡ス。苟モ国家ガ国家トシテ生存シ、人民統治セントセハ、宜ク深ク慮ツテ以テ統治ノ效用ヲ失ハサラン事ヲ期スヘキナリ」、と。この機軸は、欧州諸国が「宗教ナル者アリテ之ガ機軸ヲ為シ、深ク人心ニ浸潤シテ人心之ニ帰一」しているのに対し、日本では「宗教ナル者其力微弱ニシテ、一モ国家ノ機軸タルヘキモノナシ」と、佛教・神道が「宗教トシテ人心ヲ帰向セシムルノ力」がない現状を指摘し、「我国ニ在テ機軸トスヘキハ独リ皇室ニアルノミ。是ヲ以テ此憲法草案ニ於テハ専ラ意ヲ此点ニ用ヰ、君権ヲ尊重シテ成ル可ク之ヲ束縛セサランコトヲ勉メタリ」と、皇室こそが人心を結合せしめる国家の機軸に相応しい存在だと説き聞かせました。
 まさに伊藤は、師グナイストの言をまつまでもなく、Nationalityの器を皇室に求め、その存在を記紀神話がかたりかける物語で潤色することで「皇国」という神話を「国民の物語」として国民精神に埋めこむことが「国家」をして国家たらしめる方途だとみなしたのです。ここに「皇国」という言説は、統治の主体者と位置づけられた天皇をして、大日本帝国憲法と皇室典範という制度的枠組みにはめこむことで可能となった国家体制の根軸となる物語の器とみなされたのです。ここに生れた「天皇制」は、「皇国」という物語をして、時代に応じて多様に増幅されていくことで、国民の心を呪縛する制度的枠組みとして根づいていくこととなります。

 

参考文献

  • 大濱「「日本という国」の容を歴史として問い質す―日本人・日本国民たる我の場とは」 『北海学園大学人文論集』63号 2017年8月

わたしのおすすめ教材(5)「くもの糸」(第5学年)

1.学習指導案

(1)主題名 よく考えて生活する  A[善悪の判断、自律、自由と責任]

(2)教材名 「くもの糸」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)ねらい
 せっかくつかんだチャンスを生かすことなく、再び地獄に落ちたカンダタの心境を考え、自分勝手にならず自律的に判断し生活していこうとする心情を育てる。

(4)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 自分勝手な行動について考える。
○自分勝手な行動をして失敗してしまったことは、どんなことですか。

○日常での生活を振り返る。
○主題名を板書してから範読する。




2 教材「くもの糸」を読んで話し合う。
○くもの糸を登っているとき、カンダタはどんな気持ちだったでしょう。
・これで地獄から出ることができる。
・糸が切れないように慎重に登らねば。
・善いことをしたから糸が降りてきた。

○カンダタの気持ちを考えていくことを伝える。
○BGMをかけながら範読する。
○糸が降りてきたわけを考え、地獄からようやく抜け出せる機会を得たカンダタの気持ちを押さえる。
○細くて弱いくもの糸なので、切らないように細心の注意を図っているカンダタの気持ちに気付かせる。
(補)なぜ、糸が降りてきたのだろう。
(補)落ちたら、どうなるの。

○皆が登ってこようとする姿を見て、カンダタはどんなことを思ったでしょう。
・やめてくれ、糸が切れるじゃないか。
・俺の糸だぞ、勝手に登るな。

○一人でも切れそうな糸であるということ、自分の糸であるという意識のカンダタの気持ちをつかませる。
○糸が降りてきたわけも考えず、短絡的に怒りに任せて行動しようとするカンダタの心に気付かせる。

◎再び、地獄の底に落ちたカンダタは、切れた糸を見上げて、どんなことを考えたでしょう。
・お前たちのせいで切れたじゃないか。
・自分のことばかり考えていたせいだ。
・よく考えなかったことに後悔した。

○自分のことばかり考えていたことに気付かせ、後悔の念をつかませる。
○糸が切れたのは、皆のせいばかりにしていたという発言ばかりの場合、糸が切れた本当の原因について考えさせる。
(補)「おしゃか様はどんなお気持ちで糸を切ってしまったのでしょう。」
◇再び地獄に落ちたカンダタを通して、よく考えて行動することの大切さに気付くことができたか。(発言)




3 これまでの自分を振り返る。
○自分勝手にならず、よく考えて行動してよかったなと思うことは、どんなことですか。

○ワークシートに考えをまとめることによって考えを深める。
◇自分勝手の愚かさやよく考えて行動することの大切さを、自分との関わりで考えることができたか。(記述)


4 教師の説話

○余韻をもって終える。

2.授業への工夫とこれまでの経緯

 3年前の授業を思い出し当時のことを記してみます。その授業では、範読の際にBGMを活用することにより、児童がより教材に浸ることができるように取り組みました。そして、発問時の教師の動作化にも取り組みました。

(1)範読 ~BGMと読み方~
 臨場感を高めるため、教材によっては範読の際にBGMの活用をしています。テレビショッピングにて、クラッシック曲のCD10枚組を購入しました。2万円近くしましたが、道徳の授業のためにならと思い切りました。曲の前半部分だけですが、CDに収まっている全ての曲を聴きました。その中で、たった一つだけ、「これっ」というものを見つけました。「くもの糸」のお話にぴったりのものです。
 長いお話のため、その1曲では足りません。そこで、同じ曲を2回かけることにして、途中で、最初からかけ直すことにしました。どこで、かけ直すかがポイントとなります。場面が変わるところを中心に、何度も読みながらの試行錯誤でした。そして、ついに掴むことができました。この場面で、この曲調。この文面でこの曲調。まるで、一つの曲が、この「くもの糸」のお話のために、話の流れに沿って曲が作られているように感じました。
 範読は、静かに淡々と読むことにしました。強調したい言葉、例えば、「ほそい」を「ほそーい」と長くしてみました。また、文の途中で、どこで間を置いたら効果的なのかを考えながら範読の練習を重ねました。赤ボールペンを手に持ちながら、ポイントを書き込んでいきます。
 後半のカンダタの気持ちを表すところには抑揚をつけて読むことにしました。カンダタが再び血の池に落ちてからは、逆に、静かにゆっくりと読むことにしました。

(2)発問時の教師の動作化
 発問を効果的にするために、発問の際に教師による動作化を行いました。「くもの糸」における教師の動作化は先輩から教わりました。くもの糸を手繰っていくところを動作化します。くもの糸を手繰っていく様子を何度も練習しました。さらに、カンダタの顔の表情も付け加えていきました。ある日の休み時間のこと。児童が家庭科で終わらなかった裁縫をしていました。なかなか針に糸を通すことができず、私のもとへ来ました。私も目が悪いことから、上手く通せるはずがありません。そこで、糸通しと虫眼鏡を使って通すことができました。その夜のことです。帰りのバスを待っていたときに、ふと考えました。そうだ、糸を教室の天井から吊るせば、くもの糸に見える。早速次の日に、教室の天井に透明なガムテープを貼って糸を吊るしてみました。そして、研究授業を前に、隣の学級で事前授業を行わせていただきました。
 授業後、ある児童が言いました、「糸が切れるのに、天井から糸が外れるのはおかしい。」と。糸を垂らすのはよい考えだったのに、どうしよう。そのためには、どうしたらよいのか。夜の教室で何度も試行錯誤を重ねていきましたが、うまくいきません。毎日、通勤時にバスを待っている間、考え続けました。そして、ある日の夜、ふと閃きました。次の日、教室で何度も試してみました。そして、ようやく完成するに至りました。
 6年生が4学級あったことから、他学級で事前授業を再び行いました。上手くいきました。しかし、研究授業の本番では、糸が切れずに大失敗してしまいました。
 それから3年の月日が流れ、今回の授業となります。

3.授業記録

【導入】

T 自分勝手な行動をして、失敗してしまったことは、どんなことですか。
01さん お姉ちゃんと取り合いをしていて、お姉ちゃんを前に押しのけて自分が取ろうとすると、転んでしまった。
02くん おやつのケーキを、姉弟がいるのに隠して独り占めにしようとしたら、結局ばれてしまって、おやつがなしになってしまった。
03くん お母さんにハムスターの病院に一緒に行ってと頼まれていたけど、遊びたかったのと面倒だったので遊んじゃったら、怒られてしまった。
04くん じゃんけんして後出しをしたので、怒られてお菓子を取られてしまった。
05くん お兄ちゃんと遊んでいて、喧嘩になってしまった。
06さん 階段で弟がおもちゃを持っていて、急に脅かしたらびっくりして、落として壊してしまって、お母さんに怒られた。

【展開前段】

空から、くもの糸が降りてきた。そして、カンダタがくもの糸を登り始めることを伝える。
教師の動作化:糸を見つめる → 糸を見て喜ぶ → 糸を掴むふりをして一生懸命登る

このときの、カンダタはどんな気持ちか。
04くん この糸をのぼっていけば、また地上に出られるかもしれない。
05くん この地獄から逃げ出せるから、頑張って登ろう。
07くん このくもの糸をたぐっていけば、極楽に出られるだろう。
06さん このくもの糸を垂らしてくれたのは誰だろう。
08さん 06さんと似ていて、このくもの糸を垂らしてくれたのは、神様のお釈迦様かな。
09さん 05くんと似ていて、この地獄から抜け出せるなんて、ラッキーだ。
10さん 糸を垂らしてくれてありがとう。ここから、抜け出せるので、嬉しい。
11くん 地獄を抜け出すために、何でもするぞ。
12さん これで地獄から抜け出せるぞ。やったー。
13くん 地獄から抜け出せたら、もう悪いことは何にもしない。
14さん もう、地獄で辛い思いなんかしなくていい。
01くん 俺の上に降りてきたから、この糸は俺のために降りてきたんだから、他の者は寄せ付けない。
15さん ここから出られれば、もう悪いことはしない。
02くん 人を殺したり、家に火をつけたりしなければ、こんな苦労をせずに済んだ。
16くん 極楽につながっていれば、最高だ。
17さん 今までずっといっぱい悪いことをしてきて、一度だけ蜘蛛を助けたことがあったから、その蜘蛛が助けてくれたのかな。

【第2発問】

T 一生懸命登っていました。落ちたら、どうなるの?
C (口々に)地獄に落ちる。
教師の動作化:糸を掴むふりをしながら登る → 休憩する → 下を見る → 驚く
降りろー! この糸は俺のものだ 降りろー! このときの気持ちは。
18さん 俺のための糸なんだから、何で登ってくるんだ。
19さん 皆が登ってきたら、糸が切れてしまう。
20さん 俺のために降りてきたんだから、何で登ってくるんだ。
21さん 俺の上に降りてきたんだから、登るな。
22くん 俺の糸だ。お前らが登る権利はない。
23くん 俺の糸だ。早く降りてくれ。
24くん 早く降りろよ。糸が切れちゃうだろう。
25さん お前らが登ってきたら、俺も落ちてしまうけど、お前らも落ちてしまうぞ。
26くん 俺のために降りてきたから、この糸は俺のものだ。何でお前らが登ってくるんだ。
T では、他に発言はあるかな。
10さん やっとこの地獄から抜け出せるのに、皆登ってきたら落ちてしまうから、自分だけでも助かりたい。
04くん 俺が一番最初に糸を見つけて登ったんだ。お前らは降りろ。
08さん ぼくはくもを助けたから、自分の上に糸が来たけど、皆は違うので連なってきてほしくない。
05くん 俺が助けたくもなのに、何でお前らが登ってくるのだ。何にもしていないのに登ってくるのはずるい。お前たちは助けたのか。
07くん これは俺のための糸だ。勝手に登ってくるな。
11くん どうか、切れませんように。
25さん 08さんに似ていて、俺はくもを助けたのに、お前らは何か助けたのか。
12さん 俺が最初に登ったんだし、お前らは降りろ。
13くん 自分は地上にいるときに、いいことしたのに、お前らは何もしていない。
01くん やっと地獄から抜け出せるのに、藁にもすがる思いで登ってきているのに、ここで糸が切れてしまえば、これまでの苦労が水の泡になってしまう。
02くん 俺の上に降りてきた一本の糸なのに、お前らには関係ない。

【中心発問】

教師の動作化:「降りろー! この糸は俺のものだ 降りろー!」 → 糸を引っ張る → 糸が中ほどで切れる → 回りながら床へ尻もちをつく

地獄で切れた糸を見上げて、どんなことを考えたのだろうね。
09さん あんなこと言ったから、ばちがあたったんだ。あー、あ。
19さん せっかく登ったのに、あともう少しで地上に出られたのに、残念だ。
20さん こんなことを言ったから、糸が切れたんだ。
01くん せっかくの極楽への道が、俺の一言で途切れてしまった。いったい何てことをしてしまったのだろう。
02くん 切れるんだったら、俺の下で切れてくれればよかったのに。
27さん 結局、また地獄か。
03さん あいつらにも順番で登らせてやればよかった。
16くん 地獄の針の山に刺さってしまう。
25さん 03さんと似ていて、協力して順番に登ればよかった。
05くん 今の自分に何が悪かったのか教えてくれ。
T 協力して皆で登ればよかった。でも、糸が切れてしまったのは、皆が登ってきたせいかな?
20さん 自分の言葉で切れてしまった。
01くん 叫んだから、体が揺れて切れてしまった。
T 揺れたから切れてしまったのかな?
(01くん  あー、そういうことか。)
14さん 自分がすごくわがままで、一人いじめしていたから。
T 一人いじめって?
14さん 皆いるのに、自分だけが一人だけ助かろうと思ったから。
17さん 皆一人一人が自分勝手だったから。
28くん きっと、あんなことを言ったから、お釈迦様が怒ってしまった。
10さん 皆のことを考えないで、自分だけ勝手なことを考えていたから、糸が切れてしまった。
26くん 自分だけが助かろうと思って、人のことを考えず、人を傷つけるようなことをしてしまったから。
07くん 自分のことしか考えていない。それから、自分が思っていても、心にしまっておかず、口に出してそれを言ってしまったから。
13くん あのときに、ああいうことを言っていなければよかった。
01くん お釈迦様も、俺も開いた口が閉じない。
21さん くもの糸を自分一人のものにしてしまったから。

【展開後段】 意図的指名による発表

自分勝手にならず、よく考えて行動してよかったなと思うことは、どんなことですか。
21さん 私は友達と遊んでいるときに、お菓子を持ってきて食べたらとてもおいしくて、心の中で独り占めにしようかなと思ったけれど、独り占めにしないで友達にもちゃんとあげたら、その次の日に、「ありがとう」と言われてお菓子をいっぱいくれた。あのときに、独り占めをしないでよかったなと思いました。
18さん ときどき、お母さんの帰りが遅いときに、「ご飯作っといてくれる。」と言われて、ときどきは休ませてと思ったけど、頑張ろうと思って料理を作ったら喜んでくれたので、作ってよかったと思います。
19さん 自分が何か悪いことをしてしまったとき、お母さんに怒られて、「うるさいなー」と思ってしまったときがあったけど、お母さんがなぜ怒っているのかもわかったし、お母さんの気持ちがわかったから、よかった。
14さん 私は、お母さんと一緒に買い物をするときに、つい「あれ買ってー、これ買ってー」とおねだりしてしまい、買ってもらいましたが、でも、今日のくもの糸を学習して、自分はすごいわがままなんだなということに気付き、わがままなことは、もうやめようと思いました。
01くん ぼくは、これまで自分だけできればいいと言って、他の人のことなんか考えないで、満員電車で大きな荷物を持ったおじいさんがいるのにもかかわらず、自分が楽をすればいいと思って、一つだけ空いていた席に座ろうとしたけれど、おじいさんのことを考えて譲ると、おじいさんが「ありがとう」と笑顔で言ってくれたのでうれしかった。

4.板書例

5.考察

○今回の授業では、いつにも増して多くの子どもたちの挙手が見られました。長い範読でしたが、BGMや読み方の工夫による効果と、場面絵と発問の際の動作化による効果が考えられる。しかしながら、時間配分が上手くいかず、展開後段でじっくりと自分の生活に振り返って考えることができなかった。

○展開後段での01くんは、[親切、思いやり]での内容項目の発言になってしまいました。しかし、おじいさんのことを考えて、何が一番正しいことかを判断できたことはよかった。

○導入で、急に、自分勝手な行動をして失敗してしまったことと聞かれても、児童はすぐに考えていくことはできない。同じことを聞くのであれば、例えば「授業の中で」などと場面を絞って発問した方がよいと考えた。

○第一発問で、なぜ、くもの糸が降りてきたのかを考えさせることができなかった。17さんは、くもが糸を降ろしてくれたと考えた。お釈迦様のお導きがあったことを押さえたかった。

○[善悪の判断]での授業を行ったが、[節度、節制]の内容項目で授業を構築していった方がよいことを、後に、ご指導いただいた。次回の実践に向けて研究途上である。

わたしのおすすめ教材(4)「ふくらんだリュックサック」(第6学年)

1.学習指導案

(1)主題名 公共の場が気持ちよく  C[規則の尊重]

(2)教材名 「ふくらんだリュックサック」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)ねらい
 自らもごみを拾って綺麗にしていったときの私のすがすがしい気持ちを通して、自他の権利を考え、公共の場で皆が気持ちよく過ごしていけるようにしていこうとする心情を育てる。

(4)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 公共の場について考える。
○公共の場所とは、どのようなところがありますか。
・駅 ・電車やバスの中 ・道路
・公園 ・図書館 ・スーパー
・教室 ・学校

○導入後、公共の場所を黒板に書いていく。
○主題名を黒板に書く。




2 教材「ふくらんだリュックサック」を読んで話し合う。
○どのような気持ちから、私はごみを拾おうとしなかったのでしょう。
・誰も拾っていないのになぜ自分が
・汚いから拾いたくない
・自分の捨てたものでない
・自分には関係ない

○黒板の右下に、場面絵①(私)、右上に②(父と兄弟)を貼る。
○「わたし」の気持ちの移り変わりを考えながら読むように指示する。BGMの活用。
○範読後すぐに発問せず、余韻をもつ。
○発問カードを貼ってから発問する。発問後、考える時間を十分に取る。青チョークで囲む。
○ごみに対する嫌悪感や、他人事であるという私の気持ちに共感させる。

○どのような気持ちから、私もごみを拾おうとしたのでしょう。
・子どもたちが拾っているのだから
・自分もやるべきだ
・お父さんの言葉に目が覚めた
・皆が使うところを綺麗にするべき

○場面絵③と発問カードを黒板中央に貼ってから発問する。黄色チョークで囲む。
○子どもたちと父親とのやりとりを通して、子どもたちが変化していく様子を間近に受けとめ、自分の心も変容していったわけについて考えさせる。

◎出発して歩きながら、私はどのような気持ちになったでしょう。
・綺麗になって気持ちよい
・自らも取り組んですがすがしい
・子どもたちに教えられたなあ
・この次もまたごみを拾おう
・皆の山が綺麗になってよかった

○場面絵④を黒板左端上に貼る。発問カードを貼ってから発問する。赤チョークで囲む。
○綺麗にしたという達成感、自らも取り組んだというすがすがしさなどを通して、公共の場を大切にしていきたいという気持ちを高めさせる。
◇自ら行動したときの私のすがすがしい気持ちを通して、自他の権利を考え、皆が気持ちよく過ごしていけるようにすることの大切さを考えることができたか。(発言)




3 これまでの自分の生活を振り返る。
○皆が気持ちよく過ごすことができるために、気を付けていることは、どのようなことですか。

○展開前段を振り返ってから課題を示す。
○発問後、ワークシートに記述させる。
○考えが思い浮かばない児童には、児童のよいところを伝えたり、板書を見ながら助言したりする。
◇自他の権利を尊重し合い、皆が気持ちよく過ごしていけるようにすることの大切さについて、自分との関わりで振り返ることができたか。(ワークシートの記述)


4 教師の説話を聞く。
○皆の使う教室が、4月と今とを比べてどうですか。

○皆の使う教室が、4月の頃と違って、一人一人の心の変化が行動をもたらし、ごみを拾おう、落とさないようにしよう、気持ちよく過ごすことができるようにしようとする子どもたちの姿勢を称賛する。

(5)本時の評価
○自ら行動したときの私のすがすがしい気持ちを通して、自他の権利を考え、皆が気持ちよく過ごしていけるようにすることの大切さを考えることができたか。(中心発問での発言)
○自他の権利を尊重し合い、皆が気持ちよく過ごしていけるようにすることの大切さについて、自分との関わりで振り返ることができたか。(展開後段でのワークシート記述)

2.本時の板書

3.授業記録

【導入】

T 公共の場所とは、皆が使ったり過ごしたりする場所です。どんなところがありますか。
C 公園 電車の駅 学校 トイレ 病院 図書館 広場・公園 会社 コンビニ 公民館 道路 スーパー 電車の中 バスの中 映画館

【展開前段】

どのような気持ちから、私はごみを拾おうとしなかったのでしょう。
01くん 皆が拾っていなかったから、私だけ拾っても。
02くん 私の捨てたものじゃないから、拾わなくてもいい。
03さん 今、ごみを拾っても、またすぐに増えてしまうから、拾っても仕方がない。
04さん 皆が拾えばきれいになるかもしれないけど、たった2・3人が拾っても、きれいにならないと思うから。
05くん 10年でこんなに変わるんだ。
06さん ごみを捨てた人が拾えばいい。
07さん 自分で捨てたごみを拾うのは当たり前なのに、ゴミを捨てるそんな非常識な人のゴミを拾うのは嫌だ。
08さん 拾ったとしても、持って帰るのが嫌だから。
09くん こんなにごみが多いんだったら、ぼくが少しくらい持ち帰っても仕方がない。
10さん 自分だけが拾っても、十年前のような心地よい山にならないから。
11さん 02くんと03さんに似ているんですけれど、今自分が拾っても、自分が捨てたわけじゃないから、結局また誰かが捨てて、汚くなっちゃう。
12さん 07さんと似ていて、ルールを守らない人が悪いから、その人たちが拾えばいい。
13くん 03さんと似ていて、どうせ拾っても、また若者が捨てるから、意味がない。
14くん 自分は捨てていないから、他の人が、落とした人が拾えばいい。
15くん 汚いし、荷物になるから、拾ってもいい気持ちはしないから。
16さん 07さんと似ていて、山の礼儀を知らない人がたくさん山に来ているから、拾っても、どうせまた同じことになるから、意味がない。
17さん たった一人がどれだけ拾っても、山はたいして変わらない。
18さん 10さんと似ていて、自分が捨てていないし、いっぱい落ちているから、一人で何個も拾っていたら、時間がなくなっちゃう。
19さん 10さんと似ていて、今、自分が拾っているだけでは、十年前の綺麗さが戻ってくるわけではない。
 6年生となり、新しい学級で、これまで見られない光景を目にしました。それは、道徳の授業で、挙手があまり見られない子どもたちがどんどん挙手し発言を繰り広げている姿です。これまで全ての授業において挙手が見られなかった04さんも発言することができました。
 子どもたちからは、自分の捨てたごみではないということ。人のごみは拾いたくないこと。捨てた人が拾えばいいこと。誰も拾っていないこと。自分だけ拾っても仕方がないこと。拾ってもどうせまた汚くなってしまうこと。一人が頑張っても仕方のないことの考えが出されました。

【第2発問】

どのような思いから、「私」もごみを拾いだしたのでしょう。
02くん あの3人が拾い出したから、私も拾おう。
20さん 自分たちが拾い出したら、周りの人も拾うかもしれない。
21くん 自分も拾えば、少しは片付くかもしれない。
14くん お父さんの言った通りで、他人のせいにばかりしていたから、自分も拾おう。
01くん ごみを拾えば拾うほど、その分、山がきれいになるから。
13くん 親子3人で拾ったら、3人分しか拾えないけど、私が拾ったら1人分多く拾えるから、私も頑張ろう。
04さん 少しでもごみを拾えば、少しだけでも山は綺麗になる。
22くん 子どもがごみを拾っているのに、自分が拾わないのはみっともないことだ。
23さん 22くんと似ていて、子どもたちがごみを拾っているから、子どもたちは皆のために働いているけど、自分はやっていないから恥ずかしい。
24くん 13くんと04さんと似ていて、家族3人とわたしがやれば、少しでも多く拾えるし、頑張ろう。
11さん 山が汚れたのは1人のせいじゃないから、自分も拾って他の人の分まで拾う。
15くん 山が好きなら好きなりに、自分もちゃんと拾わなければならない。
12さん 毎日やっていけば綺麗になるかも。
25さん 久しぶりに山にきて、山が汚れていたら自分の気分が悪くなっちゃうけれど、拾えば皆が気持ちよくなれるし、自分も気持ちよくなれる。
07さん いっぱい山に人が来て、いっぱいごみを捨てるのも嫌だけど、皆がこの山を嫌いになるというのは、皆が気持ちよく使ってもらって、この山が好きってなってくれたら。
T 好きな山になったらどうなるの?
07さん 好きになったら、そのために、もっと綺麗に使おうという気持ちになるから、ごみを拾おうというボランティアみたいなことをしていくかもしれない。
10さん 皆が前みたいにごみを捨てなくなる。
18さん 25さんと07さんと似ていて、山が汚いと、自分が気分が悪くなるし、他の人も気分が悪くなるし…… (言うことを)忘れちゃいました。
19さん さっきまでは、たった3人じゃ少ししか片付かないから、やる意味はないと思っていたけど、今は、少しずつでもやっていけば片付くと思う。
26さん ごみを捨てているのが悪いと言って、何もしなかった自分が恥ずかしい。
27さん たくさん拾っていけば、10年前の綺麗な山に戻れる。
16さん 27さんと似ていて、10年前の山の空気や、綺麗な山の景色を楽しむために、自らごみを拾わないと。やらなくちゃ。
13くん 初めて来た人が、この山を登って、このごみの散らかっている状態を見たら、悲しくて、帰るかもしれないから、それをなくすために、私も拾う。
21くん 自分のごみじゃなくても、自分が拾えば、自分もいい気分になるし、皆もいい気分になれる。
10さん 山にごみを捨てるような礼儀正しくない人もいるけど、この親子のように礼儀正しい人もいるから、自分もその人になれば、少しは片付くかもしれない。
02くん 拾うか拾わないか迷っている時間があるのなら、その時間を使って拾おう。
 02くんは、親子の姿を見て私も見習おうと考えました。20さんは、自分たちの行動が周りの人々を変えるかもしれないと考えました。14くんの「お父さんの言った通りで」の発言は、ワークシートの記述の「お父さんを目標に」に見られるように、この教材に出てくるお父さんの姿が14くんの心を動かすことになります。01くん、13くん、04さんの発言に見られるように、一人一人の積み重ねが大切であると考えました。22くん、23さんは、子どもが正しいことをしているのに、正しいことをしようとしない自分が恥ずかしいと考えました。道徳で初めて発言する25さんは、気持ちよく過ごしたいと考えました。26くんは、人のせいにばかりしていた自分に気付き、反省しています。

【中心発問】

出発して歩きながら、「私」はどのような気持ちになったでしょう。
28さん 私も拾えばその分だけきれいになったかから、よかった。
29さん 少しは山のごみも片付いたなぁ。
05くん ちょっとだけだけどごみを拾って、すっきりした。
08さん 来たときよりも、帰りのほうが、心が心地よい。
04さん 少しでも山が綺麗になったから、少しでも拾ってよかった。
18さん 28さんと05くんと似ていて、少ししか拾えなかったけど、また次来たときとかに、ごみが落ちていたら、また拾って、それを繰り返して山を綺麗にしていきたい。
19さん 05くんに似ていて、少しでも綺麗になったから、すがすがしい。
16さん ごみを拾って、山をどんどん綺麗にしていく第一歩につながっていったかも。
17さん 自分で拾った分だけ綺麗になったから、拾わなかったときより、心が気持ちよくなった。
13くん これで、少しでも綺麗になったから、これからも、少しずつでも綺麗にしていきたい。
14くん 自分がもしあの場で拾わなかったら、こんな気持ちになれなかったなぁ。
10さん 14くんと19さんに似ていて、ごみを拾わなくてそのまま帰っていたら、嫌な気分のままで家に帰っていただろうけど、ごみを拾って帰ったから、すがすがしい気分で帰れた。
20さん 19さんに似ているんですけれど、4人でごみを拾って、こんなに綺麗になるとは思わなかった。
11さん 10さんに似ていて、もしあの親子に出会えていなかったら、不快な気分のまま、帰っていることになっていた。
23さん 17さんと似ていて、自分のリュックのふくらみ、重みの分だけ、気分がよい。
26さん 重みの分だけ、ごみが減ってよかった。
12さん この親子みたいに、私みたいに拾って、ほかの人にも輪が広がっていってくれたら嬉しいなぁ。
25さん ごみが減った分、思いやりの心が増えていったから、心が豊かになった。
03さん これからこの山に登る人がいい気持ちになっていってくれることだろう。
07さん この家族に会えなかったら、ずっと嫌な気持ちでいただろうから、感謝したい。
18さん 山も、自分の心も、綺麗になった。
26くん 皆が拾っていけば、どんどん綺麗になって、皆が気持ちよくなって、楽しくなれる。
 04さんは、この授業で3回発言しました。①2、3人で拾ってもきれいにならない。②少しでも拾えば、少しだけでも綺麗になる。③少しでも綺麗になったから、拾ってよかった。
 12さんは、①ルールを守らない人が悪いから、その人が拾えばよい。②毎日やっていけば綺麗になるかも。③親子や私が拾っていくように、他の人にも輪が広がっていけば嬉しい。
 18さんは、①自分は捨てていない。たくさん落ちているからきりがない。②山が汚いと自他共に気分が悪くなる。③少ししか拾えなかったけど、また今度も拾おう。③山も自分の心も綺麗になったと、発言が変化していきました。
 25さんは、②拾えば、自他共の気持ちがよくなる。③ごみが減った分、心が豊かになった。
 11さん、07さんは、この親子とのご縁に感謝しています。
 展開後段では、多くの子どもたちがごみのことを取り上げていました。導入で、公共の場所を教師の方で提示しておいてから、「公共の場所で迷惑だなと思うこと、嫌だなと思うことは、どのようなことですか?」と問いかけ、展開後段に入る前に、導入部に戻って振り返れば、子どもたちはもっと自己の生活において、多面的に考えることができたと自己反省です。

【展開後段】

皆が気持ちよく過ごすことができるように、気を付けていることは、どのようなことですか。
04さん 私は、学校の廊下でごみが落ちているのを見たことがありますが、いつもそのまま通ってしまいます。しかし、このお話を通して、廊下などにごみが落ちていたら、少しでも拾おうと思いました。
13くん ぼくは、公園にごみを置いて帰ってしまいました。次の日に遊びに公園に行ったら、ごみがありませんでした。ラッキーと思いました。しかし、今ごみを置いて帰ったことを思うと、拾ってくれた人に悪いことをしたなぁと思います。これからは、自分のごみを持ち帰るだけではなく、友達が置いて帰ったごみも持ち帰るようにしたいです。
14くん このお話に出てきたお父さんを、これからの目標にしていきたいと思いました。なぜかというと、周りをよく見ていて、他の人の役に立つようなことをしていて、ぼくは、よく自分のことしか考えないところがあるから、そう思いました。
21くん ぼくは、自転車が倒れているのに、見て見ぬふりをしてしまいました。ぼくは、自分が倒したわけじゃないから、手伝わなくていいや、誰かが手伝うと思って、見て見ぬふりをしてしまいました。そしたら、誰か知らないおばあさんが手伝いました。ぼくは、おばあさんが手伝っているのに、ぼくはまだ若いし、自転車を持ち上げる力のあるぼくが、なんでおばあさんなんかにやらせているんだと、恥ずかしく思えてきました。だから、ぼくはとっさにおばあさんと一緒に自転車を起こすことを手伝いました。そうしたら、周りの人も手伝ってくれて、とてもよい気持ちになりました。
28さん 私は、ときどき電車の席や公園でごみを見ます。だけど、自分が捨てたわけではないし、汚いので、近付かないようにしていました。しかし、今日のお話を聞いて、汚いと思っているだけではごみはなくならないし、綺麗にはならないので、まず、「自ら進んできれいにする」ということを実行することが大切だと思いました。
11さん 小学校の最高学年として、1年から6年生までが気持ちよく過ごすことができるようにしたいです。私は、これからは皆が気持ちよく過ごせるように、人の気持ちを考えてから行動し、皆に協力したいと思いました。私は、友達が困っていたら助けてあげたいです。また、自分の気分が不快になったときには、他の人も不快になると思うので、自分にできることをしてあげたいです。
18さん 5年生のときの移動教室では、部屋がとても汚くて散らかっていたけれど、6年生での日光林間学園では、5年生の時とは逆で、とても綺麗になって、部屋の皆が気持ちよく過ごすことができたので、これから、旅行とかへ行くときには、部屋やトイレのスリッパを綺麗に並べたいと思いました。
12さん 前に、遠足で、先生が「周りにあるゴミを拾ってください。」と言っていました。でも、私は、あまりごみを拾おうとはしませんでした。この「ふくらんだリュックサック」のお話を学んで、もっとたくさんのごみを拾っておけばよかったと、後悔しました。

4.授業を終えて

 今回の授業では、普段発言しない子どもたちが、発言を繰り返していきました。04さんは3回も発言をしました。1時間を通して、子どもたちは活発に発言を繰り返していきました。そこには、何と言っても教材の魅力、そして、その教材に子どもたちがしっかりと浸れたこと、さらに、教材の中の私に共感しながら、自分の心を投影しながら考えていくことができたからだと考えます。

5.日常の学校生活から

 学習規律が保たれて、真面目に学習に取り組んでいる学級には、一定の要素があると考えます。その一つに、教室が綺麗であるということです。まず、机が整列されていること。そして、ごみが落ちていないこと。さらに、机の上やロッカーの中が整頓されていることです。そのような落ち着いた教室環境の中で生活することが大切です。皆で過ごす教室を磨くということは、自分自身の心をも磨くことにつながっていきます。
 新しい学級となって、必ず出合う場面。「ごみが落ちているよ。」「私が落としたんじゃない。」子どもたちは、他人の落としたごみは拾おうとはしません。さらに、自分が落としたごみでも平気でいる子どもたちもいます。そんな子どもたちの意識改革から始めなければなりません。
 授業では、机の上にある筆箱、教科書、ノートの置き場所にも気を配ります。気持ちよく、姿勢を正して勉強していくためです。おかげで、筆箱が床に落ちることもなくなってきました。筆箱に肘を乗せて勉強することもなくなりました。
 新しい学級となって月日が流れるにつれ、こんなことが起きてきました。テストの後、子どもたちが一斉に教卓に集まるといった光景です。テストの際は、出席番号順に座り直してテストをします。座席を変えることは、テストだという雰囲気を演出します。テストが終わると、机の上は消しゴムのかすがあります。これまでは、そのままにしておくか、手で払って床に落として自分の席に戻るといった様子が見られました。ところが、その消しかすを手のひらに載せて、教卓の下にあるごみ箱へ捨てにいくという光景です。もちろん、普段の授業でも同じです。おかげで、掃除の時間には、ごみがたいそう減りました。
 掃除の時間には、一つの班の子どもたちが教室の端に一列に並んで、一斉に床拭きをする。お寺の修行のように。教室の前側と後ろ側を7往復ずつ合計14往復。「せーのー」で声を合わせて、一体感に包まれていきます。他の一つの班では、雑巾を持って気付いたところを拭いていきます。机は勿論のこと、机や椅子の脚、窓のレール、棚、廊下の手すりなど。掃除を通して、教室も子どもたちの心も綺麗になっていっています。

わたしのおすすめ教材(3)「うばわれた自由」(第5学年)

1.学習指導案

(1)主題名 ほんとうの自由とは  A[善悪の判断、自律、自由と責任]

(2)教材名 「うばわれた自由」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)ねらい
 ジェラールの心の移り変わりを考えることを通して、自律的に判断し、責任ある行動をとることを大切にしょうとする心情を育てる。

(4)一人一人への願い(01くん)
 ジェラールの心情の変化を通して、自分自身を見つめながら本当の自由について考えさせたい。

(5)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 自由について思うことを発表する。
○今日の5時間目、自由だったらどんなことをしますか。
・遊ぶ
・好きなことをする
・勉強する

○身近な生活の中で、自由の意味について考えさせる。
○主題名を板書してから範読する。




2 教材「うばわれた自由」を読んで話合う。
○森の中でのジェラールの気持ちは、どうだったでしょう。
・俺を誰だと思っているんだ
・王子だから自由にしてよい
・自由にして何が悪い

○ジェラールの気持ちを通して考えていくことを伝える。範読後、余韻をもつ。
○ジェラールが自由についてどのように考えているのかをつかませる。

◎牢屋で一人になったとき、ジェラールはどんなことを考えたでしょう。
・好き勝手にしなければよかった
・ガリューの言うことを聞いていれば
・王子としての責任が大切だった
・ルールを守るべきだった

○ジェラールがしっかりと自分を振り返っている姿から、ほんとうの自由について考えさせる。
◇ジェラール王子の自由に対する考えの変容を通して、自由についての道徳的価値を深めることができたか。(発言)




3 自分の生活を振り返る。
○このお話を通して、自由について学んだこと考えたことはどのようなことですか。

○自己の生活を振り返ることによって、ねらいとする価値を高める。
◇本当の自由について、自分との関わりの中で振り返ることができたか。(ワークシートの記述)


4 教師の説話を聞く。
○えらいね。自ら考えて取り組んでいるね。

○先生がいなくても、子どもたちが今やらなければならないこと考え、自主的にしっかりと取り組んでいた様子を称え、今後の学校生活につなげる。

2.授業記録

(  )内は教師の発言

【導入】

T あっ、そうそう、今日の5時間目は、テストなし。自由にしよう。好きにしてよし。
C えっ?! おっ やったー! <笑顔と歓声に包まれる>
T 自由だったら、どんなことをしますか。
01くん 本当に何してもいいの。(いいよ) 遊んでもいい?(いいよ)
01くん 校庭で遊ぶ。(いいねー)
02さん でも、他のクラスが体育をやっているから、迷惑がかかるよ。(あっ、そうか)
01くん じゃあ、教室でゲームをする。(あっ、それいい考えだね)
03さん 5時間目は理科だから、理科のまとめをやる。(いいの?自由だよ)うん。
04さん 休み時間は遊んでもいいけど、いくら自由って言っても、授業中なんだから、遊んではいけないと思う。(なるほどね)
05さん 教室で遊んだら、休み時間のように絶対にうるさくなってしまう。(やっぱりー)
01くん ほかのクラスに迷惑かけるし、静かに遊ばなきゃいけない。トランプをするか。あっ、そうだ、賭けする。賭けで勝ったら、給食のおかわり貰えることにする。
06くん もう5時間目だから、食べちゃっているよ。<一同爆笑>
07さん 自由は自由でも、勉強の時間だから。
08さん 遊んでいたり、うるさくしていると、廊下を通ってくる他のクラスに変に思われていやだ。(そうだね)
09くん 低学年が見ていたら、示しがつかない。(ぼくたち高学年だからね)
10さん 授業のときに、ふざけていたり、ほかのことをしたりすると、自分のためにならない。(あっ、自分自身のためにもね。なるほど)
 授業よりも遊びたいという01くんの気持ち。そして、02さんの発言を受けて01くんは、迷惑がかからないように教室で遊ぶことを選択し、さらに、05さんの発言を受けて、静かに遊ぶことにしました。子どもたちは、この2か月間の学級での営みや、高学年という意識を持ち始めたことが表れています。本心は遊びたいところですが、ちょっとまずいのではないかと。
 範読では、01くんはいつもよりも集中して教材に目をやっていました。ところどころで、子どもたちに目をやると、01くん同様、BGMの効果もあって、教材に浸っている姿がみられました。

【展開前段】

森の中での、ジェラールの気持ちは、どんなだったでしょう。
01くん 動物を殺しているわけでもないし、なんで、こんなにうるさく言われなければならないんだ。(なるほどね)
11くん 王子なんだから、何をしてもいいじゃないか。(王子だからね)
12くん 俺が一番えらいんだ。(あー、なるほど、なるほど)
02さん 酒に酔っているから、いいじゃないか。(そっか)
08さん 王子だから、自分に逆らえるものは誰もいない。(なるほど)
09くん 王子だから、ちょっと悪いことをしてもいいや。(あー、なるほどね)
13くん きまりなんて、守らなくてもいい。(おー、ほ、ほ、ほ、ほ)
10さん 王子なんだから、自由自在に遊んでいればいいし。(あ、なるほどね)
14くん 王子だから、自分はきまりを守らなくてもよい。(うん、うん)
15くん 俺は王子だから、はむかうやつなんかいない。(なるほど)
16くん 俺は王子なのに、何で森の番人なんかに注意されなければいけないんだ。(あー、なるほどねー)
17くん 自分が言うことは全部正しい。(うん)
11くん 王子なんだから、悪いことをしても牢屋には入れられないぞ。(王子だからね)
18くん 何も撃っていないんだから、やったっていいじゃん。(あー、は、は、は、は-)
06くん このくらい、いいじゃん。(このくらい)
T (板書した後)王子は、自由についてどんなふうに思っていたと思う?
19さん 自分が思ったことを、好き勝手にしていい。(ほう、ほう、ほう、ほう)
10さん まわりのことを考えてなくてもいい。(あー、なるほど)
16くん 自由というのは、何をやってもいいということ。(自由はね)
01くん ジェラールがやっている自由というのは悪いことの自由で、ガリューの言っている自由は、悪いことをしないで、幸せな生活をやったりする自由で、ガリューがしているのは悪いことの自由。(ほー、ほ、ほ、ほ、)
人を殴ったり、人を殺したりの自由。ガリューは、善いことの自由、幸せに暮らしたり。(なるほど、善い自由と悪い自由か、よい自由は幸せに暮らせる。なるほどなあ。これは次につながる大切なことだから、左に書いておくね)
13くん 自分さえよければの自由。(自分さえよければ)
18くん 好き勝手にやってもいいという自由。(好き勝手に)
11くん やりたいことは、やりたい放題やってもいいという自由。(やりたい放題か)
09くん きまりを破ってもいいという自由。(なるほど)
02さん 注意されても、言い訳を考えとけばいいや。(なるほどね)
12くん 死ぬまでに、やりたいことをやるのが自由。(やりたいことを)
01くん 全部が全部、やりたいことをやっていいというわけではない。(なるほどね)
全部が全部、やっていいわけじゃない。ルールを破ったり。番人さんに、聞いてやるんだったらいいけど、聞かずに勝手にやるのは犯罪。嫌われていく。
 発問後、01くんの手が挙がりました。01くんに、無言で「うん、ありがとう、わかっているよ。」と、うなずきながら目を合わせました。徐々に手が挙がり始め、01くんに口火を切ってもらうことにしました。
 続いて多くの子どもたちが発言を重ねていきました。「王子だから」という気持ちが、このようなジェラールの行動に至るのだという考えです。そこで、王子の自由についての考えについて投げかけました。すると、3人の発言を受けて01くんは、自由には善い自由と悪い自由があり、善い自由が幸せにつながるのではないかと考えました。この彼の発言には、これまで2か月の間、学校生活の中で、私が01くんに何度も説いてきたことが、ようやくこのときに、01くんの中に整理されたように感じられ、嬉しくなりました。
 01くんの発言後、自分さえよければと好き勝手にしたり、人に迷惑をかけたりする自分勝手な振る舞いがよくないとの声があがっていきました。

【中心発問】

牢屋で一人になったとき、ジェラールはどんなことを考えたでしょう。
05さん 悪いことをしなければ、こんなことにならなかった。(なるほど、悪いことってどんなことかな。もう少し詳しく言ってみて)
動物を殺したりすること。(うん)
19くん 思ったことを好き勝手にすること。(なるほど)
18くん ルールを破る。(うん)
01くん 王子だからいいとか思っていたり、ルールを破って、勝手に狩りに侵入したり。(なるほどね)
T じゃあ、もう一回聞くよ。牢屋で一人になったとき、ジェラールはどんなことを考えていたでしょう。
20さん 森の番人のガリューの言うことを聞いておけばよかった。(あー、なるほどな)
14くん 悪い自分に、もっと早く気づいていれば。(あー、悪い自分にね)
21くん もっと、早く気づいていれば、乱れた世の中にならずに済んだ。(気づけばね)
12くん ジェラールがどんどん悪いことを好き勝手にやってしまったから、自分がやったから、皆に影響して、悪い国になってしまった。乱れた。(自分のせいでね、なるほど)
10さん こんなことになるんだったら、ルールを守ってやっていたほうがよかった。(なるほど)
16くん 自分がしっかりしていれば、国を守ることができた。(なるほど、しっかりしていれば、12さんにつながるね)
09くん 王だからといって、好き勝手にやってしまって、こうなって、後悔した。(なるほどね あれ、さっき手を挙げていた22さんは?)
22さん 09くんと同じ。(同じ。いいよ、自分の言葉で言ってごらん。)
今まで好き勝手にしていなければ、国はこんなに乱れることはなかった。(あー、なるほどね)
02さん ガリューが正しいことを言ってきたのに、こんなに長く牢屋に入れられてしまって、自分がしたことのほうが間違えていたのに。(なるほど)
11くん 自分が王だということを使って、調子に乗りすぎた。(あっ、そうか、ははは)
18くん 今までの自分は、なんて悪いことをしていたんだ。(あー、なるほどね)
08さん 自分にとっていいことが、悪いことだった。(あー、なるほど)
05くん 自分は、なんて最低な人間だったんだ。(なるほどね)
12さん 責任感をもっていればよかった。(あー、なるほどね)
16くん ガリューに迷惑がかかるとかじゃなくて、国中の人々の自分の幸せというか、01くんが言ってくれた幸せという善いことの自由。その善いことの自由というものを考えずに、悪いことの自由ばっかり頭に入ってしまったから、国中が悪くなってしまって、国中の人にとって迷惑をかけてしまった。(なるほど)
21くん 人に迷惑がかけてはいけない。夜に皆が、人が寝ているのに、大きい音がしたら迷惑。(なるほど、迷惑をかけてはいけないということか)
自由だからといって、人に迷惑をかけてはいけない。(なるほど)
01くん 人に迷惑をかけないってことは、皆が幸せになれる。(そっかー)
 捕まって後悔したジェラールの気持ち。国が乱れてしまったという王としての責任の気持ち。国民に迷惑をかけてしまったというジェラールの反省の気持ちを、子どもたちは考えました。前の発問で01くんが考えたことについて言及し、黒板の左に書いた善い自由と悪い自由について考え、迷惑をかけることを問題視していきました。最後に、01くんに特に考えてもらいたいことが、01くん自らの口から出て、終えました。
 01くんが教材に向き合っていたように、一人一人が教材に浸っているように思えました。教材を通して考え、多くの友達の考えを聴き合いながら、自分の考えを少しずつ深めていくことによって、心が高ぶっていく。範読の大切さ、聴き合いの大切さを感じさせられました。

3.板書例

4.授業への工夫 ~教材提示の充実~

(1)多いセリフを習得するために
 この教材を音読して感じたことは、セリフ(かぎかっこ)が多いことです。そこで、ジェラールとガリューのセリフを、蛍光ペンを使い、色分けして音読することにより、教師自身が登場人物になりきろうとしました。それでも、音読をする度に毎回どこかで失敗します。ガリューになりきり、「ジェラール王、あなた様も~」と言ったあと、本文中では「低い声で語りかけてきました。」と続きますが、低い声どころか普通の声で読んでしまっているありさまです。今度は、教材に赤ボールペンを使って「低い声で」と書き込みました。文の途中で間を開けたいところには、青ボールペンで印をしていきました。そうこうしているうちに、コピーした教材は、蛍光ペンとボールペンで賑やかになっていきました。
 何度も音読していくと気持ちが高ぶり、ジェラールがガリューに喰ってかかるところやガリューが叱るところのセリフは、大声になっていきました。音読を何度も繰り返すうち、ついには声がかれるようになってきました。私はふと考えました。大声をださなくとも、二人の気持ちが表せるのではないかと。

(2)範読にBGMを用いて効果的にするために
 教材が長いために、BGMは3曲を用意しなければなりません。このクラスで初めてBGMを使用するということもあって慎重に検討しました。BGMと場面がマッチするように、BGMをかけた後、どのあたりから範読をスタートしたらよいのか試行錯誤の連続です。また、文章のどこで間をとると効果的かを考えながら、範読を重ねていきました。次に、BGMの音量です。黒板の下辺りから流れるBGMが一番後ろの席まで聞こえるのか、聞こえすぎないかを探るため、教室の後ろで範読し、耳をBGMに傾けました。結果、ボリューム13が丁度よいことがわかりました。授業の前日の夜、最後の範読が終わったとき、廊下から多くの拍手が聞こえてきました。PTAの仕事を終えられた保護者の方々やお子さんたちが、廊下越しに私の範読の様子を見ていたようです。思わぬ励ましの拍手を受けての授業前日となりました。
 授業当日、範読で初めてBGM使用とあって、子どもたちがびっくりしないように、1時間目にその旨を伝えました。範読する位置に立って、本日の理科のテストのことについて話しながら少しの間BGMを流すことによって、一番後ろの児童にBGMが聞こえるかどうかを確認しました。また、一番前の児童にはBGMの音が大きすぎて邪魔にならないかを聞きました。結果、予定していたボリューム13から15に引き上げることとなりました。

(3)BGMの過去の失敗から学ぶ ~音量をよく考えないと
・児童のいないひっそりとした夜の教室と、児童が実際にいる教室とでは、違う。
・他学級での事前授業と、当日の本学級との授業では、子どもたちの実態によって、違う。
・校庭の状況でも変わる。準備体操(掛け声)のときに丁度範読の時間となる。
・CDプレーヤーの機種により、音量が変わってくる。

5.考察

○01くんが、今後の学校生活において、善い方向へと変容が見られた。
 この授業以来、喧嘩をすることがなくなり、自分勝手な考えや立ち振る舞いが見られなくなった。また、級友同士が喧嘩をしていると、体を張って止めに入り、双方の言い分を聞きながら、解決を図っていく姿が、何度も見られた。
 この授業以来、学校生活のルールを率先して守り、学級の一員であるという自覚と責任をもって、学級を良くするために提案したり、自ら進んで行動したりするようになった。男女問わず、親切に級友に接することによって、慕われている。
 授業でのルール(学習規律)を進んで守ろうとしている。自分勝手に発言せず、黙って挙手する、指名されたら「はい」と返事をし、起立して椅子を入れてから発言する。授業に集中して取り組み、級友の発言を聴きながら、自分の考えと照らし合わせて考えたり、よい考えを取り入れたりしようとしている。

○本教材の範読時には、BGMが有効であることが確認できた。
 授業への工夫にも記載させていただいたように、BGMを用いると効果的である。子どもたちは、教材の世界に引き込まれていくことが、範読しながら手に取るようにわかった。

○正義心の強いガリューを中心に据えるよりも、わがまま勝手なジェラールが変わっていくさまを捉えた方が、より人間理解を通して、価値理解につながると考えた。
 森の番人のガリューは、自分の使命感や正義感において、正しいことを主張している。もっともなことである。しかし、人間は、正しいことであるとわかっていても、よいことであるとわかっていても、ときにはできなかったり、いい加減になってしまったりすることもある。ジェラールは、王子とはいえ、自分勝手に立ち振る舞う姿と、牢屋に入れられて何が大切なのかを深く考えることになる姿から、ジェラールについて焦点を当てて捉えた方が、本授業において、子どもたちの学びが深まるのではないかと考えた。

わたしのおすすめ教材(2)「手品師」(第6学年)

1.学習指導案

(1)主題名 誠実に生きる  A[正直、誠実]

(2)教材名 「手品師」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)ねらい
 大劇場へ行かないと決意した手品師の思いを考え、後ろめたさや後悔のない、誠実に明るい心で生活をしていこうとする心情を育てる。

(4)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 誠実について考える。
○誠実の意味について考えてみましょう。

○主題名を黒板に書き、「誠実」の意味を伝える。




2 教材「手品師」を読んで話し合う。
○手品師はどのような気持ちで、男の子に「明日も来るよ」と約束したのでしょう。
・どうせ暇だから
・男の子がしょんぼりしている
・男の子が元気になってほしい

○黒板の右上に、場面絵①(手品師と男の子を描いた絵)を貼る。
○「手品師」の気持ちの移り変わりを考えながら読むように指示する。余韻をもつ。
○場面絵②と発問カードを貼ってから発問する。発問後、考える時間を十分に取る。
○困っている人や悲しんでいる人がいると、手を差し伸べたくなる手品師の温かさをつかませる。

○大劇場への誘いを迷いに迷う手品師の心の中は、どんなだったでしょう。
〔大劇場への気持ち〕
・やった、これで大舞台に立てる
・貧乏から抜け出せる
・こんなチャンス2度とこない
〔男の子への気持ち〕
・約束を破るのはよくない
・男の子が悲しむ
・男の子には私しかいない

○場面絵③④と発問カードを黒板中央に貼ってから発問する。
○大劇場への気持ちを発問カードの右側に、男の子への気持ちを左側に分けて板書する。
○大劇場へ行きたいとする気持ちと、男の子のもとへ行かねばならないという気持ちとの葛藤を考えさせる。
○どちらの考えも正しいとの立場を取る。
○方法論の発言の場合は、本題に戻していく。

◎大劇場に行かないと決意させたのは、どのような思いからでしょう。
・約束を守ることが大切
・男の子との約束を破ると、もういつ会えるか分からない
・自分のことも大切だが、男の子のことも大切
・人を悲しませてまで自分が幸せになることはよくない

○場面絵⑤⑥と発問カードを貼ってから発問する。
○自分の良心に従って行動することができた人間としてのすばらしさ、誠実な心の大切さを考えさせる。
◇大劇場へ行かないと決意した手品師の思いに共感することを通して、誠実に明るい心で生活することの大切さを考えることができたか。(発言)




3 これまでの自分の生活を振り返る。
○誠実に取り組んでよかったなと思うことはどのようなことですか。自分の生活に振り返って考えてみましょう。
・自分の利益より、相手のことを考えていきたい。
・手品師のように、誠実に生きていきたい。
・損得関係で行動しない。
・約束は守る。

○展開前段を振り返ってから課題を示す。
○今回は、発表しないことを伝える。
○発問後、ワークシートに記述させる。
○考えが思い浮かばない児童には、児童のよいところを伝えたり、板書を見ながら助言したりする。
○自分ができたこと、できなかったことを振り返ることによって、今後の誠実な生き方への糧としたい。
◇後ろめたさや後悔のない、誠実に明るい心で生活していくこと大切さについて、自分との関わりで振り返ることができたか。(ワークシート記述)


4 教師の説話を聞く。
○子どもの誠実なる行いについて紹介する。

○日常生活での誠実なる行為を称え、道徳的価値を高める。

(5)本時の評価
○大劇場へ行かないと決意した手品師の思いに共感することを通して、誠実に明るい心で生活することの大切さを考えることができたか。(中心発問での発言)
○後ろめたさや後悔のない、誠実に明るい心で生活していくことの大切さについて、自分との関わりで振り返ることができたか。(展開後段でのワークシート記述)

2.本時の板書

3.授業記録

【展開前段】

手品師はどのような気持ちで、男の子に明日も来るよと約束したのでしょう。
01さん あまり売れていない暇な手品師だから、小さい男の子が一人でしょんぼりしていてかわいそうだから、ぼくが手品を見せてあげようと思った。
02さん いつもは売れていないから、誰にも手品を見せることはできないけど、小さな男の子でもお客さんだから、手品を見せてあげようと思った。
03くん 01さんと似ていて、明日暇だから、来てやろうと思った。
04くん どうせ誰も見てくれないんだから、見てくれるんだったら精一杯やってやろう。
05さん 02さんと似ていて、暇だし、この男の子も一人のお客さんだから、手品を見せて元気になってほしい。
06さん 05さんと似ていて、男の子が自分の手品を見て喜んでくれたから、明日ももう一度見せてあげたい。
07さん もう二度と男の子のかわいそうな顔を見たくない。
08くん 明日暇だし、ただ街を歩いているよりもいいか。
09くん 約束して、明日また行かなかったら、男の子は悲しむだろう。
10さん 自分の手品で男の子が明るくなってくれるなら、自分の手品をもっとやってあげたい。
11さん 10さんに似ていて、あまり売れていない手品だけど、たった一人でも見てくれるんなら頑張ろう。
12さん あまり売れないということはおもしろくないということだけど、その男の子は明るさを取り戻していたので、しかし、明日来なかったら、また暗い顔になるだろう。
13くん 手品をして喜んでくれるのだったら、精一杯やろう。
 第1発問では、手品師の自己都合や充実感といった自分自身に対する気持ちと、男の子への気遣いという相手に対しての気持ちが、子どもたちから表れました。
 01さんは、「しょんぼりしていてかわいそうだから」と発言していますが、売れない手品師ということで手を差し伸べていると考えられます。もし、売れっ子の手品師であったら、男の子の前で手品を見せていないと考えることもできます。02さん、03くんも同様に続きます。04くんは「見ている人がいるなら精一杯頑張りたい。」と考えに少し変化が見られました。05さんは、「男の子に元気になってほしい。」と変化していきました。06さんは、喜んでもらった嬉しさ。07さんは、男の子を悲しませたくないと続きました。10さんは、男の子の気持ちによく寄り添って考えています。

【第2発問】

大劇場への誘いを迷いに迷う手品師の心の中は、どんなだったでしょう。
14さん 大劇場だったらこれから苦労しないで豊かに暮らせるけど、男の子はまだ子どもなのに、お父さんが死んでお母さんも帰ってこないから、ちゃんと子どもの方に行って、その悲しみを自分が埋めるというか……
15くん 大劇場に行っていたら嬉しいかもしれないけど、子どもが喜んでもらえない、どうしよう。
16さん 大劇場で手品をして売れっ子になったら嬉しいけど、男の子をまた悲しませるわけにはいかないから、男の子との約束を優先したい。
17くん 大劇場でやるのは二度とないチャンスだけど、男の子との約束を破ってしまうと、人として悪いから。
12さん 14さんと似ていて、大劇場に行けば自分が有名にすぐになれるけど、男の子の方へ行って、少しずつ人気を増やして、代わりの力ではなく自分の力でお客を増やしていきたい。
10さん 大劇場に行けば、自分がすごい有名になると思うけど、男の子が自分の力で明るくなれるのなら、男の子の方を優先したい。
18さん もしもこの電話が、男の子と約束する前にかかってきたとしたなら、大劇場に行ってもよかったと思うんだけど、先に男の子と約束したのだから、そっちを優先する。
19くん 大劇場で手品を披露するのは、二度とないチャンスなのだけど、そこでもし売れたら仕事が忙しくなって暇がなくなって男の子のところに行けなくなって、二度と男の子の笑顔を見ることができなくなる。
05さん 自分にとって大劇場は夢だけど、自分の手品で喜んでくれた男の子にとっては手品を見ることが夢なので、約束をしてしまったので、優先的に男の子のところへ。
01さん 手品師は、人のことを笑顔にさせるのが仕事だから、大劇場に行けばたくさんの人を笑顔にすることができるけど、それは他の手品師でもできることなので、男の子の方には自分にしか行けないので、自分は男の子の方に行かないと、男の子は悲しんじゃう。
02さん 大劇場に行けば確かに売れっ子になるだろうし、今みたいな暮らしはしなくていいけど、明日男の子が手品師のことを楽しみに待っている姿を目に思い浮かべると、約束を守らなきゃならない。約束を破ってはいけない。
11さん 大劇場には自分でなくてもできるけど、男の子には、自分しか手品をすることができない。
19くん 男の子には明日も来るって行って約束したのに、もし自分が明日も来ると言われて来なかったらショックだし、男の子がもし自分が来なかったら、どんなことをするかわからないから、行かないといけない。
 最初に発言した14さんは、レポートの活字にすると平坦なイメージになりますが、実際には、じっくり、間を置きながら(考えながら)話していっています。皆は話し手の方を見ながら発言を聴いているので、14さんの「~~かもしれないけれど~~」という対比的な考え方を発言したことにより、2人目からの発言者も同様に発言していくといった傾向が見られました。
 12さんは、「代わりの力ではなく、自分の力でお客を増やしていきたい。」と発言しました。芸能関係の仕事をしていることから、自分の思いが込められているようでした。第1発問においても、「あまり売れないということは面白くないことだけど」と考えているようにです。
 01さんは3つのキーワードを提示しました。「手品師は人を笑顔にさせるのが仕事」「大劇場は他の手品師でもできる」「男の子には自分にしかできない」この考えは、第3発問への思考に、大きく影響を与えていくこととなります。
 16さん、17くん、約束を守ることの大切さについて言及しました。さらに、02さんは、その考えをより強くしていきました。誠実とは、約束を守ること。この考えは、展開後段の自己への振り返りにもつながっていきます。
 最後に、19くんの考えに着目してみます。第1発問では、「明日暇だし、ただ街を歩いているよりもいいか。」第2発問では「大劇場で売れたら、仕事が忙しくなって暇がなくなって男の子のところに行けなくなって、二度と男の子の笑顔を見ることができなくなる。」と発言しています。どちらも、手品師の立場に立った考えです。
 道徳の授業では、あまり発言の見られなかった19くんですが、第1発問、第2発問と、途中からではありますが、挙手をしていきました。彼の真剣な眼差し、発言に、私は感動しました。最後に、11さんが発言して、第3発問に入ろうとしたとき、19くんが再び挙手をしました。時間的なこともあって、次の発問に入りたかったのですが、19くんの目が訴えています。「言いたい、どうしても語りたい」と。
 私は彼を指名しました。すると「男の子が、もし自分が来なかったら、どんなことをするかわからないから、行かないといけない」と発言しました。今までは手品師の立場からの発言でしたが、今度は相手の立場に立った、男の子のことを真に考えたからこその発言でした。「どんなことをするかわからないから」との発言は、この教材からはかけ離れている、飛躍し過ぎると捉えてしまうかもしれません。しかし、そうでしょうか。私は、この言葉に、子どもたちの本音を感じます。裏切られたら。何も信じられなくなったら。そのとき、人間はどうなるのでしょうか。

【中心発問】

大劇場に行かないと決意させたのは、どのような思いからでしょう。
20くん 男の子をこれ以上悲しませるのはしたくない。
06さん 男の子が約束を破られたために、いろいろな人を信じられない性格にはしたくない。
21さん 今自分の一番しなくてはならない仕事は、大劇場のステージの穴を埋めることではなく、男の子の心の穴を埋めることだ。
15くん 劇場はまたあるかもしれないけど、男の子とは今度いつ会えるかわからないから、男の子の方を決意した。
09くん 21さんに似ていて、今自分にしかできないことは、男の子を元気にさせること。
10さん 大劇場に行くことは自分だけの夢だけど、男の子のところに行ってあげれば男の子に夢を見せてあげられる。
13くん 人を楽しませることが手品師の仕事だ。
04くん 13くんに似ていて、人を楽しませることが手品師の仕事だから、より困っていて悲しんでいる男の子を楽しませることだ。
02さん 大劇場のステージで披露できるのも最初で最後のチャンスかもしれないが、この男の子との約束を破ったら、男の子に会えない確立の方が、大劇場に出られない確率より高いから。
01さん 13くんと04くんと似ていて、手品師は人を楽しませるのが仕事だから、男の子を悲しませてしまうのは、手品師の仕事と逆になってしまうから、手品師失格になってしまうから、男の子の方に行く。
 第2発問での最後の19くんの発言は、第3発問において、06さんに受け継がれていきます。「人を信じられない性格にはしたくない」と。
 同じく、第2発問での01さんに発言も、21さんに受け継がれていきます。「大劇場のステージの穴を埋めることではなく、男の子の心の穴を埋めることだ」と。21さんが発言した後、教室のあちらこちらから、うなずきの声があがりました。
 そして、13くんは、自分の信念を語るように「人を楽しませることが手品師の仕事だ」と言い切りました。その発言は堂々たるものでした。手品師の仕事に対する誠実さが感じられました。13くんの発言を受けて、最後に01さんは語りました。「手品師は人を楽しませるのが仕事だから、男の子を悲しませてしまうのは、手品師の仕事と逆になってしまう、手品師失格となってしまう」と。01さんは、第1、2発問と、一貫して男の子へのやさしさを説いています。しかし、第3発問では、手品師という職業への誠実さをも説きました。手品師として、人間として、生きるべき道を。
 「自分に誠実であれ、相手に誠実であれ、仕事に誠実であれ。」仕事もしたことのない、たった11歳の子どもたちが、この道徳の授業を通して、訴えているように感じました。

【展開後段】

誠実に取り組んでよかったなと思うことはどのようなことですか。自分の生活に振り返って考えてみましょう。
17くん ぼくは、先に友達と約束したことを、後に約束した方が楽しいからといって、先に約束した方を破ってしまい、友達に嫌な思いをさせてしまいました。しかし、この話を聞いて、楽しいからといって、後の約束を守る人ではなく、先に約束したほうを優先したいです。
01さん 私は、友達に勉強を教えているときに、もう一人の友達から教えてと言われたときに、その子の方へ行ってしまって、最初の友達が「何でそっちに行ったの」と言われて、自分は最初の友達に悪かったと思いました。手品師のように約束を守れる人になっていきたいと思いました。
20くん お祭りに行ったとき、おみくじで2等を取り、ラジコンをもらった。その後、小さな男の子がヘリコプターの羽根が割れて泣いていたところを見て、ラジコンをあげたら、とても喜んでもらって、よかったと思った。
22くん ぼくは、今まで損得で考えて行動することが多かった。「この誠実に生きる」を考えて、これをやったら得をするなど考えず、自分がやってもらったら嬉しいことを相手にもやってあげることが重要だと思いました。
06さん 私は、自転車置場から自転車を取り出そうとして他の自転車も一緒に倒してしまったおばあさんを手伝いました。その時は習い事に行く途中でした。手伝って習い事の教室に着いたときは、始まる時間には遅れて、先生に怒られてしまいました。しかし、よいことをしたということは変わらないから、手伝ってよかったなと思いました。この話を学んで、私も手品師のように、自分の利益より人のことを考えられるような人になりたいです。
16さん 私が5年生のときに、保育園との交流会を行った、保育園の人たちに楽しんでもらえるようにどうすればよいか、私は友達と休み時間をつぶして話し合った。他の人たちは校庭で遊びに行ったが、私と友達は計画を立てた。すると、保育園の交流のときに、保育園の人たちがとても喜んでくれた。このことから私は、誠実に物事に取り組むことの大切さを学んだ。
18さん 体育が苦手で、前はいつも逃げていて、自分の中では得(らく)をしていました。でも、今は、逃げないで体育をやっているので、前よりも少しできるようになってきました。だから、何事にも逃げないで、損得関係なく、やっていきたと思います。

4.授業を終えて

○誠実とは… 自分にとって、相手にとって、仕事にとって誠実であるということが、子どもたちからの学びとして浮かび上がりました。

○今回の授業は、教師の発言を極力控えて、児童たちの発言にある程度ゆだねてみることにしました。しかしながら、教師の適切な補助発問や、児童の発言を受けて問いかけていくこと等、教師の適切な問い返しや補助発問が大切であることがわかりました。また、第2発問で、葛藤する二つの気持ちについて役割演技のペア学習を取り入れることが必要であることを、授業後に考えさせられました。

○二か月後に、「杉原千畝」(日本文教出版「新・生きる力」6年)の教材を用いて、D[よりよく生きる喜び]の学習を行いました。中心発問では、子どもたちから、「困っている人を助けたい」「見て見ぬふりはできない」「人として正しい生き方をしたい」「胸を張って生きたい」との声が挙がりました。このように、誠実に生きることが、人間として、よりよく生きることにつながってくるのではないかと考えました。

美術館で「ブラタモリ」

 テレビ番組の多くは司会役と参加役に分かれています。司会の進行にそって、ひな壇や解答席などに座る参加役が、答えを間違ったり、笑ったり、時に涙ぐんだりします。でも最終的には「ガッテン!」という「あらかじめ想定された答え」に行きつきます。
 一方、ギャラリートークはそういきません。最初から決まっている「答え」を目指すのではなく、参加者自身が活動を通して変化することがねらいです。進行役が想定していない意見や考えは歓迎されます。対話の中で作品について思いもしなかった解釈が生まれることもあります。
 テレビ番組で例えれば「ブラタモリ」のような感じでしょうか(※1)。ゆるやかなテーマのもとにブラブラと歩き回り、そこで何か見つけたり、地域の専門家と対話したりします。その過程で、何気ない道の段差や斜面の穴などが新しい意味をもち始めます。
 先日、ある美術館で行ったギャラリートークもそんな感じでした(※2)。依頼内容はとても緩やかで活動はお任せ、「時間は2時間、会場も小さいのでお客さんは多くて10名、役場の職員や学校の先生などが集まるはずです」。展覧会は大好きな「岩崎永人」。流木を用いて人体などをつくっている作家です。
 好きにやってよし、しかも大好きな作家とくれば、私の方程式としては「ブラタモリ」です。参加者と一緒にブラブラと館内を歩きまわりながら対話を楽しみ(※3)、状況に応じてアクティビティを取り入れます(※4)。何か生まれればそれでよし、うまくいかなかったら「ごめんなさい!」で……。

① テーマ

 行き先も分からずに、作品と対話するのは苦手なので、最初に緩やかなテーマを決めることにしました。「我々はどこから来て、どこに向かうのか考えてみましょう」と提案しました。岩崎さんの作品は、何か私たち自身の在り方について考えさせてくれると思ったからです。本当のところは、最近見た映画「ブレードランナー2049」のせいかもしれません(※5)……「人間とは何か」を問うテーマだったのです。

② 導入

 最初のアクティビティは、緊張している心をほぐすことが目的です。岩崎さんの風景画も展示してあったので、テーマに関連させて「あなたの原風景は?」としました。「空を見上げた記憶」「祖母の庭」「稲刈りの風景」「田んぼの小川で遊んだ記憶」などが返ってきました。自分自身との関わりから鑑賞する気持ちにはなってくれたと思います。
 次に、岩崎さんの油絵について語り合いました。風や匂いに関わる発言が出て、視覚だけでなく他の感覚を呼び起こすことにつながりました。ただ、この場面は参加者に「何をいっても認められるのだ」という雰囲気をつくることが何より大切です。作品解釈に深入りせず、早々にメイン会場の2階に向かいました。

③ 展開

 2階には8体の作品がフロアに並んでいます。しばらく見た後、一つの作品を取り出し、少し意見を聞いてみました。
 「目は表されていないのに、作品と視線が合います」。中学生の鑑賞会でも同じような意見が出ていました(※6)。「視線が合う」とは、「自分が見られている」、つまり自分を見つめることかもしれません。
 作品の中心を指さして、「中に何が入っているのでしょう?」という発言もありました。私は知っていたので、すぐに「骨のように芯材の枝が入っています」と答えました(※7)。すると「そういうことではなくて、この人の意思とか、作り手の思いとか……」なるほど、作品の中に入り込んで考えているのですね……。

 「自分を見つめ」「作品の中に入り込んで考えている」のであれば、一つの作品で話し合うよりも、自分の好きな作品と対話した方がよいでしょう。2階に上がったときに、8体のそれぞれに向かって参加者が近づいていく様子もありました。そこでトークをやめ、定番のアクティビティ「どの作品が一番好きですか、その理由は?」に切り替えました。
 結果は興味深いものでした。例えば「私はこれです」「理由は?」「一緒に踊るのにちょうどいいからです」。奥様と社交ダンスをやっている役場の方でした。作品と一体化し、運動感覚を働かせているのでしょう。
 同じ作品に対して「これなら勝てそう!」という参加者もいました。「えっ……なぜ?」「私より身長が小さいから……」なるほど、日々自分と戦っているのかなあ……。
 「私はこれです、唯一上向いている作品で、何か前向きな印象があります」。作品の視線を追う発言で、最初の発言「視線が合う」の発展のようです(※8)。作品の前向きさを自分自身と比べているように感じました。
 作品を通して自分を語る意見が多かったのですが、「塗料を塗っているのに『塗った感』がない」「こんなにたくさんの流木をどうやって集めたの?」(※9)など表現方法や制作過程に興味を持つ人もいました。様々な意見をまとめるのは難しいと感じたので、無理に結論付けず、一階に降りることにしました。

 降りていくと、ちょうど出口の手前に、二体が落ち葉を拾いながら対話しているような作品がありました。そこで「ふきだし」のアクティビティを思いつきました。「この二人は何をしゃべっていると思いますか?」。すると「枯れ葉を拾いながら、木は土から栄養をもらって、花や葉、そして実をつけます。でも、葉は枯れ、落ち、そして土に帰ります。私たち生物はすべて同じで、結局は土から来て、土に帰る、の連続です」。少しテーマに近づいたようです。

④ 終末

 展示会場から出た後、一人ひとりに感想をまとめてもらいました。ここで、参加者は鑑賞を通して深く考えていたことが分かりました。
 「晩秋に 流木見つめ 起結問う 土から生まれ 土に帰すなり」。今回のトークは人間の起結を問う内容で、作品から輪廻転生的な意味を感じたという短歌です。短歌にしたのは、この美術館が万葉集の石碑が配置されている公園(※10)に設置されているからです。参加者は、作品だけでなく、美術館の場所からも考えていたのですね。
 その他「大地に返って、芽となり木となり、枝となり、それの繰り返し」「自分、子ども、孫と続いていく営み」「答えを見つけ出そうとする日々の繰り返しこそが答え」など生命や世代の連鎖、人生の意味に関する感想もありました。

 

 成り行き次第のギャラリートーク、参加者が全身の感覚を働かせながら感じ、考え、対話し、何かしら新しい発見をしてくれたのであれば幸いです。少なくとも私は、岩崎さんの作品に対する見方が変わるという成果を得ました。始まる前は、自然としての人、朽ちる時間、環境などだろうと漠然と考えていましたが、生命の輪廻や世代を超えた人の営みまで感じることができたのです。
 美術館での鑑賞活動は、単なる作品解釈や学力育成ではありません。自己、社会、歴史などに広がって自分の生き方や経験を再構成し、新たな問いを生み出すものだと思います。今回もそんな実感が味わえた「美術館で『ブラタモリ』」でした。

 

※1:あくまで個人的な喩えです。「ブラタモリ」も構成や脚本、念入りな準備が行われているはずです。
※2:「大衡村ふるさと美術館」。地元作家菅野廉の記念絵画を常設展示しています。近年「何でぇーマンホール展」などの意欲的な展覧会で来館者を増やしています。
※3:進行役は作家や作品に関する知識が必要です。ただ初めて出会う作品ばかりなので、同行する美術館の方を頼ることにしました。ずるい?かな。
※4:まあ、こういうと格好がつきますが、自分のできることは知れてますので、居直りかもしれません。もちろん、手駒を増やす努力は必要ですが…。
※5:そんな理由でいいのでしょうか?いいと思います(^^)
※6:「目がないのに、どこかを見つめているようで不思議でした」大衡中学校「美術通信」2019.11.4 そのほかに「見る角度を変えると表情が変わっているように感じました」というのもありましたが、同様の発言が参加者からありました。
※7:ちょうど館の方に教えてもらったばかりで…(恥)。
※8:これも中学生が感じていたことでした。「上を向いている人をスケッチしていると、作品の感情も見えてきて、前向きに明るい未来を見つめているように見えました」前掲註6 スケッチや模写は作品との対話の手段として考えることができます。
※9:一つ一つの流木は、もとは大きいのですが、山梨の山々から富士川に流れ、海に流れ着くまでもまれて、削られて小さく形成されたものです。岩崎さんは、これを山のように集めて、そこから一つ一つの形や色を吟味して作品をつくっています。
※10:「昭和万葉の森」。万葉集に詠まれる草木を通して、歴史・文化・自然・科学等が学べる森林公園です。園内には万葉集の歌を刻んだ石碑や、万葉茶屋、パークゴルフ場、わんぱく広場などがあります。

わたしのおすすめ教材(1)「母の仕事」(第6学年)

1.学習指導案

(1)主題名 仕事とは  C[勤労、公共の精神]

(2)教材名 「母の手紙」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)

(3)一人一人に対する願い
・目立たなくてもいい。自分に誇りをもって、仕事や役割を努めていこうとする気持ちを全うしてきた自分自身の気持ちを大切にさせ、来たる将来につなげてほしい。(08さん)
・自分のお母さんの仕事について理解を深め、お母さんの姿を想像していくことによって自分の心が高まり、自分の将来に生かしていきたいとする心情を育てたい。(09さん)

(4)ねらい
 母の仕事を通しての私の思いを考えることを通して、人々のために働いていくことの素晴らしさについて考え、将来の自分に生かしていこうとする心情を育てる。

(5)展開の概要

学習活動
(○主な発問 ・予想される児童の反応)

○指導上の留意点 ◇評価


1 仕事について考える。
○仕事は、何のためにするのでしょうか。
・生活をするため
・夢をかなえるため
・やりがい
・人の役に立つため

○児童の発言の最後に、黒板に書き記す。
○主題名を黒板に書く。




2 教材「母の仕事」を読んで話し合う。
○腰の痛いお母さんを見ながら、私はどのような気持ちになったでしょう。
・もっと楽な仕事をすればよい
・母を楽にさせてあげよう
・なぜ、そこまでするの

○黒板の右下に場面絵①を貼って、私とお母さんを紹介する。
○範読後すぐに発問せず、余韻をもつ。
○発問カードを貼ってから発問する。
○発問後、考える時間を十分に取る。緑チョークで囲む。

○お年寄りの人たちは、お母さんが来るのをどのような気持ちで待っていたのでしょう
・ありがたい
・待ち遠しい
・きれいになれるから嬉しい

○場面絵②-1、2と発問カードを黒板中央に貼ってから発問する。
○お年寄りの立場から考えさせることを明確にするため、発問カードの上にあえてチョークで「お年寄り」と明記する。
○黄色チョークで囲む。
○お年寄りの人たちの気持ちを考えることを通して、私の心に勤労に対しての意識の変化をもたせる。

◎微笑みながら話すお母さんを見て、私はどのようなことを考えたでしょう。
・役に立てるという幸せ
・仕事への使命感
・お母さんのようになりたい
・お母さんを労わりたい

○場面絵③を黒板左端上に貼る。発問カードを貼ってから発問する。赤チョークで囲む。
○お母さんの仕事に対する思いをもとに、勤労や生き方について考えを深めさせる。
◇母の仕事に対する思いを考えることを通して、人々のために働いていくことの素晴らしさを考えることができたか。(発言)




3 自分自身の生活を振り返って考える。
○お仕事をするということは、どういうことでしょうか。このお話を通して考えてみましょう。

○展開前段を振り返ってから課題を示す。
○発問後、ワークシートに記述させる。
○書くことが進まない児童には、板書を見ながら考えさせる。
○机間巡視の際に、ねらいに達する考えを多面的に探していく。発表させたい児童には、声掛けをして了承を得る。
◇人々のために働いていくことの素晴らしさや、将来の自分に生かしていきたいとする考えを深めることができたか。


4 教師の説話を聞く。
○教師としてここにいる喜びを語る。

○仕事は大変なことも多いが、それ以上にやりがいがあり、幸せであることを伝える。

(6)本時の評価
○母の仕事に対する思いを考えることを通して、人々のために働いていくことの素晴らしさを考えることができたか。(中心発問での発言)
○人々のために働いていくことの素晴しさや、将来の自分に生かしていきたいとする考えを深めることができたか。(展開後段でのワークシート記述)

2.本時の板書

3.授業記録

【導入】

T 仕事をするのは、何のためにするのでしょうか。
01くん 生活をするため。
02くん 食べる物を買うため。
03さん 自分の夢を叶えるため。
04さん 人のために役立つため。
05くん 世の中がうまくまわっていくため。

【展開前段】

腰の痛いお母さんを見ながら、私はどのような気持ちになったでしょう。
06さん このままじゃ、体が悪くなってしまうから、無理をしないで、もう少し休んでほしい。
07さん 06さんと似ていて、私はお母さんのような家のことはできないから、もう少し休んでほしい。
08さん お母さんがこんなに疲れているということは、お母さんは自分の役割を精一杯やっているということだから、お母さんの疲れを少しでも癒してあげたい。楽にさせてあげたい。
09さん 腰が痛いたいのに、市役所の仕事を、何でそんなつらい仕事を、そこまでできるのだろう。
05くん お母さんも自分のやりたいこともあるだろうし、お母さんのためにも、もう少し仕事を減らすか、他の仕事とか、体がもう少し楽な仕事をしてほしい。
 第1発問では、お母さんの体を心配し、楽になってもらいたいという発言が多く見られました。09さんは、「なぜ、こんな大変な仕事なのに、そこまでできるのだろう」という問いをもちました。

【第2発問】

お年寄りの人たちは、お母さんが来るのをどのような気持ちで待っていたのでしょう。
10さん 早く来てくれないかな。
11さん 自分たちは他の人と比べて体が少し不自由だから、お風呂とかも入れないけど、お風呂に入れてくれたり、やさしく気遣ってくれたりするから、洗った後の体だけではなく、心の中もきれいになる。嬉しい。
12さん カレンダーを見るたびに、ドキドキワクワクする。待ち遠しい。
08さん 11さんと似ていて、看護師さんたちが来ると、体もきれいになるけど、自分の気持ちも、すがすがしくなる。
13さん 自分の身内でもないのに、精神的にも身体的にも大変な仕事をしてくれて、感謝の気持ちでいっぱい。
14さん 11さんと似ていて、自分たちはそんなに体が思うように動かないから、こんなに重い体なのに、3人で浴槽まで運んでくれて、少し申し訳ない気持ちもあるけど、洗ってくれて嬉しい。
15さん 普通の人なら、そんな大変な仕事をしたくないだろうけど、自分たちの動けない体を運んでくれて、汚れた体を洗ってくれて、嬉しくて、ありがたい。
T (挙手をやめた09さんを見て)09さんは?
09さん 皆と同じ。体の不自由な私たちのためにそこまでしてくれて、本当にありがたい。
 第2発問では、私の気持ではなく、介助を受ける側の立場を考えてみました。介助を受ける側である相手の気持ちになって考えることが、大切だと考えたからです。この授業の1ヶ月前に、デイケアセンターでの交流体験を行いました。実際に、お年寄りの方々と交流した体験が、今回の授業において児童の思考を深めていくと考えたからです。道徳の授業では、体験活動をして1時間単位を終わるよりも、体験したことをもとに、皆の気持ちを聞きながら、伝え合いながら、自己の考えを深めていくことが大切だと思いました。
 介助を受ける側のお年寄りの気持ちに寄り添って考えた結果、うれしい、ありがたいという介助者に対する感謝の気持ちが多く表れました。

【中心発問】

微笑みながら話すお母さんを見て、私はどのようなことを考えたでしょう。
16さん お母さんの仕事は大変だけど、お年寄りのために頑張っているから、尊敬できる。
10さん 私は、最初は嫌だったけど、お母さんがやりがいを感じて頑張っているので応援したい。
06さん 自分のことよりも人のことを大切にしている。
T (挙手をやめた17さんを見て)17さんは?
17さん 10さんと同じで、お母さんにとって、その仕事はやりがいがある。
09さん お母さんが人のために頑張っているから、皆に自慢できる。
14さん 16さんと少し似ていて、お母さんの話を聞いていると、大変な仕事に聞こえた。しかし、疲れて帰ってきても、しっかりと家事もやっていて、将来は、そんなお母さんのようになりたい。
08さん お年寄りの人は、お母さんのこの仕事で支えられて、お母さんは、そのお仕事をした分のお年寄りの人の笑顔に支えられて、このお仕事をずっと続けていられるんだなぁ。
05くん お母さんの仕事はとても大変だけど、それのおかげで、普段お風呂に入ることのできない人はすごい笑顔になるし、お母さんもすごいやりがいがあるから、お母さんの仕事は皆が笑顔になる素晴らしい仕事で、実は尊敬するし、自分も頑張っているお母さんの腰をもんだり家のことを手伝ったりして貢献したい。
 第2発問での、相手が喜んでくれている気持ちや感謝の気持ちが子どもたちの心に深く浸透していった結果、中心発問では、喜ばれる嬉しさや、お役に立てたという心の高まりが、お母さんの姿を通して、子どもたちに表れています。それが、仕事へのやりがいと捉えたようです。このお話のお母さんと同じ仕事をしている母を持つ09さんは、「自慢のお母さん」と答えました。09さん以外の子どもたちのお母さんは全く違う仕事をしています。しかし、違う仕事をしていても、同じように考えることができるのは、読み物教材を通してじっくりとねらいとする道徳的諸価値について考えたからこそだと私は考えます。ここで子どもたちは、仕事へのやりがいや、社会貢献を学んでいったように思われます。

【展開後段】

お仕事をするということは、どういうことでしょうか。このお話を通して考えてみましょう。
03さん 私も、このお話のように、1、2回で良いから、背中を押してなどと母や父に言われます。私はいつも疲れが取れるように、何回もマッサージをします。なぜかというと、やさしさだけの気持ちだけではなく、お疲れ様やいつも家族に尽くしてくれてありがとうという気持ちを伝えたいからです。母の日や父の日に手紙で伝えているのですが、言葉だけではなく、行動に表したいからです。そうすると、母や父は喜んでくれるので、また今度も、マッサージをしたいと思います。
→手紙で感謝の気持ちを伝えるよさ、行動に表すよさを、皆に伝えたかったので、ねらいとは外れるが発表してもらった。
18さん 私の母は、主婦をしています。主婦は、家事などをして、家族を支えることです。私は、主婦は仕事に入らないと思っていました。しかし、このお話を通して、誰かのために精一杯尽くして、自分だけではなく、周りの人を支えられることが仕事だと思いました。母は、全力で仕事に取り組み、家族を毎日毎日支えています。だから、主婦も立派な仕事だと思いました。
→主婦も大切な仕事であることを皆に伝えたかったので発表してもらった。
19くん ぼくは、このお話を通して、仕事の大切さがわかりました。仕事は、責任をもって成し遂げなければいけないものであり、自分勝手な理由で、辞めたり休んだりしてはいけないと思いました。将来、ぼくが仕事を選ぶときには、やりがいを感じられるかなどを考えたいと思いました。
→価値に迫っている。同じような内容を多くの子どもが書いていた。発言は少ないが、展開前段でしっかりと考えている姿が伺えているので、代表して発表してもらった。
20くん ぼくは、この話を通して、ぼくもいつか社会に出て仕事をするから、やりがいのある仕事に就こうと思いました。今、ぼくのお母さんも疲れているから、腰を押したり、肩を揉んだりしようと思いました。
→多くの子どもたちが書いていた「やりがい」という言葉の大切さを共有したいので、代表して発表してもらった。先週、両親に叱られているので、道徳で活躍の場を提供したかった。
<未発表分 本時では時間の関係上発表できなかったが、紹介したいもの>
21くん ぼくの母は、仕事をしています。でも、近頃、新しい仕事のやり方を覚えなければならないので、帰りがだんだん遅くなっていて、ぼくは、母が帰ってくると、「ご飯早く」と言ってしまいます。でも、このお話を通して、これからは、母が少しでも楽になるように、ご飯の準備など手伝っていきたいです。
→お母さんと二人暮らし。この子の思いに涙が出る。
22さん このお話を通して、仕事をするということは、「責任を持つ」ことだと思いました。私たちが今やっている係とかの仕事にも責任があります。だから、今やっている仕事を精一杯やって、将来の仕事につなげていきたいです。
→将来の仕事と、学校生活での仕事とを共通事項として考えた。正義感が強く、自覚と責任を持って取り組むことができた。
23さん 私は、仕事に就くのだったら、楽な仕事をしたいと思っていました。今日の授業を通して、今までの自分が情けないと思いました。私は、自分に大変な仕事であっても、人の役に立つ仕事をした方がやりがいを感じられると思いました。そういう仕事に将来就こうと考えました。
→素直な気持ちが嬉しい。毎回の道徳の授業で自分の至らなさを発見し、善くしていこうと取り組んでいた。
08さん 仕事とは、生活をしていくためにやらなくてはならないことだと思っていたけれど、自分の仕事にやりがいを持って、この社会の役に立つことができるものだと思いました。このお話では、お年寄りの人が、母に支えられていたけれど、母もお年寄りの笑顔によって、仕事を続けていられているので、自分にとって大変でもやりがいのある仕事を見つけて、将来頑張っていきたいです。
→前回も発表したので、今回は発表を見送った。しかし、改めて考えると、発表してもらうべきであった。多面的・多角的に考え、思いやりの気持ちに溢れ、将来頑張っていきたいと、これからの人生を明るく希望のあるものにしているから。
09さん このお話を通して、仕事をするのは、自分自身が生きていくためだけではなく、他の人が生きていく、喜んでもらうためだと考えました。私の母も、同じような仕事をしています。毎日、夜遅くに家に帰り、家事をしてくれています。そんな母に感謝の気持ちがあります。また、おじいさんやおばあさんも、母のことをとても感謝の気持ちでいっぱいだと思います。
→プライバシーに関わりそうだったので発表を見送ったが、発表してもらうよう声をかけるべきだったと、後悔の念。

4.授業を終えて

<09さん>
 09さんは、「腰が痛いたいのに、市役所の仕事を、何でそんなつらい仕事を、そこまでできるのだろう。→ 体の不自由な私たちのためにそこまでしてくれて、本当にありがたい。→ お母さんが人のために頑張っているから、皆に自慢できる。→ 仕事=自分自身が生きていくためだけではなく他の人へ奉仕=自他共の喜び 母への感謝の気持ち。」と考えを深めていきました。いつまでも母を大切にし、将来に向けて歩みを進めてほしいと願っています。

<08さん>
 08さんは、「お母さんは自分の役割を精一杯やっている=お母さんの疲れを少しでも癒してあげたい。楽にさせてあげたい → 看護師さんたちが来ると、体も心もきれいになる → お年寄りの人は、お母さんのこの仕事で支えられて、お母さんは、そのお仕事をした分のお年寄りの人の笑顔に支えられている = このお仕事をずっと続けていられる → 仕事とは、生活をしていくためにやらなくてはならないことだと思っていたけれど、自分の仕事にやりがいを持って、この社会の役に立つことができるもの お年寄りの人が、母に支えられていたけれど、母もお年寄りの笑顔によって、仕事を続けていられているので、自分にとって大変でもやりがいのある仕事を見つけて、将来頑張っていきたいです。」と考えを深めていきました。
 08さんは、6年生の2学期後半から道徳でよく挙手をするようになりました。「ふくらんだリュックサック」の教材を用いたときからです。その際、第2発問と第3発問で発言を重ねました。毎日掃除を頑張っている08さんだからこそ、自我関与を通して発言に至ったのではないかと考えることができます。今回の授業まで、意欲的に発言が続きました。何かはわかりませんが、08さんは心の中に自信を持ったからだと考えることができます。

[特集]美術教育って必要ですか?

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■P.8-9「気泡《自由の女神》[0515_5555] 斎藤ちさと」 作品解説PDF(194KB)

■P.18-19「村上センセイが行く! 全国美術室探訪 第一回 -京都市立藤森中学校 美術室探訪編-」

■P.18-19「村上センセイが行く! 全国美術室探訪 第一回 -京都市立藤森中学校 対談編-」

■P.27-29「インタビュー 美術家・斎藤ちさと」