「私」プロジェクト -私も知らない○○な私を表す-(第3学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.基礎データ

題材・単元名

「私」プロジェクト -私も知らない○○な私を表す-

時間数

10時間

題材・単元の
特徴

さまざまな視点から自分自身を見つめることができるよう,興味・関心があるもの,ことなどを言葉で表す活動,それらのイメージを具体化してジオラマに表す活動,自画像に表す活動を一連のプロジェクト活動として構成する。

授業環境

活動環境

美術室

人数

教師1名 生徒41名

教材や用具

コンピュータ,ディスプレイ(50型),その他,
制作に必要な用具

コンピュータ
動作環境

使用デジタル教材

提示型デジタル教材『みる美術』
西洋美術 フランス国立美術館連合 編,
その他,自作画像

OSバージョン

Microsoft Windows 7 Professional

使用周辺機器

(事前準備)デジタルカメラ,スキャナー

2.活用事例及び展開

①ねらい
 身の回りの人,もの,こととの関わりから自分自身を見つめ直し,発想,構想した自分のイメージを表現したり,主題を感じ取ったりする。

②『みる美術』利用の意図
 自分のイメージを自画像に表現するには,ただ自分自身の姿を描くだけでなく,顔や体の向き,ポーズ,色彩,線の表情,陰影のつけ方など,さまざまな造形的な要素を組み合わせる必要がある。また,自分自身の姿だけでなく,背景や余白の色みやそこに描くモチーフも大きく影響する。そこで,『みる美術』の作品登録機能,比較機能,拡大機能を活用し,作品から得られるイメージの違いや変化,それらに影響を与えている造形的な要素について意見交換を行い,作品画像の比較から表現活動に必要となる造形的な要素を確認するとともに,構想の視点をもたせることができるようにした。具体的には,『みる美術』収録作品画像,教師が準備して『みる美術』に取り込んだ作品画像を提示した。また,色彩やポーズ,背景を加工した作品画像を用いて比較の対象とし,色彩やポーズ,背景によるイメージの違いに生徒が注目できるようにした。

③評価について
[意]
鑑賞作品から得られるイメージやそれを生み出す造形的な要素に関心を持ち,自分を表す活動へのイメージを思い描いている。<活動の様子,スケッチブック>

[発]スケッチやスクラップなどを通して,表現活動に必要な情報を収集し,発想を膨らませながら活動に取り組み,さらに必要な情報を収集している。<スケッチブック,作品>

[技]活動を通して得た情報を多面的・多角的に捉え,主題を明確にしたり,表現意図を明確にして構想を練り直したりし,造形的な要素とそれらが持つ特徴や感情を生かしてイメージを表現している。<活動の様子,スケッチブック,作品>

[鑑]造形的な要素を手掛がりに作品の主題や作者が表したいイメージを捉えて,よさや美しさ,面白さを味わっている。<活動の様子,スケッチブック,作品>

④指導計画

学習活動の流れ

指導上の留意点,評価方法

※各時間の始めに,鏡を見て自分の顔をスケッチし,スケッチブックに描きためる。

○各時間の開始5分間にスケッチする活動を位置付ける。

1

○参考作品を鑑賞し,作者が表したかった自分自身のイメージがどのようなものであったか,話し合う。
○主題について考えていくことを知る。

○『みる美術』を使用してさまざまな自画像作品を提示し,以下の内容について感想を交流させる。
・作品の主題 ・作者のイメージ
・作者の表現意図 など
○自画像が描かれるに至った経緯や自画像を描く価値について考えさせ,主題設定につなげる。
<活動の様子,スケッチブックへの記述>

私らしい「○○な私」を見つける

4

○気に入った写真や雑誌の切り抜きなどをスクラップし,自分のイメージを言葉やスケッチに表す。
○自分の形を紙に写し取り,その中に自分が好きなものや関心があるもの,将来の夢などを(できるだけたくさん)書き込む。

○切り抜いた型を壁面に貼り出して,感想を交換する。
○箱の中に,自分を取り巻く世界を構成してボックスアートに表す。
○ボックスアートを鑑賞し,気付いたことを話し合う。

○イメージを膨らませる表現活動と,相互に鑑賞する活動を繰り返し設定する。
○活動を通して得られたイメージをイメージマップやスケッチでスケッチブックに記録させる。
○相互鑑賞の際,スケッチブックにまとめる際には,「どこ(何)が」「どのように」を明確にさせる。
<活動の様子,スケッチブックへの記述,作品>

1

○作品やスケッチ,制作の記録から主題「○○な私」を設定し,スケッチブックに自画像の構想をスケッチやメモで表す。
○表現方法や仕上がりのイメージなどについて,更に構想を練る。

○作品のイメージと造形的な要素の関連について注目させるために,「みる美術」で作品を提示し,比較しながら制作の視点を整理する。
○視点を基に,複数のスケッチをするよう指示し,その中からイメージに近いものを選んで構想を練らせるようにする。
<活動の様子,スケッチブックへの記述>

4

○各自の構想に沿って,自画像を制作する。
○展示した作品(型,ボックスアート,自画像)を鑑賞し,感想を話し合う。
○活動を振り返り,スケッチブックに制作のまとめを記述する。

○個々に応じて,材料の特性を生かした制作方法などを紹介するとともに,造形的な要素やその特徴を視点として助言をする。
○相互に鑑賞する活動を位置付ける。
※制作のまとめには,以下の内容をまとめさせる。
・どのようにして「○○な私」を表現したか
・自画像制作を通じて考えたことは何か
<活動の様子,スケッチブックへの記述,作品>

3.本時の展開(6時間目)

①目 標
[発]
活動を通して得た情報を多面的・多角的に捉え,主題を明確にしたり,表現意図を明確にして造形的な要素を視点に構想を練り直したりしている。<活動の様子,スケッチブック>

②『みる美術』を活用した授業の展開

主な学習活動・内容

教師の指導(○)・評価(※)


○これまでの活動を振り返りながら,自画像を制作するために必要なことについて考える。

○これまでの活動を振り返らせた後,自画像の構想を膨らませるための視点を確認する。
○『みる美術』で参考作品を示し,構図や色などによるイメージの違いについて考えさせる。

・顔の表情 ・ポーズ ・背景 ・色
・構図 など

※作品から得られるイメージの違いや変化,それらに影響を与えている造形的な要素を捉えている。


○「○○な私」という主題に設定し,表したいイメージをスケッチに表す。
○自分が表現したい主題とそのイメージをグループの仲間に紹介し,仲間からの意見を得る。
○仲間からの意見を参考にして,スケッチを見直し,更に構想を膨らませる。

○表情やポーズだけでは表しきれないイメージは,背景にコラージュなどの技法を用いて表現してもよいことを紹介し,その構想をスケッチにメモなどで書き加えさせる。
○表したい感じを伝え合う意見交換の場を設定する。その際,以下の視点を示し,スケッチに見られることを根拠として意見を述べさせる。

【紹介する人】
・主題「○○な私」とそのイメージ
【意見を言う人】
・主題がよく表れている部分…強調する
・主題の表現に不要な部分…省略,単純化する
・主題からイメージする色,形,質感など

※活動を通して得た情報を多面的・多角的に捉え,主題を明確にしている。



○表現方法や仕上がりのイメージなど,スケッチブックに構想をまとめる。
○スケッチブックに活動の振返りを記入する。

※表現意図を明確にして造形的な要素を視点に構想を練り直している。

③指導のポイント
<視点の確認><具体的なイメージの喚起>


 自画像の制作に先立ち,これまでの活動を振り返り,制作のポイントについて話し合う時間を設けた。生徒は,これまでのスケッチから,目や口の形,陰影のつけ方,コントラストによって受ける印象が変化することを感じており,自画像制作のポイントに挙げた。これらの視点について,具体的なイメージを喚起し,表現意図を明確にすることができるよう,『みる美術』の比較機能を用いて,造形的な要素が与えるイメージの違いや変化について考えさせた。比較には,シーレの「黒の壺のある自画像」と,これを教師が加工した画像を用いた。提示した画像は,原画よりも黄みを強くしたもの,背景をなくしたもの,作品中の手をなくしてポーズを変えたものなどである。作品を見比べる中で,生徒は,造形的な要素が与える影響について理解を深め,制作のポイントを整理した。

④感想等

 『みる美術』を活用したことにより,作品を構成する造形的な要素についての理解が深まった。生徒は,色や形などの造形的な要素を共通の言語として互いの作品について感想を交流していった。また,他者の意見を参考に,表現対象としての自分自身を捉え直したり,主題や表現意図を明確にしたりしながら活動に取り組んでいった。ブックマーク機能を用いて提示したい画像を登録しておけること,自作の画像などを追加登録して使用できること,多数の作品を次々と提示したり,並べて提示したりできることは,題材全体を通して,さまざまな場面で活用することができた。しかし,造形的な要素について意識が強まりすぎたために,作品の一部分に注目してしまい,全体のイメージを捉えたり,新たな発想に結びつけたりすることができずにいる生徒も少なからず見られた。造形的な要素とそれらが持つ特徴や感情についての理解は,表現の活動,鑑賞の活動どちらにも欠かせないものであるが,それらだけでは説明しきれないよさや美しさ,面白さも美術の魅力である。今後の実践においては美術の醍醐味を味わいながら,その核心に迫るような手立てを工夫するとともに,よりダイナミックな表現活動を展開できるように改善を図る。

他者との関わりの中で自己のイメージを広げさまざまな表現のよさを見いだす生徒の育成(第2学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

授業で解決しようとしている課題(研究仮説)

 生徒はよりよい作品制作を目指し意欲的に学習に取り組むことができる。だが,表現活動においてアイデアスケッチの段階から下絵,着色と制作が進行しても生徒作品に表出されてくるイメージに広がりがみられない様相にある点と他者と違う表現をすることに不安を感じる生徒がいる点が課題と感じてきた。筆者の授業を振り返ると個別で学習活動する場面が多い。だから生徒は自身の発想・構想の行き詰まりやさらなる改善をめざすことができなかったり,他者の表現との違って当然であることに価値を見いだせなかったりしているのではないかと考えた。そこで,学習活動の展開の中に他者と関わる場面を活動の中に設定する。すると,生徒は他者との関わりをきっかけとし,自己のイメージを増幅したり多様な表現のよさを見いだしたりすることができるようになるものと考えた。本時では「鑑賞」活動に焦点を当てた実践と考察を行うこととする。
 第Ⅰ部で題材全体の流れと本時の位置づけ,第Ⅱ部では実践の様子や結果が分かるよう画像と授業後の生徒アンケートを記述する。第Ⅲ部は授業で解決しようとしている課題が克服されたか生徒アンケートをもとに考察した。

第Ⅰ部 題材全体の構成と本時(学習指導案)

1.題材名

「空想の世界」-空想画の「表現」及び「鑑賞」-

2.題材の目標

 空想画を表現及び鑑賞する活動を通して,現在の自分の夢,想像や感情など心の世界をもとに,主題を生み出し発見する面白さを味わうとともに,さまざまな美術作品のよさを味わうことができる。

3.題材の評価規準

(1)関心・意欲・態度
 活動に主体的に取り組み空想画のよさや美しさなどを感じ取り,美術を愛好する心情を高める。

(2)発想・構想の能力
 空想画を描く,観る活動を通して豊かに発想し構想する。

(3)創造的な技能
 空想画を描く活動を通して,表現方法を創意工夫し,主体的に表現する技能を獲得する。

(4)鑑賞の能力
 空想画のよさや美しさを形や色彩がもたらす感情をもとに,作品を分析的にとらえ,自分の考えを口頭又は文章で表現できる。また,自他の考えのよさや視点の違いの面白さに気付く。

4.題材と指導の構想

(1)題材設定理由
 古くは洞窟画壁画,宗教を題材とした宗教画,シュルレアリスムの画家たちの作品,前衛芸術家の作品など古今東西で空想画が描かれて来た。それらは願望や夢,物語,技法の偶然性などから着想を得,多様な素材を駆使して表現されている。
 本題材を通して身につけさせたい力は次の2点である。

①空想画の表現活動を通して,主体的に材料や形や色彩の組み合わせにより自己の想いを表現する力。
②空想画の鑑賞活動を通して,作品を分析的に読み解き主題や作品に込められたメッセージを推測する力。

(2)生徒の実態と題材のかかわり 2学年4組 37名(男子20名 女子17名)
 生徒たちは2学年4月から6月にデザインの表現活動を通して自己の想いを多くの人々に伝えるために,形や色彩などの効果を生かして分かりやすさや美しさなどを考え,表現の構想を練る活動を行った。その結果,全員が作品を完成させることができたが,作品の主題が曖昧で自分で何を表現したかったのか不明な生徒がいた。
 そこで,生徒が感じ取ったことや考えたことなどをもとに表現する活動を通して,発想や構想に関する学習が必要と考えた。具体的には主題などをもとに想像力を働かせ,単純化や省略,強調,技法の組合せなど構成要素を考え,創造的な構成を工夫し,心豊かな表現活動である。
 中学生の時期はJ・ピアジェによれば,形式的、抽象的操作が可能になり仮説演繹的思考ができるようになるとされる。また,E・エリクソンによれば,他者と異なる一貫した自分自身の同一性の確立する時期とされている。つまり,自他のさまざまな事象を分析的にとらえ客観視するようになるのが中学生の年齢といえる。したがって,自分の無意識の感覚を空想画として表現したり,他者の作品を分析的に鑑賞したりする活動は発達段階に適した題材ではないだろうか。
 また,表現活動との関連の中でオディオン・ルドン(以降,ルドンと記述)の美術作品に触れるために美術館を活用した鑑賞の授業を行うこととする。実物の作品を扱うことでディテールやマチエールを確認することが可能となり,芸術家が制作した実物の美術作品が持つ魅力を体感できる。ルドンが制作した実物の美術作品の形や色彩,技法などを通して分析的に鑑賞する能力(「情報の取り出し」,「解釈」又は「熟考」する力)をさらに高めるだけでなく,感覚的にすばらしいと感じることのできる美術作品を選ぶ経験もさせたい。それが,空想画に対する興味の高まりにつながるものと考えた。
 本指導案における「情報の取り出し」とは,形や色彩などを通して美術作品に何が表現されているか(推測も含む)を言語化することとする。「解釈」とは美術作品上に表現された形や色彩をもとに美術作品に込められたメッセージや物語を推測し言語化することとする。また,「熟考・評価」とは美術作品上に表現された形や色彩,美術作品以外の情報をもとに美術作品に込められたメッセージや物語を推測し言語化することである。

(3)指導の方策
 本題材を実施する上で①指導の連携,②体験,③他者との交流の場面を設定する。

①指導の連携とは
 美術館学芸員と連携したギャラリートークの実施。

②体験とは
 美術館を訪問し,実物の美術作品を目にする。
 生徒が気に入った美術作品を体験的にとらえる(模写する)ことで,形や色彩の特徴をとらえる。
 空想画(印刷作品)を日常的に鑑賞できるよう,多様な作品を廊下に掲示する。

③他者との交流とは
 他者と意見交換させ,多様な考え方を知る。

 ①から③の活動を行うことで,さまざまなアーティストたちが制作した空想画の魅力を生徒が感じ取るとともに,自己の作品制作におけるイメージの膨らみが期待できるものと考えた。

5.題材の指導計画(全12時間)

◯学習のねらい
・主な学習活動

評価の観点

具体的内容

1

◯空想画への関心を持つ。(「鑑賞」)
・空想画を鑑賞し,想像を膨らませてイメージをつくりだすことに関心をもつ。
・表現するためのさまざまな表現方法を知る。

◯空想画への関心を持つ。
・サルバドール・ダリ『記憶の固執』,ルネ・マグリット『大家族』,井上直久『船を見つけた日』を鑑賞し,表現された形や色彩を手がかりに何が描かれているか考える。
・教科書,資料集をもとにさまざまな表現技法を知る。

2

◯空想画を描くための素材を集める。(「鑑賞」)

◯空想画を描くための素材をイラストメモとして残す。
・動植物図鑑やWeb上に存在する風景写真や画像(著作権フリーイラスト等)から気になる写真やイラストをスケッチする。

3

◯自己のテーマにもとづきアイデアスケッチをする。又はアイデアスケッチしながら自己のテーマを見いだす。(「表現」)
・空想画を描くための素材をもとにイメージを広げ,自己のテーマに向けた空想画のアイデアスケッチができる。

◯自己のテーマに近づけるためのアイデアスケッチの制作。
・前時までに描いたイラストのスケッチから想起されるイメージを追加したり,加工するなど再構成しながら自己のテーマに近づけるためのアイデアスケッチをしたりする。

4

◯自己のテーマにもとづいた空想画の下絵を描く。(「表現」)
・アイデアスケッチをもとに,空想画の下絵を完成させる。

◯自己のテーマにもとづいた空想画の下絵を描く。
・自己のアイデアスケッチをトリミングしたり,イメージの修正を加え空想画の下絵を完成させる。

5
本時

◯他者との意見交流を通して自己のイメージを広げ表現するとともに,さまざまな表現の面白さに気付く。
・他のクラスの生徒が描いている空想画下絵のクリティカルな読み解き。

◯空想画の下絵の続きを描けない生徒の作品を対話型鑑賞法で鑑賞し,作品の解釈をする。その後,自分が続きを描くと仮定し形で表現する活動を通して他者と意見交流させることで自分のイメージが広がることに気付くことができる。
・空想画の下絵が行き詰まって描けないで困っている生徒の作品を対話型鑑賞し何を表現しようとしているのか推測する。
・自分だったら作品の続きをどう描くか考え形で表現する。

6

◯空想画下絵を完成させる。(「表現」)

◯空想画下絵に改善の余地が無いか検討し下絵を完成させる。

7

◯アーティストの作品を鑑賞することを通して形や色彩がもたらす感情を考え,作品に込められた想いを推測する。(「鑑賞」)
・新潟市美術館における企画展オディオン・ルドンの作品鑑賞。(美術館の活用)

◯オディオン・ルドンの作品を通して,形や色彩がもたらす感情を考え,ルドンが作品に込めた想いを推測することができる。
・新潟市美術館では3グループに分かれ以下の作品をローテーションしギャラリートーク(対話型鑑賞)をする。終わったグループから自由鑑賞。

①『神秘的な対話』『黄色いケープ,あるいはカバラの祭司』
②『・・・頭を持たない眼が軟体動物のように漂っていた』
③『アポロンの戦車』3作品

ローテーションは以下の通り
学芸員A ①→②→③
学芸員B ②→③→①
志藤 ③→①→②

8

11

◯空想画の着色をする。(「表現」)

◯自己のテーマにもとづいた空想画の着色をする。
・ドリッピングや吹き流しなど多様な技法から自己のイメージに合う表現方法を見いだし着色する。
・アクリルガッシュ,おはながみなどの画材から自己のイメージに合う素材を見いだし着色する。

12

◯クラスメイトの作品のよさに気付くとともに,作品に込められた思いを推測する。(「鑑賞」)

◯さまざまな作品の表現の違い,それぞれのよさに気付き,お気に入りの作品を選び,その作品に込められた作者のメッセージを推測できる。
・クラスメイトの作品の中から直感的にお気に入りの作品を選ぶ。
・技法や画材の違い,形や色彩がもたらす感情をもとに分析的に作品を鑑賞し,作品に込められたメッセージを推測する。

6.本時の学習(5時間目/全12時間)

(1)本時のねらい
 他者との意見交流を通して自己のイメージを広げ言葉や絵で表し,さまざまな表現があることに気付く。

(2)本時の構想
①第一段階(「鑑賞」)
 描きかけの美術作品に表現された形の特徴をもとに,他者との対話を通して何を描こうとしているか推測する。
②第二段階(「表現」)
 第一段階で出て来た,さまざまな意見をもとに,作品の続きを自分が描くと仮定し表現する。

(3)本時の展開と評価

学習内容・活動

主な教師の働きかけと生徒の反応

指導上の留意点と評価

◯本時の学習の準備と確認
8分

・印刷した作品,ワークシートと鉛筆を配布
・本時の活動の確認
・本時の学習課題の提示

<評価規準・観点>
・学習準備(4人グループで机をつける,学習課題の把握)ができたか。

学習課題
「多様な意見をもとにイメージを広げてさまざまな表現があることに気付こう」

・補助発問
「制作に困っている人の作品を読み取り,表現の可能性をみんなで探ろう」

◯作品の「情報の取り出し」
10(5×2)分

【発問1】
「作品に何が描かれているだろう」

・補助発問
「作品の方向はどちらから見ればいいだろう」
「模様や形を手がかりに何を描こうとしているのか推測しよう」

・指示
グループの半数を他のグループに移動させる。
その後,新しいメンバーで発問1と同様の取り組みを行う。

【生徒の反応】
多様なとらえ方が出る。

<評価規準・観点>
・描きかけの作品の形をもとに,何が描かれているか推測し,言語表現できたか。

<留意点>
1つの考え方でなく,多様なとらえが出るよう留意する。

【評価方法】
・観察

◯作品の「解釈」
5分

・指示
グループの半数を他のグループに移動させる。

【発問2】
「作品のタイトルを考えよう」

【生徒の反応】
多様なタイトルが出る。

<評価規準・観点>
・出て来たさまざまな意見をもとに,自分の考えを導き出しワークシートに記入できたか。

【評価方法】
・話合いの観察 
・ワークシート

◯作品の「熟考・評価」
20分

【発問3】
「描きかけの作品の続きを考えよう」

・指示
「班で話し合ったことや,自分で考えたタイトルをもとに,作品の続きを自分が描くと仮定し表現しなさい」

・指示
 教室内を異動しクラスメイトの描いた作品を鑑賞させる。

<評価規準・観点>
・自他の考えをもとに,作品の続きを推測し,続きを描くことができたか。

【評価材料】
・ワークシート

◯まとめ
7分

まとめ
「本時の活動を振り返り気付いたこと感じたことをまとめよう」

<評価規準・観点>
・自他の表現の違いやよさに気付くことができたか。

【評価材料】
・ワークシート

・指示
 意見交流したこと,その後の自分の表現を振り返り,気付いたことをワークシートに書かせる。

【生徒の反応】
・それぞれによさや面白さが存在する。
・意見交換することで自分のイメージが広がる。

(4)本時の評価
 ①自己のイメージを広げ自己の想いを表現できたか。
 ②自他の表現の違いやよさに気付くことができたか。

第Ⅱ部 本時の記録と結果

1.授業の様子(画像記録及び生徒のワークシートの記述)

(1)写真

①導入の様子

使用したワークシート(他クラスの生徒作品)

使用したワークシート(他クラスの生徒作品)

②作品の「情報の取り出し」  【発問1】「作品に何が描かれているだろう」

③作品の「解釈」  【発問2】「作品のタイトルを考えよう」

④作品の「熟考・評価」  【発問3】「描きかけの作品の続きを考えよう」と相互鑑賞

⑤生徒が考えた作品の続き

無機的な形を取り入れた生徒

有機的な形を取り入れた生徒

(2)ワークシートの記述より
 「本時の活動を振り返り気付いたこと」の質問に対する生徒の回答(自由記述)から6種類の感想を抽出することができた。それぞれ代表的な記述を記す。

①自他の表現や見方の違いの存在について述べた生徒

「この絵は生き物が出て来て楽しそうな絵だけど,私の絵は生き物が出てこないさびしい絵です。ですが私の絵が暗くてダメだと思ったのではなく,この絵と私の絵は違って当然,同じ年齢でも絵の内容が全く違って当然なことを,この絵を通して再確認しました」
「話し合いやクラスメイトの作品を見て分かったことは,人によって見方,考え方が違うということ。『◯◯は△△じゃない』『いや◯◯は××にも見えるよ』などと,人それぞれ感じ方が違うんだなと思いました。自分の作品は自然をもとにした空想で,この作品は機械的な感じの空想だと思いました」
「他の人は自分と全然違うのを描いていたけど,どれもどの絵の続きに合っているような絵ですごかった。自分の絵と比べると同じ所が1つもなくて,同じ空想の絵でも同じ所が一つもない。違いがたくさんあっておもしろいと思った」
「いろいろな人と意見を交換すると,いろんな意見がたくさんあって,言われると納得したり,とてもおもしろいことが分かったりして,人と意見交換すると,個人の発想は一人一人違うんだと思いました」
「こうやってみると自分とは違う角度でみていたり,『あっ』と思うような絵もあったりして,同じ絵でも少し加えると一人一人違う絵になっておもしろいと思った」
「自分では『◯◯に見える!』と思ってもメンバーの人が『私は◯◯に見えるよー』と言って,自分だけの意見じゃなくて周りの人達の意見も聞けてすごく楽しかったです。友達の描いた絵を見たら,すごく細かく描いていて自分のとは違うところがたくさんあって面白かったです。その人がなにを想像して描いているのかって思って見てみたらすごく面白かったです」
「いろいろな人の作品を見てまわって,自分と似ているところがあったり,なるほど!と思ったところもたくさんあったので,いいところは吸収したりして,これからの作品をつくる時に参考にしていきたいと思います」
「作者が描いている絵と見る人では見方が違うのではと思いました。他の作品を見てもいろいろな見方があるんじゃないかと思いました。一番感じたのは一人一人違う見方があるということです」
「見方を変えるといろいろなものに見えてくることが分かりました。たとえば歯を描いていると思ったところはカッターになっていたり,チェンソーになっていたりしました。そういうのはすごく面白いと思いました」
「クラスメイトの描いたものを見て,それぞれの絵をどう感じるかは自由なんだと思いました」

②他者と同じ見方をしたことを述べた生徒

「班の中の人とは同じ意見だった」

③自分の作品との比較について述べた生徒

「自分の描いた絵は現実感のあるものだった。他の人はいろいろな発想があってすごいと思った」
「自分の描いたものと比べると,友達の発想の方が面白かった。こんな感じにも描けるんだと思った」
「私の空想画はあまり細かく描いていなくて,これは何を描いているか分かるものばかりだったけどこの絵はよく分からないものが描いてあったりたまに細かいものがあったり見ていると不思議に思えてくる」

④他者との関わりから自己のイメージの広がりを実感した生徒

「話し合いを通して,自分が見えなかったものを言われることで他の見方ができた」
「1回目の話し合いでは出なかった言葉(単語)が二回目,三回目につれすごく増えていた」
「話し合いの中でいろいろな題名の案が出てきた」

⑤作品の続きを描いたことについて述べた生徒

「絵の続きを描いたり,工夫したりと,とても楽しく描くことができた」
「続きを描くのは難しいと思った。自分の思ったことが描けないところもある。これに苦労するが乗り越えると達成感があると思う」
「自分の絵を考えるより,人の絵の続きを描く方が先の事をいろいろ想像できるし楽しかった」
「描き方が昔の壁画のようだと思った。絵の内容は未来の工業又はエネルギー発生装置みたいなものの仕組みを描いたものに見えた」

第Ⅲ部 考察

 本時の学習活動のねらいを踏まえたクラス全体を総括した評価を述べる。

(1)本時の評価「自己のイメージを広げ表現できたか」について。
 全員が自己のイメージを言葉や絵を通して何らかの表現をし,自己のイメージをつくり出していたことがワークシートや授業後の感想を通して読み取ることができた。
 アンケートは「本時の活動を振り返り気付いたこと」と漠然とした質問であったが,活動後の感想の中で「話し合いを通して,自分が見えなかったものを言われることで他の見方ができた」と「1回目の話し合いでは出なかった言葉(単語)が二回目,三回目につれすごく増えていた」「話し合いの中でいろいろな題名の案が出てきた」と回答した生徒が3名いた。これらの生徒は他者のイメージが自己のイメージを広げることに明らかに影響したことを認知できた生徒である。それ以外にも,自分又は他者の発想又は発言を起点としイメージを広げることができた生徒がいた可能性はあるだろう。また,自分のイメージを他者が受け取り新たなイメージを形成し,そこからさらなる自分のイメージの広がり(他者のイメージを受け取り自分のイメージを形成し,そこからさらなる他者のイメージの広がり)につながった姿を確認することができた。作品の続きを描いたことについて述べた生徒に「自分の絵を考えるより,人の絵の続きを描く方が先の事をいろいろ想像できるし楽しかった」とコメントした生徒がいる。これも他者の描きかけのアイデアスケッチが自己の発想の起点となり新たなイメージを形成することにつながった。これは,個別での学習活動形態の授業の中ではあり得なかった。

(2)本時の評価「自他の表現の違いやよさに気付くことができたか」について。
 アンケート結果を見ると「いろいろな人と意見を交換すると,いろんな意見がたくさんあって,言われると納得したり,とてもおもしろいことが分かったりして,人と意見交換すると,個人の発想は一人一人違うんだと思いました」「話し合いやクラスメイトの作品を見て分かったことは,人によって見方,考え方が違うということ。『◯◯は△△じゃない』『いや◯◯は××にも見えるよ』などと,人それぞれ感じ方が違うんだなと思いました。自分の作品は自然をもとにした空想で,この作品は機械的な感じの空想だと思いました」のように自他の表現や見方の違いの存在を肯定的に受け止める回答が多数存在した。1つの正答でなく多くの正答が存在することに生徒が気付き,その違いに面白さを見いだすことができた。これも個別での学習形態の授業の中ではあり得なかったものである。
 以上のことから,授業で解決しようとしていた課題「生徒は他者と関わりをきっかけとし,自己のイメージを増幅できるようになるのではないだろうか」の有効性を確認できたといえる。

「葛飾北斎の神奈川沖浪裏」を読み解く ~『みる美術』、BIG PADとiPadを活用して~(第1学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.基礎データ

題材・単元名

感覚的アプローチによる鑑賞と分析的アプローチによる鑑賞Ⅰ
~電子黒板(BIG PAD)とタブレット(iPad)を活用して、「葛飾北斎の神奈川沖浪裏」を読み解く~

時間数

1時間

題材・単元の
特徴

鑑賞の学習が表現の学習と関連しながら相互に影響し合える学習内容にしていくことが大切である。本校では3年間の鑑賞題材を系統的に位置づけ、表現と鑑賞の一体化を図りながら鑑賞学習を展開している。1年では、見ることを素直に楽しむことから鑑賞の学習を進めていきたいと考え、感覚的アプローチによる手法を学習の入り口にして、分析的アプローチの手法によって得たいくつかの学習課題を、生徒一人ひとりが価値意識をもって発表し合うことでお互いの共通点や違いなどに気づくことが大切である。新たな発見から導かれる認知活動によって創造的思考力が刺激されることで、創造的な思考力も高まり表現活動へと結び付いていけるのではないかと考えている。

授業環境

活動環境

美術室またはPC教室など

人数

教師1名 生徒34名

教材や用具

教師:電子黒板(BIG PAD:シャープ)、タブレット(iPad:アップル)
生徒:教科書(日本文教出版1年)、美術資料(秀学社)、タブレット(iPad)、鑑賞ワークシート、筆記用具

コンピュータ
動作環境

使用デジタル教材

提示型デジタル教材『みる美術』
日本美術 名品コレクション 編

OSバージョン

Windows7

教材や用具

電子黒板(BIG PAD)、タブレット(iPad)

その他

ネットワーク環境、タブレット学習システム (STUDYNET、STUDYTIME:シャープ)

2.活用事例および展開

①ねらい
 学習指導要領では、1年の鑑賞の学習で絵画作品を鑑賞する場合、「造形的なよさや美しさ」「作者の心情や意図と表現の工夫」「美術文化に対する関心を高める」ことや「作品などに対する思いや考えを説明し合うなどして、対象の見方や感じ方を広げる」ことが求められている。「ものの見方や感じ方」から得られる想像力や発想力を、鑑賞の学習を通して伸ばしていくことは、「どのように表現するか」という構想・構成力、「色・ 形・材料」で表現するための技能など、美術の学習を通して培う基礎的な力を伸ばしていくことにつながり、本校美術科の授業づくりの核となるものであると考えている。
 創意工夫したり試行錯誤したりするなかで「自分が望む価値」を総合的にまとめ上げていくことを目標に、美術の学習に取り組んでいくことを通して、心豊かな生活を創造していけるような力を身につけて欲しいと考えている。

②『みる美術』利用の意図
 絵画作品の鑑賞では、作品に込められた作者の思いを感じ取ることや、絵画表現の多様性について理解するとともに、鑑賞の活動を通して造形的な感覚や判断力、造形的言語を養いながら、体験的に造形美術に関わる知識理解を高めることが大切である。これまでの鑑賞の授業では、教科書や資料集に掲載されている図版、カラーコピーやカラープリントによる限られた大きさの図版による授業が中心であった。また、掛け図などの大判の図版を使っても、黒板の位置からでは教室の後ろ側の生徒には何が描かれているのかを読み取ることが難しく、十分な鑑賞活動ができるとは言い難い。そこで今回は、掲示型のデジタル教材『みる美術』を使い、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」の鑑賞を電子黒板とタブレットを活用して、教師と生徒が双方向で授業を展開できるように試みた。
 タブレットの拡大機能を活用することで画面に描かれたものをじっくりと鑑賞し、何が描かれているのかについて読み解きながら、作者がこの作品に込めた思いなどを感じ取ることや、生徒同志でお互いに感じたことや考えたことについて発表し合うことで、多視点的な見方や考え方、感じ方に気づき、より深く作品を鑑賞できるようにした。感じたことや考えたことなどをタブレットの画面に直接書き込むことでイメージを図式化したり言語化するこができることや、書き込んだ内容をネットワーク学習システムを使って電子黒板に送り、その画面をクラス全体で見ながら友達に説明することで学習を深めることができる。

③評価について
美術への関心・意欲・態度
・美術作品に関心を持ち、見ることを親しみながら作者の心情や意図、創造的な表現の工夫などに関心を寄せ、鑑賞する楽しさを味わいながら見方や感じ方を広げようとしている。
鑑賞の能力
・美術作品をじっくり鑑賞し、形や色彩などの特徴や印象、よさや美しさ、作者の心情などを感覚的に味わう。
・美術作品を分析的に見ることにより、作者が作品に託した思いや創造的な表現の工夫などに迫ることで美術の世界の楽しさを実感する。
・日本美術のよさや美しさなどを感じ取り、美術文化に対する関心を高める。

④指導計画

学習活動の流れ

指導上の留意点、評価方法

「感覚的アプローチによる鑑賞方法」
・作品から感じ取った第一印象(直感的な印象)を大切にして、感じたことや考えたことを自分の言葉でワークシートに記述し、お互いに発表する。
・自分の考えや思い、友達の考えや思いについて共通点や違いがあることに気づく。

「分析的アプローチによる鑑賞方法」
・分析的な視点で作品を読み解く。画面に描かれている様々な情報を、造形的な視点から分析し、ワークシートに記述し、お互いに発表する。
・友達の発表を聞き、様々な見方や考え方があることを理解し、改めて自分の感想をまとめる。

<留意点>
・感覚的アプローチによる鑑賞では、作品の第一印象を大切にすることに加え、作品をじっくりと鑑賞することで見えてくることや感じ取れることも大切にしたい。
・タブレットの画面の大きさに限界があるため、電子黒板やプロジェクタなどで大きな図版を鑑賞できるようにする。教師側からの情報は極力提示せずに、ゆっくり、じっくりと作品を鑑賞する時間を確保し、生徒が感じたことや考えたことを自分の言葉で発表できるような環境をつくる。
・ワークシートへの記述や、積極的に発言ができない生徒に対しては、教師の発問をきっかけにして、自分の感じたことや考えたことを言語化させるようにする。〈ワークシートや発言〉

<評価>
・作品をじっくりと鑑賞し、自分の考えを述べているか。〈ワークシートへの記述と発言内容〉
・タブレットを活用し、様々な視点から作品を読み解く活動をしているか。〈授業観察やタブレットへの書き込み〉
・分析的アプローチによる鑑賞方法から、読み解いたことについて論理的に考えをまとめることができたか。また、友達の発表を聞いて、自分の考えたことと比較しながら、自分の意見をまとめることができたか。〈ワークシートや発言内容〉

3.本時の展開

①目 標
・美術作品に関心を持ち、鑑賞の活動を通して、その作品の世界を楽しむ。
・美術作品を感覚的アプローチの手法でじっくりと鑑賞し、作者の心情や意図など作品に込めた思いに迫る。
・美術作品を分析的なアプローチの手法で鑑賞し、作品が表している内容、形、色彩、材料、表現方法などから判断し、想像や推理を働かせ作品について読み取りながら、絵の世界を探究する楽しさを味わう。
・自分の感じたことや考えたことを発表し、ワークシートにまとめていくことで、自分の考えを整理する。
・友達の発表を聞くことで、感じ方や考えに共通点や違いがあることに気づく。

②『みる美術』を活用した授業の展開

主な学習活動・内容

教師の指導・評価の留意点

導入10分

・タブレット配布。
・タブレットの操作についての確認。
・STUDYTIMEへログイン。
・作品の図版を生徒のタブレットに配布。
・鑑賞(感覚的鑑賞と分析的鑑賞)についての説明。
・作品を鑑賞(感覚的鑑賞)し、作品から感じ取った第一印象をワークシートに記述する。
・作品をじっくりと鑑賞し、何が描かれているのか、どのように描かれているのかを感じ取る。

【教師の発問例より】
※「何が描かれていますか?」
→様々な視点から何が描かれているかクラス全員に発言させるなどして、言語化を図る。
【生徒の回答例:発表】
→描かれている富士山や波のことを様々な視点から言語化させる。
富士山→山、土、岩、溶岩、雪、森など。
波→波、大波、小波、しぶき、泡など。

・鑑賞したことをワークシートに記述させることで、自分の思いや考えを整理し明確にさせる
・発表したことについては肯定的に受け止める。
※電子黒板(BIG PAD)の活用
※タブレットを2人で1台使用。2人グループをつくる。
感覚的鑑賞(直観的鑑賞)を中心に、作品を鑑賞させ、画面から感じとったことをワークシートに記述させる。分析的にならないように鑑賞の視点(発問)を示す。

【発問例】
「作品を見て、第一印象はどんな感じですか?」
「画面全体をじっくり鑑賞してみましょう」
※「何が描かれていますか?」
→生徒の発言した「描かれているもの」をすべて板書する。クラス全員が一回は発言できるようにする。
「季節は?」「時間は?」「もう一度作品を見て、画面全体からてはどのような感じを受けますか?」

展開
30

・作品を鑑賞(分析的鑑賞)し、画面に描かれていることを詳しく読み取りワークシートに記述する。

分析的アプローチによる鑑賞の視点を示す。

■タブレットの活用①
・画面の波の方向に矢印をつける。
・舟に乗っている人間に、番号をつける。
□タブレットに書いたことを電子黒板に送る。

【発問例】
「動きの激しい波の方向をよく見て、波の方向を矢印で示してみましょう」
「波の方向を調べてみて、何を感じましたか?」
「人間は何人いますか?」

・友達の回答を確認しながらもう一度画面をじっくりと見る。

■電子黒板の活用①
・生徒の回答を確認する。

・作品から読み取ったことをお互いに発表する。
・この作品のタイトルを知らせる。
  葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」

・友達の発表を聞いて、他の考えや意見が無いか、じっくりと考えさせる。
・富嶽三十六景や「神奈川沖浪裏」などの説明。

■タブレットの活用②
・一番初めに目がいくところや視線の動き、富士山を見せるための工夫などを図形や矢印などを使ってタブレットに書き込む。

□タブレットに書いたことを電子黒板に送る。

【発問例】
「北斎はこの作品でどこを見せたかったのでしょうか?この作品を見た時の、あなたの視線の動き方を示してみましょう。」
「一番初めに目がいくところはどこですか?そこからどのように視線(視点)が移動しますか?数字や矢印で描いてみしょう。」
「葛飾北斎は富士山を見せるためどのような工夫をしていますか?」
「形、色彩、構図など、気がついたことをタブレットに書き込んでみましょう。」

・作品から読み取ったことをお互いに発表する。
・友達の発表を聞いて、質問や疑問点などがあれば発表させて、意見交換をする。

※発表したことについては、できるだけ肯定的に受け止めるようにする。なぜ、そう感じたか、読み取ったかを大切にする。

・友達の考えを確認しながらもう一度画面をじっくりと見る。

■電子黒板の活用②
・生徒の考えを確認する。

まとめ 10分

・作品に込めた北斎の心情や意図、表現の工夫など、今日の授業を通して、自分の思いや考えをまとめる。(時間があれば発表しお互いの考えを知る)
・本作品の第一印象と、分析的に鑑賞した後での印象の違いについて考え、ワークシートに記述する。

・本時の鑑賞の活動では、タブレットを活用し、図版の全体→図版の細部→図版の全体というように、作品全体から受ける印象や特徴を大切にしつつ、細部の詳細な観察を通した分析的アプローチの手法から、新しい発見や気づき、作者の表現意図の推理など、鑑賞の活動が「探究する楽しさ」を持っていることを体験的に理解できるようにする。

③指導のポイント
・感覚的アプローチからの鑑賞の手法で、生徒の視点でじっくりと鑑賞することで、ただ見ているだけでは気づかない様々なことに気づき、発見することの楽しさを味わわせることにねらいを置き、また一方では、分析的アプローチによる鑑賞の手法で、形や色彩、材料、表現方法など、北斎が作品制作においてどのような造形的な工夫をしているかを探ることによって、より高次元の鑑賞学習となることが期待できる。
・北斎の作品鑑賞を通して、日本美術のよさや美しさについて感じ取らせながら、日本の美術文化に対する関心も高めていきたい。
・『みる美術』を活用することで、鑑賞作品の図版全体を鑑賞することができ、タブレットを活用することで、見たい部分を自由に拡大することができるので、それまで気づきにくかった様々なものが見えてくる。例えば、そこに描かれている具体的なもの、筆のタッチ、色彩表現など、生徒自身で様々な発見をする楽しみを味わわせながら授業に取り組ませることができる。
・電子黒板を活用することで、生徒がタブレットに書き込んだ情報を生徒全体で共有しながら授業を進めることができる。お互いが感じたことや考えたことなどを発表し合うことで、共通点や違いがあることに気づき、相互交流を図りながら様々な価値観を理解させたい。

4.感想等

 「神奈川沖浪裏」に代表される葛飾北斎の富嶽三十六景のシリーズは、富士山を中心に北斎が作品に込めた思いや、様々な表現上の工夫を感じ取ることができる図版が多いので、1年生の鑑賞教材として適している。この作品は、教科書や美術資料に掲載されていたり、掛け図などの大型図版資料も手に入れることもできるが、今回の実践のように電子黒板とタブレットを活用したことで、生徒が自分の鑑賞活動のペースに合わせて作品を鑑賞できるようになった。また、ワークシートもあくまでも鑑賞の活動を補助するような形で活用するようにしたことで「よさや美しさを感じ取り味わう活動」がじっくりと取り組めるようになったと考える。
 これまでのワークシート中心の授業では、生徒一人ひとりの鑑賞活動を教師は読み取ることは出来たが、生徒がお互いに友達がどのような見方や考え方をしているのかが分かりづらく、自分の見方や考えと比較しながら学習する活動が希薄であったことが挙げられる。
 今回の授業は1時間扱いであったが、じっくり作品を鑑賞させたり、発表の時間を十分にとることを考えると2時間扱いで題材化した方がよかった。今後もさらに、ワークシートの形式や教師の発問の内容とタイミングなど、各学年の発達段階に応じた工夫について考えていきたい。

1枚の絵から生まれる多彩なストーリー(第1学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

 「表現」に比べ「鑑賞」では授業中や授業後「疲れた」,「鑑賞つまらない」など生徒からネガティブな発言を聞くことがあった。作品に関する知識習得や1つの作品の見方に教師が導く授業形態であるため,生徒が受動的に授業に参加させられていた点が最大の要因と推察する。生徒が能動的に授業に参加できるための工夫が必要と感じて来た。
 改善の方策として対話型鑑賞法を用い,生徒が主体的に活動に参加できれば,「鑑賞」の授業に対する意識がポジティブなものへ変容するのではないだろうか。しかし,美術館等で実施される対話型鑑賞(1人の学芸員が少人数グループを対象として実施する鑑賞)では1人の教員が38人の生徒を相手にするのは困難である。
 そこで,1995年Juanita Brown(アニータ・ブラウン)とDavid Isaacs(デイビッド・アイザックス)によって、開発・提唱された話合いの手法「World Café」(以降,WCと記述)を取り入れることで38人の生徒を対象とした対話型鑑賞を成立させることができるものと考えた。WCでは,生徒が他者と意見交換し多様な考え方を知るとともに,創造的に自己の考えを深めることができるとされている。
 本稿では「鑑賞」活動を通して生徒の言葉から紡ぎ出される言葉を通して,その有効性を探ることとした。

1.題材名

「美術作品に込められたメッセージを読み取ろう」

2.題材の目標

 他者と交流しながら山口晃「新東都名所東海道中『日本橋改』」(以降,山口作品と記述)を鑑賞し,自己の考えを明らかにするとともに,美術作品は観る人によって多様な捉え方があることに気付く。
 本題材における「分析的に鑑賞する」とは,作品を鑑賞して感じたこと,考えたことを述べるだけでなく,そのように感じたり考えたりしたか根拠をもとに述べることとする。
 美術作品の鑑賞は国語科の授業でも実践されている。本題材では美術科ならではの視点,美的観点(形や色彩)に意識的に着目させ活動展開する。

3.題材の評価規準

(1) 関心・意欲・態度
 山口作品を分析的に鑑賞する活動を通して,よさや美しさを感じ取り,美術文化に対する興味・関心を高めることができる。

(2) 発想・構想の能力
 山口作品に表現された形や色彩などの特徴をもとに作品に込められた作者の心情を豊かに発想し,表現の工夫や意図を推測することができる。

(3) 鑑賞の能力
 山口作品に込められた物語やメッセージを分析的に捉え,自他の意見を比較するなどして,自分の考えを口頭又は文章でまとめることができる。

4.題材と指導の構想

(1) 題材のとらえについて
 山口作品を取り上げた理由は,モチーフの日本橋は知名度が高く,生徒は親しみを持てると考えたからである。山口作品に描かれた形や色彩のみで作品解釈すること,与えられた資料や自分の知識をもとに「熟考・評価」することが可能であるため,生徒は多様な方法で作品に迫ることができる教材であると考えた。
 現代アートの表現手段は多様である。それらの作品の一つに触れることは,生徒が美術作品の多様性,自分の感性に響く作品を見いだすきっかけとなるのではないだろうか。

(2) 生徒の実態と題材のかかわり
 生徒は表現活動との関連の中で,教科書や資料集,視聴覚教材などを通してさまざまな美術作品に触れる活動を行ってきた。また,2ヶ月前に実施した「阿部展也」の版画図版を用いた対話型鑑賞活動で生徒は,作品を注意深く鑑賞し,それらが何を表しているか気付くことができるようになった。作者が美術作品に込めたメッセージを推測できる生徒はわずかであった。自分が獲得した情報をもとに,イメージを膨らませ言語化する経験が初めてであったことと,鑑賞するための視点が曖昧であったからと推察する。
 本題材では,山口作品に表現された形だけでなく色彩の特徴ももとに,何が描かれているか推測するために,他者と交流しながら言語化する活動を行う。自他の考え方を共有することを通して,美術作品の多様な捉え方に気付く。その後,さまざまな意見を取捨選択し,自己の考えを深め美術作品にどのようなメッセージが込められているか(作者が社会に対しどのようなメッセージを発信しようとしているか)生徒が推測する。

5.題材の流れ

(1) ねらい
①形や色彩を観点とし山口作品が社会に対し発しているメッセージに気付く。
②美術作品には多様な見方があることに気付く。

(2) 本時について
①授業時数…1時間(50分) ②授業者…筆者 ③生徒数…38名(1学年)

(3) 本時の展開と評価

学習内容・活動

時間

主な教師の働きかけと生徒の反応

指導上の留意点と評価

本時の学習の準備と確認

6

・ワークシートを配布
・本時の活動の確認

板書「作品に込められたメッセージを読み解こう」

◯山口作品の「情報の取り出し」

12

WC1回目(1グループ4人又は3人で実施)

【発問1】
「作品に何が表現されているのだろう。」

【指示1】
「形や色彩の特徴を見てお互いに感じたことを意見交換しなさい。」


補助発問
・人物に着目しよう
・橋に着目しよう
・建物やその他に着目しよう

<評価規準・観点>
◯WC1回目
美術作品の形や色彩の特徴を基に,言語表現できたか。
【評価方法】
・観察,ワークシート

◯山口作品の「解釈」又は「熟考・評価」

12

WC2回目(グループの半分のメンバーが入れ替わる)
異動直後,新しく参加した者は,他のグループで出た意見を紹介し,グループに残留していた生徒はグループ内で出た意見を紹介する。

【発問2】
「いつの時代を表現しているだろう。」
他者の意見を参考としつつも自分の考えを根拠をもとに述べる。

<評価規準・観点>
◯WC2回目
山口作品(写真内最上段),明治・大正の日本橋の写真。現在の日本橋の写真(写真内2段目),広重の浮世絵の日本橋(写真内3段目)との比較や,発問1の結果や他者のさまざまな意見をもとに,自分の考えを述べることができる。
【評価方法】
・観察,ワークシート

◯山口作品の「熟考・評価」

12

WC3回目(グループの半分のメンバーが入れ替わる)
異動直後,新しく参加した者は,他のグループで出た意見を紹介し,グループに残留していた生徒はグループ内で出た意見を紹介する。

【発問3】
「自他のさまざまな考えをもとに,作者は作品を通して社会に対し,どのようなメッセージを発信しようとしているのだろう。」

【指示2】
「自分が推測した作品に込められたメッセージを自分ワークシートにまとめなさい。」
生徒は自他の考えを交流させながら,ワークシートに記入する。

<評価規準・観点>
◯WC3回目
・自分の意見をまとめることができたか。
・山口作品に込められたメッセージを文章にまとめることができたか。
【評価方法】
・話合いの観察
・ワークシートの記録内容

◯まとめ

8

【指示3】
「他の人と交流したり,意見交換する活動を通して,気付いたことや,本時の活動を振り返って感じたことをまとめよう。」

<評価規準・観点>
・他者と意見交換することで自己のイメージが膨らませることができることに気付くことができる。
・分析的に鑑賞し,山口作品に込められたメッセージを推測する活動の面白さに気付くことができる。
【評価方法】
・ワークシート

 本稿における「情報の取り出し」とは,形や色彩などを通して作品に何が表現されているか事実をつかむこと,「解釈」とは作品に表現された形や色彩を基に美術作品に込められたメッセージや物語を推測すること,「熟考・評価」とは作品上に表現された形や色彩,他教科等で学んだ本題材で扱う美術作品以外の知識等をもとに作品のメッセージや物語を推測することとする。

(4) 評価規準
①形や色彩に着目し作品が社会に対して発しているメッセージに気付くことができたか。
②他者との交流を通して,美術作品の多様な見方があることに気付くことができたか。

6.結果と考察

(1) 結果
 生徒の読み(作者が発信しようとしているメッセージの推測)の結果は細部の文章表現の違いはあるが「多様な文化の違いの尊重」「歴史遺産の重要性」「過去の人に学ぶものの存在」「歴史の積層」「平和への希求」の5種類に分類できる。それぞれの代表的な事例を以下の表(枠)内に示す。

①多様な文化の違いの尊重

生徒A
 今も昔もどちらにも良いところがある。昔は不便だったかもしれないけど,排気ガスを出したりしないし,今は排気ガスやCO2などの問題があるけど,すごく便利になっている。だから,昔も今もどちらも大事で,いらないものはないということを社会に伝えたいのではないだろうか。日本橋も,最初の木材でできた橋より,今の橋のほうが丈夫だけど,昔は昔で,それに合った橋になっていると思う。

生徒B
 この絵には今の時代と昔の時代の風景が描かれているので,作者は,日々進化していく時代もいいけど昔のすてきな時代のことも忘れないでいてほしい…というメッセージを発信したかったんじゃないかなぁと思いました。まん中の橋の下の車は人力車など形が古いものですが,まん中から上の車は大型トラックなど現代的な車ばかりでした。

生徒C
 過去の物で良いものもあるし,現代でも良い物はある。古いからって何でも無くしていってしまうのは良くない。「ならば,どちらも取り入れてみよう」というメッセージ。

②歴史遺産の重要性

生徒D
 この作品の中に3つの時代の橋が描かれている。「江戸」「明治」「昭和」この3つを一緒の絵に描くことで,時代がだんだん変わってきて,日本橋が新しくなってその上に高速道路がある。新しくできた物の方が便利でなおかつ時間も短縮できる。だけど,古いものにもそれぞれいい所が必ずある。そこで,この作品を描いた人は,同じような橋を3つ絵の中に描いたんだと思う。新しい物ができれば,古いものは使われなくなって,最後には壊される,そういったことがなくなるように描いたんだと思う。

生徒E
 「時代が進んでも昔のものを活用していくことができる」このように考えた理由は,時代が変わり,身の回りには次々と新しいものが出て来ているけど,昔から使われている物を活用することができる。でも,新しいものがどんどん使われなくなり,消えていってしまっているから時代が進んでも昔のものを活用していくことはできるのではないかと伝えたいのだと思う。

生徒F
 昔のことを忘れないようにというメッセージ…新しいものが出るとすぐそちらの方を向いてしまったり,他の国の文化を取り入れようとして,昔のものとかがなくなってくることがあるから,日本の文化,建物を忘れないようにという想いが込められていると思います。

③過去の人に学ぶものの存在

生徒G
 新しいことばかりでなく,昔のことにも目を向けてみるといいというメッセージ。江戸時代はゴミが出なくて環境にいい暮らしをしていたと聞きます。現代は,たくさんの便利なものがあるけど,環境が悪化していると思う。そこで,昔の人に学び,環境にいい暮らしをしてみてはどうかということで,江戸の人の暮らしを描いたんだと思います。

生徒H
 作者は「未来ばかりでなく,過去を振り返ったり,見つめたりすることが大切だ。だからといって未来を見ないのはだめ。だから過去をときどき振り返りながら未来にすすむ」…そんな社会を作っていきたいというメッセージを発信しているのだと思いました。理由は,社会はどんどん機械化していき,いつの間にか過去の事を忘れている。必死に未来ばかり見ている。そんな社会が今,現在なのでは?と思います。だから「いつかは人の温かさや想いが分からなくなる社会」にならないように,少しずつなおしていって,いつかは自分の思いに近づけたらと思いながらこの絵を描いたんだと思います。

④歴史の積層

生徒I
 古い時代と現代の橋をくっつけて,昔と今とを比較してみて,そこに昔の人を現代の橋に描いたり,現代の橋にはあるはずのない車を描いたり,どんどん技術も進歩して,いろんな人が考えて日本がこれだけ進んできたということを伝えている。今の橋と古い橋をくっつけて,比較して見るとそのように感じる。

⑤平和への希求

生徒J
 この世が平和になって欲しい…このような事故(車が少なく)やケンカがないような平和でにぎやかな街を山口さんはのぞんでいるんだと思う。

(2) 考察
 生徒は山口作品を鑑賞するための視点として,形や色彩を入口としつつも,他者の考えや自分の持っている知識を引用しながら山口作品に込められたメッセージを読み解いた。その結果,以下の①〜③の生徒の姿を確認できた。

①山口作品を他教科で得た知識等と照らし合わせながら鑑賞する生徒
 生徒A,生徒F,生徒Gは,他教科で習得した知識をもとに作品のストーリーを推測している。生徒Gを事例とし,細かく観ると,環境問題に関する知識や小学校6年社会科で習得した江戸時代の民衆の暮らしの知識(江戸時代はゴミが出なくて環境にいい暮らしをしていた)を活用し,推論を展開している。作者の心情や意図と表現の工夫,作品などに対する思いや考えを説明し合う活動の中で,他教科で学んだ知識を整理,統合する思考が働き,対象の見方や感じ方を広げていることが分かる。

②描かれたものを通して,文化遺産の存在意義に気付く生徒
 生徒Dの「新しい物ができれば,古いものは使われなくなって,最後には壊される」,生徒Eの「新しいものがどんどん使われなくなり,消えていってしまっているから時代が進んでも昔のものを活用していくことはできるのではないか」,「日本の文化,建物を忘れないように」は,作者のメッセージとして生徒らは述べている。それは,作られては次々に壊されている文化遺産に対する問題意識があるからこそ出てきた言葉といえよう。作品を鏡とし,自分の内面に潜在的にある意識を写し出している様相が見て取れる。それは,文化遺産への関心の高まりを引き出すことに結びついたといえるのではないだろうか。

③山口作品の形や色彩から受ける感覚的印象をもとに読み解く生徒
 生徒Jは,浮世絵の技法(単純化された,形や色彩)を取り入れた本作品から穏やかな雰囲気を感じとった。それをもとに,作者がこの作品に込めたメッセージを推測した。

7.成果と課題

 WCの手法を取り入れたことで多様な意見を知るだけでなく,他者の意見をもとに自分の考えを深めることにつながった生徒がいた。生徒はWCの活動の中で次々と新たなメンバーに接することで新たな情報に接したり,自分の意見を発信したりした。それは,生徒が主体的に活動に取り組む姿であり,作品に対し興味を持ち続けることへつながるもととなったのではないだろうか。
 50分で実施する題材としては,発問が多過ぎた感がありあわてて自分の考えをまとめている生徒がいた点は今後改善すべき課題である。生徒にじっくりと考えさせるための発問の精選が必要である。

「ミレーの落穂拾い」を読み解く ~『みる美術』、BIG PADとiPadを活用して~(第1学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.基礎データ

題材・単元名

感覚的アプローチによる鑑賞と分析的アプローチによる鑑賞
~電子黒板(BIG PAD)とタブレット(iPad)を活用して、「ジャン=フランソワ・ミレーの落穂拾い」を読み解く~

時間数

1時間

題材・単元の
特徴

鑑賞の学習が表現の学習と関連しながら相互に影響し合える学習内容にしていくことが大切である。本校では3年間の鑑賞題材を系統的に位置づけ、表現と鑑賞の一体化を図りながら鑑賞学習を展開している。感覚的アプローチや分析的アプローチの手法によって得た学習課題を、生徒一人ひとりが価値意識を持って発表し合うことで共通点や差異などに気づくことや、新たな発見から導かれる認知活動によって創造的思考力が刺激されることで、創造的活動へと結び付いていくのではないかと考えている。

授業環境

活動環境

美術室またはPC教室など

人数

教師1名 生徒34名

教材や用具

教師:電子黒板(BIG PAD:シャープ)、タブレット(iPad:アップル)
生徒:教科書(日本文教出版1年)、美術資料(秀学社)、タブレット(iPad)、鑑賞ワークシート、筆記用具

コンピュータ
動作環境

使用デジタル教材

提示型デジタル教材『みる美術』
西洋美術 フランス国立美術館連合 編

OSバージョン

Windows7

教材や用具

電子黒板(BIG PAD)、タブレット(iPad)

その他

ネットワーク環境、タブレット学習システム (STUDYNET、STUDYTIME:シャープ)

2.活用事例および展開

①ねらい
 表現と鑑賞の学習は美術科の目指す感性や創造性の育成を支える両輪としての役割がある。その中でも鑑賞の学習は、造形的に表現されたものを視覚的に捉え、そのよさや美しさ、作者の心情や考えなどを感じ取り味わう活動である。見たことや感じたことを直観的、感覚的に捉える感覚的鑑賞に加え、作品を構成している造形要素を分析し、作者の表現意図や工夫などを学習する分析的鑑賞は、まさに探究心が核となる鑑賞学習の手法である。
 「見ること」とは、視覚を通して得た情報を脳が処理し解釈する活動であり、日常生活ではこのことは無意識におこなわれているが、美術では形や色、材質などの造形的な面から意識的に見ることを通して視覚情報を整理、分析し、解釈することである。これが「見て考えること」である。この「見て考えること」は鑑賞の活動だけでなく、表現活動も含めたすべての造形的な活動を支える美術科の学習の基礎となると考えている。
 表現や鑑賞の幅広い活動を通して、「ものの見方や感じ方」から得られる想像力や発想力、「どのように表現するか」という構想・構成力、「色・ 形・材料」で表現するための技能など、美術の基礎的な力を伸ばしながら、創意工夫したり試行錯誤したりする中で「自分が望む価値」を総合的にまとめ上げていくことが大切であり、本校美術科の授業づくりの核となるものである。美術の学習に取り組んでいくことを通して、心豊かな生活を創造していけるような力を身につけて欲しいと考えている。

②『みる美術』利用の意図
 絵画作品の鑑賞では、作品に込められた作者の思いを感じ取ることや、絵画表現の多様性について理解するとともに、鑑賞の活動を通して造形的な感覚や判断力、造形的言語を養いながら、体験的に造形美術に関わる知識理解を高めることが大切である。これまでの鑑賞の授業では、教科書や資料集に掲載されている図版、カラーコピーやカラープリントによる限られた大きさの図版による授業が中心であった。また、掛け図などの大判の図版を使っても、黒板の位置からでは教室の後ろ側の生徒には何が描かれているのかを読み取ることが難しく、十分な鑑賞活動ができるとは言い難い。そこで今回は、掲示型のデジタル教材『みる美術』を使い、電子黒板とタブレットを活用して、教師と生徒が双方向で授業を展開できるように試みた。タブレットの拡大機能を活用することで画面に描かれたものをじっくりと鑑賞し、何が描かれているのかについて読み解きながら、作者がこの作品に込めた思いなどを感じ取ることや、生徒同志でお互いに感じたことや考えたことについて発表し合うことで、多視点的な見方や考え方、感じ方に気づき、より深く作品を鑑賞できるようにした。また、感じたことや考えたことなどを友達に説明することでイメージの言語化を図ることができると考えた。

③評価について
美術への関心・意欲・態度
・美術作品に関心を持ち、その世界を楽しめるようにする。
鑑賞の能力
・美術作品をじっくり鑑賞し、感覚的に味わい、分析的に見ることによって、作者が作品に託した思いや秘密に迫ることで美術の世界の楽しさを実感する。
・知識をもとに判断し、想像や推理を生かしながら、絵の世界を探究する楽しさを味わう。

④指導計画

学習活動の流れ

指導上の留意点、評価方法

「感覚的アプローチによる鑑賞方法」
・作品から感じ取った第一印象(直感的な印象)を大切にして、感じたことや考えたことを自分の言葉でワークシートに記述し、お互いに発表する。

「分析的アプローチによる鑑賞方法」
・分析的な視点で作品を読み解く。画面に描かれている様々な情報を、造形的な視点から分析し、ワークシートに記述し、お互いに発表する。
・友達の発表を聞き、様々な考えを知ることで、改めて自分の感想をまとめる。

<留意点>
・タブレットの画面の大きさに限界があるため、電子黒板やプロジェクタなどで大きな図版を鑑賞できるようにする。教師側からの情報は極力提示せずに、ゆっくり、じっくりと作品を鑑賞する時間を確保し、生徒が感じたことや考えたことを自分の言葉で発表できるような環境をつくる。
・ワークシートへの記述や積極的に発言できない生徒に対しては、教師の発問を工夫することで、自分の感じたことや考えたことを言語化させるようにする。〈ワークシートや発言〉

<評価>
・作品をじっくりと鑑賞し、自分の考えを述べているか。〈ワークシートへの記述と発言内容〉
・タブレットを活用し、様々な視点から作品を読み解く活動をしているか。〈授業観察やタブレットへの書き込み〉
・分析的アプローチによる鑑賞方法から読み解いたことについて論理的に考えをまとめることができたか。また,友達の考えたことなどについて自分の考えや意見を述べることができたか。〈ワークシートや発言内容〉

3.本時の展開

①目 標
・美術作品に関心を持ち、鑑賞の活動を通して、その作品の世界を楽しむ。
・美術作品を感覚的に味わったり、分析的にじっくりと鑑賞したりする活動を通して、作者が作品に託した秘密に迫りながら美術の世界の楽しさを実感する。
・知識をもとに判断したり、想像や推理を生かしながら、絵の世界を探究する楽しさを味わい、自分の感じたことや考えたことをワークシートにまとめたり発表したりする。

②『みる美術』を活用した授業の展開

主な学習活動・内容

教師の指導・評価の留意点

導入10分

・タブレット配布。
・タブレットの操作についての確認。
・STUDYTIMEへログイン。
・作品の図版を生徒のタブレットに配布。
・鑑賞(感覚的鑑賞と分析的鑑賞)についての説明。
・作品を鑑賞(感覚的鑑賞)し、作品から感じ取った第一印象をワークシートに記述する。

・鑑賞したことをワークシートに記述させることで、自分の思いや考えを整理し明確にさせる。
・発表したことについては肯定的に受け止める。
※電子黒板の活用
※タブレットを2人で1台使用。2人グループをつくる。
・感覚的鑑賞法として、作品の第一印象や直感的に感じたことや、作品をじっくり鑑賞することで、画面から感じとったことなどをワークシートに記述させる。分析的な鑑賞にならないように鑑賞の視点を示す。
【発問例】
「画面全体をじっくり鑑賞しましょう」
「画面全体からどのような感じを受けますか?」

展開
30

・作品を鑑賞(分析的鑑賞)し、画面に描かれていることを詳しく読み取りワークシートに記述する。

分析的アプローチによる鑑賞の視点を示す。

■タブレットの活用①
・描かれている人間に印(数字)をつける。
・人間以外に登場しているものに印をつける。

□タブレットに書いたことを電子黒板に送る。

【発問例】
「何が描かれていますか?」
「人間は何人いますか?」
「人間以外に登場しているものは?」

・友達の回答を確認しながらもう一度画面をじっくりと見る。

■電子黒板の活用①
・生徒の回答を確認する。

・作品から読み取ったことをお互いに発表する。
・この作品のタイトルを知らせる。
  ミレーの「落穂拾い」

【発問例】
「みんな何をしているのですか?」
・友達の発表を聞いて、他の考えや意見がないか、じっくりと考えさせる。

・作品から読み取ったことをお互いに発表する。
・友達の発表を聞いて、質問や疑問点などがあれば発表させて、意見交換をする。

【発問例】
「手前の3人はなぜ他の人たちと離れているのでしょうか?」
「この3人の関係は?」
「どんな人たちですか?」
「何歳くらいですか?」
「他に気づいたことはありませんか?」
※発表したことについては、できるだけ肯定的に受け止めるようにする。なぜ、そう感じたか、読み取ったかを大切にする。

■タブレットの活用②
・一番初めに目がいくところや視線の動きを数字や矢印などでタブレット(iPad)に書き込む。

□タブレットに書いたことを電子黒板に送る。

【発問例】
「ミレーはこの絵のどこを見せたかったのでしょうか?作品を見た時の視線の動き方を示してみましょう。」
「一番初めに目がいくところはどこですか?そこからどのように視線(視点)が移動しますか?数字や矢印で描いてみましょう。」

・友達の考えを確認しながらもう一度画面をじっくりと見る。

 

■電子黒板の活用②
・生徒の考えを確認する。

まとめ 10分

・ミレーは「なぜこのような作品を描いたのか」。作品に込めた作者の心情や意図、表現の工夫など、今日の授業を通して、自分の思いや考えをまとめる。(時間があれば発表しお互いの考えを知る。)
・本作品の第一印象と、分析的に鑑賞した後での印象の違いについて考え、ワークシートに記述する。

・本時の鑑賞の活動では、タブレットを活用し、図版の全体→図版の細部→図版の全体というように、作品全体から受ける印象や特徴を大切にしつつ、細部の詳細な観察を通した分析的アプローチの手法から、新しい発見や気付き、作者の表現意図の推理など、鑑賞の活動が「探究する楽しさ」を持っていることを体験的に理解できるようにする。

③指導のポイント
・感覚的アプローチからの鑑賞方法で、作品を生徒が自由に観察し、様々なことを発見させて味わわせることにねらいを置き、また一方では、分析的アプローチによる鑑賞方法で作家研究などを通して美術作品の背景を探り、文化理解を深めたりすることや、造形言語や造形要素などの知識が深まるなど、この二つの鑑賞方法の授業が効果的に構成されることで、より高次元の鑑賞学習となることが期待できる。
・『みる美術』を活用することで、鑑賞作品の図版全体を鑑賞することや、タブレットを活用することで、見たい部分を自由に拡大することができるので、それまで気づきにくかった様々なものが見えてくる。例えば、そこに描かれている具体的なもの、筆のタッチ,色彩表現など、生徒自身で様々な発見をする楽しみを味わわせながら授業に取り組ませることができる。
・電子黒板を活用することで、生徒がタブレットに書き込んだ情報を生徒全体で共有しながら授業を進めることができる。お互いが感じたことや考えたことなどを発表し合うことで、共通点や相違点があることに気づき、相互交流を図りながら様々な価値観を理解させたい。

4.感想等

 教科書や資料集に掲載されている図版や、カラーコピーやカラープリントなどによる図版を用いたこれまでの鑑賞の学習では、生徒が図版を鑑賞しながら、教師の発問に答えたりワークシートへ記述したりといった活動が中心であった。今回の実践では電子黒板とタブレットを活用したことで、生徒が自分の鑑賞活動に合わせて作品を鑑賞出来るようになった。また、ワークシートもあくまでも鑑賞の活動を補助するような形で活用するようにしたことで「よさや美しさを感じ取り味わう活動」がじっくりと取り組めるようになったと考える。
 これまでのワークシート中心の授業では、生徒一人ひとりの鑑賞活動を教師は読み取ることは出来たが、生徒がお互いに他者がどのような見方や考え方をしているのか、自分の見方や考え方、価値意識と比較しながらで捉える活動が希薄であったことが挙げられる。今後もさらに、ワークシートの形式や教師の発問の内容とタイミングなど、各学年の発達段階に応じた工夫について考えていきたい。

「通学路五十三次」(第2学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.題材名

「通学路五十三次」

2.目 標

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 自分の通学路で心に残る風景を選び,近景・中景・遠景の位置や組み合わせ方を工夫しながら,表現主題により近付くような構図を決め出し,版画に表していく。

3.準備(材料・用具)

教師:写真立て,レイヤーシート(アクリル板),ホワイトボードマーカー,版画板
生徒:通学路の写真,彫刻刀,水彩絵の具

4.評価規準

(ア)造形への関心・意欲・態度
 自分の通学路で心に残る風景を版画で表す活動に意欲的に取り組み,見慣れた風景のよさや美しさを見つけ出そうとしている。

(イ)発想や構想の能力
 主題により近付くようなレイヤーシートの組み合わせや視点を見つけ,構図を決め出すことができる。

(ウ)創造的な技能
 主題により近付くように,彫り方やインクののせ方,刷り方を工夫し,創造的に表現することができる。

(エ)鑑賞の能力
 参考作品や友の作品から,版画の造形的なよさや美しさ,創造的な表現の工夫などを感じ取り味わうことができる。

5.本題材の指導にあたって

○近景・中景・遠景の三段階でレイヤーシートを制作し,構図を考える。

 一人に3枚ずつレイヤーシート(透明のアクリル板18×24㎝)を配付し,自分の主題を基にスケッチした風景を近景・中景・遠景に分けてそれぞれのシートに描いていく。その際,描画材料はホワイトボードマーカーを使う(何度でも描き直しが可能)。また,レイヤーシートの位置を自由に移動させ,構図の検討がしやすいように,写真立てに差し込んで使うように伝える(図1)。それぞれのレイヤーシートが描けたところで,三枚が重なるように並べ,どのくらいの間隔で置くのがよいのか,また,左右の位置はどのあたりがよいのかをデジタルカメラのモニターに映し出しながら検討する(図2,3)。

図1 レイヤーシート

図1 レイヤーシート

図2 レイヤーシートの検討

図2 レイヤーシートの検討

図3 構図の検討

図3 構図の検討

6.題材の指導計画

学習活動の流れ

指導上の留意点,(評価方法)

○浮世絵を鑑賞し,主題と構図の関係性をとらえていく。

・歌川広重の「東海道五十三次」を一覧にして,実際の場所の写真とともに紹介する。
・1番目の「日本橋」を取り上げ,どのような構図の工夫が見られるか考えるように促す。(ア,エ)

○写真を基に,主題と描きたい風景を決め出す。

・イメージマップで,自分の描きたい風景を近景,中景,遠景に分けて考えるように伝える。(イ)

○近景・中景・遠景の三段階でレイヤーシートを制作して構図を考える。

・構図を決め出すために,三枚のレイヤーシートを並べ,表したい構図を考えて間隔や左右の位置を動かして検討するように促す。(イ)

○レイヤーシートの位置や視点を変えながら,主題をより表すことができる構図について友と意見交換し,構図を再検討する。(本時)

・グループでお互いのレイヤーシートの位置や視点を変えながら意見交換するように伝える。 
・友から出された意見を基に,主題により近付くために構図を再検討するように促す。(イ)

○版に下絵を写し,線彫りを進める。

・線の太さを変えたり,彫刻刀の種類を替えたり,彫り方を工夫している姿を全体に紹介する。(ウ)

○版に色のインクをのせ,刷る。

・同じ色から一色ずつ刷ることや,インクをのせる量,バレンでの刷り方によって表現の違いが生まれることを伝える。(ウ)

○完成作品を鑑賞し,自分の作品や友の作品のよさについて伝え合う。

・学習を通して学んだことや,友の作品を見て感じたことをワークシートに記入し発表する。(エ)

7.本時の学習

①目 標
 版画の構図を検討する場面で,レイヤーシートの位置や視点を変えながら,主題をより表すことができる構図について友と意見交換し,構図を再検討することを通して,主題により近付くようなレイヤーシートの組み合わせや視点を見つけ,構図を決め出すことができる。

②学習展開

主な学習活動・内容

指導の工夫や教師の支援・評価◆の留意点

1 自分の構図を振り返り,本時の課題をつかむ。

○前時までに決め出した構図を振り返り,各自の主題と困っていることを伝え合う。
○レイヤーシートを用いて構図を再検討することの必要性を確認し,学習課題を設定する。

2 各自のレイヤーシートを基にグループで意見交換をする。

○意見交換の際に,レイヤーシートの位置や視点を変えながら検討するように促す。
○必要な場合には教室に掲示してある浮世絵の作品や参考になりそうな友のレイヤーシートを参考にするように伝える。

3 友の意見を参考にして構図を再検討する。

○レイヤーシートを描き直したり,新たなレイヤーシートに描いてこれまでの構図と見比べたりして,配置するものの位置や大きさなどを再検討するように伝える。
◆主題により近付くようなレイヤーシートの組み合わせや視点を見つけ,構図を決め出しているかレイヤーシートやワークシートから評価する。

4 活動を振り返り,本時のまとめをする。

○本時の活動を振り返り,感じたことや考えたことを,ワークシートに記入し,発表するように伝える。

8.主題と作品

夏の終わりまで通学を見守り続けてきたヒマワリ

夏の終わりまで通学を見守り続けてきたヒマワリ

朝日の中を進む通学電車

朝日の中を進む通学電車

清々しい朝日の中の稲穂と,山々の一体感

清々しい朝日の中の稲穂と,山々の一体感

清々しい

清々しい朝の神社に,さわやかな風が吹いている

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橋の欄干に朝日が当たり,さわやかで清々しい一日の始まり

にぎやかだった夏が終わり,秋へと季節が移っていく寂しい感じ

にぎやかだった夏が終わり,秋へと季節が移っていく寂しい感じ

9.実践を振り返って

 レイヤーシートの位置を変えたり,カメラの視点を変えたりすることで,実際にその風景を見ているかのような錯覚にとらわれる。そのため,生徒同士の意見交換では,シートを操作しながら具体的な言葉で修正の方向を見いだすようなアドバイスにつなげられた。また,主題を「○○な感じ」と決めたため,検討の際に「本人が考えているような,○○な感じがでているか?」と論点をしぼって意見交換することができていた。デジタルカメラでいくつかの構図を候補として撮っておくことで,見比べることが容易になり,よりよい構図を導き出すことができた。
 生徒が,自分の通学路を再発見することにもつながり,日常の何気ない風景にも関心を向けることができるようになった。また,後日行われた写生会においても,近景・中景・遠景の組み合わせや配置を意識して構図を決め出そうとする生徒の姿がうかがえた。


絵画鑑賞へのいざないⅢ ~作者は何を感じたか~(第2学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.基礎データ

題材・単元名

「絵画鑑賞へのいざないⅢ」~作者は何を感じたか~

時間数

3時間(3/3)

題材・単元の
特徴

クイズ形式を取り入れることにより,自然な流れで生徒に絵画作品を観察させ,グループ活動で様々な鑑賞の視点を学ばせながら,絵画鑑賞へ生徒をいざなう。

授業環境

活動環境

美術室

人数

教師1名 生徒数39名

教材や用具

教師:鑑賞用絵画(A4版に印刷),鑑賞用絵画(一部分拡大したもの),ワークシート
※使用した作品 
・「星降る夜,アルル」ゴッホ
・「ポール=アン=ベッサンの外港,高潮」スーラ
・「エラニーの教会」ピサロ
・「睡蓮の池:バラ色のハーモニー」モネ
生徒:筆記用具

コンピュータ
動作環境

使用デジタル教材

提示型デジタル教材『みる美術』
西洋美術 フランス国立美術館連合 編

OSバージョン

Windows Vista

使用周辺機器

プロジェクター,パソコン(パワーポイント)

2.活用事例および展開

①ねらい
 絵画作品をクイズ形式で鑑賞したり,描いてあるものを分析的に観察しながら,生徒の興味関心を絵画作品の鑑賞へと導く。作品が描かれた時代背景や表現方法の変化などにも着目し,基本的な知識を身につけたうえで,自ら進んで鑑賞し,その表現の工夫や特徴をとらえ,作者の心情や表現意図について考えようとする態度を養う。

②提示型デジタル教材『みる美術』利用の意図
 この授業では印象派における風景画を鑑賞させることを考えた。風景画作品は描かれているものが明確である場合が多く,作品を分析的に見せるための視点の設定が容易である。また,印象派の絵画は歴史上のそれまでの絵画と比較すると劇的に色使いや描かれ方が変わっていく時代の絵画でもある。様々な色使いや筆のタッチなどに着目することにより,作者の気持ちを考える,または想像する,表現意図を考えるというねらいに近づくために使用しやすい題材であると考えた。提示型デジタル教材『みる美術』は「印象派の風景画」などのように検索したいジャンルを指定することですぐに作品を探し出すことができる。また作品の部分拡大を容易にすることができ,非常に詳細に作品を観察することができる。そのため,授業で使用する絵画作品を選び出すことや部分拡大を見せて描かれたものを想像させるという展開を比較的容易にすることができた。

③評価について
◆美術への関心・意欲・態度
絵画作品に関心を持ち,自他の視点をもとに,積極的に作品を鑑賞し,作品に対する見方を広めようとする。
◆発想や構想の能力
画面構成や色彩の効果など,作者の意図について想像し,考えをまとめる。
◆鑑賞の能力
鑑賞を通して表現の工夫や制作意図を感じ取る。

④指導計画

学習活動の流れ

指導上の留意点,評価方法

「絵画鑑賞へのいざない」
①複数の絵画を自由に鑑賞し,描いてあるものや色使い,筆のタッチなどの視点からグループ活動でそれらを分類する作業をする。
②分類した視点について各グループからの発表を聞く。
③他のグループからの様々な鑑賞の視点を聞いた上で教師側からの視点を知る。
④感想をまとめる。

<留意点>
・複数の作品を選ぶにあたり,描かれているものが共通していたり,色使いが似ていたりするなど,ある程度分類することが可能な作品を選ぶ。教師側の視点では,作品から受けるメッセージや時代背景など作品に描かれたものだけでは分類できない視点を生徒に投げかけ,作品の奥深さに気づかせる。
<評価>
・作品を見るための様々な視点に触れ,鑑賞を楽しむとともに,作品に込められている意味などに気づき,積極的に作品を鑑賞しようとする気持ちを持つことができたか。〈ワークシート〉

「絵画鑑賞へのいざないⅡ」
①1時間目に鑑賞した作品を再び鑑賞し,様々な鑑賞の視点があったことを確認する。
②クイズ形式で教師側から出されるヒントをもとに絵画を描かれた順番に並べてゆく作業を行う。グループ活動により,相談しながら順番を考えていく。
③答え合わせをし,描かれ方の変化や時代背景などの解説を聞く。
④感想をまとめる。

<留意点>
・作品数が多いとクイズが難解になる恐れがあるため,その時代を象徴する作品などに鑑賞対象を絞って行う。
<評価>
・ヒントをもとに積極的に絵を鑑賞し,話し合うことで答えを導き出そうとしていたか。〈授業観察〉
・時代背景や作者の考えの変化などから描かれ方の変化を理解することができたか。〈ワークシート〉

「絵画鑑賞へのいざないⅢ」
①絵画作品の部分拡大を鑑賞し,何が描かれた絵かを想像する。
②作品全体を鑑賞するとともに,作品を分析的に見る視点を持ち,細部まで観察する。
③観察をもとに作者の気持ちや表現意図を考え文章にまとめる。

<留意点>
・作品を鑑賞して感じたことに「どうしてそのように感じたのか」などの意味づけをさせる。また,「作者はどうしてそのように描いたのか」などを考えさせ,作者の気持ちや表現意図に迫るようにする。〈ワークシート〉
<評価>
・作品を分析的に観察することから感じたことに理由付けをして自分の考えをまとめることができたか。また,作者の気持ちや表現意図を考えることができたか。〈ワークシート〉

3.本時の展開

①目標
・風景画の作品を様々な視点で分析的に観察し,作品から感じ取られることを言葉で表現する。
・作品の部分拡大を鑑賞することにより,その表現の工夫や特徴をとらえ,作者の心情や表現意図について考える。
・作品から感じたことに自分なりの理由付けをしながら感想をまとめる。

②提示型デジタル教材『みる美術』を利用した授業の展開



学習活動

◎主な支援 ●評価〈手だて〉


1 本時の課題を把握する。
(1)本時の課題を知る。

◎制作者が作品を作り出すときの気持ちに着目するよう伝える。

様々な視点から,絵画作品を鑑賞し,感じたことをまとめよう。



2 作品を鑑賞する。
(1)作品の部分拡大写真を見て何を描いたものか考え,話し合う。
●「これから風景画の部分拡大を見せます。色使いや筆のタッチなどをよく見てどんな風景が描かれているか,また,何を描いたものかを想像してください。」

◎作品の一部分を拡大して見せることで,筆のタッチや色使いに着目させる。
◎何を描いたものかを考えさせることにより,全体をより詳しく見ようとする意識を持たせる。

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○「暗い青が塗られているので夜空のようです。」
○「青い色の上に塗られた黄色がとても強く目に飛び込んできます。」
○「黄色い色は水面に反射した光のように見えます。」

◎絵の具の塗り方,筆が動いた方向,絵の具の厚さなどにも着目させる。

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○「様々な色は縦横に荒っぽく塗られています。何が描いてあるかは全然分かりません。」
○「よく見ると薄いピンク色でたくさんの点が描かれています。

◎縦横に塗られている絵の具,筆の動き,どんな色が塗られているかなどに着目させる。様々に考えさせた上で「わからない」ということも一つの答えとして認める。

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○「細かいたくさんの点で描かれています。遠くに見える水平線のようです。

◎点描で描かれていることに着目させる。細かい点の集まりがどんな風景になるのかを考えさせる。

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○「淡い色が重なって塗られています。青い色が薄く見えるので空の雲を描いたものだと思います。

◎淡い色の重なり方に着目させる。

(2)鑑賞の視点をもとに作品全体を鑑賞し,感じたことをまとめる。

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〈鑑賞の主な視点〉
・場所はどこだろう。
・時間は何時くらいだろう。
・季節はいつ頃で,気温はどれくらいだろう。
・(音が聞こえるとしたら)どんな音が聞こえるだろう。
・作者が最も描きたかったのはどの部分だろう。

◎作品をより分析的にまた,自然に鑑賞ができるよう鑑賞の視点を与える。

●「ゴッホの絵の季節はいつ頃でしょう。」
○「冬だと思います。」
●「どうして冬だと思いますか。」
○「下に描かれている人がコートのような服を着ているように見えるからです。」
○「星がきれいに見える季節なので冬かも知れません。」

●「スーラの絵の季節はいつ頃でしょう。」
○「春だと思います。」
●「どうして春だと思いますか。」
○「黄緑色の草が多く描かれていて,全体的な色も淡い感じだからです。」

◎一部分を見て感じたことと作品全体を見たときの感じ方の違いにも着目させ,感じたことをまとめさせる。

◎表現から作者の気持ちや考えを想像させる。

●作者の心情や制作意図などを自分なりに考えることができたか。
〈ワークシート〉

<生徒の作文(鑑賞文)>
・ゴッホの絵は,海の上に浮かんでいる船と夜空の風景です。人が厚着をしているので季節は冬だと思います。ゴッホは船が出している光に負けないくらい星が輝いていることに感動し,これを描きたいと感じたと思います。
・スーラの絵は,昼下がりの海辺の風景を描いたものです。季節はもう寒さが残っていない春のようです。作者は海岸を出て行くヨットの音,かすかなそよ風の音,ゆっくりと過ぎていく時間などに心地よさを感じ,まわりの風景を楽しみながらのんび りと絵を描いていったことが想像されます。



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3 鑑賞したことを発表する。
(1)まとめたことをもとにグループで伝え合い,話し合いをする。

◎自他の感じ方,考え方の違いを捉えさせる。

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(2)各班の発表を聞く。

◎学級内での発表を通し,より多くの考え方に触れさせる。



4 グループでの話し合いや学級での発表をもとに授業の感想をまとめる。

●自他の感想をもとに作品鑑賞の様々な視点を知り,自分なりの感想を持つことができたか。
〈ワークシート〉

<授業後の生徒の感想>
・絵を見ていると作者そのものが映し出されているように感じました。描かれた風景以外にも表現されているものがあると思いました。
・今まであまり考えてこなかった作者の思いや気持ちを考えることができ,作者からの思いが伝わってくると感じました。
・作品には作者の心情も表現されていることを知りました。作者の人柄なども想像することができるのは,おもしろいことだと思いました。

③指導のポイント
・クイズ形式など遊び感覚を取り入れ,自然に作品を鑑賞させる。作品や作者に関する知識はできるだけ与えず,感じたことを自由に話せる雰囲気を大切にする。
・作品の一部分が拡大されることで見えてくるもの(筆のタッチ,色使いなど)は生徒にとっても新しい発見である。必要に応じて生徒が詳しく観察したいと思う場面を取り上げ,プロジェクターなどを使用し生徒全体に見せ,様々な意見を生徒から集める。
・多くの生徒に自分が感じたこと,考えたことを発表させることで価値観の交流を図り,作品を見る視点を自然に身につけさせる。作者の気持ちや表現意図を意識させることで作品の奥深さを感じさせる。

4.感想等

 今回の授業では提示型デジタル教材『みる美術』の部分拡大の機能を利用したが,生徒の興味,関心を高める導入,展開をすることができた。拡大することで絵の具の塗られ方,絵の具の盛り上がりや塗り重ね,筆のタッチなどが確認でき,生徒は「何が描いてあるか分からない」ということを言いながらもグループ活動ではそれぞれの考えを出し合いながら何が描かれたものかを探る様子が見られた。また,部分拡大を見せた後に作品全体を見せたことにより,拡大部分は全体の中のどの部分だったのか,他の部分にはどのように何が描かれているのかということを興味深く観察する様子が見られた。今後は作品を分類したり,比較したり,作品の情報を見たりするなど,他の機能も利用していきたい。生徒が自ら興味を持った作品を検索し,鑑賞できる授業展開を考えていきたい。

灯りにこころいやされて

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

BEFORE
 教科書「光の表現」の題材を、短時間で予算も抑え、ペットボトルとファンシークレイを使用して制作した。粘土に絵の具を混ぜていろいろな色粘土が出来たが、光が効果的に表現出来ない生徒や、形の工夫が思ったほど出来かった生徒もいた。

AFTER
 今回は、ペットボトルの形を見て、微妙に違う面を利用したり、裏から透かしで文字を浮かび上がるように工夫をした生徒もいた。色粘土も透明感のあるものを作ったり、薄くのばすことで光の効果が出るように工夫したり、短時間でよい作品が生まれた。

指導計画

題材名

「灯りにこころいやされて」

時間

5時間

準備

教師:ファンシークレイ(粘土)、ボンド、ペットボトル用はさみ、クリアファイル 、のばし棒 
生徒:ペットボトル、絵の具、サランラップ

学習目標

  • 不要品であるペットボトルの再利用と、透明感のある粘土を使って、癒し効果のある灯りを制作する。
  • 形の工夫(昼間のオブジェとしての美しさ)と光の演出効果を考えて制作する。

評価の観点

  • 形の工夫(オブジェとして)と光の演出のしかたの両面から考える。完成して少し物足りなかったら、余った色粘土で貼り合わせるなど工夫する。
  • 形が単純でも暗がりで光の効果が表現できることに重きを置く。

《活動の様子》

(1)アイデアスケッチ

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  • 昨年の生徒作品を見せながら、光の演出効果をねらった美しい形を考えていく。また、ペットボトルの限られた形を組み合わせたり、そのままの形を土台として利用し、作りたい形を考えていく。
  • DVD「ファンシークレイで作品をつくる」を見せ、薄く伸ばすことで光がよく映えることを指導する。
  • 配布したプリント「灯りにこころいやされて」にアイデアスケッチする。形は、身近なものを中心に、動物、建物などから連想し、形を単純化させて、光の効果が上がるように工夫して考える。

(2)ペットボトルの加工

  • アイデアスケッチを参考に、作りたい形にあわせたペットボトルを用意させる。1人1~2個準備。
  • どのように切って、つないでいくのかも考えてペットボトル用はさみやカッターナイフで切って形を決めていく。
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各自で持参したペットボトルを 眺めて、さあ、どうしょうかなと思案中。友だちのペットボトルの残りももらって…

Web実践事例03_03

ていねいにうすく粘土を伸ばしていく。彼は、バースデイケーキを制作中。このあと、イチゴをケーキの上にトッピング予定。

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象の耳がうまく作れなくて何度もやり直しをする。手前は、ペットボトルに透かし(切り込み)を入れた作品。

(3)ファンシークレイ(粘土)で形づくり

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Web実践事例03_02

 うすくのばす時は、クリアファイルの中に入れて、のばし棒で押すとよい。(その際、くっつきやすいのでサランラップを中に入れておくと取り出しやすい)
 ペットボトルに手で直接薄くのばしたりして形作りをする。出来るだけ薄い色がよいので、少しだけ絵の具を粘土に混ぜてこねるようにして、透明感のある色粘土をつくる。細かい部分はボンドで接着してつける。(色粘土は乾くと思った以上に色が濃くなるので注意する)

 時間のあまった生徒は、残った粘土でいろいろなものを作っていた。早速、キーホルダーを作って筆箱につけていた生徒がいた。こちらの方が楽しそうだった!?

生徒の感想より(1)

  • 粘土の色をなるべく淡くして、光が通るようにしながら、所々、色を変えてみました。
  • ペットボトルの底の、でこぼこ部分を利用しケーキのいちごとクリームをのせた。スポンジ部分にしわが寄ってしまった。気持ちが落ち込んでいるときに, これを見ると癒されるような作品となった。
  • 粘土と粘土の境 目がうまく接着しなかった。粘土を厚くつけたので発光できるか心配したけど、光が通ったのでよかったです。

(4)鑑賞

 出来上がった各自の作品を並べて、部屋を暗くして鑑賞する。オーロラランプは、8パターンに発光するので、作品に合わせて自分で効果を考えて発光させる。並べたクラス全体の作品を鑑賞後に、プリントに自分の作品と鑑賞した他の生徒の作品を評価してまとめる。

 部屋を暗くして発光した作品を鑑賞するときは、細かい部分が見えず、真に発光度合いが重要視されるので、形に工夫の少ない作品の「光の演出度」の評価が高い。

生徒の感想(2) 作品鑑賞後

  • 他の人の作品は、いろいろと工夫がされていてよかった。
  • 形がよくても分厚く作った作品は、光が漏れていなかった。
  • ランプの入れる位置など自分では気づかないような入れ方をしたりしてすごいなあと思った。
Web実践事例03_01 Web実践事例03_06 Web実践事例03_07 Web実践事例03_08

《最後に》

 教科書に掲載された題材「光の演出」に昨年度より取り組んでみた。今回はその第2弾。ペットボトルをはさみで切って「耳」をつくった。ペットボトルの中から文字を浮かび上がらせる。ペットボトルの模様をそのまま使う。ペットボトルの上部を切り、大きな口にしてその中にランプを入れる。所々に粘土の厚みを変えて光の効果をねらった作品もあった。このように、生徒の工夫が光った作品が多く出来上がった。また、早く出来た生徒が何人か集まって、余った粘土で自分の作りたいものを作り始めていた。そんな場面を見ると、指導している教師自身も楽しくなってくる。
 また、制作後に持った鑑賞会では昨年の生徒に比べると感動は少なかったが、暗闇に灯る光が生徒に少しでも安らぎを与えることができれば嬉しいと感じた。「灯りにこころいやされて」のタイトルどおりに、自宅に持ち帰って机の上に置いて使用してほしいと願うばかりである。
 さて、来年はさらにバージョンアップするか、または別の材料を使った「光の演出」にするか考えるのが楽しみとなった。このように、教師をわくわくさせる授業が最近増えつつあって嬉しい限りである。