情報Ⅰ (3)コンピュータとプログラミング「アルゴリズムとプログラム」(第3学年)

1.はじめに

 本校では、教科書の内容に加え、P検を活用した情報リテラシーの習得、ポスター制作による画像処理、PR映像制作による動画処理、HTMLとCSSを用いたWEBデザイン、3DCGモデリングや3Dプリンタの活用、ボーカロイドによる音源制作などを行っている。様々なコンピュータ実習を体験させることで、それらの背景にある理論や仕組みを帰納的に気づかせ、理解させることを狙いとしている。その結果、これからの情報社会に参画するための資質や態度が育つことを期待している。
 ここでは、人型ロボット『RoBoHoN(ロボホン)』を活用したプログラム教材の開発についての実践を記述する。誰が見ても「かわいい」と感じるRoBoHoNを活用することで「プログラミングはおもしろくなさそう」という多くの生徒が抱く負の印象を払拭し、生徒のモチベーションを保ちながら、その先にある達成感を全員が体験できることを目的とした。

2.単元名

「(3)コンピュータとプログラミング」(実施学年:3年生)

3.単元の目標

  • RoBoHoNプログラミングによって、プログラミングの基礎(計算・変数・乱数、条件分岐、繰り返し処理、関数、リスト)を理解する。(知識及び技能に関する目標)
  • アルゴリズムの基本構造をPythonとロブリックでしっかりと理解し、試行錯誤しながら自分の思い通りにRoBoHoNを動かす。(思考力、判断力、表現力等に関する目標)
  • ロボットを実際に動かすことを通じて、ロボットと共生する未来の可能性について主体的に考えようとする。(学びに向かう力、人間性等に関する目標)

※ロブリック…タブレットやパソコンから、RoBoHoNのセリフや動きをプログラミングするアプリ

4.単元の評価規準

ア 知識・技能

イ 思考・判断・表現

ウ 主体的に学習に
取り組む態度

・ロブリックにおけるプログラムを論理的に理解している。
・Pythonのコードをヒントに正しくブロックプログラミングしている。
・Pythonで学んだプログラミングの基礎がRoBoHoNのプログラミングに生かされている。

・自分が思い描いた動きを表現するために適切なアルゴリズムを考えることができる。
・人とロボットとのインタラクティブを意識してプログラミングできる。
・プログラミングによって思い通りの動きを表現できる。

・試行錯誤する中でも、終始楽しんでプログラミングしようとしている。
・演習問題を最後まであきらめずに取り組もうとしている。
・学んだことをもとに、創意工夫しながらプログラムしようとしている。

5.単元の指導と評価の計画

(ア:知識・技能/イ:思考・判断・表現/ウ:主体的に学習に取り組む態度)

学習内容

学習活動

評価の観点

評価の方法

1

・アルゴリズムとフローチャート。
・アルゴリズムによるプログラムの効率化。
・RoBoHoNとは。
・音声認識と自然言語処理とAIプログラミング。
・Pythonを学ぶための準備。

・教科書を使いアルゴリズムとフローチャートについて学ぶ。
・JavaScriptにより記述された素数を求めるプログラムを使って、アルゴリズムによる効率化の実証実験を行う。
・グループごとに対話し遊ぶことでRoBoHoNの扱いに慣れる。
・コンピュータからGoogleにログインし、Colaboratoryで新規に作成する。

・じゃんけんのフローチャートを理解できているか。
・「エラトステネスのふるい」のアルゴリズムの方が効率的であることに気が付いているか。
・RoBoHoNと対話できているか。
・RoBoHoNとの対話がプログラミングとAI技術の活用により実現できていることに気が付いているか。

2

・プログラミング言語Pythonの基本①(インデント、変数の名前、データ型、画面への表示と計算、演算子、配列)。

・Colaboratoryで記述し実行することで、教科書に則って、Pythonの基本を学ぶ。
・うまく実行されないときは、エラーメッセージを見てデバッグする。

・Hello world!と画面に表示できたか。
・変数、データ型、演算子、計算に慣れたか。
・リストの定義、要素の追加と削除、リストの長さの取得ができるようになったか。

3

・プログラミング言語Pythonの基本②(for文とwhile文によるループ、if分岐、グラフ出力)。
・まとめのプログラミング。

・Colaboratoryで記述し実行することで、教科書に則って、Pythonの基本を学ぶ。
・乱数を用いてゲーム性のあるプログラミングを作成する。

・for文を用いてリスト作成を効率的にできたか。
・リストを利用してwhile文を理解できたか。
・if分岐を理解した後、乱数と組み合わせてゲーム性を実現できたか。

4

・プログラミング実習~基礎編
「STEP1:計算・変数、STEP2:条件分岐、STEP3:繰り返し処理」のうちポイントとなる数問を一緒に解き、演習問題は時間制限を設け自力で解く。

・学内サーバにある「プログラミング実習~目指せRoBoHoNマスター」サイトにアクセスする。
・iPadでSafariから指定されたRoBoHoNのIPアドレスにアクセスする。
・サイト上にある問題と動画、ヒントのPythonコードを参考にロブリックでプログラミングする。

・RoBoHoNに計算をさせられているか。
・ランダムな整数の利用を理解できているか。
・変数を理解できているか。
・条件分岐のプログラミングが正しくできているか。
・繰り返し処理を正しく理解し実行できたか。

5

・プログラミング実習~応用編
「STEP4:関数、STEP5:リスト」のうちポイントとなる数問を一緒に解き、演習問題は時間制限を設け自力で解く。
・気に入ったプログラムをアレンジする。

・前回と同様にiPadとRoBoHoNをロブリックでつなぎ、サイト上のプログラミングの問題を解いていく。
・制限時間内に演習問題を解き、正しくプログラミングをして、思い通りにRoBoHoNを動かす。
・これまで習ったことを総動員してプログラムを独自にアレンジする。

・関数として分離できていることを理解したか。
・じゃんけんの手を決める関数を作成することができたか。
・乱数、for文を利用し、リストの中身を言わせることができたか。
・for文と複数リストを組み合わせることができたか。
・創意工夫できたか。

6.本時の目標【4限目】

  • 練習問題を教師と一緒に取り組むことによって、プログラミングの基礎を理解し習得する。
  • 順次処理、分岐処理、反復処理を実際にブロックプログラミングすることで、アルゴリズムの基本構造を実感し理解する。
  • 演習問題を制限時間内に自力で解くことによって、論理的思考力を鍛える。
  • 最後まで諦めずに、試行錯誤の中、楽しみながらプログラミングの実習をする。

本時の流れ【4限目】

時間

学習活動・内容

指導上の留意点

評価

導入
5分

・PCを起動し、「プログラミング実習~目指せRoBoHoNマスター」サイトにアクセスする。
・PC起動中の待ち時間は復習も兼ねて、乱数を用いたPythonゲームプログラミングを紹介。(Colaboratory)
・iPadでSafariから指定されたRoBoHoNのIPアドレスにアクセスする。

・PCは起動しておき、生徒はログインするだけの状態にしておくとよい。
・RPGゲームの一部、戦闘シーンのPythonプログラミングを提示し、どのようにすれば勝率が上がるかを考えさせる。
・生徒を4グループに分け、列ごとに近くに置いてあるRoBoHoNのIPを割り振る。

ア.行動観察

展開1
30分

・STEP1:計算・変数
Ex1-1は練習⇒Ex1-2は問題として自力で解く。Ex1-4練習⇒Ex1-6問題。Ex1-3ははじめ自力で考えさせ、すぐに答え合わせをして乱数を習得。
・STEP2:条件分岐
Ex2-2⇒Ex2-1Ex2-3は任意。
・STEP3:
Ex3-2⇒Ex3-1Ex3-3は任意。

・練習は、iPadの画面を提示し、教示しつつそれをマネて一緒にプログラミングする。
・自力で解く問題(下線の問題)は相談や質問は禁止。3~5分の時間制限を設け、できた人は加点をする。
※採点のためRoBoHoNに自分の出席番号と氏名を倍速で言わせる。

ア.行動観察
イ.送信されたプログラムを確認して加点

展開2
10分

・演習問題
Practice1-1:年齢予想ゲーム再考を制限時間(10分)以内に解く。
※早く終わった人Practice1-2にチャレンジする。創意工夫し、独自にアレンジしてもよい。

・相談や質問は禁止。自力で解く。
・プログラムができたらエミュレーターで正しくできたかを確認し、RoBoHoNに送信する。
・制限時間内にできた人は加点。ロブリックも確認する。

ア.行動観察
イ.送信されたプログラムを確認して加点

まとめ
5分

・演習問題の答えを画面で提示し、RoBoHoNに送信してプログラムの正解を実感する。
・次回は応用編になるので、今日やったこととPythonを復習しておくように指示する。

・正解は教師用のRoBoHoNに予め正解プログラムを保存しておき、ロブリックアプリから開く。
・次回は、関数とリストを扱うため、変数、乱数についての生徒の理解度を把握しておく。

ア.行動観察

7.まとめ

 授業後にFormsで事後アンケートをとったところ、「見た目もかわいくてすきです」「とても楽しかった」「プログラミングの面白さを知った」「ロボホンを自分で動かせるというところが面白かった」「動いた時、すごく面白い」「達成感でいっぱいになりました」「他のプログラミングもやってみたい」「ロボホンが動いた時にワクワクする気持ちがあった」等実習に対する好意的なコメントが多かった。全アンケート(回収123人分)をテキストマイニングで分析しても図のように「できる」や「楽しい」が目立って大きくなり、概ね当初の目的を達成できた。

※ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析
https://textmining.userlocal.jp/

 動いて実感でき、誰もが可愛いと感じることのできるプログラミング教材として、RoBoHoNは生徒たちの「モチベーションの持続」とその先にある「達成感」を体験させるのにとても有効である。今後、PythonとRoBoHoNのプログラミング教材の更なる改善を行い、未来につながるプログラミング教育をアップデートしつつ実践していく。

【本教材ができるまで】
・2019年度
青山学院大学 大学院理工学研究科の今村優斗氏とプログラミング教材の開発をスタート
ロボットAI体験として中学生や高校生に体験型の授業を実施
韓国人留学生に習いたての日本語でRoBoHoNと対話してもらう授業を実施
・2020年度
選択「情報の科学」にてインタラクティブなロボットプログラミングの授業を実施
https://youtu.be/yba4Rd3ka5I
・2021年度
必修「社会と情報」にて、プログラミングの基礎をRoBoHoNで学ぶ授業を実施
https://youtu.be/FoqPoZJNo60
選択「情報の科学」にて、Pythonを学んだ後にゲーム性のあるプログラミングの授業を実施
・プログラムの説明
https://youtu.be/gk4njaVU45I
・生徒作品
https://youtu.be/tNpsr8rXUPQ
・2022年度
EDIXのSHARPブースにて「動いて実感~もえるロボットプログラミング~RoBoHoN導入4年目の授業実践レポート」を発表
https://youtu.be/aOxeU50ph1k

【教材】
2021社会と情報RoBoHoN(生徒配布用) 
Wordダウンロード(964KB)
授業用のPPTデータ 
PPTダウンロード(2.3MB)
PythonとRoBoHoN玉聖プログラミング教材

一般書籍:コミュニティ・オブ・クリエイティビティ

一般書籍:『コミュニティ・オブ・クリエイティビティ』(2022年8月31日発売)を追加しました。

Webマガジンまなびと:「学び!と共生社会」Vol.31

Webマガジン:「学び!と共生社会」Vol.31 “理科と共生社会”を追加しました。

理科と共生社会

 今回は理科教育について取り上げます。

学習指導要領の記述

 理科における障害のある児童への対応については、通常の学級においても,発達障害を含む障害のある児童が在籍している可能性があることから、他の教科と同様に「【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説」(*1)に次のように記されています。

 理科の目標や内容の趣旨,学習活動のねらいを踏まえ,学習内容の変更や学習活動の代替を安易に行うことがないよう留意するとともに,児童の学習負担や心理面にも配慮する必要がある。
 例えば,理科における配慮として,実験を行う活動において,実験の手順や方法を理解することが困難であったり,見通しがもてなかったりして,学習活動に参加することが難しい場合には,学習の見通しがもてるよう,実験の目的を明示したり,実験の手順や方法を視覚的に表したプリント等を掲示したり,配付したりするなどの配慮が考えられる。また,燃焼実験のように危険を伴う学習活動において,危険に気付きにくい場合には,教師が確実に様子を把握できる場所で活動できるようにするなどの配慮が考えられる。さらには,自然の事物・現象を観察する活動において,時間をかけて観察をすることが難しい場合には,観察するポイントを示したり,ICT 教材を活用したりするなどの配慮が考えられる。

 また、各学校においては、こうした点を踏まえ、個別の指導計画を作成し、必要な配慮を記載し、翌年度の担任等に引き継ぐことなどが必要であると念押しされています。

通常の小学校での取組

 発達障害等、特別なニーズのある児童の増加傾向は留まることがなく、各学校においては、理科教育についてもさまざまな工夫が求められてきているわけですが、渡辺(2021)は、東北地区の学校を対象にその実態を調査しています(*2)
 その調査では、「障害のある児童が在籍している通常の小学校の先生方も障害の状態に応じた配慮や工夫を行いながら理科教育を行っていること」、しかしながら、「障害のある(又は疑いのある)児童への指導を難しいと感じていること」ことを明らかにしています。
 具体的には以下のような結果が示されていました。

障害のある児童たちが教科として「理科」を行っているかどうかについて
  • 同じ特別支援学級に在籍していても情緒障害のある児童は理科を行っている一方で、ダウン症のある児童は行っていないなど、障害によって異なっている。
  • 普通学級に在籍している障害のある児童は全員理科を行っていた。
  • 理科を学んでいる児童は普通学級に在籍している児童と一緒に授業を受ける児童や、実験活動のみ一緒に受ける児童がいて、障害のある児童のみで理科を行うケースはなかった。
障害のある児童が理科を行ううえで配慮していることや工夫していること
  • 指示が通りにくかったり、分からなかったりすることがあるために、端的な指示や図や絵を用いるなど分かりやすい発問や指示を心掛ける。
  • 二人目のチームティーチングの方についてもらう。
  • 個別に声掛けする。
指導するうえで課題と感じている点
  • 習熟に時間がかかることや指示が通らなかったり、分からなかったりすることによって学習意欲の低下に繋がってしまう。
  • 教材をどのように工夫すればいいか分からない。

 この調査は東北地区が対象でしたが、発達障害等の特別なニーズのある児童が増加し続けている現状から、こうした傾向が全国的に認められるのではないかと推察されます。

少ない実践事例の報告

 渡辺は、理科教育の教材や実践事例を紹介しているサイトにおける特別支援教育に関わる小学校理科教育の教材や実践事例の掲載状況についても調査しています。令和元年12月末現在で37件と公表件数が限られていました。現状では、教員を含めた一般の人がインクルーシブ教育に関わる理科の実践について知る機会が限られていると言えます。報告では、その理由について、「障害の状態により個々に対応が異なる児童に対し,指導法や教材が一般的に確立しづらく,公表しづらいことは容易に予想される」と記されています。
 理科教育には、観察・実験、飼育・栽培などの指導が伴い、専門的な知識や指導技術等が求められます。また、小学校は担任業務や他教科の教材研究等も多く、他の教科に比べ準備や後片付けに時間がかかってしまうという傾向もあります。また、高学年になると、より専門性が必要な学習内容となり、実験で多くの器具や薬品を扱うようになります。そのため、理科は指導しにくいと感じる先生方も少なくないようです(*3)
 こうしたことも公表件数の少なさに影響しているのかもしれません。

 理科には、特有の指導のしにくさがあり、それに加えてさまざまなニーズのある児童にも配慮していくとなると、理科を指導する先生方の苦労は並大抵のことではありません。より根本的な対応が必要なのかもしれませんが、現状を少しでも打破して理科の充実を図っていくためには、より積極的に日々の実践事例を公表し、互いに共有し合って、状況改善を図っていくことが何よりも大切なことのように思われます。

*1:【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説
https://www.mext.go.jp/content/20211020-mxt_kyoiku02-100002607_05.pdf
*2:渡辺 尚・櫻井美月 渡辺特別支援教育における理科の実態~小学校理科へのインクルーシブ教育導入を目指して~.宮城教育大学紀要,第55巻,2020.
https://mue.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=1201&item_no=1&page_id=13&block_id=66
*3:群馬県総合教育センター 小学校理科教育に関する研究についての実態調査報告(平成26年度実施)
https://center.gsn.ed.jp/wysiwyg/file/download/1/1780

「自動車工業のさかんな地域」(第5学年)

1.単元名

「自動車工業のさかんな地域」(第5学年)

2.目標

 我が国の自動車産業の様子について具体的に調べる中で、自動車産業に携わる人々の生産を高める工夫や努力について理解し、その生産活動の、国民生活に関わる深い結びつきと果たす役割が分かる。

3.評価規準

知識・技能
○我が国の工業生産について、地図や統計などの各種基礎的資料から調べる中で、工業生産の概要を捉え、これら工業生産が国民生活を支える重要な役割を果たしていることについて理解している。

思考・判断・表現
○我が国の工業生産の様子から学習計画を立て、調べたことをもとに、我が国の工業生産は国民生活を支える重要な役割を果たしていることについて多角的な視点から考えを深め、適切に表現している。

主体的に学習に取り組む態度
○我が国の工業生産の様子について関心をもち、意欲的に調べることを通して、国民生活を支える工業生産の持続可能な発展について考えようとしている。

4.本単元の指導にあたって

 本単元では、単元の前半に広島県安芸郡に本社を置く自動車工場の見学を実施する。この工場見学から、生産の過程や関連工場との結び付き、諸外国とのつながり、安全や環境に配慮した新しい製品の開発等について、児童自身に調べさせる学習活動を通して工業生産に従事している人々の「工夫」や「努力」、更には「自動車産業の多面性」に気付かせることができると考える。
 また、これらの学習を通して、以下の3点を育成することが可能な単元であると考える。

①工業生産と国民生活との関わり・つながりに気付き、これからの産業未来像を追究する力
②複数の資料から社会的事象に対する価値判断を行い、表現する力
③多角的な視点から社会的事象を捉える力

 単元のキーワードとして、自動車生産に関わる人々の「工夫」や「努力」、そして「自動車産業の多面性」に着目させながら学習を展開する。その中で「性能」や「装備」だけでなく、「デザイン」や「環境性能」そして、実際に世界中の顧客へ届け続けるための「海外販路の確立」へも児童の追究の視点を向けさせる。

5.単元の指導計画

 本単元は、「小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説 社会編」の第5学年の内容の取扱い(3)を受けて設定している。
 本単元では、「持続可能な日本の自動車産業」について考える授業を単元末3時間にわたって確保している。この3時間を構成するにあたって、その学習までにその思考の一端を担えるような概念形成が成されるよう、単元内の学習内容配列を考慮した。
 日本が提案した「国連ESDの10年」が採択されて20年が経過した現在、産業構造の仕組みは、SDGsの各関連ターゲットにも示されているように、将来の持続可能な産業構造ビジョンを見据えたものへと変化している。まさに今が、その過渡期であると言え、その過渡期を「今の日本の産業」として学習する児童においては、持続可能な社会構築の視点から産業について考えさせることは、必須であると言える。
 ここでは、社会科における教科教育原理を軸にした上で、ESDの概念項目より「環境」「エネルギー」「国際理解」の分野を横断的に捉えて単元構成を行っている。持続可能な自動車産業について、それらのつながりを多角的な立場から総合的に考えさせるためである。単元末の3時間では、第10時に「環境」「エネルギー」、第11時(本時)に「国際理解」の要素を取り入れた上で、第12時では、「産業発展面」と「環境保全面」の両視点から協働的な学びの場を設定し、立場や考え方の異なる相手を尊重しながら、探究的な学習を展開する。誰が取り組んでも持続することが可能なシステムについて、自動車産業の現状を踏まえた考えを引き出すことに主眼をおきながら学びを進め、第5学年で学ぶ他の産業においても、これらの考えを転化しながら思考の深化を図ることを目指す。

学習のねらい

子どもの学習活動と内容

1

2

身のまわりにある工業製品や日本や広島でさかんな自動車工業について、関心を深めることができる。

○身のまわりにある工業製品や、日本や広島の工業(主として自動車生産)の様子に関心をもつ。
・知っている自動車パーツを付箋に書き出す。
・実際の自動車のパーツに合わせて付箋を貼る活動を行い、その活動の中で、実際には貼ることができていないパーツが大量にあることに気付く。
・これら大量のパーツがどのようにして集められ、自動車工場で生産されているのかについて、単元を見通す学習問題を設定する。

3

自動車工場の広大な土地を効果的に活用しながら、自動車生産ラインでの作業が効率的に進められていることを主体的に調べることができる。

○自動車工場は効率的に生産するために、生産ラインの過程部門ごとに工場内でその敷地を分けていることを調べる。
・自動車工場の見学を通して、社会科見学のしおりにわかったこと・気付いたことをまとめる(①)。
☞「小学社会5年」PP.142-147 資料参照

4

自動車工場では、ベルトコンベヤーを使った流れ作業による分業と、作業ロボットによる大量生産が行われており、それが可能なシステムが計画的に組まれていることを理解することができる。

○自動車工場が流れ作業による分業と作業ロボットによる大量生産を展開していることを調べ、そのおおまかな生産ラインのシステムについて理解する。
・自動車組立工場の見学を通して、社会科見学のしおりにわかったこと・気付いたことをまとめる(②)。
☞「小学社会5年」PP.142-147 資料参照

5

自動車工場では、工場で働く人たちが交代制などを活用しながら、働きやすい環境となることや、生産性の向上につながるような改善に取り組んでいることについて理解することができる。

○自動車工場では、働く人たちが安全で働きやすい環境になるように工夫されていることについて知る。
・教科書に示されている勤務時間に関する資料(2交代制による勤務)から気付きをまとめ、良い提案はすぐに実行に移され、日々職場の労働環境の改善や生産性の向上に向けて工夫や努力が為されていることについて知る。
☞「小学社会5年」P.149 資料参照

6

日本の自動車工場と、海外の自動車工場の労働環境・システムについて比較し、環境の違い・生産における考え方の違いがあることを理解し、それぞれの良さや改善点について考え、表現することができる。

○日本の自動車工場で働く人たちと、海外の自動車工場で働く人たちとの環境等の違いについて比較し、その違いからそれぞれの良さを考えることができる。
・自動車会社における日本と海外の自動車工場の生産ラインに対する人員配置の考え方の違いから、より効率的で取り付けにミスが起こりにくい設定について、自分なりの考えを表現する。

7

工場で働く人たちは、効率的に生産するために、作業内容について常に見直しを図りながら、生産計画の見直しや生産アプローチに対する工夫が施されていることを理解することができる。

○自動車工場で働く人たちは、作業内容について常に改善を図りながら、無駄なく作業できるよう工夫していることを知る。
・教科書に示されている職場での作業改善に関する資料(職場で工夫や改善することがないか話し合うようす)から気付きをまとめ、良い提案はすぐに実行に移され、生産性の向上に向けて工夫や努力が為されていることについて知る。
☞「小学社会5年」P.148 資料参照

8

関連工場が効率的な仕組みのもと、部品を自動車工場へ供給することで、品質が高く、無駄のない自動車生産が実現していることを理解することができる。また、自動車工場と関連工場との結びつきについても考えることで、そのメリットと改善点について表現することができる。

○自動車部品が周辺自治体の関連工場で生産されていることを知り、専門的な知識と技術を有した工場が部品を供給することで、品質が高く、無駄のない生産ができることを考える。
・自動車部品毎の生産について予想する。
・関連工場について、資料をもとに調べる。
・自動車工場と関連工場の関係をジャスト・インタイムの考え方から捉え、そのメリットと改善点について考える。
☞「小学社会5年」PP.150-151 資料参照

9

社会の変化や消費者のニーズに合わせた自動車づくりや、誰でも安全に利用することのできる自動車の研究・開発が行われていることを理解することができる。

○自動車会社がどのような自動車を開発しようとしているのかを考え、社会情勢や消費者のニーズに合わせた開発がおこなわれていることを知る。
・自動運転技術の開発における資料から、ニーズに合わせた自動車開発について調べ、その現状について考える。
☞「小学社会5年」PP.154-155 資料参照

10

環境にやさしい自動車部品の開発、環境に配慮した自動車生産などの取組から、持続可能な自動車生産の在り方について、これまでの学習をもとに自らの考えを深め、表現することができる。

○環境にやさしい自動車部品の開発がおこなわれていることや、環境に配慮した自動車生産等の取組から、持続可能な工業の在り方の一端について考える。
・教科書に示されている資料から自動車づくりのこれからについて自分の考えを表現する。
☞「小学社会5年」PP.156-157 資料参照

11

日本の自動車メーカーが生産した自動車の行方を調べ、現地生産・海外販路が確立され続けていることを知り、日本の自動車産業全体の在り方について自らの考えを表現することができる。

○日本の自動車メーカーが生産した自動車の行方について資料をもとに調べ、世界における日本の自動車産業全体の在り方ついて考える。【本時】
☞「小学社会5年」PP.152-153 資料参照
☞ 本指導案「6.本時の学習」「7.実際の授業における板書」を参照

12

日本の自動車メーカーが生産した自動車が世界シェアナンバー1で在り続ける方法を企業努力・時代に則した開発・未来展望と企業ビジョンなどの既習事項をもとに考え、表現することができる。

○日本の自動車メーカーが生産した自動車が、これからも、世界シェアナンバー1で在り続けるための具体策を考える。
・自動車生産に関わる人々の「工夫」や「努力」と「自動車産業の多面性」に着目させ、「性能」や「利便性」だけでなく、「デザイン」や「環境性能」など単元で学習してきた内容を総合的に踏まえながら、自らの考えを表現する。

6.本時の学習

①目標
○既習事項や資料をもとに、日本の自動車メーカーが生産した自動車の販路が諸外国でも確立され続けていることを調べ、日本の自動車産業に携わるグローバル企業としての持続可能な在り方ついて考えを深め、自らの考えを表現することができる。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫と教師の支援

○資料・●評価

1.前時までの学習内容を想起する。
○自動車会社の開発における取組やこれからの自動車づくりについての既習事項を想起する。
「環境のことも考えて自動車づくりを行っている」
「コンセプトカーを定期的に出すことによって、今ある技術力を紹介し、これからの販売につなげている」

・レディネスから本時の学びと関連していく概念的知識を挙げるために、Google Classroomへの配信資料やノートへの記述について確認しながら、学習内容の想起を促す。

○既習事項を確認する資料提示
資料:これからの自動車づくりに対する取組が示されている自動車メーカーのホームページ資料・コンセプトカーの資料等

2.学習問題を作成する。
○「世界の自動車メーカー一覧」や「世界の国々で走る日本車の自動車ナンバープレート写真」等の提示資料から、学習問題を設定する。
「世界にはたくさんの自動車メーカーがあることがよく分かります」
「日本車に海外のナンバープレートが付いています」
「なぜ海外にも自動車メーカーがこんなにたくさんあるのに、わざわざ自分の国の自動車メーカーではなく、日本車を買ってくれるのかな」

・問題作成のための資料を提示し、複数の資料から認知の不協和を生み、学習問題が児童から生み出されるよう展開する。

・学習問題は、児童から出される言葉を使って作成する。

○問題作成のための資料提示
資料:世界の自動車メーカーロゴ一覧

資料:各国で実際に走る日本車の自動車ナンバープレート

資料:世界における日本車全体のシェア率(円グラフ資料)

【学習問題】たくさんの自動車メーカーがあるのに、なぜ世界中で日本車が売れ続けて(選ばれ続けて)いるのだろう?

3.自分の予想をもつ。
「他のメーカーと比べて、高性能な自動車を輸出しているからかな」
「安心と安全を大切にする自動車づくりを行っているからかな」
「デザインがかっこいいからかな」
「海外では、手に届きやすい価格で販売されているからかな」
「ハイブリッド車や電気自動車など環境に配慮した自動車が売れているのかな」
「日本で製造されたものに信頼があるからかな」

・既習事項の内容を生かせるように、これまでのノート記述を見ながら予想を立てるよう促す。社会的事実判断・状況判断・情意による判断などをもとに予想を挙げるように声かけを行う。

4.どのようにして海外で日本車を販売しているのかについて、生産・販売側のメーカー戦略にせまる。(諸外国への販路拡大)
「市場調査をしていることが分かった」
「現地の販売店と協力しながら、その販売ネットワークを使っていることが分かった」
「新規で開拓する販売国では、現地の方々の文化や食生活まで調べているなんて、その努力はすごい」
「それぞれの国の文化に合わせて、装備品や仕様を変化させてニーズに合わせた車を輸出している」

・資料をもとに、児童が思考の深化を図ることができるように促す。資料を根拠に自分の考えをまとめ、協働的な学習において、グループのメンバー同士で意見を出し合いながら、その学びを深める。

○社会的事象の本質にせまるための資料提示
資料:日本の自動車会社の売上高

5.本時のまとめを、キーワードを使って行う。
○企業の方のインタビュー資料で本時のまとめを共有する。

【キーワード】
・グローバル企業
・現地生産
・海外販路
・世界シェア

○思考の次なる深化を図る資料提示
資料:海外販路を開拓したことのある自動車メーカー社員のインタビュー動画

まとめ グローバル企業である日本の自動車会社は、世界中のたくさんの人たちとつながっていきながら、日本のよい自動車を知ってもらえるよう、現地生産・海外販路の拡大を通して、世界シェアをアップさせる企業努力を続けているから。

6.本時を振り返り、次時につなげる。
「これからも日本の自動車が世界中でたくさんの人に乗ってもらうためには、これまでのように、それぞれの国で現地生産も続けながら、各国の人々のニーズに応えていく必要があると思った。どの自動車メーカーも同じように工夫や努力をするので、日本の自動車らしさを大切にしながら、常に変わっていくニーズを掴んだ自動車づくりが大切だと考えた」

○これまで学習してきたことをもとに、今後さらに世界シェアを伸ばしていくことを目指している企業ビジョンにスポットを当てながら、これからの日本の自動車工業の持続可能な在り方について迫る。

●【思考・判断・表現】
(ノートへ記述された振り返りの分析・発言)

資料から判断できる根拠をもとに,現地生産・海外販路における価値について自らの考えを深めることができている。

7.実際の授業における板書(本時:11/12時間)

8.単元構成・授業づくりにおける参考文献

○主として初等社会科教育に関わる参考文献

  • 澤井陽介・加藤寿朗(2017)『見方・考え方[社会科編]』東洋館出版
  • 永田忠道・桑田隆男(2021)『深い学びへ誘う 社会科の授業づくり』日本文教出版
  • 中村祐哉(2022)『板書&問いでつくる「社会科×探究」授業デザイン』明治図書出版
  • 文部科学省(2018)『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 社会編』
  • 文部科学省(2018)『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 社会編』
  • 文部科学省 国立教育政策研究所 教育課程研究センター(2020)『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』【小学校 社会】

○主として自動車工業に関わる参考文献

  • 上山邦雄(2019)『大変革期 日本の自動車産業は優位性を保てるか ~海外展開通史から読み解く~』日刊自動車新聞社
  • 自動車史料保存委員会(2021)『マツダ:東洋コルク工業設立から100年』三樹書房
  • 人見光夫(2015)『答えは必ずある-逆境をはね返したマツダの発想力-』ダイヤモンド社
  • 宮本喜一(2015)『ロマンとソロバン マツダの技術と経営、その快走の秘密』プレジデント社