2019年(令和元年)12月27日(金)~2020年(令和2年)1月6日(月)まで、年末年始休業期間とさせていただきます。休業期間中もご質問は承りますが、ご回答は休業期間後になります。あらかじめご了承くださいますようお願い申し上げます。
月別アーカイブ: 2019年12月
EdTech(教育×IT)研究発表会及びコミュニティ・スクール報告会 公開授業・シンポジウム
森美術館「未来と芸術展(開催中)」の関連プログラムとして、弊社協賛のラーニングプログラム「とびだす学校ツアー」が開催されます。
詳細や申し込みはこちら
をご覧ください。
大阪教育大学附属天王寺小学校 令和元年度 研究発表会
大阪教育大学附属天王寺小学校 令和元年度 研究発表会を追加しました。
令和元年度 兵庫教育大学附属小学校研究発表会
令和元年度 兵庫教育大学附属小学校研究発表会を追加しました。
小学校 生活:「生き活きうぃーくる」第48回
小学校 生活 ブログ:「子どもがかわる 授業がかわる『生き活きうぃーくる』」第48回
を追加しました。
my実践事例:高等学校 美術/工芸 No.001
my実践事例:高等学校 美術/工芸 No.001 “「フォトリアリスム ~有名人の顔~」(第1学年)”を追加しました。
「フォトリアリスム ~有名人の顔~」(第1学年)
2.目標
意図に応じて材料や用具の特性を生かしたり,表現方法を工夫したりして表すといった創造的な技能を身に付ける。
作品や写真などを様々な観点から鑑賞した上で,伝統的かつ創造的側面から美術の働きや美術文化を深く捉え,そのよさや美しさを創造的に味わう。
造形的な見方・考え方を働かせて,創造活動の喜びを味わい,多様な表現方法や,生活や社会の中の美術の働き及び美術文化と幅広く関わり,主体的に表現や鑑賞の創造活動に取り組む。
3.準備(材料,用具)
4.評価規準
鉛筆や練ゴムなどの特性を理解して,表現したい内容に応じた道具を選択しながら制作できている。
世の中にある有名人の写真を鑑賞し,その色や構図,被写体の表情等から自分が一番魅力的だと感じた作品を選択できている。選んだ写真をよく鑑賞しながら自分の作品に結び付けることができている。
写真から自分の興味のある有名人を選び,自分の主観も活かしつつ,豊かに表現できている。造形的な見方・考え方を働かせ,他者の作品や世の中の作品を鑑賞することができる。
5.本題材の指導にあたって
使用する主な画材は画用紙と鉛筆であり,描く対象が人物の顔であることからも,同様の題材は多くの学校で既に行われているだろう。以下4点から,このようなクラシカルな題材を高校1年生に実施する理由を説明する。
色や形を重視する美術において,基礎となるのはデッサン力である。実践を通して鉛筆のグレーの階調を理解することで,美術の基本となる描写する力が身に付くと考えられる。スマートフォンなどが普及した現代社会において,高校生にアナログな体験をさせることは重要である。カッターで鉛筆を削るなど,手先を使う動きは美術教育において意識して教えたいと考える。
現代において,多くの情報から必要なものだけを選び取る能力は重要である。一昔前に同様の題材を行った際,生徒達は雑誌を用いて主題を選択していた。しかし現在はほとんどの生徒がインターネットを活用して,主題となる写真を選び出している。ある情報を探し出し,選択する能力は主題の生成に不可欠である。
一説によると,フェルメールはカメラ・オブスキュラを用いることで,リアリズムに富んだ新たな画面構成を行った。20世紀に入ると「フォトリアリスム」という新たなジャンルも出現した。写実的かつ平面的なフォトリアリスムの絵画表現は,カメラの仕組みを学び直すことで生まれたのである。発明品を改めて分析し,新たなアイデアを生む姿勢は現代においても重要である。本題材を取り組むことを通して生徒たちは,各メディアの特徴を把握し活用することを学ぶ。メディアの分析と活用は,本題材のテーマであるといえる。
制作過程において生徒たちは,多かれ少なかれ他者と比較して劣等感を感じ,自分の力量に苦しむ。その劣等感が膨れ上がると美術への苦手意識が増し,さらに劣等感に苛まれるという負のサイクルに陥ってしまう。この負のサイクルから脱するためには,作品を褒められるという体験が必要である。本題材の最後の1時間は合評を行い,他の生徒作品の素晴らしい部分を互いに褒め合うという活動を行う。また校内展示を行うことで,授業に参加していない生徒や他の教員から評価を受ける機会が生まれる。本題材は万人にわかりやすいリアリティがあるため,他者から褒められることが多い。褒められることで生徒たちは自己肯定感や幸福感を持ち,美術の活動を楽しく感じるだろう。美術Ⅰの導入として取り組むのにふさわしい題材と言える。
6.題材の指導計画
|
時間 |
学習活動の流れ |
指導上の留意点 |
評価規準,評価方法 |
|---|---|---|---|
|
1 |
導入 |
仕上がりのイメージをもてるようにする |
【学びに向かう力,人間性等】観察 |
|
1 |
技法の演習 |
本題材で用いる技法を演習する。 |
【知識及び技能】スケッチブック(観察) |
|
6 |
制作 |
①転写後,余白の汚れは練ゴムで取り,きれいな白にしておいた方が良い。 |
【思考力,判断力,表現力】作品,観察 |
|
1 |
まとめ |
合評では自分の作品と他者の作品のコメントを発表するが,抽象的な言葉は避け,具体的に述べるようにする。 |
【思考力,判断力,表現力】観察,ワークシート |
6.授業を終えて
大きく分けて3つの成果があった。1つ目は展示した時の他者からの反応である。本作品の仕上がりは,本物の写真と見間違うほどである。そのため,校内展示をした時に他の生徒や教員からたくさんのお褒めの言葉をいただいた。自分の作品が褒められる体験は,制作者にとって最もモチベーションが上がることである。2つ目は制作に没頭できることである。生徒達は思い入れのある有名人の顔を扱うことで自分の作品に愛着が増し,リアルを追求したくなる。このことにより,提出のための作品ではなく自身を満足させるための作品を目指すことが出来た。3つ目は,生徒達の観察眼や鑑賞の力が鍛えられたということである。細部まで観察しながら制作することで,自然と観察眼が鍛えられる。この観察する能力は鑑賞することにも繋がると考えられる。
描写の基礎として,鉛筆デッサンを用いる学校は多く存在するだろう。本題材の特徴は初めて鉛筆で描く生徒にとって熱中できるものであり,また完成度,満足度の高い作品が仕上がるということである。美術教育の導入として有用な題材といえるだろう。
Webマガジンまなびと:「学び!と美術」Vol.88
Webマガジン:「学び!と美術」Vol.88 “OriHimeから考える「デザイン」~その2” を追加しました。
OriHimeから考える「デザイン」~その2
前回検討した「OriHimeカフェ」のデザインについて、今回は吉藤代表の言葉を手掛かりに考えてみましょう。
休んでいるロボット
「私は、『分身ロボット』はつくっていません。同じ釜の飯を食べるという時間をつくっています」
吉藤代表はそう語り、カフェの端を指さします。そこには、リザーブ用のロボットが二台置いてありました。よく見ると一台のロボットは首や手を動かしています。私たちが見たことに気がつくと、そのロボットはこちらを見て手を振ってくれました。時には、二台のロボット同士でおしゃべりし合っていることもあるそうです。
吉藤代表が指さしたのは、ロボットを操作するパイロットが「休んでいる」姿でした。そして、自分は分身ロボットよりも、その時間をつくっていると言うのです。
「休み時間」をデザインする
吉藤代表と筆者 「『休み時間』が大事なのです」
吉藤代表はかつて不登校で学校にいけない時期がありました(※1)。その経験から、勉強以上に休み時間や給食の時間の方が大切だと思うようになったそうです。確かに、学校は勉強だけでなく、休み時間に一息ついたり、放課後に友達と無駄話をしたりする空間でもあります。自分を振り返っても、そのときに笑いあったことや、些細な会話を今でも覚えています。休み時間や放課後は、勉強以上に、私が私として存在するために必要な、そしてうれしい時間だったかもしれません。
「休み時間が大事だ」という吉藤代表の発言は、それが意識的につくられていることを表しています。「休み時間」は人が人として成立するために大切で、それを見失ってはならないし、その時間こそ、ちゃんとデザインするべきだということでしょう。
前回、「OriHimeカフェ」は「不登校」や「ALS」などの「外出困難者という概念を消すデザイン」であり、「新しい社会参加を創造するデザイン」だと書きました。吉藤代表の言葉からすれば、そこに働く人々が「人として成立する喜びを味わう場所」という視点を加える必要がありそうです。
「新しい社会参加を創造するデザイン」「外出困難者という概念を消すデザイン」さらに「人が人であるための時間と空間のデザイン」……「OriHimeカフェ」は、やはり「外出困難な方たちに社会参加の道を切り拓く(※2)」だけではなく、固定的な概念の問い直しや働く人の存在にも関わって、幾重にも意味や価値を練りこまれたデザインだったのです。
デザインという概念
「デザイン・シンキング」という言葉がここ数年もてはやされています。「ロジカル・シンキング」の合理的分析と論理的思考の限界に対して、新しい価値の創造を目指す発想や問題解決のプロセスという意味で用いられているようです(※3)。
大切にされているのは、問題の発見や解決のプロセスです。人々の行動を共感的に観察し、そこで得たアイデアを発散と収束を繰り返しながら練り上げ、実際にプロトタイプをつくって実験やテストを繰り返し、有用性や実現性などを確かめます(※4)。
ここでも、デザインという言葉は、単に形や色を美しく整えるという意味では用いられていません。デザインしているのは人々の在り方や新しい生活スタイルなどです。
「OriHimeカフェ」や「デザイン・シンキング」が教えてくれるデザイン。その概念は図画工作・美術科の題材や指導において十分活用できるように思います。
※1:株式会社オリィ研究所共同創設者 代表取締役 CEO吉藤 健太朗
https://orylab.com/about/
※2:「分身ロボットカフェ DAWN ver. β 2.0」 https://robotstart.info/2019/10/07/dawn2019-open.html
※3:デザイン思考とは、シリコンバレーのデザインコンサルティング会社IDEOが提唱した概念。ティム・ブラウン著 千葉敏夫訳「デザイン思考が世界を変える イノベーションを導く新しい考え方」早川書房
※4:スタンフォード大学d.school「デザイン思考の5段階」 https://ferret-plus.com/5532
