Webマガジンまなびと:「学び!とPBL」Vol.82

Webマガジン:「学び!とPBL」Vol.82 “OECD東北スクールから10年③ 能登スクールへ”を追加しました。

OECD東北スクールから10年③ 能登スクールへ

 OECD東北スクール(以下、東北スクール)に生徒として参加し、能登スクールのサポートをしている草野みらいさんへのインタビューの3回目です。 東北スクールからちょうど10年となった2024年、元日に大地震に見舞われた能登で「OECD能登スクール」が開催されました。東北スクールの元生徒で、能登スクールのサポーターとして参加している草野さんに状況を報告してもらいました。

1.東北スクールから能登スクールへ

図1 アイスブレーク三浦:草野さんはどのような形で参加したのですか?
草野:第1回の能登スクールは昨年8月でしたが、その2ヶ月ぐらい前にOECDの方から力を貸してくれないか、という打診がありました。東北スクールのプロジェクトは1回だけの打ち上げ花火ではなく、その卒業生は財産で、次のプロジェクトに関わってもらいたい、過去から現在につないで、未来の教育にも意味づけをしたいと、おっしゃっていました。それで、東北スクールの卒業生で、現在もそれぞれの地元で働いている人などが集まりました。特別支援学校の先生、造船工、市役所職員などで、また、東京や奈良の仲間も結集しました。
図2 パレットタイムワークシート三浦:能登スクールは、ある意味東北スクールの反省をもとに企画されていると聞いていますが、具体的にはどのようなことを目指したのですか。
図3 自分のアバターを作る草野:コンセプトは「過去・現在・未来への旅」です。そこから自分の色を見つけるという目的もありました。つまり、より良い未来を描くために過去の教訓から学ぶ、けれど、過去の成功にとらわれない。現在の自分自身と地域を見つめる。自分の軸を持ちながら、能登半島のあってほしい未来の姿を考えられるようにという思いです。さらに、時代も地域も超える旅の中で、支援する側・される側、大人・子ども、能登の人・外の人など、二項対立で「ひと」を分断せず、互いの色や個性を尊重し、それぞれ属性が異なるからこそ生まれる新しい見方・考え方を活かしながら、共創する旅を目指しました。
図4 輪島高校にて三浦:東北スクールに比べると、生徒一人ひとりのあり方に重心が移動しているように思えます。東北スクールの場合は、パリでのイベントというゴールが決まっていて、その成功のために汗だくになって動き回り、がんばる人とそれを頼ってしまう人の間に温度差ができてしまいました。まさに昭和の価値観から令和の価値観への移動と言えるのだと思います。

2.アウトライン

三浦:スクール全体のアウトラインはどうでしたか。
草野:全体は3泊4日、能登青少年自然の家で行い、参加者全体で70人ぐらいだったと思います。そのうち中高生は30人ぐらいで、能登出身は10人程度でした。その他は、OECD共同ネットワークの事務局の方や群馬、大阪からの参加者もいました。輪島高校にも出かけていき、そこには40〜50人ほどの高校生が参加していました。
三浦:具体的にはどのようなことをしたのですか。
図5 大きな輪になっておしゃべり
草野:「過去」のセクションのワークショップでは、私たち東北スクールの卒業生が一人ずつグループに入って体験を語ったり、それが現在にどのように生きているか、一緒に考えたりしました。その後で、このスクールに参加することでどのような「リターン(見返り)」がほしいのか、すなわち「ナレッジ・リターン(どんな知識を得たいか)」「ネットワーク・リターン(どんな仲間に出会いたいか)」「ハッピー・リターン(どんな楽しみを見つけたいか)」など、自分を見つめ、それぞれに得たいものを書き起こしてもらいました。
三浦:どのような意図があったのですか。
草野:一つは、参加者一人ひとりが、誰かに与えられた目的のためではなく、自分自身の興味関心から生まれる課題意識に即して、このプロジェクトでやりたいことを見つけてもらうことがねらいです。二つ目は、東北スクールもそうでしたが、一人ひとりが、経験・出会い・知識・夢・エネルギーなど、挙げるときりがないぐらいいろいろなことを得られる場所だったので、この能登スクールに参加する意欲を育てたいと思ったからです。

3.どんなプロジェクト?

図6 バルーンアートの制作草野:いろいろな設定はあえて行わず、大きな目的すら明文化されていません。東北スクールの時のような詰め込みカリキュラムではなく、とても余裕のある日程が組まれていました。「何もしない時間」も組まれていて、自分で目的を見つけて自由に過ごす時間になっていました。一見「何をするプロジェクトなの?」と思われるかも知れませんが(私も実は、特に学生にとっては、自分がここで何をするのか考えることも難しいのではと思っていました)、学生を見ていて確かに学びがあったと感じています。能登に行くという非日常体験自体が目的になり、そこでの出会いや体験が自己開示につながっていたと思います。
図7 バルーンの中で三浦:東北スクールからは考えられないですね。自己開示とは、どのようなことですか?
草野:能登に向かうバスの中で、中学生が隣になりました。良いチャンスだと思い、ワークショップで使う予定になっていた、さっきの「リターン」について、参加者最年少の中学生でも理解ができるか、その時に一緒に考えてもらっていたんです。すると、その中学生は「グロース・リターン(成長)」では「青少年の家に泊まるので、掃除をしっかりやりたい」、「ネットワーク・リターン(仲間)」では「能登に友だちをつくりたい」といいます。そこから派生して、「将来何になりたいの?」と聞くと、「イラストを描く仕事に就きたい」と話してくれたんですよね。それで「私は広告の仕事をしているから、周りにはイラストレーターがたくさんいるよ、そんな人に会ってみたい、でもいいんだよ。」といいました。そしたら「そうなんですか!?」と目がキラキラしていましたね。憧れの職業が、そう遠い、夢だけで終わってしまう話ではないと思ってもらえた瞬間でした。同時に、私としても、能登スクールがどんな存在になるのか、参加者がより実感を持ちながら4日間を過ごせるように、序盤でより丁寧なセットアップが必要だと、気づけたんです。その子は4日間の中で、少しずつ積極性を発揮できるようになり、最終日の朝の集いには国旗掲揚の旗係を買って出るようになりました。
図8 寝そべって作戦会議三浦:なるほど。成長はあったということですね。
図9 輪島高校にて草野:そうですね。ただ注意も必要だと思いました。それがプロジェクトによって生まれた成長なのか、いつもと違う環境(非日常)だから生まれたものなのか、それは現時点では結論が出せないものだと私は思っています。東北スクールの時に、体育館で大きなバルーンをつくり、その中に入って非日常的な体験をして盛り上がったことがありましたが、能登でも新潟大学の先生にお願いしてバルーンアートのワークショップを行いました。同じように生徒も大人も中に入って大はしゃぎでしたが、これに象徴されるように、この非日常性をどのように次のプロセスに結びつけていくかが課題だと思います。学びや成長には、継続性(習慣になって日常に根付く)という側面も必要ですし。それこそ能登スクールが、打ち上げ花火的な、単なる良い思い出として終わってほしくはないので。まだ始まったばかりなので、全体の形が見えてくるのはこれからだと思います。

図10 能登スクール報告書
※クリック or タップでPDFが開きます。

高等学校 情報:「大学入学共通テスト「情報Ⅰ」解説」公開

高等学校 情報:2025年1月19日に実施された大学入学共通テスト「情報Ⅰ」の試験問題について、工学院大学附属中学校・高等学校校長の中野由章先生に解説いただいた動画「大学入学共通テスト「情報Ⅰ」解説」を公開しました。

「桜の咲くとき-わたしの心と重なる桜-」(第6学年)

1.題材名

桜の咲くとき-わたしの心と重なる桜-

2.学年

第6学年

3.分野

絵に表す

4.時間数

全8~9時間扱い

5.題材の概要

 校庭の桜の幹と枝、桜の花の色、桜の花が咲いたり舞い散ったりする様子を見て感じたことや、自分の感覚、行為を通して感じたことを基に表したいことを見付け、自分の思いと重なるように、画面の切り取った構成の面白さや美しさなどの感じを考えながら、材料や用具などを活用して、自分の主題を楽しみながら工夫して表し、自分や友人の表したもののよさや美しさについて感じ取る。

6.準備物(材料・用具)

児童:絵の具セット、新聞紙

教師:黄ボール紙、胡粉、アクリル絵の具、凧染料、刷毛、スポンジ、細筆、竹串、今まで経験のある(使ってみたい)描画材・用具

7.題材の目標

【知識及び技能】
 絵の具や描画材の特徴を生かしながら、黄ボール紙に表すときの感覚や行為を通して、桜を表す中で変化していく画面上の形や色、バランスの感じなどを理解する。
 自分の表したい感じに合わせて筆や使ってみたい描画材や用具で表し、前年度までの材料や用具の経験や技能を活用し、表現に適した方法を組み合わせて自分の表したいことに合わせて表し方を工夫して表す。

【思考力、判断力、表現力等】
 筆や描画材などで変化していく画面上の形やその色、その組合せ、切り取ったバランスの感じを基に、自分のイメージをもち、画面の変化を見て感じたこと、想像したこと、見たことから表したいことを見付け、形や色、材料の特徴、構成の美しさなどの感じなどから主題をどう表すかを考える。
 自分や友人が表した作品の造形的なよさや美しさ、表現の意図や特徴、表し方の変化などについて感じ取ったり考えたりし、作品などから自分の見方や感じ方を深めたりする。

【学びに向かう力、人間性等】
主体的に描画材(絵の具や材料、用具など)に関わり、形や色のもつよさや美しさを感じ、自分の思い付いたことを表現することや鑑賞したりする活動に取り組み、つくりだす喜びを味わうとともに、楽しく豊かな生活を創造しようとする。

8.評価規準

【知識・技能】
 絵の具や描画材の特徴を生かしながら、黄ボール紙に表すときの感覚や行為を通して、桜を表す中で変化していく画面上の形や色、バランスの感じなどを理解している。
 自分の表したい感じに合わせて筆や使ってみたい描画材や用具で表し、前年度までの材料や用具の経験や技能を活用し、表現に適した方法を組み合わせて自分の表したいことに合わせて表し方を工夫して表している。

【思考・判断・表現】
 筆や描画材などで変化していく画面上の形やその色、その組合せ、切り取ったバランスの感じを基に、自分のイメージをもち、画面の変化を見て感じたこと、想像したこと、見たことから表したいことを見付け、形や色、材料の特徴、構成の美しさなどの感じなどから主題をどう表すかを考えている。
 自分や友人が表した作品の造形的なよさや美しさ、表現の意図や特徴、表し方の変化などについて感じ取ったり考えたりし、作品などから自分の見方や感じ方を深めたりしている。

【主体的に学習に取り組む態度】
つくりだす喜びを味わい、主体的に描画材(絵の具や材料、用具など)に関わり、形や色のもつよさや美しさを感じ、自分の思い付いたことを表現することや鑑賞したりする学習活動に取り組もうとしている。

9.本題材の指導にあたって

(1)教材について
 さまざまな学校で、4月の最初に取り上げられている桜を見て表す題材です。中学年での実践が多いかもしれませんが、今回は高学年で取り上げました。「桜の花はピンク色、幹と枝は茶色」と、実際に桜の花や木を見ないで概念的に表すのではなく、見て感じたことから画面の切り取りや構成を意識して表すこと、(最近は桜の花は3月に咲いてしまうので)花や花びらは自分の思いと重ねて絵をつくる意識で表すことを本題材は大切にしています。自校の最高学年になった春、ある意味、自分のこれからの未来に対して、具体的な言葉としては表れてはいませんが、子どもたちが希望や決意も込めて表していってほしいと考えています。桜の絵を表しながら、その桜を自分自身と重ねて思いを表すことが大きなねらいとなります。今までの5年間の図画工作で経験したこと、表現した感じを想起しながら、その感じを自分で再構成していきます。

(2)学習過程について
 高学年でもあるので、常に表現と鑑賞が一体的にできるように意識して活動を進めていきます。桜を表現した作家の作品を見て、画面の切り取り・構成に着目して、対象の見方について今までの経験値を広げて表現に向かいます。
 校庭に出て、自分の気に入った桜の木とその切り取るところを決め、外で黄ボール紙と絵の具でかいていきます。色も、絵の具のチューブのままでは表せないと、自分で色を混色してつくることも意識していきます。ここは、6年生の自発的な気付きもひろっていくと、色に変化も見られるようになっていきます。
 最近、桜の花は、新年度の図画工作の授業の始まる時期よりも早く咲いてしまうので、6年生には、必ず、各自で桜の花を見ること、体感することを伝えます。桜の花は、自分の思いや主題と重なるように、図工室に戻って表していきます。
 活動の途中、表現が止まってしまう子どもは、ちょっと離れて見たり、子どもの思いを聞き取ったり、その子どもの状況で個の対応もしていきます。授業全体としては、そのときのクラスの状況・空気感を指導者が感じ取り、自分の絵を見る時間を取りながらライブな感じで対応していきます。

(3)指導と評価について
 どのタイミングで指導・声かけをしていくか、授業の空気を感じながら、指導者が進めていきます。その指導の流れで評価も連動していきます。「主体的に学習に取り組む態度」の評価については、毎時間ではなく、題材全体の中で評価すると、子どものいろいろな活動や行為について、指導者の目が向くのではないでしょうか。

(4)児童の実態について
 本校の児童は、低学年から、一部、図工専科が題材を導入することもありますが、1・2年時は講師(担任)を中心に図画工作を学習し、3年生から完全に図工専科が指導することとしています。今まで、共通の大テーマと材料(さまざまな紙・液体粘土・絵の具など)・行為の中で、自分でテーマを決めて表したり、自分の体ほどもある大きな作品を表したりと、作品の中に、常に自分のテーマを織り込むことを指導の重点としています。本学校の児童は、絵や立体の表現を問わず、いろいろな材料や表現に対して、表出・表現することにあまり抵抗感を示さず、その形や色の変化を喜び、テーマや表現方法などにも興味をもって学習に向かっています。
 また、鉛筆で下書きをして色を塗るような表現方法はとらず、自分の思いを絵の具で直接、基底材に表すことを1年生から行っています。児童は絵の具や用具を使って変わっていく形や色、その組合せから生まれる新たな表現に対し、目の前に見える意図的な形や色の変化として楽しみ、「今の自分の思いの形だ」と思う価値観で選択し、表したいこととして選び、自分のイメージと重ね、更新していきます。これまでの絵の表現など、いい意味での孤独に表現すること(この場合は、自分の世界に入ること)で自分と対話しながら、そして、浸って表す姿も見られるようにもなってきています。高学年でもあるので、今までの思いをもつ経験や自分で考えて生み出す実感を基に、今を生きる自分の思いと、ほどよく力を加えられる対象と表現を重ね、つくりだす喜びを感じながら、体全体の諸感覚からの心地よさを感じ、心地よく自分と向き合える時間となることを大切に確保していきたいと考えています。

10.題材の指導計画(全8時間~9時間扱い)

学習活動の流れ

指導上の留意点、評価方法

第1時

・本題材の内容や表す時間を知る。
・桜を描いた作家の作品を鑑賞する。
※画面の切り取り・構成について気付く。

・今まで表していた感じと今回の表現の違いについて、ポイントをはっきりさせて伝える。
・概念的な幹や枝の形、桜の花はチューブのままから出したピンク色と決めてしまわない気付きにつながるように伝える。

(活動の表れの観察・表情)

・校庭に出て桜の木を見て回り、気になった幹や枝を決める。

・自分個人の気に入った形の桜を見付けられるように伝える。

(活動の表れの観察・つぶやきを聞き取る)

第2時

・黄ボール紙の形を選び、表したい空気感を、胡粉を使って表す。

・見えない空気感を表す意思がもてるように伝える。

(活動の表れの観察・つぶやきを聞き取る)

第3時
第4時

・校庭に出て、桜の幹や枝を表す。

・自分の感じた桜の幹や枝の色をつくって表すことを伝える。
・画面の中に桜の木を押し込めるのではなく、表したいことが画面に構成できるように、画面から外に向かって表す意識を伝える。
※自分の個人の感じ方で、この場所でかきたいという気持ちを大切にする。

(活動の表れの観察・つぶやきを聞き取る)

第5時
第6時

・図工室で表したい思いを、桜の花や花びらに込めて表す。

・記憶の中の桜の花や花びらを思い出し、自分の表したい思いと重ねて、表し方を工夫して表す。

(活動の表れの観察・表情・作品)

第7時
第8時

・画面全体を見て、自分の思いを重ね、表している画面の時間の様子なども組み込んで表す。

・夜や日中、お天気の様子も組み込みながら、そこに隠れている自分の思いも織り込み、工夫して全体を表していく。
・自分の桜の物語をつくりながら、その思いを作品に反映させながら表していく。

(活動の表れの観察・表情・作品)

※主体的に学習に取り組む態度に関しては、全8時間を通して見ていく。

11.作品

まだこれから(54×39cm)夜空に溶ける桜(54×39cm)夜の桜に舞い降りる龍(54×39cm)

ちる桜(39×54cm)上のほうにさくらの花で、下のほうは花びら(54×54cm)

※本実践の児童作品は、「みんなの図工ギャラリー」からもご覧いただけます。
https://www21.nichibun-g.co.jp/zuko_gallery/5-6nen/45/