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Webマガジンまなびと:「学び!とESD」Vol.63

Webマガジン:「学び!とESD」Vol.63 “ESDにおけるアートの可能性”を追加しました。

ESDにおけるアートの可能性

 近年「変容」に関するESDの実践および研究が散見されますが、その具体的実践は容易いものではありません。今回は ‘ESD for 2030’ 以降、特にその重要性について言及されてきた変容的教育について2024年に刊行された ‘Arts for transformative education: A guide for teachers from the UNESCO Associated Schools Network’(変容的教育のためのアート:ユネスコスクール(*1)による教員ガイド)」をもとに、アートという視点から紐解いていきたいと思います。アートはどのように私たちの価値観、行動、ライフスタイルを変容的な学びへと誘ってくれるのでしょうか。

変容的教育のためのアート

UNESCO (2024). Arts for transformative education: A guide for teachers from the UNESCO Associated Schools Network.
出典:UNESCO Digital Library

 このガイドブックは教員がアートを通じて学習を変革するためのガイドラインを提供することを目的として、世界39カ国のユネスコスクールの600人以上の教員から得たデータを分析して開発されました。

 ガイドブックには、
 「アートは個人および地域社会に変容をもたらす学びを豊かにし、活気づけ、推進する大きな可能性を秘めている。アート学習(*2)は、より平和で持続可能な世界を築くための生徒の能力と意欲を高め、変容的教育を促進する」
 と述べられています。

 しかし、このガイドブックではただ単にアートを教育に取り入れるだけでは不十分であり、アートが教育、ひいては地域社会にもひらかれた学習のツール(媒体)になるためには教員の役割が不可欠であると指摘しています。教員は生徒がそこから何を得るかを最適化するために、教育体験を意識的に構成し、サポートしなければならないと説明されています。

 なお、本ガイドブックによるとアートおよびアート教育は

  • 認知と非認知の両方を活性化する働きがあり、変容的教育を促進する
  • 頭、手、心を統合することができる
  • 学習とコミュニケーションのための人間らしさを呼び起こす

 といった役割があると示されています。

 また、アートを取り入れた実践を行うための枠組みとして以下の4項目が挙げられています。

  1. 学習行動(知識、技能、価値観、態度を育み、応用する機会)
  2. 学習内容(環境要因および教授法)
  3. 学習の関連性(学習者の人生における意義)
  4. 学習成果(知識、技能、価値観、態度)

 上記の4項目は互いに影響し合いながら、教員および生徒の変容的教育が促進されます。

事例紹介:俳句で世界を探究する(日本)

 本ガイドブックでは、12の実践例が取り上げられています。そのうちの一つである日本の事例(東京都江東区八名川小学校)を先に紹介した4項目に照合させながら紹介します。

1. 学習行動

読み・書き・朗読、考察・分析・発表。
俳句に取り組むことは、感情を探求し、世界におけるあり方を探る機会となる。
俳句を書道で展示する(友人、家族、地域社会の人々に見てもらう)。
俳句大会などの行事に参加する。

2. 学習内容

松尾芭蕉にゆかりある地域。
教員は生徒が美的体験や感覚体験に夢中になるよう働きかけている。
俳句コンテストを開催し、生徒に参加を促す。生徒の意欲を高める。

3. 学習の関連性

重要な人生の局面をふり返り、表現する機会を提供する。
俳句コンテストの応募、作品を出版することによって、学校や地域社会から称賛されるようになる。

4. 学習成果

俳句の伝統、地域社会、日本文化における俳句の重要性を理解することができる。また、俳句が世界の他の詩形にどのような影響を与えたかを学ぶ機会もある。
俳句を詠むことで、批判的思考力を育み、環境や生活体験、自分たちを取り巻く世界への影響について深く考えるようになる。
自分の考えを抽象的で力強い詩にする機会を与えてくれる。
自分たちの地域社会への帰属意識が向上する。
日常生活の中で俳句を詠むことへの価値や、感情を探求し表現するのに役立つ俳句の可能性を学ぶ。

UNESCO (2024). Arts for transformative education: A guide for teachers from the UNESCO Associated Schools Network. のp.50より筆者作成

 現代の学校教育で育まれている思考の多くは文字を中心に成り立っています(*3)。自己変容と社会変容の学びの重要性を謳っているESDでさえも、認知的学習が重んじられ、非認知学習が軽視されていることが指摘されています(UNESCO, 2019;2020)。
 4項目を意識しながらアートを取り入れた活動は深まりをもった内的経験を経て、身体性をともなった教育実践としての変容的教育がもたらされるのではないでしょうか。

【参考文献】

  • 佐伯胖(2014)『幼児教育へのいざない [増補改訂版] ―円熟した保育者になるために―』
    一般財団法人 東京大学出版会、189-211頁。
  • UNESCO (2019). Educational Content up close: Examining the learning dimensions of education for sustainable development and global citizenship education.
  • UNESCO (2020). Education for Sustainable Development A roadmap.
  • UNESCO (2024). Arts for transformative education: A guide for teachers from the UNESCO Associated Schools Network.

*1:ユネスコ憲章の理念や目的を学校現場で実践するために1953年に発足した国際的なネットワークです。
*2:本ガイドブックではアートを図画工作に限定しておらず、音楽や演劇、詩なども含まれているため、「アート学習」として翻訳しています。
*3:俳句は「詩的/物語的ことば」に分類され、「アート的思考」を「文字でもあらわせる形」に表現したことばに属します。例えば、俳句・詩・物語は文字的世界ではなく、絵のような情景を思い浮かべながら内的に経験し、身体感覚を呼び起こされるものです(佐伯, 2014)。

「無限に広がる形・色~プログラミングでデジタル万華鏡をつくろう~」(第5学年)

1.題材名

無限に広がる形・色~プログラミングでデジタル万華鏡をつくろう~

2.学年

第5学年

3.分野

絵に表す・鑑賞する

4.時間数

2時間

5.準備物

ミラーシート、児童用端末(「ビスケット」が操作できる環境)

6.題材設定の理由

 プログラミング教育の分類B(学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの)を位置づけ、図画工作科学習の広がりや深まりのためにプログラミングを導入した。
 プログラミング環境「ビスケット」を活用し、表したいことを絵に表す。児童は「ビスケット」でつくった絵をミラーシートでつくった三角柱や四角柱を使ってのぞき込む。ミラーシートに映り込むことにより表れる形や色を見ながら、作品をつくり・つくりかえ・つくることができるようにし、自分がイメージした世界を表わせるようにする。
 本題材は万華鏡の鑑賞から始める。万華鏡とは、2枚以上の鏡を組み合わせて内部に取り付けた対象物の映像を鑑賞する筒状の多面鏡である。小さな穴をのぞき込むときらきら光る不思議な世界が広がる万華鏡は、動かし方や入っているビーズや色セロファンなどで見え方が違ってくる。どの児童も一度は目にしたことがある万華鏡をつくることにより、その模様の美しさや動きの面白さを再発見できるようにする。
 また、プログラミングを活用して「動き」を児童自身が考えられるので、どのような映像ができるのかをイメージしながら取り組むことができる。万華鏡は、「動かす」ことによって中に映る映像が変化するが、本題材で作成する万華鏡は「動き」も想定してつくることができる。デジタル機器を活用し、今までにない、新しい万華鏡をつくることによって、児童の期待感を膨らませられるようにする。

7.題材の目標

【知識及び技能】
 自分の感覚や行為を通して、形や色、動き、色の鮮やかさなどの造形的な特徴を理解する。
 「デジタル万華鏡」をつくる活動を通して、ミラーシートを加工したりプログラミングの方法を活用したりするとともに表したいことに合わせて工夫して表す。

【思考力・判断力・表現力等】
 表したいことを見付け、形や色、動きなどを生かしながら、どのように表すかについて考える。
 友人がつくった作品を鑑賞する活動を通して、表したいこと、いろいろな表し方などについて、感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深める。

【学びに向かう力、人間性等】
 主体的にデジタル万華鏡をつくる活動に取り組み、つくりだす喜びを味わうとともに、形や色に関わり楽しく豊かな生活を創造しようとする。

8.評価規準

【知識・技能】
 自分の感覚や行為を通して、形や色、動き、色の鮮やかさなどの造形的な特徴を理解している。
 「デジタル万華鏡」をつくる活動を通して、ミラーシートを加工したりプログラミングの方法を活用したりするとともに表したいことに合わせて工夫して表している。

【思考・判断・表現】
 表したいことを見付け、形や色、動きなどを生かしながら、どのように表すかについて考えている。
 友人がつくった作品を鑑賞する活動を通して、表したいこと、いろいろな表し方などについて、感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深めている。

【主体的に学習に取り組む態度】

① プログラミングの方法を活用したりミラーシートを加工したりすることにより、形や色や動きが変化することに興味関心をもち、デジタル万華鏡をつくることに意欲的に取り組んでいる。(表現)
② 友人がつくった作品に対して、自分がつくった作品と比べながら楽しんで鑑賞し、身近なプログラミングに対しての関心を広げている。(鑑賞)

9.指導計画

時間

児童の学習の流れ

教師の指導の手立て

5分

◇万華鏡を見て、その仕組みを理解する。

・鏡に材料が映っている。
・手で動かすことによって材料が動き、不思議な模様ができる。

○本授業で何を考えて行うか、どこを工夫するのかがわかるように板書に明記する。
○デジタルで製作する前に、従来の万華鏡を鑑賞することにより、全員がその仕組みを理解できるようにする。

万華鏡の仕組みを理解して、ビスケットとミラーシートをつかって、デジタル万華鏡を工夫してつくろう

15分

◇プログラミング環境「ビスケット」の操作方法を理解する。

○ビスケットには様々な動きをプログラムできる要素がある。本題材では、「動きの速さ」と「回転する動き」に絞った。操作習得の時間を限定し行うことで、児童が試行錯誤して取り組む場面や、作品のイメージに合わせて工夫して取り組む時間を多く確保できるようにした。

◇ミラーシートを「三角柱」「四角柱」「五角柱」などに組み立てて、そこからタブレット画面を覗きながら、どのような見え方をするのかを知る。

○ミラーシートには折り曲げるためのスジを入れておくことで、折るだけで三角柱や四角柱や五角柱ができるようにしておく。
○組み立てた形によって見え方が変わることが理解できるようにする。

40分

◇「動き」や「形」や「色」を工夫しミラーシートで画面を覗きながら、自分のイメージに合わせて工夫してつくる。

○背景の色を変えることができたり、動きの速さによって見え方が変わったりすることなどを声掛けしながら、子どもたちが自分の作品のイメージを見付けられるようにする。

10分

◇友人がつくった作品を鑑賞する活動を通して、表したいこと、いろいろな表し方などについて、感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深める。

○覗いて確かめる鑑賞方法をとることにより、覗き込むまでどのような作品かがわからないワクワク感をもてるようにする。
○見た感想を作者に伝えるように声を掛ける。

15分

◇相互に作品の動画を撮影する。自分の作品を画面越しに見ながら、美しく撮影できているかを確認する。

5分

◇作品に題名を付けて、撮影した動画をGoogle Classroom や、Teams などで共有する。
◇ふりかえりと後片付けをする。

○作品に題名を付けることで、それぞれの作品のイメージを共有できるようにする。
○ふりかえりの視点は以下のように設定する。
・従来の万華鏡との違いやよさ
・動きからどんなイメージが広がったか
・友人の作品を見て、そこから見つけたよさや美しさ

10.児童作品

デジタル万華鏡

星空色の集まり

丸い国境回る丸と三角と星と花

お花畑お化けのパーティ

永遠に走る車