Webマガジン:「学び!とPBL」Vol.65 “コロナ禍の下で学ぶ子どもたち(子ども・学校とPBL④)”を追加しました。
月別アーカイブ: 2023年8月
コロナ禍の下で学ぶ子どもたち(子ども・学校とPBL④)
鹿又悟先生による報告の4回目は、1ヶ月遅れでスタートした2020年度の学校生活で、どのような学習活動を行ったのかを紹介します。新型コロナウィルスに大きく影響を受けた学校でも、子どもたちの学びが止まることはありません。現実の社会をそのまま教材にして、今まで以上により地域に根差した活動をしていこうという実践でした。
1.経験を学びへ
写真1 新型コロナウィルスとSDGs 白方小は、2020年度が始まった週から5月17日まで臨時休業となり、5月中旬になってやっと教育活動が再開されました。
写真2 アマビエ様
最初の総合的な学習の時間の中で、子どもたちに付箋を使ってコロナ禍とSDGsを考えさせると、経済・教育・福祉・健康・平和など様々な点で新型コロナウィルスの影響が関係していることがわかります。
図画工作科の時間には、新型コロナウィルスに関連して、日本に伝わる疫病に関する妖怪「アマビエ様」を教材としてとりあげました。国語科の提案書・短歌を書く単元においても、新型コロナウィルス感染対策に関することを書く子どもがいました。このように、新型コロナウィルスを軸とした学びが各教科で続きました。
2.コロナ禍で地域に根差した学び
2020年度の総合的な学習の時間では、約2か月間の臨時休業を通じて感じた、「新型コロナウィルス」と「地域愛」、「共生社会」をキーワードにして学習を展開したいと考えました。当初の教師側のねらいは、
① 人との関わりの中で生きていることを知り、自分たちも社会の一員として携わることを考えることができる。
② 自分たちの住んでいる地域を見直し、地域に対して行動することができる。
の2点でした。
新型コロナウィルスの影響は、子どもたち自身への影響もそうですが、メディアで取り上げられていた、飲食店の相次ぐ休業や農家への影響、医療従事者のひっ迫した現状が大きいと子どもたちは感じていました。ここからは、子どもたちの問いと行動がスパイラルに動いていきます。
まず、子どもたちは、
「飲食店を助けたい。」
「最先端で活躍している医療関係者を励ましたい。」
「でも、どうやって助ける?」という問いに出会います。
「募金してお金を集めよう。」
「それじゃあ、自分たちでではなく、他の人のお金だよね。」
「んじゃあ、何か自分たちで何か作って売るのは。」
「須賀川と言ったらきゅうりだよね。おじいちゃん、おばあちゃんも家で作ってる!」
須賀川市は名産のきゅうり(夏秋の出荷量全国1位)、自分たちの経験から地域の特産いわせきゅうりを育てる方向へと決定しました。
写真3 地域ボランティアと畑作り
次に子どもたちの前に立ちはだかったのは、学校にきゅうりを栽培する道具がない、という問題です。
「家に道具があまっていると思うから、じいちゃんに聞いてくるよ。」、「うちのばあちゃん、畑作るとき来てくれるって!」という形で、活動は地域の方々の協力へと広がっていきました。学校園にきゅうりの支柱を建てたり、畑を耕したりする際に、子どもの祖父母がボランティアとして来校し、一緒に作業をすることができました。
写真4 いわせきゅうりの栽培
子どもたちは、栽培して実ったきゅうりを売る活動へと動き出します。子どもたちが売る相手に選んだのは、意外にも飲食店でした。理由を聞くと、「飲食店ならたくさんの人に食べてもらえるから」と言います。栽培していくうちに、自分たちのきゅうりをたくさん人に食べてもらいたいという思いが増してきたのです。
本格的にきゅうりを栽培するために「きゅうりを販売しているプロの農家さんに聞きたい」となり、農家の方に来ていただき、栽培するポイント、農家の仕事、農家の方の栽培への思いなどについて教えていただきました。
「売るときの値段ってどうやって決めるのだろう」というので、JAの方に来ていただき、どのようにして価格が決まるのか、需要と供給のバランスなど、経済を交えた内容を教えてもらいました。子どもたちに価格の決め方を聞くと、
「素人だから、安くしよう。」
「小学生が作るレアなきゅうりだから少し高くてもいいのではないか。」
などと、それぞれ主張していました。結局、両意見の折衷案で決定した価格は「1本32円」でした。
3.きゅうりの活動で得た学び
写真5 お店に飾ったポスター 須賀川市の飲食店組合に子どもたちが栽培したきゅうりを買い取ってもらい、自分たちが栽培したきゅうりが料理に含まれていることをポスターにまとめ、それを店に飾っていただきました。子どもたちは須賀川市とコロナ病棟を扱っている病院にきゅうりで得た売り上げを寄付することができました。
一連の子どもたちの取り組みから、当初のねらいに次の2点、
③ 身近なきゅうり(夏の生産量日本1位)・福島の食材への新たな気づきを得て、地域の大切さの再発見し、地域へ愛情を育てることができる。
④ 農家の働き方や働くことの意味、そして食に携わる人たちの野菜に対する愛情を消費者としてどう向き合えばいいのか考えることができる。
の、貴重な学習内容が加わりました。
今回の「新型コロナウィルス」を軸とした総合的な学習の時間は、たくさんの方々の協力で授業を成り立たせることができました。その発端となったのは、子どもたちの「問い」の連続です。問いを解決するために、専門家と繋がり、生の声を聞くことで、次々と課題を解決し、また新たな問いにぶつかり、行動へ移すことができました。学校の外の人々との繋がりは人生においても大変重要なことです。たくさんの人に支えられ人々は生きており、皆が共に支え合っていることを子どもたちは実感することができました。
最後に、この学習を通しての子どもたちの感想を紹介します。
- 自分たちが行った活動は、自分たちだけでは行うことができなかった。たくさんの人に協力してもらったおかげでできたことだった。この思いは忘れないだろう。
- きゅうりの毎日の水やりがこんなに大変だとは思わなかった。だけど、たくさんの人に届けて食べてもらうことができてうれしかった。
- 農家の人の話を聞いて、ぼくも〇〇さんのような農家になりたいと思った。
- きゅうりを育てた経験から、うちのおばあちゃんの畑の手伝いをもっとしようと感じた。将来農家という職業もいいかなと感じた。
- 最初は小学生のわたしたちが寄付するなんてできないかもしれないと感じていた。それが、学習が進んでいくにつれて、現実になっていった。いろんな人と繋がることですごいことができるということや、人と繋がることの大切さを知ることができた。
(※鹿又悟先生の原稿を、三浦が本連載に合わせて編集しています。)
図工のみかた:「図工のあるまち」更新
図画工作科ブログ「図工のみかた」:「図工のあるまち」第三十八回 “放課後の学校クラブ 第16回 修学旅行復命書”
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Webマガジンまなびと:「学び!とESD」Vol.44
Webマガジン:「学び!とESD」Vol.44 “SELを通した価値変容の兆し(1) ―「ウクライナ&ロシア 子ども絵画展」による試み―”を追加しました。
SELを通した価値変容の兆し(1) ―「ウクライナ&ロシア 子ども絵画展」による試み―
「ウクライナ&ロシア 子ども絵画展」(*1)による試み
2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの侵攻が始まり、まもなく1年と半年が過ぎようとしています。侵攻に関する報道に接し続ける中で、いつの間にか私たちは侵攻という事実に慣れてしまってはいないでしょうか。
「ウクライナ&ロシア 子ども絵画展」(以下、「絵画展」)は、少しでも平和への希望を紡いでいく一助となれれば、という主催者の思いのもと、侵攻の約2ヶ月後に開催されました。また、想像力の危機の時代とも言われる現代において両国の子どもたちが何気ない日常を描いた絵画を鑑賞することで平和への想いを共に重ねることができれば、と願う気持ちも乗せている展示企画です(*2)。
ここでは、大学生が絵画展を通して何を学び、どのように意識を変えたのかに関する、アンケート調査から明らかになった結果をいくつか紹介します。「国連ESDの10年」の当初から、ESDは「平和で持続可能な未来」に向けた営みとして開始されましたが(*3)、持続可能な未来の方は強調されてきたのに対して、平和の課題はやや疎かにされてきたのではないでしょうか。「国連ESDの10年」の開始から20年近く経つ現在、世界情勢を見るにつれ、平和の課題も再考する必要性は高まっていると言えましょう。なお、絵画展で試みられたアプローチは、近年、ESDで重視されている学習手法「SEL(社会情動的学習)」(*4)(「学び!とESD」Vol.04, Vol.42, Vol.43)に位置付けられます。絵画の鑑賞という具体的なプログラムを用いた試みを読者の皆さんと共有することで、ESDの実践を豊かにする一歩になると思います。
「絵画展」の概要
この絵画展は、2022年5月5日〜7月7日にかけて約2ヶ月の間、聖心女子大学で開催されました。そこでは、ウクライナとロシアの子どもたちが侵攻以前に描いた日常の絵を展示し、展示最終日が七夕でもあったため、来場者が自由に自分の想いや願いを記すことができるよう笹と短冊を置く工夫が凝らされました。
「ウクライナ&ロシア 子ども絵画展
―平和の再想像へ―」のポスター
出典:聖心女子大学グローバル共生研究所(2022)
※クリック or タップでPDFが開きます。
調査の概要
筆者らは、該当の授業履修者である大学生155名(うち有効回答数は133名)を対象に、絵画を鑑賞する前と後の計2回のアンケート調査を実施し、鑑賞を通した学生の変化を検討しました(*5)。アンケートの質問項目については、下記のとおりです。
① 鑑賞前について
- 軍事侵攻(以下、「戦争」)以前の国旗の色に関する知識
- 今回の戦争に関する気持ち
- 「絵画展」鑑賞前の両国に対する印象
② 鑑賞後について
- 「絵画展」を観ての感想
- 「絵画展」を観て抱いた感情
- 「戦争」が始まってからの行動
- 自分自身が平和のためにできること
- 「絵画展」鑑賞後の両国に対する印象
ロシアへの印象の変化から見えた二極化的思考と向き合う学生の姿
共通の質問として示したように、両国の印象について鑑賞前と鑑賞後にそれぞれアンケートを行ったところ、ロシアの印象の変化が興味深い結果になりました。鑑賞前は否定的な印象を受けている学生が全体の約半数(48%)を占めていましたが、鑑賞後では、否定的な印象の学生が全体の約5分の1(17%)に減少しました。また、肯定的な印象を受けている学生は、鑑賞前の時点では全体の1割強(14%)に留まっていましたが、鑑賞後では3割(34%)を占める結果となりました。絵画鑑賞を通して、ロシアに対する印象が大きく変化したことが伺えます。
実際に、鑑賞前後での印象の変化があったと回答した学生に、記述を求めたところ、自身の持っていた偏見や二極論に対する言及が複数、見受けられました。ここでは、回答の一部を紹介します(カッコ内は調査者加筆)。
「冷たい国というイメージが強く、
子どもたちの絵にも冷たさが見られるのではないかといった偏見を自分の中に持ってしまっていたが(…)絵を(見て)その考えはなくなった。」
「ロシアはとても大きくて軍事的にも強く、冷たいイメージがありました(…)
様々な場所でいろいろな経験をし、たくさんの感情を生み出しながら学んでいく姿を想像して、温かく学びの多い国なのではないかというイメージに変わりました。」
「ロシア、という国とロシア人は、異なって考えなければならない(…)
国自体には、印象は変わりませんが、ロシアの人々は、文化を愛していると思いました。」
鑑賞以前は、「冷たい」や「軍事的な」印象を持っていたのに対し、子どもたちの描く日常の風景を鑑賞することで、「温かい」といった肯定的な印象に変化した学生が多く見受けられました。また、鑑賞前は国を構成する人や政治、文化をロシアとして、ひとくくりに捉えていた様子がありましたが、鑑賞後では、何気ない印象やステレオタイプにとらわれない様子が伺えました。
ロシアに対して約半数の学生が否定的な印象を持っていたにも関わらず、鑑賞後では5分の1に留まった理由として、国をひとくくりとして捉えることで受け止めるのではなく、国を構成する多様な実相を認識することで、二極的なものの見方に絡め取られない姿勢の習得が垣間見える結果となりました。
次号でも引き続き、大学生の意識の変化を紹介しつつ、絵画を通したSELの取り組みについて考えていきます。
【参考文献】
*1:聖心女子大学グローバル共生研究所主催の「ウクライナ&ロシア 子ども絵画展」に関しては、次のリンクよりご覧いただけます。
https://kyosei.u-sacred-heart.ac.jp/event/20220505/
*2:聖心女子大学グローバル共生研究所(2022)「ウクライナ&ロシア 子ども絵画展 ―平和の再想像へ―」(ポスター)
*3:UNESCO(2005)“United Nations Decade of Education for Sustainable Development (2005-2014): international implementation scheme”
https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000148654
*4:SELについては「学び!とESD」に加え、次の文献をご参照ください。
神田和可子「社会情動的学習(SEL)」(日本国際理解教育学会編『現代国際理解教育事典 改訂新版』明石書店、2022年刊、所収)
*5:調査に関しましては次の資料をもとに紹介しています。
安藤穂乃佳, 永田佳之(2023)「アートは〈平和の文化〉に貢献できるのか―ウクライナ及びロシアの子ども絵画を鑑賞した大学生アンケートの分析と課題―」(日本国際理解教育学会第32回研究大会自由研究発表第18分科会配布資料)
中美特設サイト更新
中学校美術の先生応援サイト「中美 チュービ」:「私の指導計画」Vol.02 横浜市立篠原中学校 吉田 浩気 先生 “詳しく解説!私の指導計画(1年生編)”
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Webマガジンまなびと:「学び!と美術」Vol.132
Webマガジン:「学び!と美術」Vol.132 “生成系AI時代にこそ図画工作・美術が学びの核になる ~STEAMの“A”を読み解く~” を追加しました。
生成系AI時代にこそ図画工作・美術が学びの核になる ~STEAMの“A”を読み解く~
情報化社会における学びのあり方を研究されている山内祐平先生に、STEAM教育や生成系AIと学校のあり方についてお話を伺いました。最近話題のChatGPTをはじめとする生成系AIは、さまざまな面で私たちの生活に大きな影響を与えることになりそうです。教育現場での学び方や働き方はどうなるでしょうか。
芸術は孤立した科目
STEAM(スティーム)教育は日本でも最近は教育政策用語としてよく使われるようになりました。前身としてSTEM(ステム)教育、つまりScience(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)があって、理工学分野の教育の拡充と理工学を応用した職業への誘導が趣旨でした。日本でもよく「今からの時代は理系の教育をもっと」と言われてますよね。
そしてSTEMに“A”が加えられたのですが、「リベラルアーツ」つまり教養を意味する場合と「芸術やデザイン」を指す場合があって、必ずしも定義が一致しているわけではありません。STEAMの“A”の位置付けは人の数だけあっていいと思います。でも、もちろん“A”のとらえ方次第で授業のあり方は大きく変わります。
私は芸術系の教科は、今まで他の教科から孤立する傾向にあったと思っています。でも、今後を考えると、芸術が他の教科とどう共同していくかということが、とても大事なテーマだと考えています。
アートは、現代の状況を批判的にとらえることができる独自の視点をもっています。それを生かせば、アートならではの新しいSTEAMの形ができると考えて、「体と触覚で考える遠隔コミュニケーション」というワークショップを行いました。
今、メディアアートでは身体性を意識したり伴ったりした表現が自然になってきています。それに対して、現状の情報コミュニケーションは言語にものすごく依存している。
ワークショップでは、触覚技術(ハプティクス)を使って、例えば遠隔地で寝ている人を、電話ではなく、遠隔で手を動かすと顔に何かが当たるようにして起こしたり、「ありがとう」「どういたしまして」をスポンジのふわふわした感じで伝えたりしました。それで、振り返りをすると、「既存の方法より触覚のほうが伝わることもある」とか「触覚による伝わり方は自分と相手の関係性によって異なることが分かった」という意見も出て、ワークショップを通じて、コミュニケーションとして今まで当たり前だと思っていた方法に対して「本当にそうなの?」というところに目を向けることができた。
ワークショップ「体と触覚で考える遠隔コミュニケーション」 活動の様子
試行錯誤が許される贅沢な時間
つくってみて初めて分かることがあって、それが、図画工作の一番強いところだと思うんですよね。
工学系でモックアップ(模型)をつくる場合、仕様を決めて機能を組み込んでいきます。アートの場合は目標に向けて一直線ではなく行きつ戻りつ作品をつくります。図画工作でもプロセスの中で新たな問い返しが生まれて、その気付きをアウトプットすることで他の教科とつながっていくことができる。さっきのワークショップの例でいえば、「触覚による伝わり方は自分と相手の関係性によって異なる」ということに気付けたら、もう教科を越境し始めているんですよね。そこからは、例えば、国語の先生が引き取ってコミュニケーションについて考えてもいいし、社会科の先生が情報通信社会について学ぶほうにもっていってもいいわけです。そうやってつなげるじゃないですか。
そのためには、やっぱり実践が必要です。日本の先生は忙しすぎるという大きな問題がありますが、ただみんなやる気はあって、国際的に見てもレベルは高いと思うんです。だから図画工作と他の教科を越境するような実践が増えてくれば、「面白そうだから私もやってみたい」という先生も増えるんじゃないでしょうか。
だから、そこを是非、教科書をつくっている日文さんが意識していただけると(笑)、だいぶ変わっていくんじゃないかなって気がしますね。
それはいいですね。図画工作の先生と他の教科の先生が自然に連携するといいですね。
アートの本質は「生きることのとらえ直し」
他の教科でプロジェクト学習すると、現実の社会課題に直結した「これを解決しましょう」みたいな感じになると思うんです。それは悪いことではありません。だけど、あまり現実の課題ばかり突きつけられると、子どもはしんどいじゃないですか。確かに将来的に子どもが解いていかないといけない課題ではあるのだろうけど、環境問題や地域紛争ばかりがずらっと並んでいたら「もう、かんべんしてよ、先生」ってことになりますよ。
もうちょっと、つくりだすことが楽しくて、前向きになれる夢のあるプロジェクトがあってもいい。図画工作で、とりあえず未来について自由に想像して、「こういうのがあったらいいな」っていうのを積極的にやるところから始めて、「でも、実際のところどうなの」っていうところを他の教科へ落とし込んでいくというやり方はあるのかなと思うんですよね。
今まではどちらかというと、そういうプロジェクト型の学習みたいなものは、他の教科が主導して、図画工作はお手伝いみたいなところがあったかもしれない。
大事なのは、STEAMでは「アートと現代的課題との架橋」すなわち「人間が生きることのとらえ直し」ができるというところです。そもそも、なんで人はアートをやるのかっていうと、作品を売りたいっていうよりも、自分のモヤモヤ、生きることに対するなんだか分からない思いをとらえ直すために、絵をかいたり音楽や詩をつくったりしてるんじゃないかと思うんですね。だから、
他の知とつながるための「振り返り」
図画工作の時間、
感じるだけで終わるんじゃなくて、それをなんらかのアウトプット、さっきのワークショップの例だと「コミュニケーションって、こんなやり方があったんだな」と考えるところまでいけるような授業をたくさんして、他の教科とつなげていってもらうということがとても大事。やっぱり「感覚から思考への展開」っていうことを、授業の中にどんどん取り入れていく必要があると思います。
どんなに短くても振り返りの時間はとったほうがいいですし、時間をとれないのであれば何かに書いて、壁に貼って共有するというのもいいと思います。
「感覚から思考へ」は人間にしかできない
これはちょっとお話ししたほうがいいと思っていて。みなさんご存知のとおり、世間は生成系AIで大騒ぎです。
ChatGPTは、みんなが書いたものを切り貼りして読書感想文を生成できますが、「わたし」のつくった作品の感想は書けないんですよ、だってつくってないから。「自分がこういうものをつくりました」「それに対して私はこう思いました」って文章は自分の感覚、自分の経験から生まれてきた言葉ですよね。それは、AIでは生み出すことができない。
図画工作でも、きれいな絵をかくだけだったらAIの画像生成を使ってできちゃうわけで(笑)。要するに、形式的に記号を操作して、きれいな作文や絵ができればいいっていう時代は終わりつつあります。
そういう意味でも、具体的な経験をもって、この過程を後押しできる図画工作は、今後のカリキュラムの核になりうるポテンシャルを秘めています。とても大事なポジションにあると思いますよ。
ブルーからホワイト、そしてカラフルへ
せっかく現場の先生がすごくいい授業をしても、保護者の方に伝わらないということもあります。結局、受験に通らないんですよねって言われちゃう。まだまだ大学に行って就職したら一生安泰、というようなイメージも強いですからね。社会全体の意識が変わるには、わりと時間がかかるかもしれない。でも先生方にはぜひその先のことを意識してほしいですね。
ホワイトカラーはAIの影響を確実に受けます、この10年くらいで。これはもう避けては通れない。だってAIが医師国家試験に通っちゃうレベルなんですから。もちろん間違いもあるけど、学習量を増やせば、どんどん完璧に近づいていく。そこで勝負する時代はもう終わるんだと思うんです。
大量のホワイトカラーが雇用を支える時代は終わる。でもそれは昔、大量のブルーカラーが雇用を支える時代が終わって、大量のホワイトカラーが発生したのと同じように、大量のホワイトカラーの時代が終わって……何か別の色、何色になるかは分からないんですけど。一人ひとりの個性を生かしてより人間的な仕事がAIと共存する、カラフルな色になるといいですね。

東京大学大学院情報学環 教授。
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程中退後、茨城大学人文学部助教授を経て現職。博士(人間科学)。情報化社会における学びのあり方とそれを支える学習環境のデザインについてプロジェクト型の研究を展開している。情報学環・福武ホールの学習環境デザインに対して2008年度グッドデザイン賞受賞。主な著書に『学習環境のイノベーション』(単著、東京大学出版会)、『ワークショップデザイン論 ―創ることで学ぶ』(共著、慶応大学出版会)、『デジタル教材の教育学』(編著、東京大学出版会)、『学びの空間が大学を変える』(共著、ボイックス)などがある。
※令和2年度版小学校図画工作科内容解説資料として扱われます。
拡大教科書:令和6年度版小学校「小学社会」「小学算数」「図画工作」「小学道徳 生きる力」の拡大教科書サンプル追加
拡大教科書:令和6年度版小学校「小学社会」「小学算数」「図画工作」「小学道徳 生きる力」の拡大教科書サンプルを追加しました。
宝仙学園小学校、「宝仙寺プロジェクションマッピング2023~未来~」8月28日開催
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