福岡県生活科・総合的学習教育学会 令和6年度 半日研修会を追加しました。
月別アーカイブ: 2024年10月
語研・小学校外国語教育委員会 第14回オンライン講習会
語研・小学校外国語教育委員会 第14回オンライン講習会を追加しました。
Webマガジンまなびと:「学び!とESD」Vol.58
Webマガジン:「学び!とESD」Vol.58 “地球規模課題とSEL(4) エコポエトリーの挑戦”を追加しました。
地球規模課題とSEL(4) エコポエトリーの挑戦
地球規模課題と「適切さ」
前号でも紹介した、電通総研が日本人を対象に実施した「エコ不安」に関するアンケートには、図1のようなデータも示されています(*1)。
「地球規模課題とSEL」のシリーズ(「学び!とESD」Vol. 42 , 43 , 57)でも取り上げてきた若者による気候ストライキに象徴されるように、気候変動については世界中で心配している若者が少なくないと言えますが、日本の若者の特徴は「極度に心配」と「とても心配」が国際的に見て少なく、「ほどほどに心配」と「少し心配」「心配していない」が比較的に多いところに見出せるのです。こうした傾向にはいくつかの解釈が可能ですが、海外の若者と比べて日本の若者には危機感が少ないという見方もできるかもしれません。
ただ、危機意識を強く持つように導く指導がよいかというと、そこは慎重であるべきだと思います。「気候危機などいずこに?」という平然とした態度をとるのと同様に、過度に心配をしてパニックを起こしてしまうのも問題だと言えましょう。やはり地球規模の課題には、適切に気に掛けて無理なくアクションを続けるという日常的な態度の形成が重要なのでしょう。
上記の「適切さ」をもたらす学習方法としてSEL(社会情動的学習)が有効であるという実感を、筆者は自らの実践を通してこの10年ほど抱いてきました。その実践例については「地球規模課題とSEL」のシリーズでお伝えしてきたとおりです。
SELを推進するにあたり、アートに基づいた手法(art-based approach)はこの上ない可能性を開きます。次にお伝えするように、数多くある芸術活動においても、さしたる道具も必要とせずに取り組める詩作はだれもが日常で試みることのできる気候アクションでもあるのです。
海外で広がる気候変動詩の輪
興味深いことに、詩作を通して気候危機の時代を乗り越えようとする試みは同時多発的に世界各地で見られるようです。地球規模で気候変動に対する危機感が広がった結果であるとも言えるでしょう。
注目されている試みの1つは、英国のグロスターシャー大学の創作芸術学部で始まった「エコポエトリー」と呼ばれるムーブメントです。世の環境問題も社会問題も「根っこ」は同じであるという問題意識に基づき、「エコポエティコン」(*2)という情報プラットフォームが創られ、現代の環境問題と社会問題の双方を意識してつくられた詩が世界中から寄せられて公開されています。
この試みが重視しているのは次の4点です。
- 国境を越えて国際的に協働すること
- グローバル・ノースとグローバル・サウス双方の詩人が連帯すること
- ヨーロッパ中心主義と西洋文学の規範を超えること
- エコポエトリーを通して生態系の緊急事態に対する意識をグローバルに高めること
これらの目的意識のもとに究極的には人間を超えた世界の捉え方に変容をもたらすことが目指されているようです。
「エコポエティコン」では、世界中の詩の発信地が「環境詩人の地図(エコポエット・マップ)」に示され、クリックすると個々の詩はもちろんのこと、詩人や翻訳者のプロフィールや各地域の具体的な環境問題や社会問題も読むことができます。2024年9月末の現時点において日本からは未投稿ですが、イギリス、インド、中国、ナイジェリア、パプアニューギニア、フィリピン、ペルー、ボツワナ、など各国からの作品を楽しめます。
テーマ別のページもあり、「海洋」「土/農業」「汚染/ごみ」「先住民/ルーツ」「リジェネレーション」「自然とのつながり」「美」「将来世代」「緩やかな環境破壊/絶滅」「非自然的な天候(アンナチュラル・ウェザー)/災害」「砂漠」「木/森林」「宇宙/空間」「正義/抵抗」「グローバル・ノース」「グローバル・サウス」等々、寄せられた詩が多様なテーマごとに分類されています。またアフリカの受賞作家も含めた詩人たちの紹介文が写真と共に掲載されており、各々の詩を身近に感じられる工夫がなされています。
日本でも広がる「気候変動詩」
アートを駆使して気候危機に挑むプロジェクトが日本でも生まれています。公募を通して集められた気候変動の詩を野外で公開し、一般の人々が気候危機の時代のメッセージに気づくような場づくりとも言えるイベントです。建築やデザイン、映像などのさまざまな専門家や学生たちが協働する試みは、2023年10月の3連休に「気候アクションSUMIDA~川辺から、詩と映像によるメッセージ」(企画統括:特定非営利活動法人 アート&ソサイエティ研究センター)として結実し、持続可能な未来へとつながる作品群が東京の墨田区の川辺で披露されました(*3)。
東京スカイツリーを見上げる川辺で、「気候変動を、見て・聴いて・考える3日間」と題したイベント会場には、大規模水害時の水かさを人々が実感できるように、地上3mほどの高さの空中に「浮舟/憂き舟」と名付けられた「うかぶボート」が展示されていました。会場に足を運んでみると、「浮舟」と並んで気候変動をテーマに公募で集められた詩が横幅1m近くの垂れ幕にプリントされ、秋空のもとを行き交う人々に気候危機を街の風景として伝えていた「適切さ」が絶妙でした。学び!とESD Vol.43「地球規模課題とSEL(2) 気候変動詩の試み~その2~」で紹介した詩「歩く」も採用され、風景の一部として歩行者の気を惹きつけていたようです。
このプロジェクトは、詩作をした若者たちをはじめ、100人以上のデザインや建築、映像の専門家と学生の参画を得て半年の準備を経て実現したそうです。夜には、シンガーソングライターの女性がライトアップされた「浮舟」の下で気候変動詩を朗読するというライブ・パフォーマンスも行われ(*4)、まさに多様な表現方法を通して人々に寄り添う企画であったと言えましょう。
ある来場者が「身近な問題であり、自分自身も原因の要素であることを、これまで以上に認識し、なにかをはじめなければ」(*5)と語っているように、参画した人々の努力は大切な気づきにつながり、人々の意識や行動の変容に一役買ったにちがいありません。
*1:電通総研(2023)「気候不安に関する意識調査(電通総研コンパス Vol.9)」(国際比較版:2023年3月22日)
https://institute.dentsu.com/articles/2823/
*2:「エコポエティコン」ウェブサイト
https://ecopoetikon.org
*3:NPO法人アート&ソサイエティ研究センター「気候アクションSUMIDA特設サイト」
https://www.art-society.com/project/climateactionsumida.html
*4:詩の朗読は次から聞くことができます。
https://soundcloud.com/admin-990798785/sets/sumida/s-RVpeCxwz44k?si=4040122fa98b4489b033360088861c47&utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing
*5:気候アクションSUMIDA 特設サイト「来場者からのメッセージ」
https://climateactionsumida.notion.site/SUMIDA-bbdea245c98d4ae78857f6059b9280e9
【関連図書・ウェブサイト】
- 『気候アクションSUMIDA 詩集 +プロジェクト・レポート』(秋葉美知子、清水裕子編) Art & Society Research Center.
- 「詩と川辺空間を結び『気候変動』を考えるプロジェクト〈気候アクションSUMIDA〉」秋葉美知子、清水裕子、『Biocity』No. 99, ブックエンド. 2024年, pp.118-125.
- NPO法人アート&ソサイエティ研究センター
https://www.art-society.com/about
- SEAリサーチ・ラボ
http://searesearchlab.org
機関誌・教育情報:「その他の教育資料」No.89
機関誌・教育情報:「その他の教育資料」No.89 “デザインって何だろう” を追加しました。
デザインって何だろう
先生になっていく自分をつくる ~これからの図工・美術の先生(第2回)~
連載「これからの図工・美術の先生」では、各地の大学で図工・美術の教師を目指す学生たちを指導している先生方に、「いま、どんな授業をしているのか?」についてうかがいました。授業に込められた、「将来、こんな図工・美術の先生になってほしい」という願いをひも解いていきます。
第2回は、千葉大学の佐藤真帆先生の授業です。
私が大学の教員養成コースで担当している授業の多くは、教科の指導法に関わるものです。美術を専門としていない学生が多いため、関心をもって授業に取り組めるように工夫しています。教師になっていく学生が主体的に考えられるように、実際に「つくること(美術の活動)」を取り入れています。
つくって語る
美術教育のゼミでは「なぜ、美術を学校で学ぶのか」について文献を読んで議論したあとに、それぞれが考える「美術教育」をコラージュなどで表現してもらいます。この活動は、
初めは「難しい」「え、どうしよう」と言いながらも、雑誌や広告などを広げて切り抜き始めると、集中して取り組み始めます。
↑同じ「美術教育」がテーマでも、思い浮かべるイメージがそれぞれ異なることが視覚化され、対話が生まれる。
この活動を実際に体験することで、視覚表現と言語表現は同じくらいにパワーがある大切な表現なのだと改めて気づかされます。
ニュアンス、曖昧さ、繊細さ、関係性なども視覚的に表現できるので、より学生各自の声(感じたことや考えたこと)が反映され、つくった本人さえも知らなかった自分に出会うのではないでしょうか。互いの真剣な声に触れることによって学習が活発になっていく瞬間がありました。
つくって「学び」を発見する
図画工作科教育法の授業では、先生にとって身近な教材である教科書に掲載されている題材を取り上げ、実際にみんなでつくってみる時間を設けます。
教科書には実際の児童作品が載っていますが、作品を単なるゴールイメージとして捉えるのではなく、それぞれの
色紙を折ってはさみで切り取ってさまざまな形をつくる活動での例をあげてみます(「ちょきちょき かざり」令和6年度版図画工作科教科書1・2上p.14)。
ある学生が、色紙を四つに切り分けてしまいました。そのとき他の学生から「それは失敗ではなく、どうしてそうなったのかを考えるきっかけではないか」と新たな視点を教えてもらうことができました。ここでは、
また、初めは少ししか切り抜けなかったのに、二つ目よりも三つ目と、より大胆に切り込みを入れて形がつくれるようになった学生がいました。新しいことにチャレンジするときの不安は誰にでもあるのだと気付き、学習者である子どもの気持ちに寄り添った指導を心がけようという意識につながったようです。
この題材では、色紙を開いて、つくったものを見て、再び折って切り抜くことができます。学生は「戻ることができる」と言っていました。いつもなら不安で仕方ないのですが、この活動では「何ができるか楽しみ」になっていきました。
振り返りのコメントには、自分ならどのような授業にするかという面白いアイデアがたくさん書かれていました。ここにも学生自身が主体的に図画工作科教育について学び始めた瞬間があったように感じます。
先生になっていく自分をつくる
以前、「あなたはどう感じましたか」という問いかけに戸惑う学生の姿に考えさせられることがありました。彼らなりに感じたり、考えたりはしているものの、そのことに注意を向けていないように見えました。
これまでの学習の中で、自分の感じたことや考えたことを聞かれた経験が少ないのでしょうか。
これまで私が関わってきた教科総合のプログラム開発の研究を通して、他の学校教科に比べ、
そして、美術を基盤としたカリキュラムは、たとえ同じゴールに行きつかなくても、多様な学びが生まれることを可能にするのではないかと考えるようになりました。
そのため、これから教師になっていく学生には、美術を通して、主体的に人やものに出会い、それまでの考えを変化させ、新たな意味を生み出していくという体験をしてほしいと思うようになりました。
前述の授業は、そのような学びをつくりだし、見いだせるよう、私が日々探究している一部を紹介したものです。
カリキュラムは学習指導要領や指導案のように事前に書かれたものだけを指すわけではなく、
あらかじめ決められた目標や内容だけでなく、開かれた可能性に目を向けることは、個別最適な学びを実現していく鍵となります。
教師として自分には何ができるかを考え、目の前の子どもと一緒に創造的に学びをつくっていく過程は、美術の経験と重なります。そして、これが私のスタートでもあり、今でも夢中になって取り組んでいることです。
美術の先生を目指す皆さんには、出会いを大切にし、先生になっていく自分をつくっていってほしいと思っています。
千葉大学教育学部准教授。専門領域は美術教育。特に、工芸教育、創造性とデザイン思考、文化遺産教育、持続可能性と美術教育、幼児教育の総合プログラム、教師教育、アートベース・リサーチなどに関心をもって教育、研究を行っている。現在は、芸術を基盤とした教員養成カリキュラム、国際協働学習の開発に取り組んでいる。日本文教出版令和6年度版小学校図画工作科教科書著者。
Webマガジンまなびと:「学び!と美術」Vol.146
Webマガジン:「学び!と美術」Vol.146 “先生になっていく自分をつくる ~これからの図工・美術の先生(第2回)~” を追加しました。
第101回 広島大学附属小学校 研究発表協議会
第101回 広島大学附属小学校 研究発表協議会を追加しました。
機関誌・教育情報:形 forme No.334
機関誌・教育情報:「形 forme(図画工作・美術)」No.334 “[特集]「わからない」を楽しむ、とは?” を追加しました。



