「七宝桐文引手」

象嵌七宝/桃山時代

象嵌七宝/桃山時代

 「七宝」とは、古い仏教の教典にも見られる言葉で、もとはその名の通り七つの宝や宝石を指していたと考えられています。この言葉に由来する七宝は、宝石に並ぶほど美しいもの、あるいは宝石の代わりとして作られたものです。一般的には金属の表面にガラス質の釉薬を焼き付けたもので、その繊細な細工と鮮やかな色彩は、輝く宝石と同じように愛されてきました。日本には中国から朝鮮を経由して伝わったとされ、正倉院の宝物にも見られます。
 技法としては、器胎(金属の素地)の表面に金属の線を付け、作りたい模様の輪郭を作り、ガラス釉どうしが混ざらないようにした有線七宝、また金属線を取り除いてから焼き付ける無線七宝とに分かれます。有線七宝は模様の境界線がはっきり表れるのに対し、無線七宝は釉薬の混ざり合った部分が微妙な色になり、やわらかい印象を作り出します。また本作品に用いられる象嵌七宝という技法は、器胎そのものをあらかじめ表現したい模様に形作っておき、凹部分にガラス釉を施す技法です。
 日本では、桃山時代から江戸時代にかけて城郭や書院建築の造営が盛んに行われ、七宝は襖などの引手や、柱や長押(なげし)の釘の頭を覆う釘隠(くぎかくし)などとして数多く作られました。建築金具には、草花をモチーフにした模様や形が多く見られ、華やかな空間を演出していました。
 この桐文引手もそうした建築金具の一つです。葉の先を白でぼかした透明感のある青い葉には虫食いや水滴が表され、花の先には濃いピンク色が施されて、明快な色彩と写実的な表現がみどころとなっています。
 普段は気にかけないような、ちょっとしたところにも美を楽しんできた日本の伝統を今に伝える、まさに小さな「宝」といえるでしょう。

(細見美術館 学芸部 福井麻純)

■細見美術館ico_link

  • 所在地 京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
  • TEL 075-752-5555
  • 休館日 月曜日

<展覧会情報>

  • 「京都国立博物館所蔵 典雅なる御装束-宮廷のオートクチュール-」
  • 2011年10月1日(土)~11月27日(日)

展覧会概要

  • 宮中の儀式に用いられる様々な御料は、千年以上もの歴史に培われた有職の伝統に則り、技術と美意識の粋を集めて調製されるものです。それらは国内において最も格式の高い服飾儀礼を象徴するだけでなく、近代においては国際的な儀典の場面でも用いられ、海外の文化をも摂取して独自のスタイルを築きあげてきました。
    本展では、京都国立博物館所蔵の有栖川宮家・秩父宮家の各宮家ご所用の装束をはじめとする公家服飾の数々をとおして、我が国固有の伝統文化をご紹介します。
    ※会期中、展示替えがあります。詳しくはお問い合わせください。

<次回展覧会予定>

  • 「華麗なる京蒔絵 -三井家と象彦漆器-」
  • 2011年12月3日(土)~2012年1月29日(日)

その他、詳細は細見美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「画家の肖像」 北川民次作

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油彩/カルトンボード/49.7×40cm/1931

 北川民次は早稲田大学予科を退学後、アメリカ在住の兄をたより20歳で渡米、サンフランシスコ、シカゴなどを経てニューヨークで数年を過ごし、のちメキシコで約15年を過ごします。彼にとって、ニューヨークで働きながら画学生として過ごしたアメリカ時代、そして放浪やアルバイト、美術学校で児童美術教育に携わったメキシコ時代は、生涯にわたる制作の基本的なスタイルを確立した時期でもありました。『自分が知っているものを素直に描く』というメキシコの児童画に見られる特質にヒントを得、新しい絵画表現を試みるようになります。美術教育においては、教師と生徒という上下関係の中で教えるのではなく、仲間のように溶け込もうとし、自由な発想で描く重要さを生徒たちと考えました。
 この「画家の肖像」は、彼のメキシコ時代に描かれたもので、大きく見開いた目や、大胆な構図で表されたパレットなどは、写楽の役者絵を思い起こさせる表現です。この作品が描かれた1931年ごろ、メキシコ市で開催された浮世絵展にも、彼がかかわっていたといいます。背景は黒味がかった赤で塗られ、教育者としての絵に対する情熱のようなものが感じられます。彼の37歳のとき、メキシコに滞在していた二宮鉄野と結婚した2年後の作品です。この作品と同寸で、同じ年に制作された「女の肖像」という妻の肖像画があり、一対の作品として描かれたものと思われます。
 彼は1936年に帰国してからは、メキシコの壁画を思い起こさせるようなダイナミックな構成の作品を発表します。第二次大戦中には一時窯業の盛んな愛知県の瀬戸に移り住み、その街で働く労働者の家族の中に人間愛を見いだし、深く人間性の根源を掘り起こそうとしました。

(笠間日動美術館 管理部長 亀山浩一)

■笠間日動美術館ico_link

  • 所在地 茨城県笠間市笠間978-4
  • TEL 0296-72-2160
  • 休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

<展覧会情報>

  • 「モーリス・ユトリロと魅惑の風景画」
  • 2011年9月16日(金)~11月23日(水・祝)

展覧会概要

  • モンマルトルの白い壁に喜びと哀しみを塗りこめたユトリロ。コロー、モネ、ヴラマンクらの風景画、また渡欧して独自の画風を確立した佐伯祐三、荻須高徳らの作品を紹介します。

<次回展覧会予定>

  • 「児玉幸雄とアンティークドール」
  • 2011年11月26日(土)~2012年3月11日(日)

その他、詳細は笠間日動美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「インサイダー」 アントニー・ゴームリー作

5体のうち1体部分/鋳鉄/193×190.6×27cm/1999

5体のうち1体部分/鋳鉄/193×190.6×27cm/1999

 薄暗い森の奥へと続く長い階段を下っていくと、シラキの若木が軽快な垂直線をつくりだし、その葉の間から降り注ぐ木漏れ日によって光あふれた空間が目の前に広がります。アントニー・ゴームリー作「インサイダー」は、霧島の湿潤な気候、繁茂する植物が醸し出す独特の空間の中を、作家自らが歩き回り発見したこの特別な場所にあります。
 ゴームリーは1950年にロンドンに生まれ、オックスフォード大学で人類学を学んだ後、美術家をめざします。ゴームリーは、人間の存在について哲学的な問いを投げかけ続ける彫刻家で、1981年より自らの体に石膏を塗って型取りした「ボディー・ケース」シリーズを制作するようになります。
 「インサイダー」は、一見するとゴームリーの身体と遠くかけ離れているように見えますが、自らの身体で型取りしたものから数学的法則に基づいて抽象化したものです。そのかたちは、身体の中の核としてのもう一つの身体といえます。人間は生きていく中での様々な体験を記憶として体に刻んでいきますが、「インサイダー」は身体に対する記憶と同じようなものなのです。
 ゴームリーは、人々が「インサイダー」に出会うために森を通過していく道すがら、自分自身の呼吸や心臓の鼓動への意識が高まったり、自分がどこにいて、どこへ向かっているのかと自問したりできるような特別な感情をひきおこす場所をつくるために、森の奥にポーズの異なる5体の作品を設置しました。
 目の前に現れたもの言わぬ細長い彫刻は、彫刻も自分自身も自然の一部かもしれないと来訪者に思いを馳(は)せてもらうために設置された、森の中のアンテナのようなものなのかもしれません。

(霧島アートの森 学芸専門員 前野耕一)

■霧島アートの森ico_link

  • 所在地 鹿児島県姶良郡湧水町木場6340-220
  • TEL 0995-74-5945
  • 休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)

<展覧会情報>

  • 「八谷和彦展 -OpenSky in KIRISHIMA-」
  • 2011年7月15日(金)~9月25日(日)

展覧会概要

  • メディアアーティスト八谷和彦による本展は、SFコミックの中に出てくる架空の航空機を、実際に有人飛行可能な機体として制作するOpenSkyプロジェクトの軌跡をたどりながら魅力を伝える展覧会です。

<次回展覧会予定>

  • 「高嶺 格展 とおくてよくみえない」
  • 2011年10月7日(金)~12月4日(日)

その他、詳細は霧島アートの森Webサイトico_linkでご覧ください。


「彼岸花」 香月泰男作

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クレヨン、墨/色画用紙/52.3×31.5cm/1962-67

 花瓶に生けられた彼岸花が描かれています。これは自身の従軍と抑留体験をもとにした、「シベリヤ・シリーズ」で知られる画家、香月泰男の作品です。
 1947年(昭和22年)の復員後まもなく、香月はシベリア関連の絵画を描き始めましたが、2年ほどで制作を中断します。その後約10年にわたり、シベリアを表現するのにふさわしい様式を求めて、試行錯誤を重ねました。そして、方解末(日本画の顔料)を混ぜたイエローオーカーの下地と、木炭の粉末を用いた黒色の絵の具からなる、香月独特の様式を確立させ、本格的に「シベリヤ・シリーズ」に取り組むのです。
 油彩画においてこの様式を完成させた時期、香月は水彩画でも独自の技法を生み出します。香月自身が「着色素描」と呼んだ墨を使用したスタイルで、『彼岸花』もこの方法で制作されました。最初に、モチーフの重要な部分をクレヨンで着彩します。続いて薄めた墨を刷毛にふくませ画面全体にのばした後、棒状の墨を用いて細部を描き込んで完成させます。花弁や茎、花瓶に見られる鋭い線は墨の角で引き、花瓶が置かれた台の模様は、墨の平らな面を押し付けるように使って表現しています。
 香月はモチーフの特徴を瞬時に見抜いて、薄墨で湿らせた画面が乾かないうちに、一気に作品を仕上げました。1枚の水彩画を描くときであっても、自らの持つ技術の全てをつぎ込むように真剣に取り組む姿勢は、香月が大切にした「一瞬一生」の境地につながっています。

(香月泰男美術館 学芸員 中野淑恵)

■香月泰男美術館ico_link

  • 所在地 山口県長門市三隅中湯免226番地
  • TEL 0837-43-2500
  • 休館日 火曜日(祝日の場合は開館、翌平日休館)

<展覧会情報>

  • 生誕100年 香月泰男 欧州遊学スケッチ展Ⅱ
  • 2011年6月24日(金)~9月19日(月)

展覧会概要

  • 香月泰男が1956年秋から約半年間に及ぶヨーロッパ旅行の際に持参したスケッチブックに残る作品群を、2011年の香月生誕100年を記念し、5回に分けて初めて公開しています。
    第2回目となる本展では、スペイン各地やパリ、ローマで描かれた作品を展示します。

<次回展覧会予定>

  • 生誕100年 香月泰男 黒への確信-シベリヤ里帰り展-
    (同時開催)欧州遊学スケッチ展Ⅲ
  • 2011年9月28日(水)~11月28日(月)

その他、詳細は香月泰男美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「樹花鳥獣図屏風」 伊藤若冲作

紙本着色、六曲一双屏風より右隻/137.5×355.6cm/18世紀後半

紙本着色、六曲一双屏風より右隻/137.5×355.6cm/18世紀後半

 伊藤若冲(1716-1800)は、京の都の中心地に生を受け、文芸界が円熟期を迎えた江戸時代中期に独創性あふれる作品の数々を残した絵師です。近年とみに人気が高まり、時代を代表する絵師の一人として知られるようになりました。
 彼の作品の中でもとりわけ異彩を放つのが、この「樹花鳥獣図屏風」です。屏風の大画面を縦横約1cm四方のマス目で区画し、その一マスごとに色を塗り分けていくという途方もない描き方がなされています。方眼の数はおそらく10万個を超え、しかも小さなマス目の中に淡色から濃色への2~3色を重ねており、これだけの作品を仕上げるのにかかった手間ひま、根気を想像すると気が遠くなりそうです。無論これは伝統的な日本画の技法ではなく、若冲が独自に開発した描き方で、発想源として京都・西陣織の下絵である正絵(しょうえ)や、朝鮮の紙織画(ししょくが)などの存在が指摘されています。そこに描かれるのは、牡丹や果樹に囲まれた華やかかつ平和な異世界。身近な生き物から舶来のもの、空想上の霊獣(麒麟、唐獅子など)まで、多種多様な鳥獣が描き込まれ、当時の博物学的関心の高さをうかがわせます。
 最初は右隻の動物図が単独で発見され、縁あって静岡県立美術館のコレクションとなり、その11年後新たに左隻の鳥図が見出された際、本来ペアの屏風なのでは、との調査の末、いま見るような右隻左隻からなる一双屏風として扱われるようになったものです。
 伊藤若冲の、そして江戸時代の絵画の底知れぬ面白さ、豊かさを知らしめる特異な屏風絵。毎年ゴールデンウィークに展示しています。

(静岡県立美術館 主任学芸員 石上充代)

■静岡県立美術館ico_link

  • 所在地 静岡市駿河区谷田53-2
  • TEL 054-263-5755
  • 休館日 月曜日(ただし月曜日が祝日・振替休日の場合は開館し、翌日休館)、年末年始、その他展示替等のための休館日

<展覧会情報>

  • 「芸術の花開く都市展-パリ、ローマ、東京、京都。その都市でしか生まれない芸術-」
  • 2011年7月19日(火)~9月8日(木)

展覧会概要

  • すぐれた芸術を生み出した内外の都市や地域に注目。芸術家と地形や風土との関わりを探り出す。モネ、シスレー、マティスなど、ブリヂストン美術館から特別出品。

<次回展覧会予定>

  • 「京都国立博物館名品展 京都千年の美の系譜-祈りと風景」
  • 2011年10月22日(土)~12月4日(日)

その他、詳細は静岡県立美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「グレーの森」 浅井忠作

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水彩(透明水彩)/紙/34.8×24.4㎝/1901

 明治洋画界の草創期を考えると、高橋由一は第一世代、浅井忠は、黒田清輝とともに第二世代に位置づけることができます。また、浅井と黒田は、対照的な作風の展開を見せますが、教育面の指導では両者ともに優れ、後世に大きな影響を及ぼしています。
 浅井は、安政3年(1856)江戸に生まれ、最初日本画を学びますが、工部美術学校でアントニオ・フォンタネージから洋画を習得します。明治22年(1889)、わが国最初の洋風美術団体の明治美術会を創設し、同会主催の明治美術会展に「春畝」「収穫」(いずれも重要文化財)を出品。脂ぎった褐色を主とする重厚で写実的な画風―脂派(やには)と呼ばれることとなります―を確立しました。
 しかし、浅井は、その地点に留まることをせず、さらなる画境の深化を求めてフランスに留学し、そこで風光明媚な地、グレー=シュル=ロアン村に出逢うのです。浅井は、グレー風景を数多くの珠玉の油彩画、水彩画で残していますが、グレーは、日本人洋画家にとって聖地といってもよく、黒田やほかの画家たちも訪れています。
 浅井の水彩画技術はとても優れていますが、それは、技巧に走り過ぎるものではなく、対象の真の姿を自己の琴線に共鳴させ、水彩絵の具の持つ透明感を最高度に発揮させて表現できる技術でした。
 「グレーの森」は春浅い時期なのでしょう、樹々の多くはまだ芽吹いていません。しかしそれだけに、薄緑色の葉をつけた樹に眼が惹かれ、その緑色が古城のお濠の水面に反映し、たゆたっています。暖かな陽光も感じられますが、この透明感が浅井の水彩画の特質をよく物語っています。

(泉屋博古館分館 分館長 川口直宜)

■泉屋博古館(せんおくはくこかん)分館ico_link

  • 所在地 東京都港区六本木一丁目1-5-1
  • TEL 03-5777-8600(ハロ-ダイヤル)
  • 休館日 月曜日(ただし、月曜日が祝日の場合は開館し、翌平日休館)・展示替え期間・年末年始
    ※今夏の電力供給状況によっては、変更になる可能性があります。

<展覧会情報>

  • 書斎の美術 ―明清の玉・硝子・金工を中心に― 〈特別陳列〉内藤湖南博士旧蔵の中国書籍
  • 2011年7月16日(土)~9月25日(日)

展覧会概要

  • 洋の東西を問わず、書斎という言葉には、特別な思いが込められた感があります。特に中国においては、書斎=文人の概念と結びつき、その空間は、一種の聖域ともなっています。本展は、その書斎を彩った美術工芸品―玉器など―を展示します。

その他、詳細は泉屋博古館Webサイトico_linkでご覧ください。


「朱漆花鳥堆錦合子」

漆/直径14.5㎝

漆/直径14.5㎝

 琉球漆器の朱漆の丸い合子(ごうす)です。合子とは、身と蓋だけの小さな容器のことで、用途は大きさや使う人によって変わります。この作品は径が14.5cmあるので、ちょっとした菓子入れなどに使われたのかもしれません。
 蓋には桜の花と枝に止まる鳥が、堆錦技法で表現されています。堆錦技法とは、文様を付けるのに用いられる技法の一つで、顔料(色の粉)と漆を混ぜてこね、叩いて餅状の材料(堆錦餅)を作ります。それを文様の形に切り取って、漆で器物に貼り付け,鳥の羽や葉脈のような細部は金属棒で線を刻み、表します。このように堆錦技法は凹凸のある文様を作ることができ、さまざまな色の堆錦餅を組み合わせることでカラフルな表現ができます。この作品では、黄色や緑、茶色、白といった色の堆錦餅が使われています。
 ところで、「漆が乾く」という現象は、実は漆の酵素が空気中の水分から酸素を取り込んで硬くなるという反応です。そのため、漆が硬くなるためにはある程度の温度と湿度が必要です。堆錦技法は文様部分に厚みがあるため、自然の状態で完全に硬くなるには高温多湿の気候が不可欠であり、昔からこの技法を使っていたのは自然条件の合った琉球だけでした。18世紀にこの堆錦技法が改良され発展し、琉球王国の外交上重要な徳川将軍家への贈答品などに用いられるようになりました。その後盛んに製作されるようになり、明治以降は全国へ売り出した一般向けの製品に使われ、琉球漆器独特の技法として広く知られるようになります。この作品も、明治から昭和の初め頃に作られたものと考えられます。
 堆錦技法は、現在では他の地域でもわずかながら作られるようになりました。しかし琉球漆器の代表的な技法として、今も多くの品に用いられていることは変わりありません。

(浦添市美術館学芸員 岡本亜紀)

■浦添市美術館ico_link

  • 所在地 沖縄県浦添市仲間1-9-2
  • TEL 098-879-3219
  • 休館日 毎週月曜日(公休日は開館)

<展覧会情報>

  • ウィリアム・モリス ステンドグラス・テキスタイル・壁紙 デザイン
  • 2011年6月10日(金)~7月24日(日)

展覧会概要

  • 19世紀後半に活躍したイギリスのデザイナー、ウィリアム・モリス。機械化の進んだ時代に手仕事の復権を主張、活動し「近代デザインの父」とも呼ばれました。そのモリスの思想や、壁紙や内装用布地、家具などの作品約90点を展示紹介します。

<次回展覧会予定>

  • 光の視覚 サーカス展
  • 2011年7月29日(金)~9月11日(日)

その他、詳細は浦添市美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「ポモナ(トルソ)」オシップ・ザッキン作

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黒檀/高さ131cm/1951

 ザッキンは、旧ソ連(現在のベラルーシ)出身の彫刻家です。1905年に母親の実家のある英国サンダーランドの美術学校で造形学を学びました。その後、大英博物館で古代彫刻を研究し、1909年にパリにわたってエコール・デ・ボザールで学ぶとともに、ピカソらエコール・ド・パリの芸術家たちと親交を結び、新しい美術のあり方を吸収しました。こうして、ザッキンは、ヨーロッパの伝統的な芸術が持つ古典的な造形美と、アフリカ彫刻などが持つ簡潔かつ素朴な要素を融合して、新しい表現に昇華させることとなりました。
 「ポモナ(トルソ)」を見てみましょう。ザッキンは健康的な若い女性を対象とした彫刻を生涯にわたり繰り返し制作しました。「トルソ」とはイタリア語で「胴体」を意味します。彫刻においては、頭や四肢などのあるべき部分が失われて提示される作品をこう呼びます。思いきって省略された頭部を、鑑賞者は無意識に頭の中で補完しながら見ることになるので、美的効果を増幅する効果を持っています。また、この作品は真っ黒で鋳造されているように見えますが、よく見るとそれが黒檀(こくたん)を彫り出したものであることがわかります。触れずとも視覚的に伝わる木の柔らかな質感は、金属とは異なる人間的な温もりを見る者に伝えます。
 「ポモナ」とはローマ神話における果実、あるいは豊穣の女神です。左胸のあたりに細い線で彫られて示される右手には、この像が何者であるかを示すように果実が握られています。

(石橋財団ブリヂストン美術館 学芸課長 新畑泰秀)

■ブリヂストン美術館ico_link

  • 所在地 東京都中央区京橋1-10-1
  • TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)、展示替え期間、年末年始

<展覧会情報>

  • コレクション展示「なぜ、これが傑作なの?」
  • 2011年1月4日(火)~4月16日(土)

展覧会概要

  • マネ、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソ、クレー、藤島武二…。収蔵品を代表する約12作品を取り上げ、なぜ優れた作品だとされているのか、なぜ多くの人に愛されてきたのかをあらためてわかりやすく紹介。

<次回展覧会予定>

  • 特別展「アンフォルメルとは何か?―20世紀フランス絵画の挑戦」
  • 2011年4月29日(金・祝)~7月6日(水)

その他、詳細はブリヂストン美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


「海鼠釉黒流描文大鉢」浜田庄司作

陶器/直径57㎝/1962

陶器/直径57㎝/1962

 陶芸の作品名は、長くて難しい漢字ばかりの名前でよくわからない?
 でもその名前には、形や素材、技法、描かれている文様など、作品を見る時の手がかりがたくさん隠されています。
 たとえばこの作品を見てみましょう。
 直径が60センチ近くもある大きな鉢です。作品名にある「海鼠釉(なまこゆう)」というのは、ナマコに似たまだらな色合いに仕上がる白く濁った釉薬(ゆうやく)のこと。その上には、柄杓(ひしゃく)を使って大胆に流し掛ける「流描(ながしがき)」という技法で、黒い釉薬が掛けられています。ゆっくり考えながら作ることができない一瞬の仕事ですが、浜田は大きな皿や鉢にこの技法を用いることを最も得意としていました。釉薬を掛けたときの勢いが、いきいきとした大らかな線になって器にそのまま表れていますね。
 「15秒プラス60年」、これは作家自身の有名な言葉です。15秒とは大きな器に釉薬を流し掛ける時間、そして60年は陶芸家としてのこれまでの経験や鍛錬のための長い歳月を意味しています。一見すると簡単にできそうに思えるかもしれませんが、釉薬を掛けるためのほんの短い15秒という時間は、そこにいたるまでの長い試行錯誤の積み重ねがあってこそ。「形は轆轤(ろくろ)に委(まか)せ、絵付けは筆に委せ、焼くのは窯に委せる」とも言った浜田の手には、頭で考えるよりももっと確かな無意識の経験が染みついているのです。
 ところで、このページを見た人はもう気づいているでしょう。そう、立体の陶芸作品は絵画などの平面作品に比べて、どんな形をしているかを写真から知ることがとても難しいのです。実物を見ると、写真で見るより複雑なデコボコがあったり、意外と平べったい作品だったり、写真では見えなかったところに面白い文様があったり、きっと新しい発見があります。ぜひ、美術館でいろいろな角度から作品とじっくり向き合ってみてください。

(京都国立近代美術館 研究員 中尾優衣)

■京都国立近代美術館ico_link

  • 所在地 京都市左京区岡崎円勝寺町
  • TEL 075-761-4111
  • 休館日 月曜日(祝日にあたる場合は翌火曜日)、コレクション展(常設展)展示替期間、年末年始

<展覧会情報>

  • 「パウル・クレー おわらないアトリエ」
  • 2011年3月12日(土)~5月15日(日)

展覧会概要

  • 油彩や水彩、糊絵具など、さまざまな素材を使って描かれたパウル・クレーの作品は、切って貼ったり、転写したり、裏に描いたりと、多彩な手法で創作されています。本展では、その制作プロセスに焦点をあててクレー芸術を紹介します。

<次回展覧会予定>

  • 「没後100年 青木繁展 よみがえる神話と芸術」
  • 2011年5月27日(金)~7月10日(日)

その他、詳細は京都国立近代美術館Webサイトico_linkでご覧ください。


上町祭屋台天井絵「男浪図」葛飾北斎作

板着色/118×118.5㎝/1840年代中期

板着色/118×118.5㎝/1840年代中期

※葛飾北斎の「葛」という字は、PCの性質上、教科書紙面と違う表示になっています。ご了承ください。

 葛飾北斎は1840年半ば頃、80歳代で小布施を訪れたときに、上町(かんまち)祭屋台の天井絵を制作しました。「男浪(おなみ)図」は「女浪(めなみ)図」と一対で、それぞれ縦横およそ118cmの桐の板に描かれています。
 紺碧(こんぺき)の波はしぶきをあげながら、激しく渦を巻いています。その様子はまさに北斎の代表作「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を思わせます。波の描線に力強さがあり、見る者を飲み込んでしまうような勢いさえ感じられます。
 「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」はヨーロッパから渡ってきた顔料のベロ藍(あい/プルシアン・ブルー)を本格的に用いた作品として有名です。「男浪図」の波の青色もこれと同じ顔料を、さらに細かなしぶきは胡粉(ごふん/貝殻から作られる白い顔料)を用いたと考えられています。
 波の周囲に金箔の地の縁絵(ふちえ)があり、獅子や孔雀などの動物や数種類の花が所狭しと描かれています。これらの花鳥や動物たちはどことなくエキゾチックな雰囲気を漂わせています。なお、「女浪図」縁絵は下絵が現存し、一ヶ所のみ実物と絵柄が異なるものの、ほぼ忠実に描かれています。
 小布施滞在中の北斎に、地元の豪農・豪商である高井鴻山(たかいこうざん)の多大な協力があったと伝えられます。これにより、北斎は「男浪図」「女浪図」の他にも、東町祭屋台天井絵「龍図(りゅうず)」「鳳凰図(ほうおうず)」や岩松院(がんしょういん)天井絵「鳳凰図」を制作することができたのかもしれません。現存する鴻山宛ての北斎の手紙からも、当時の二人の親密な交流をうかがい知ることができます。

(北斎館 学芸員 池田憲治)

北斎館ico_link

  • 所在地 長野県上高井郡小布施町大字小布施485
  • TEL 026-247-5206
  • 休館日 12月31日(大晦日)

<展覧会情報>

  • 「冬と新年の肉筆画・摺物(すりもの)名作選」
  • 現在開催中 ※2011年2月2日(水)まで

展覧会概要

  • 肉筆画では、雪の風景や新年のおめでたい作品を中心に紹介します。版画では、彫師(ほりし)・摺師(すりし)の技術の高さが見られる摺物とのどかな江戸の風景が描かれた狂歌絵本について紹介します。

<次回展覧会予定>

  • 「北斎と葛飾派の門人たち」
  • 開催期間 2011年2月3日(木)~平成23年4月18日(月)

その他、詳細は北斎館Webサイトico_linkでご覧ください。