令和6年度版 小学校教科書のご案内:図工動画「「かみ いろいろ」制作風景」追加

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Webマガジンまなびと:「学び!とICT」Vol.11

Webマガジン:「学び!とICT」Vol.11 “主体的・対話的に深く学ぶために 第7回 〜自己調整プロセス、スキルを軸とした単元・授業づくり〜”を追加しました。

主体的・対話的に深く学ぶために 第7回 〜自己調整プロセス、スキルを軸とした単元・授業づくり〜

学習者が自らの学習を調整しようとする単元・授業を設計・実施するために

 学習者が自らの学習を調整しようとする単元・授業づくりをするにはどのようなことが大切なのでしょうか。このことについては第4回で触れたように、「見通す」「実行する」「振り返る」フェーズの中で、セルフラーニングカードを使いながら自己調整スキルを育成したり、それらのスキルを発揮しながら学ぶことができるように授業・単元を設計したりする必要があると考えます。
 しかし、授業者として授業を進めていると、「子どもたちが自己調整をすることができる授業になっていたのか?」「子どもたちは自ら学習を調整しようとしていたのか?」ということを評価したり、見取ったりすることが困難です。そこで、設計・実施した授業が自己調整学習になり得たのかを評価するために作成した「自己調整学習授業チェックリスト」を紹介します。

自己調整学習授業チェックリスト

 表1が「自己調整学習授業チェックリスト」です。このチェックリストでは、Schunk and Zimmermanが示した自己調整の段階と下位プロセス(1998)から日本の授業に援用しやすいと考えられる項目を抽出し、それらを学校現場に合った文言にして示しました。本チェックリストに挙げられた項目をもとに授業を確認することで、実施した授業が自己調整学習になり得ているのかを確認することができます。また、授業を計画した際に項目に当てはまる活動がどの程度あるのかを確認することで、これから行う授業・単元において学習者が学習を調整する場面・活動がどの程度あるのかを明らかにすることもできます。

表1 自己調整学習授業チェックリスト

 しかし、1時間の授業で全ての項目にチェックが入ることは難しいことです。したがって、授業設計をする際には、1時間1時間を分断して授業を考えるのではなく、単元を通して授業を計画し、1つの単元の中で、チェックリストの項目に当てはまる活動をできるだけ多く設定することができるように単元設計を工夫していくことが自己調整学習を実現する良い方法ではないかと考えます。

自己調整学習チェックリストの応用

 「自己調整学習チェックリスト」は教師が授業を設計したり、振り返ったりする際に活用するためだけのリストではありません。本リストを子どもたちに配付することが、自己調整学習を実現する上で効果的な手立てになると考えます。例えば、単元の学習を見通す活動(見通すフェーズ)に取り組む際に、子どもたちがこのチェックリストを確認すれば、自然と学習をうまく実行することができるかを検討したり、学習の最後に創り上げるもの(ゴール)を予想したりすることができると考えます。また、学習目標の達成に向けて学習を進めている際(実行するフェーズ)に、このリストを確認すれば、残り時間を意識したり、学習が上手く進んでいないと感じたときに他者に相談したりすることができると考えます。学習を振り返る活動(振り返るフェーズ)においても同様で、本リストを参照することで、自然と自らの学習を振り返り、次の授業に活かすことを考えることにつながります。
 ただ、本リストを子どもたちに配付するだけではこのようなことは起こりません。リストの配付直後は、本リストを参照する時間を授業内に確保し、教師の指示のもとで子どもたち自身が本リストと照らし合わせながら、自らの学習の進捗を確認する必要があります。また、子どもたちが確認するためのリストも表1のままでは、チェック項目を理解したり、自らの学習を確認したりすることが難しいことから、子どもたちの実態にあわせてチェックする項目の量を減らしたり、文言を子どもたちにとってわかり易い表現に改変したりして配付する必要があると考えます。
 そして、リストを配付してすぐに子どもたちが自己調整学習者になれるわけではありません。大切なことは、子どもたちがうまくチェックすることができなくても、これらの項目の意味を根気強く伝え、何度も繰り返しチェックする機会を設定することが、子どもたちのメタ認知する力を高め、引いては自己調整学習を実現させることにつながるのだと思います。

木村 明憲(きむら あきのり)
桃山学院教育大学 講師 博士(情報学)
専門分野は教育工学、情報教育
主な著書に『主体性を育む学びの型: 自己調整、探究のスキルを高めるプロセス』、『単元縦断✕教科横断―主体的な学びを引き出す9つのステップ』(さくら社)

【参考文献】

  • SCHUNK、D.H and ZIMMERMAN、B.J(1998)Self-Regulated Learning ―From Teaching to Self-Reflective Practice―. The Guilford Press

【本チェックリストについての解説動画】

機関誌・教育情報:「教育情報」No.20

機関誌・教育情報:「教育情報」No.20 “[特集]ゼロカーボンの地域を目指して” を追加しました。

学校におけるカミングアウトと自己開示(その2)

2023東京レインボーサミット(2023年4月、東京都)

 前回は、部落差別などとも関連して、同和教育の歴史のなかで議論されてきたカミングアウトについて論じました。カミングアウトには、いくつかの性格分けがあり得ると述べて、①助けを求める、②親友に嘘をつきたくない、③自分を捉え直せたから語る、④自分という事例をとおして社会的問題を語る、といった分け方をしました。学校における自己開示などについては、この連載の第7回や第8回でも述べています。ここでは、LGBTQに関わる問題に立ち戻って、カミングアウトについて考えてみます。

1.部落差別等とLGBTQとの違い

 部落差別とLGBTQとの間にはいろいろな違いがあります。その一つは、部落差別の場合には、家族みんなが被差別の立場になることがほとんどであるのに対して、LGBTQに関わっては、ほとんどの場合、LGBTQに属するのは個人だけであり、親などの家族は性的マイノリティではないということです。
 そして、しばしば親は、LGBTQの立場にある人にとって大きな厚い壁となります。親がLGBTQの本人を否定したり、産んだ自分、育てた自分を責めたりすることが少なからずあるのです。この点で、部落差別に関わって被差別部落出身の子どもに関わる問題を保護者と話し合うときとは異なる配慮が必要です。この点を考慮して、政府関係の文書の一つ『生徒指導提要【改訂版】』(2022年) でも、「性的マイノリティ」に対する学校の対応のあり方について論じた箇所で、たとえば次のように述べています。

 性的マイノリティに関する大きな課題は、当事者が社会のなかで偏見の目にさらされるなどの差別を受けてきたことです。少数派であるがために正常と思われず、場合によっては職場を追われることさえあります。このような性的指向などを理由とする差別的取扱いについては、現在では不当なことであるという認識が広がっていますが、いまだに偏見や差別が起きているのが現状です。

(文部科学省『生徒指導提要【改訂版】』(2022年)264ページ)


他の児童生徒や保護者との情報の共有は、当事者である児童生徒や保護者の意向などを踏まえ、個別の事情に応じて進める必要があります。

(同上、265ページ)


 保護者が、その子供の性同一性に関する悩みや不安などを受容している場合は、学校と保護者とが緊密に連携しながら支援を進めることが必要です。保護者が受容していない場合にも、学校における児童生徒の悩みや不安を軽減し問題行動の未然防止などを進めることを目的として、保護者と十分に話し合い、支援を行っていくことが考えられます。

(同上、266ページ)

 ただ、これだけでは具体的にどう対応すればよいのか、はっきりとしないままでしょう。以下では、カミングアウトに焦点を合わせつつ、できるだけ具体的な対応が分かりやすいように述べていくつもりです。
 親から否定されることはきついものです。そのため、「保護者へのカミングアウト」はいちばん最後でいいと言われます。しかし、一方で、親が味方になってくれるならば、これほど強い味方はないかもしれません。この振れ幅は大きいと言わなければなりません。
 この点を考えるとき、学校の果たせる役割や責任は重要です。子どもから相談を受けた教職員は、可能な範囲で他の教職員にも情報共有し、学校のチームとして取り組むことが望ましいと考えられます。しかしこれも、本人の意思を尊重することが最優先されなければなりません。まずは、相談を受けた教職員が相談者と信頼関係を築き、そのなかから次の手立てを打つ必要があります。場合によっては、医療機関との連携 が必要になります。

2.学校でのLGBTQのカミングアウト

 学校でのLGBTQの生徒のカミングアウトは、多くの場合、信頼できる一人か数人の友だちから始まるようです。大学生などから聞いていると、このカミングアウトは「①助けを求める」というよりも「②親友に嘘をつきたくない」つまり、信頼しているから話すという性格の方が強いと思います。前回の説明に従えば、第1のカミングアウトよりも、第2のカミングアウトという性格が強いということです。
 教員にまずカミングアウトするという場合には、学校のあり方について変えてほしいと思っている場合が多いようです。たとえばトランスジェンダーの人が制服やトイレなどについて変更を求める場合です。これは、第1の「助けてほしい」という性格が強いと言えるでしょう。「助けを求める」というよりも「しかるべき対応を求める」と言った方が的確かもしれません。この①②のカミングアウトを受けた生徒や教員がアライ となるかどうかはその後を大きく左右します。教員の場合には、日頃からの言動がアライであると示すことにつながるようありたいものです。たとえば、さりげなくレインボーリストバンドを着けている、レインボーバッジを着けている、などです。それ以前のこととして、日頃からの言葉遣いや話題がLGBTQへのハラスメントになっていないかも重要です。
 LGBTQのカミングアウトを考える場合、「③自分を捉え直せたから語る」や、「④自分という事例をとおして社会的問題を語る」という性格が強いカミングアウトをどう考えるかが特に重要ではないでしょうか。①②と③④の間には、重要な違いがあるように思えます。①②のカミングアウトでは、一人から数人を相手とします。それに対して、③④では大勢を前にカミングアウトすることが多くなります。特に「④自分という事例をとおして社会的問題を語る」という性格の強いカミングアウトでは、聴き手のなかにどんな人がいるかあまり分かっていない状態で自分のことを語ることになります。それでも語るというのはなぜでしょうか。いくらかのリスクがあったとしても、それを超えるプラスがあると確信できるからではないでしょうか。また、リスクが現実のものとなった時にも、受けとめてくれるコミュニティが自分にあるからではないでしょうか。
 このように考えると、①②と③④の間に必要となるものは、大きく分ければ三つあると思います。
 一つは、自分と同じようなLGBTQの人たちとの出会いです。なかまのコミュニティがあると思えることによって、多くの人に自分を語れるようになるのです。さらに言えば、自分が苦しい思いをしていたときに話してくれた先輩のような存在に自分もなれるかもしれないと思えるからこそ、語れるようになるのです。
 言い方を変えれば、①②のようなカミングアウトを受けた側、とりわけ教員は、その生徒といわばモデルとなる人との出会いを設定することが望まれるということです。先に述べたように、部落差別や在日外国人などへの差別であれば、家族をはじめ、たいていの場合、まわりに同じ立場の人がいます。ところが、LGBTQの場合には、そういう人が周りにいないことの方が多いのではないでしょうか。一人で苦しい思いをしているとき、同じ経験をしてきた人と出会うことは何よりの力になります。特にその人が自分と同じ状況を乗り越えてきたという人ならば、その人から学べることはたくさん出てくるでしょう。その人の存在そのものが希望なのです。学校で言えば、このようにしてつなぐことは、まず教職員に期待されることでしょう。
 二つには、LGBTQについての学習です。以前に比べれば、LGBTQは社会的に認知されるようになってきましたから、本人が自己否定の思いを強く持つことは減ってきていると思われます。しかし、LGBTQユースは自殺念慮が高い という指摘もあります。周りの生徒たちも偏見にとらわれている場合が多いと言わなければなりません。LGBTQの生徒本人だけではなく、同じクラスの生徒たちがLGBTQについて正しい認識をもつことが必要です。なにより、「あいつはヘンだ」とか「きもい」とか言われたりすることのないようにしなければなりません。仮にそういう発言が出たとしても、アライとなった仲間たちがその発言に対して向き合える存在になってほしいものです。
 このための学習では、医学的知見だけではなく、社会的な従来からの差別の実態 、それを乗り越えようとしている、いわゆる当事者団体の取り組みを学ぶ必要があります。さらに、LGBTQの本人に来てもらって、堂々と生きている姿に触れることが不可欠の要素です。学級のなかですでに、LGBTQの生徒が全員に対してではなくともカミングアウトしている場合には、その本人たちと相談しながらこの学習を進めることが必須です。最近では、LGBTQに関わる学習を支援する団体 も増えてきています。そのなかでは、LGBTQ本人たちからのメッセージ も出てきます。
 三つには、クラスのなかでさまざまな自己開示がやりとりされるような状況をつくり出すことです。このための具体的方法は、この連載の第7回で述べたことが参考になるでしょう。生活ノートや班活動などで、生徒同士が暮らしをとおしてつながることを大切にするのです。
 このように取り組んでくれば、教室で起こるさまざまな自己開示とLGBTQのカミングアウトが絡み合ってきます。教室にはさまざまな子どもがいて、自分の生活のなかで悩みとともに暮らしています。でも、そういう悩みをいつも出せている人ばかりではありません。出せば孤立するのではないか。周りからいじめに遭ったりするのではないか。そもそも自分の悩みは自分が悪いのであって、誰かに助けを求める筋合いのものではない。大学などで授業を担当してきて、そんな風に感じながら過ごしている人もまだまだいるとわたしには思えます。

3.LGBTQが光となって

 LGBTQの生徒がカミングアウトすることにより、他の生徒も自分の問題を捉え直せるようになることがあります。自分が悪いと思っていたところから、社会のあり方にこそ問題があると捉え返せるようになります。実はそういう変化を起こせるのは、LGBTQの人たちだけではありません。従来から、部落出身の生徒や在日韓国・朝鮮人の生徒がそういう役割をしてきた面があります。さらに言えば、学級のなかでさまざまな生徒が自分のことを捉え直せるようになっていくならば、だれもがそういう役割を果たせるようになることでしょう。
 ただ、くりかえしになりますが、カミングアウトをめぐって最も大切にされるべきことは、周りに強いられて行う筋合いのものではないということです。それぞれの場面や相手との関係がどのようなもので、その関係をどのようにしたいのか、そのような点に関する本人の判断を土台に据えて進められなければなりません。教職員は、的確な情報提供をする責任がありますが、本人が言う必要がないと感じている場面でカミングアウトを求めるのは間違いだということです。

【参考・引用文献】

  • 「生徒指導提要(改訂版)」(文部科学省ウェブサイト 令和4年12月改訂)
  • 「LGBT当事者が安心して行ける医療機関とは?【vol.2】医療現場の多様な性を考えよう ―患者がLGBTだったら、どう対応する?―」(メディカルサポネット 2019.12.4)
  • Job Rainbow編集部「アライ(Ally)とは?【LGBTQでなくても、今日から活動できる】」(JobRainbowMAGAZINE 2022.10.10)
  • 認定NPO法人ReBitアンケート調査「LGBTQ子ども・若者調査2022」(PRTIMESウェブサイト 2022.10.20)
  • NHKウェブサイト「LGBT当事者アンケート調査~2600人の声から~」
  • ReBitウェブサイト

Webマガジンまなびと:「学び!と人権」Vol.22

Webマガジン:「学び!と人権」Vol.22 “学校におけるカミングアウトと自己開示(その2)” を追加しました。