板書の工夫とポイント(第4~6学年)

1 はじめに

 板書には児童の思考の流れが表れており、見易く、分かり易くすることは、全教科領域を問わず共通の課題と言えよう。板書を写真に収めることで、授業後、自己の実践について振り返ることができる。また、周りの先生方へ参考教材として活用することもできる。
 今回は、「特別の教科 道徳」の授業での板書の工夫とポイントについて、その一部をご紹介したい。

2 板書記録

(1)右から左へ

雨のバスていりゅう所で(4年)

●工夫した点
 右から左へ、教材の流れに沿って登場人物の心情を考え記した、自分自身にとって基本となる板書構成である。
●ポイント
 今回は中心発問(一番左側)において意見を左右に分類した。また、中心発問の場面絵だけB4サイズで提示し、他はA4サイズにしたが、後方からは小さくて見えにくいという声も挙がった。

(2)上下にわける

くずれ落ちただんボール箱(5年)

●工夫した点
 上下に分けた。上は第一発問と中心発問の心情を考え、下は第二発問の葛藤場面を、名札を貼ることで視覚化した。青色か黄色かの二択ではなく、黄色寄りだけど青色もあるという気持ちを表現させることで、対話につなげる。
●ポイント
 視覚化することで、友達の考えを聞いてみたいという児童の意欲につなげることができる。教師の意図的な指名も効果的に取り入れたい。

(3)左右にわける

手品師(6年)

●工夫した点
 上下に分けた。上は第一発問と中心発問の心情を考え、下は第二発問の葛藤場面を、名札を貼ることで視覚化した。青色か黄色かの二択ではなく、黄色寄りだけど青色もあるという気持ちを表現させることで、対話につなげる。
●ポイント
 中心発問は男の子の前で手品を披露している場面である。おもいやりではなく、誠実について考えさせる授業にしたい。

(4)高さを変える

言葉のおくり物(6年)

●工夫した点
 場面絵の高さ。主人公一郎の、すみ子への不満が無くなっていくことを、場面絵を下げることで表現した。
●ポイント
 児童は、同じ学級にいるという設定で各場面の心情を考えた。すみ子のよさを様々な視点からおさえたい。

3 おわりに

 「特別の教科 道徳」の板書は、児童がノートに書き写すものではなく、児童の思考を整理し、考えを広げたり深めたりできるようにするという大きな役割がある。今回紹介したほかにもさまざまな構造の板書があるだろう。どのような授業展開を構想するか、教師が明確な意図を持って、児童がより深く考え、話し合えるような板書計画を考えることはとても重要である。授業を積み重ねるなかで、どのような板書が効果的であったか、今後も板書の記録を残し分析しながら、工夫と反省を繰り返したい。

Webマガジンまなびと:「学び!と共生社会」Vol.02

Webマガジン:「学び!と共生社会」Vol.02 “インクルーシブ教育と「学びの連続性」”を追加しました。

インクルーシブ教育と「学びの連続性」

 前回、インクルーシブ教育の充実に向けた新学習指導要領への期待について記しました。そこで、今回は「学びの連続性」に着目して、新学習指導要領におけるインクルーシブ教育への具体的な対応について確認しておきたいと思います。
 今回の学習指導要領改訂は、2007年に特別支援教育がスタートしてから2度目の改訂ということになります。その間に前回紹介したように障害者の権利に関する条約の批准(2014年)がありました。この条約を批准するための障害者基本法の改正(2011年)や合理的配慮を定めた障害者差別解消法の施行(2016年)など、特別支援教育と深くかかわる重要な国内法の整備も進められてきました。
 今回の改訂では、こうした社会の動きを踏まえて、連続性のある「多様な学びの場」の確保や教育課程の連続性を明確にして、十分な学びを確保していこうという方向が示されました。この方向性は、2018年の中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」で示されたのですが、そこには、「障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し、子どもたちの自立と社会参加を一層推進していくためには、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校において、子どもたちの十分な学びを確保し、一人一人の子どもの障害の状態や発達の段階に応じた指導や支援を一層充実させていく必要がある」と記されています。また、小・中学校と特別支援学校との間での柔軟な転学や中学校から特別支援学校高等部への進学などを可能にするという点からも、教育課程の連続性を考慮することの必要性が示されていました。
 ちなみに、特別支援教育の分野でも、特別支援学校(知的障害)では、小学校等の教科とは異なった「教科」で教育課程を編成することとなっていたのですが、今回の改訂において、小学校等の学習指導要領の各教科の目標及び内容を参考に指導ができる等、学びの連続性を重視したものに改善されています。
 こうしたインクルーシブ教育の視点を広く浸透させるためには、特別支援教育に関する教育課程の枠組みが、全ての教職員に理解されている必要があります。そのことを踏まえて、新学習指導要領の総則に、通級による指導や特別支援学級(小・中学校のみ)における教育課程編成の基本的な考え方が示されました。従前は「学習指導要領解説」に記されていたものが本文に記載されたわけですが、これも大きな改善点だといえます。
 また、総則に加えて、全ての教科等の「指導計画の作成と内容の取扱い」の中にも、「障害のある児童などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。」という一項が設けられました。それを受けて、各教科等の学習指導要領解説には、見えにくさ、聞こえにくさ、道具の操作の困難さ、移動上の制約、健康面や安全面での制約、発音のしにくさ、心理的な不安定、人間関係形成の困難さ、読み書きや計算等の困難さ、注意の集中を持続することが苦手であることなど、学習活動を行う場合に生じる「困難さ」ごとに、「指導上の工夫の意図」と「手立て」が例示されています。
 以上、今回の改訂においては、インクルーシブ教育の進展に向けて、小中学校等においても「学びの連続性」が重視されていることなどを確認してきました。
 これらを学校現場で着実に実現していくためには、人的あるいは物的環境の整備も不可欠ですが、その対応は、まだまだ自治体によって温度差もあるというのが実態です。各地での取り組みを注目していきたいと思います。