天賦国権の国日本

承前

 河上肇の「日本独特の国家主義」は、(1)吾国目下の思想界、(2)国民的自負の時代、西洋文明輸入の反動時代、(3)日本民族の特徴は今の時に於いて最も顕著なり、(4)日本の国家主義と西洋の個人主義、(5)西洋の天賦人権、民賦国権と日本の国賦人権、天賦国権―西洋人の人格と日本人の国格、(6)西洋諸国は凡て民主国なり、日本国のみ独り国主国なり、(7)日本は神国なり―西洋人の権利思想と日本人の国家思想―西洋は権利国にして日本は義務国也、(8)日本に於ては天皇即国家なり、西洋に於ては天皇は国家の機関也―日本に於ける忠君と愛国との一致―忠孝一本論及祖先崇拝論は時勢に適せず、(9)日本の合力主義と西洋の分業主義―高度の愛国主義と劣度の商業道徳―西洋の人物は特種の人格を有し、日本の人物は一色の国格を具ふ、(10)日本にて無政府主義、社会主義の排斥せらるゝ所以―日本には西洋流そのまゝの社会主義、社会政策、立憲政治、政党政治は在り得べからず、(11)西洋及日本に於ける言論の自由不自由の差異―西洋の基督教と日本の国家教、(12)伝来的信仰に対する新興科学の謀叛―妥協と矛盾は刻下の特徴、(13)信仰に理由の説明あり得ず―日本人は無宗教に非ず―日本人に煩悶あり得ず、(14)国家主義の利弊―強き国家と弱き個人、(15)追録数則、という構成で、前回の「日露戦勝がもたらした国民的自負」は(1)(2)によって、紹介したものです。この論は、明治末年の日本を「天賦国権」の国と告発したものですが、「強き国家」を喧伝する声に覆われている現代日本の空気を撃つ視点を提示しております。日本人は国家をどのように理解していたでしょうか。

日本の国家主義

 日本人にとっては、「国家は目的にして個人は其の手段なり。国家は第一義のものにして個人は第二義のもの也。個人は只国家の発達を計る為めの道具機関としてのみ始めて存在の価値を有す」と。そこでは、極端な場合を想像すれば「若し凡ての個人を殺すことが国家の存立を維持する為め必要なる場合ありとせんか、縦ひ凡ての個人を犠牲とするも国家を活かすと云ふことが、国家主義の必然の論理的断案」となし、日本人の倫理観は国家のために己個人の生存を犠牲にすることを躊躇しない。逆に西洋人は、個人が第一義で国家を第二義となし、「国家は只だ個人の生存を完うする為めの道具機関としてのみ始めて存在の価値有す」るものであり、極端に言えば「若し国家を滅すことが凡ての個人の生存を完うする為め必要なる場合」、国家組織の打破が個人主義の「必然の論理的断案」であると。
 かくて河上は、日本とヨーロッパとの間には「建国の趣旨が全く相違」しているがため、その国情において種々の差異が出てきたとなし、主要な論点を次のように指摘します。

 西洋人の主義は個人主義なり。故に西洋に在ては個人を以て自在の価値あるものと為し自己目的性を有するものと為す。故に天賦人権の思想あり。人命を重んじ人格を尊ぶこと、日本人の想像の外に在り。然るに日本人の主義は個人主義に非ずして国家主義なり。故に日本に在つては個人を以て自存の価値あり自己目的性を有すと看做す能はず、独り自存の価値を有し自己目的性を有する者は只だ国家あるのみと為す。故に日本人には天賦人権の思想なくして、天賦国権の思想あり。個人の権利は只だ国家の承認を経て始て存在す。国家は只だ其の自存の目的を達するの手段として、個人に一定の権利を認む。個人の有する権利は、本来自己目的の為めに非らずして、只だ国家の道具として役立つが為めのもの也。故に西洋に在りては人権が天賦にして国権は民賦たりと雖も、日本に在りては国権が天賦にして人権は則ち国賦たり。

人格でなく国格

 このような国のかたちである日本においては、個人が個人として独立の人格を有するという観念がなく、国家の機関としての存在意義を自覚しているという意味で「国格」を担うことが求められています。天皇は、その意味で「国家の利害を自己の利害とし」「国家の公の利害の外別に個人としての私の利害」をもたない「最も完全なる国格を保有」した存在であるがため、「日本人の信仰よりすれば天皇は最高最貴の方」であるとみなされてきたのです。ここに河上は、「日本人の神は国家なり、而して、天皇は此の神たる国体を代表し給ふ所の者」として、その存在を次のように問い語ります。

吾国の天皇は完全無欠の国格を保有し給ひ、国の政治に於いては、只だ国家公の利害を以て其の利害とし給ふのみにて、別に何等私の利害を有し給はず。故に日本に於いては、国家と天皇とは一体にして分つべからず。而して国家は吾等の神なるが故に、天皇は即ち神の代表者たり。故に吾国に在りては、愛国が最上の道徳たると同時に、其の愛国と云ふことは軈(やが)て忠君と同義たり。知るべし、日本民族の特徴は忠孝の一本に非らずして、愛国と忠君との一本に在ることを。是れ吾人が、忠道奨励の前提として孝道を奨励せんとする者を愚なりとする所以なり。
西洋に在つては、凡ての人が個人の立場よりする人格を有す。故に君主も亦た人民と同位同列の人格者なり。否な彼等の思想に依れば、個人は個人としての人格を保つが故に貴き也。故に君主も亦た一個人として人格を保ち、一個人としての私益私利を有す。故に西洋流の思想に依れば、君主は決して国家と一体たる能はず、国家以外別に隔離独立したる人格を有するが故に、君主は即ち国家の機関たり。

「個人は個人の人格を保つ」との言は、現在自明のこととされているようですが、どれだけ日本人一人びとりが己のものとしているでしょうか。そこには、国格に囚われてきた己の存在をみつめることもなく、当世風に流されてきた私があるのではないでしょうか。歴史を読むということは、河上肇が「天賦国権」の国と告発した言説をひとつのてがかりに、私が主語で日本という国のかたちに向きあい、明日に飛翔しうる歴史像を思い描くことではないでしょうか。「美しい国」云々と喧伝される時代であるからこそ、日本という国のかたちを私が主語で問う作業をしていきたいものです。

 

参考文献

  • 大濱『天皇と日本の近代』 同成社 2010年

日露戦勝がもたらした国民的自負

承前

 これまで述べてきた「日本国」像は、日露戦争の勝利がもたらしたもので、「明治の栄光」と喧伝され、日本の原風景であるかのように語られてきました。日本は、日清戦争の勝利でアジアの覇者となり、日露戦争でヨーロッパとアジアにまたがる欧亜の大帝国ロシア、白人の国家に勝利することで世界の大帝国の仲間になるべく一途に駆け足で奔せ行きます。
 大帝国へと奔走する国家の想いこそは、「明治の栄光」と喧伝され、国定教科書が説き聞かせた世界です。この残像は、未だに日本人の心に遺されており、当世耳にする「美しい国」日本、「力強い」日本を取りもどすという類の言説をささえるものにほかなりません。
 このような精神の営みこそは、大帝国―欧州的帝国へと狂奔した国家の歩みにとらわれ、1945年の敗戦という現実を直視せず、現在にいたるまで韓国・朝鮮や中国をはじめとするアジア諸国との信頼関係を構築しえない状況に追い込まれています。
 こうした日本の在り方は、明治末年、20世紀初頭の1911年に河上肇が「日本独特の国家主義」において、鋭く問い質した世界にほかなりません。河上の告発は、100年後の現在の日本を覆う空気をも切り裂くもので、現在を生きる私の場を確かめることをうながしています。

勝利の陰翳(いんえい)

 河上肇は1908年29歳の秋、京都帝国大学講師となり、9月に京都に移り、2年後の大逆事件に衝撃をうけます。「日本独特の国家主義」は、『中央公論』1911年3月号に掲載されたもので、この大逆事件を受けとめて執筆されたものです。
 1910年5月から検挙がはじまる大逆事件は、ハレー彗星が地球に接近するなかで流言がとびかい、世間が人心不和におびえる12月10日に大審院で公判が始まり、29日に結審、翌11年1月19日に判決、24名が死刑、19日に12名を無期に減刑、24日に幸徳秋水ら12名の死刑執行で決着しました。
 この大逆事件の年1910年には、野間清治が後の講談社文化誕生への足場となる『雄弁』を創刊、壮士劇で一世を風靡した川上音二郎が大阪北浜に帝国座を開業するなど、帝国なる誇称が時代の潮流となる夜明けでもありました。河上は、このような時代に向き合い、歴史の構造を問い質そうとした『時勢之変』(1910年12月26日擱筆、1911年3月刊)を、さらに1911年2月14日に脱稿した「日本独特の国家主義」で己の想いを直截に説き語り、日本という国の在り方を告発します。
 「日本独特の国家主義」は、日露戦争後の日本を「国民的自負の時代、西洋文明輸入の反動時代」とみなし、「日本人の思想は明治40年代を一期として全く其の方向を転化した」となし、日清戦争の勝利が「吾が国民の自負心」を強めたが、「清国人は吾等と等しく東洋人たるのみならず、其の文明は吾が文明の大部を構成せる要素たるが故に、我の彼に勝ちたる一事は、未だ以て、東洋人たる日本人としての自負心を惹起するに至らず、寧ろ戦勝の原因を以て、西洋文明の輸入に於いて我国の清国に一歩を先んぜしの点に帰せんとするの傾向を免れざりき」と。
 しかし日露戦争の勝利は、日清戦勝と異なり、「西洋人に勝ちたりと云ふ一事は、実に甚しく吾が国民の自負心―東洋人たる日本人としての自負心を強めたり」と。いままでは西洋人にはとてもかなわないとして、「偏に西洋文明の輸入を計画したる吾が日本人は、此の戦勝に由りて、西洋文明必ずしも恐るるに足らず、却て自家の文明に尊ぶべき或物あるべしと考ふるに至れり」と。

国民的自負心がもたらしたもの

 日本は、清国への勝利を「西洋文明の賜物」とみなしたが、ロシアに勝利したことで「吾が日本人は、他の東洋諸国にも無く又西洋諸国にも無き何等か偉大の特徴を有し居るに相違なしとするの思想、勃然として吾が日本人の間に引き起さるるに至りたり」と、民族の偉大さを誇ることになりました。ここに明治維新以来の「上下都鄙を通じて実に国民一般の思想を支配」してきた「西洋文明の崇拝」に変わり、西洋を「軽蔑」「排斥」することとなり、「警戒」「禁遏」という風潮が世を覆い、「日本人は、自家の文明に何等か偉大なる特徴あることを自覚」することになったと、野郎自大の思いにとりつかれたのです。
 ここに「軽率なる一派の人人は、何等慎重の審議攻究を経ることなく、苟くも今日の西洋に無くして我が日本に或るものならば、其の文明史的意義の如何を問ふことなく、片端より手当り任せに、各々其の思付きに従ふて復古的言説と運動と開始するに至れり」となし、漢学、家族制、孝道、武士道等々の復興を指摘し、「何れも皆な新たに展びんとするの要求に非らずして、一に古きを守らんとするの要求」だとなし、学者の研究にみられる一般的傾向も「日本民族性の研究」で「日本民族の特徴を高調して、恰も現代の日本を謳歌するもの」で、海外からの帰国者も西洋の「短を挙げて我の長を示す」言動に急であると。
 このような戦勝の産物である国民的自負は、「自負すべからざる所に行はれ、斯くて維持すべからざるものを維持し、変ずべきものを変ぜざることと為り、或は妄りに天祐を迷信し誤つて中華の謬想に陥ることあらんか、吾が日本文明の発展は全く是が為めに封鎖さるるに至るべければ也」と。ここに求められるのは、「妄りに他の意に迎合せず、各々信ずる所を披瀝して思想の開発に務ること、蓋し刻下の任務ならん乎」と、己が日本によせる想いを問いかけます。
 かく問い質された国民的自負心は、何も日露戦争後の世上人心にとどまることなく、現在も声高にかたられる中国や韓国への嫌悪感をうながす言動に読みとれましょう。河上肇は、このような日本人の在り方をして、「西洋人の人格、日本人の国格」として問い質していきます。そこには日本という国の本質が提示されています。次回はここに解析された「独特の国家主義」を読み取ることにします。

 

参考文献

  • 『河上肇集』近代日本思想大系18 筑摩書房 1977年
  • 河上肇『自叙伝』全5冊 岩波文庫 1976年

 

 河上の『自叙伝』は、時代に翻弄されるなかで誠実に生きた人間の営みを記録した作品で、「こころの歴史」が忠実に描き出されています。時代を生きるには何が問われているかが読みとれます。

【情報の流儀】埼玉県立川越西高等学校 曽田正彦教諭 ほか

Web限定コンテンツ 授業用スライド >>>(26.2MB)

Web限定コンテンツ

「曽田先生の準備室+」

埼玉県立川越西高等学校

「小江戸」の別名を持ち,年間約620万人もの観光客が訪れる観光地・川越から西におよそ7km。小高い丘の上に建ち,眼下にのどかな田園風景を望む。豊かな緑に囲まれた,恵まれた環境で,文武両面にバランスのとれた教育を行う。生徒数は1005人(H26年4月現在),共学校。

年間カリキュラム

3学期の「3分間プレゼンテーション」は,「一般に○○と言われているが、私は××だと思う」というテーマで,パワーポイントで資料を作成し,3分という枠で全員がプレゼンを行う。

総合的な学習の時間:社会を知る

「子どもたちの視野を広げることを趣旨に,パティシエやソムリエなど,子どもたちが知らない職業をあらかじめ選定し,課題として与える。生徒は与えられた職業について調べ,模造紙に発表内容をまとめる。

総合的な学習の時間:国際交流会

前述の「社会を知る(職業調べ)」と同様に,調べる国は先生が設定する。地元の国際交流団体に,調査対象となる国の人を紹介してもらい,実際に話を聞く場を設けている。生徒は自分で入手した情報と,実際に聞く話とに違いがあることを知り,「情報の信憑性」が何であるかを体感する。

ワークシート

年間を通じて使用するワークシートは約40枚にも及ぶ。情報を学ぶ意義や,授業を受けるうえでの心構え,評価方法などが,丁寧にまとめられている。前述の「新聞記事を書こう」のワークシートもこの中に含まれる。

「スポンジアニメ」(第5学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.題材名

「スポンジアニメ」

2.目 標

○スポンジや針金などの材料を組み合わせ、自分だけの“スポンジくん”をつくる。
○“スポンジくん”がどのように動いたら面白いか構想し、コマ撮りの手法を使って表現する。
○上映会をし、自分や友だちの表現からよさや面白さを味わう。

3.準備(材料・用具)

教師:研磨用スポンジ、針金、デジタルカメラ(班で1台ほど)、モール、カラーペン、色画用紙など

児童:はさみ、“スポンジくん”につけたい身辺材料(ビーズやボタンなど)

環境:デジタルカメラをつなぐことができるモニターかICT機器(鑑賞時使用)

4.評価規準

造形への関心・意欲・態度
○アニメーションづくりを楽しみ、自分の“スポンジくん”が動く喜びを味わっている。

発想や構想の能力
○コマ撮りの手法を知り、どのような動きを表現しようか構想している。

創造的な技能
○既習の材料や用具を工夫して使い、自分の考えたように動きを表現している。

鑑賞の能力
○自分や友だちの作品から動きの工夫やそれぞれのよさを味わっている。

5.本題材の指導にあたって

●ものに命を吹き込む!
 教育現場にも視聴覚機器が充実してきた現在。デジタルカメラを使った様々な表現方法が考えられている中、今回は対象を少しずつ動かしながら撮影していく「コマ撮り」の手法を使うことで、手軽にアニメーションをつくっていく。アニメーション(animation)はラテン語のanima(命・魂)が語源とされている。自分でつくった人形が自分の手によって生きているように動きだすことはとても魅力的であり、コツコツとコマ撮りを重ねていったものを上映した時の喜びや達成感は大きい。
 児童はまずスポンジと針金などを組み合わせ、“スポンジくん”人形をつくる。スポンジは加工しやすく握っても形状が戻る素材なので、児童がどのように扱っても形が崩れず、コマ撮りに適している。“スポンジくん”につけたいリボンやビーズなどを家から持ってきてもよい。ペンでかわいい顔をかいて出来上がり。自分だけの“スポンジくん”ができたら、どのような動きをさせたいか計画を立てていく。導入時に教師がコマ撮りから上映までの過程を実演すると仕組みを理解しやすい。今回は個人での活動だが、グループになって物語を考えるのも楽しい。コマ撮りはデジタルカメラの再生機能ですぐに確認ができ、不要な部分は簡単に削除することができるので、何度でもやり直したり試したりしながら自分の気に入った表現を追求することができる。コマ撮りに慣れてくると、背景や小道具、エンドロールなどを自然とつくりだす児童も見られ、児童の手によって思いつくままにどんどん発展していくことができるのも、大きな魅力だと感じる。教室環境にICT機器やモニターがあればデジタルカメラと繋いで上映会を行うこともできる。上映後は各作品にメッセージを書いたり最優秀賞を話し合ったりするなどしてそれぞれのよさや工夫を感じ取る時間を十分に確保したい。動画作成ソフト(Adobe Premiere Proなど)があればDVDに編集し、展覧会で上映するなど発表の機会があるとさらに意欲の高まりが期待される。家庭でも気軽に行える活動なのでぜひ授業外でも取り組み、児童がつくりだす喜びを身近な体験として楽しくとらえられることを願っている。

6.題材の指導計画

学習活動

指導上の留意点



アニメーションってなんだろう?

○アニメーションの種類を発問する。
T「アニメーションにはどんな種類があるか知っていますか?」
C「夕方によく放送されています。」
C「粘土のアニメも見たことがあるよ。」
C「他にはどんなものがあるのだろう?」

○資料を提示するなどして、アニメーションには様々な種類のものがあることを押さえる。
○アニメーションは静止画を連続して再生することで動きが表現されていることを知る。

○切り紙やパラパラまんが、人などを撮影するピクシレーションなども紹介できると広がりがもてる。

“スポンジくん”でアニメーションをつくってみよう

○教師がつくった“スポンジくん”を紹介する。
○実際にコマ撮りを実演し、ICT機器などで再生して見せる。
○スポンジくんのつくり方を簡単に説明する。

自分だけの“スポンジくん”をつくろう

○概要を記したプリントを配布する。
○針金の安全な扱い方について確認する。

○材料、用具の紹介をする。



自分だけの“スポンジくん”を完成させよう

○家から持ってきた材料なども使い、“スポンジくん”づくりを進める。



|

コマ撮りしてみよう

○“スポンジくん”が完成した児童から撮影に入る。

☆グループで取り組んだり、背景や小道具をつくったりしてもいいことを伝える。

○デジタルカメラの取り扱いについて掲示物などを用いて確認する。
○コマ撮りの流れも掲示しておくと活動しやすい。



上映会をしよう

○それぞれの作品をICT機器などで上映し、発表する。

☆発表内容
①作品上映
②つくった感想や工夫したところ

○友だちにメッセージをおくる。
○鑑賞カードに取り組む。

[作品例]
「魔法をかけたら…☆」

[配布プリント]

ネクスト・ゴール!

(c)Next Goal Wins Limited.

 映画「ネクスト・ゴール!」(アスミック・エース配給)のサブタイトルは、「世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦」である。アメリカの準州であるアメリカ領サモアのサッカー・チームは、2001年のFIFAワールドカップ予選で、オーストラリアに0対31で記録的な大敗を喫する。ドキュメンタリー映画ながら、これが劇映画のような構成、運びで、弱小のサッカー・チームの人間模様が巧みに描かれる。アメリカ領サモアは、人口5万4千人ほどの小さな島。美しい風景と心おだやかな人たちの文化や風習もさりげなく挿入される。
 アメリカ領サモアのサッカーチームは、最低、最弱だけれど、選手たちは心意気に溢れ、懸命にサッカーに打ち込む。その姿は、むしろ微笑ましく清々しい。なにしろチームは、ここ10年の公式戦では30戦全敗、失点は200ゴールを超える。当然、ランキングは最下位だ。

(c)Next Goal Wins Limited.

 2009年には、サモア沖地震による津波被害で壊滅的な被害を受ける。それでもサッカーの大好きな選手たちは、すぐにグラウンドを整備、練習を開始する。登場する人物がことごとく個性的で、そのキャラクターがくっきりと描かれる。世界最低のゴールキーパーと言われているニッキー・サラプは、大敗を喫したオーストラリアとビデオゲームで戦い続けている。そのトラウマは深い。一度、引退してアメリカ本土に移住するが、自らのトラウマに打ち勝とうと島に戻ってくる。
 ディフェンダーのジャイヤ・サエルアは、サモアで認められている第三の性、ファファファインである。ふだんは女性として生活し、練習前には髪を整え、メイクをする。レギュラーにはなれないが、チーム仲間との絆を大事にしている。ジャイアの語る言葉は感動的ですらある。
 チームのなかでも優秀なフォワードのラミン・オットは、家族を養うために軍隊に入り、本土に移住。サッカーは駐屯地で続けていて、すべての休暇を犠牲にして島に戻ってくる。
 連戦連敗、チームをなんとかしてほしいとの要求をアメリカ・サッカー協会に送る。監督職に応募してきたのが、サッカー経験の豊かなオランダ人のトーマス・ロンゲン。頑固一徹のトーマスは、一流の指導法を身につけていながら、なかなかチームにとけ込まないでいる。昔気質で、「自分は協会で雇われた」と言い張っていたが、やがて過去の辛い出来事を選手たちに話し、自らのサッカーへの思いを選手たちに伝える。徐々にではあるが、選手たちの意識が変わり始める。トーマス自身も、選手たちから多大の刺激を受けるようになっていく。

(c)Next Goal Wins Limited.

 練習が続く。泥まみれになりながらのスライディング。まだまだ技術が追いつかない。2014年、FIFAワールドカップ、ブラジル大会の予選が近づいてくる。
 はっきり言って、技術的にはかなり劣るチームである。教会で祈って勝てるものではない。サッカーは、なによりもチーム・プレイである。高度の技術はもちろんのこと、人と人との信頼関係が横たわる。スポーツ、競技である以上、参加することに意義があるといったきれいごとではない。勝たなければ意味はないと思うけれど、ひたむきに練習に打ち込む選手たちを見ていると「勝つ」ことだけが人生ではないように思えてくる。では、何が人生なのか?の問いに対するヒントが、映画「ネクスト・ゴール!」から汲み取れるはずだ。サッカーで負け続けても、人生で勝利することはありうるのだから。
 監督は、学生時代のサッカー仲間であるマイク・プレットとスティーブ・ジェイミソン。長編ドキュメンタリーとしては初めての映画になる。

2014年5月17日(土)より全国順次公開&オンデマンド同時配信

『ネクスト・ゴール!世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦』公式Webサイトico_link

監督:マイク・ブレット&スティーブ・ジェイミソン
出演:アメリカ領サモア サッカー代表チーム、トーマス・ロンゲン監督
2014年/イギリス/英語、サモア語/カラー/98分
配給:アスミック・エース
(c)Next Goal Wins Limited.

「火災をふせぐ」(第4学年)

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

「火災をふせぐ」

2.目 標

 火災の予防や発生時の備えに努めている消防署や関係機関について,資料を活用して調べ,関係機関が地域と協力して火災の防止に努めていることや,関係の諸機関が相互に連携して,緊急に対処する体制をとっていることについて理解し,関係機関に従事している人びとや地域の人びとの工夫や努力を考えることができるようにする。

3.評価規準

社会的事象への関心・意欲・態度
○消防署や関係機関について関心をもち,それを意欲的に調べている。
○市民の一人として消防の問題と関わり,安全な社会を考えようとしている。

社会的な思考・判断・表現
○消防署や関係機関について学習問題や予想を考え,表現している。
○関係機関が地域と協力して火災の防止に努めていることや,関係機関が相互に連携して緊急に対処する体制をとっていることを関連付けて,関係機関や地域の人びとの工夫や努力について考え,自分の考えを適切に表現している。

観察・資料活用の技能
○消防署の様子の写真やビデオを調べて,消防署や関係機関について必要な情報を集め読み取っている。
○調べたことや考えたことを新聞にまとめている。

社会的事象についての知識・理解
○関係機関が地域と協力して火災の防止に努めていることについて理解している。
○関係機関が相互に連携して,火災に緊急に対処する体制をとっていることについて理解している。

4.本単元の指導にあたって

 本学級の子どもたちは社会科の学習で楽しんで調べたり,考えたりすることができている。前中単元「人びとのくらしとごみ」の学習では,大阪市の人口とごみの量のグラフの読み取りや焼却工場の見学を通して,自分たちのくらしをささえるごみ処理について意欲的に考えることができた。また,学習したことをポスターに表現する活動も経験している。
 本学級の子どもたちは「考える」段階では,自分たちの生活を想起して具体的に考えることができているが,「調べる」段階の学習内容を活用して,自分の意見を深めたり,理由付けしたりすることはまだ苦手である。また,話し合い活動では,友だちの意見を聞くことはできているが,それに対して比較したり,共通点を見つけたりして,よりよい考えを導き出すまでには至っていない。
 火災は自分たちの生活や生命を一瞬のうちに奪ってしまう恐ろしいものであり,子どもにとって非常に関心のある教材であり,子どもの学習意欲を高められる教材でもある。また,本校の中には消火用バケツや消火器など防火設備は多く設置されており,防火に対する意識はもちやすい環境にあると考えられる。自分たちの生活と深い関わりがあり,学習した内容が実生活につながりやすい教材なため,学習後も学習して習得したことを継続して活用できる教材であると考える。
 ICT機器を使えば,効果的に資料を活用できると思われる。電子黒板を使い,資料をタイミングよく提示することで,子どもの学習意欲を高め,また,火事の件数や被害額のグラフの読み取りを通して身近にある防火の問題について自分なりの考えをもつことができるようにしたいと考えた。

5.単元の指導計画(全9時間)

小単元名

子どもの意識の流れ

○目 標
●評 価

学校の消防設備

1
本時

学校には,さまざまな消防設備があるね。どこにどれだけあるのだろう。

○学校内にある消防設備の種類や数,設置場所について調べ,学校やその周辺で火災が起こったときの対処の仕方に関心をもつことができるようにする。
●学校内にある消防設備について意欲的に調べることを通して,学校やその周辺で火災が起こったときの対処の仕方に関心をもつことができたか。

(関心・意欲・態度)[子どもの発言][学習ノート]

学校にはおそろしい火災に備えてたくさんの消防設備があったね。では,大阪市ではどれくらいの火災が起こり,その原因や被害はどうなっているのだろう。

おそろしい火災

1

○大阪市の火災の発生件数や原因,被害の様子について意欲的に調べ,火災への対処の仕方に関心をもつことができるようにする。
●火災の発生件数や被害の様子について意欲的に調べることを通して,火災への対処の仕方に関心をもつことができたか。

(関心・意欲・態度)(技能)[学習ノート]

大阪市では,毎年多くの火災が起こっているんだね。火事を消すために消防署ではどんな仕事をしているのだろう。

消防署について調べよう

2

○消防署に関する資料をもとに,消防署の施設や働く人の様子を調べることを通して,働く人の気持ちを実感的にとらえるとともに,役割を分担し,組織的に活動していることを理解することができるようにする。
●消防署の施設・設備や働く人の様子を意欲的に調べ,学習ノートにまとめることができたか。

(知識・理解)(技能)[学習ノート]

消防署では,火事を消すためにいろいろな仕事をしているんだね。火事のない時にはどんな取り組みをしているのだろう。

火災を防ぐ消防署の取り組み

1

○消防署の人たちの防火活動について調べ,消火活動だけでなく,火災を防ぐための活動にも取り組んでいることについて考えることができるようにする。
●消防署が消火活動だけでなく,防火活動にも取り組んでいることについて考えることができたか。

(思考・判断・表現)[子どもの発言][学習ノート]

消火以外にも防火活動に取り組んでいるんだね。万一,火事が起こった時には,119番に通報するけど,どんな仕組みになっているのかな。

119番のしくみ

1

○119番通報が指令情報センターにつながり,その後,消防署などの関係機関に連絡されていることを調べ,関係機関が連携し,協力して消火活動にあたっていることを理解することができるようにする。
●関係機関が連携し,協力して消火活動にあたっていることを理解することができたか。

(知識・理解)[子どもの発言][学習ノート]

指令情報センターでは,いろいろな所と協力して消火活動を指揮しているんだね。わたしたちも家庭や地域で防火について何か取り組むことはないかな。

火災を防ぐ家庭や地域の取り組み

1

○地域防災リーダーなどの活動を調べ,消防署だけでなく家庭や地域の人びとの取り組みも防火や消火活動にとって大きな意味をもつものであることを理解できるようにする。
●消防署だけでなく,家庭や地域の人びとも防火のために取り組んでいることを理解できたか。

(知識・理解)(関心・意欲・態度)[学習ノート]

「防火」新聞を作ろう

2

わたしたちの安全なくらしを守る消火・防火の活動や取り組みについて学んだことを新聞にまとめ,自分にできることを考えてみよう。

○火災から人びとを守るための様々な取り組みを新聞にまとめるとともに,今の自分にできることを考えて表現し,それら交流することができるようにする。
●学習してきたことを新聞にまとめるとともに,今の自分にできることを考えて表現することができたか。

(思考・判断・表現)[新聞(作品)]

6.本時の学習

①目 標
 学校内にある消防設備の種類や数,設置場所について調べ,学校やその周辺で火災が起こったときの対処の仕方に関心をもつことができるようにする。

②学習展開

○学習活動
・学習内容

○指導上の留意点

・資料等



○学校にある消防設備について話し合う。
・消火用バケツ
・消火器
・非常出口
・消火栓

○「学校の中で火事が起きた時に火を消したり,避難を知らせたりするものはあるかな」と発問し,身の回りにある消防設備に目を向けることができるようにする。
○実物や写真を提示し,自分たちの学校生活の中にさまざまな消防設備があることに気づかせ,消防の働きに関心をもつことができるようにする。

・実物
「消火用バケツ」
「消火器」
・写真
「非常出口」①②
「消火栓」③④

学校には,消防設備はどこにどれだけあるのだろう。

調

・写真
「校舎配置図」⑤
・自作資料
「学校内の消防設備」

○校内にある消防設備の数と位置を調べる。
・消火用バケツの数と位置
・消火器の数と位置
・非常出口の数と位置
・消火栓の数と位置

○電子黒板で提示された校舎配置図を調べ,消火用バケツ,消火器,非常出口,消火栓の数と位置を調べることができるようにする。
○消防設備の位置を調べながら,たくさん設置されている理由やその位置に設置されている意味についても考えられるようにする。



○消防設備が分散されて配置されているわけについて考える。
・すばやく消火するため
・被害を拡大しないため
・人命を守るため

○「もし,火事が起きた時のこれらの消防設備がなかったら学校はどうなるか」と発問し,火事の消火や被害拡大を防ぐために消防設備があることを理解できるようにする。
○消防設備が分散されているわけを考えることを通して,火事に対する恐ろしさについても目を向けることができるようにする。




○地域の消火施設・設備について話し合う。
・採水口

○学校周辺の火災時には学校のプールの水も地域の消火に使われていることを話し合い,町の消火設備への関心を高めるようにする。

・写真
「学校のプール」⑥

評価「関心・意欲・態度」
 学校内にある消防設備について意欲的に調べることを通して,学校やその周辺で火災が起こったときの対処の仕方に関心をもつことができたか。(子どもの発言)(学習ノート)

写真資料

①非常出口

②非常出口

③消火栓

④消火栓

⑤校舎配置図(学校内の消防設備)

⑥学校のプール

初中の季節(※1)

 中教審への諮問や指導要領改訂のスケジュールが発表されて、なんだか喧しくなってきました。初等・中等教育に関する世論がじわりと高まってきた感じです。このような時期になると、様々な場で教科の必要性に関する議論が行われます。本稿でも考えてみましょう。

 まず、わかりやすくするために、あえて単純化してみます(※2)。

■Aさん~「美術が大事」派
「芸術家の活動や作品は、多くの人々に役立っています。美術がないと、生活も味気なくなります。映画もポスターも街も食品も、全て美術が関わっています。色や形を道具とする美術は、生活に欠かせないのです。それを学校で教えないのは、美しい社会や優れた消費者を生み出すことを妨げます」

■Bさん~「教科より学力」派
「そもそも育てたい学力がまずあって、そのために各教科等があります。教科の目標も内容も指導方法も評価も、その集合体としての教育課程も、すべて子どもの資質や能力を高めるために行われる実践です。美術が大事と叫ぶのではなく、資質能力を育てるために美術が必要であり、学力に貢献できると主張するべきです」

■Cさん~「子どもの支持」派
「教科より子どもです。子どもの姿から訴えるべきです。美術の時間では、子どもたちは感性を働かせながら、豊かな発想をします。何より子どもたち自身が大好きで、勉強に追われる子どもたちにとって憩いの場です。子どもたち自身が『美術の時間がこれ以上減るのはいやだ』と言っているのですから、それを奪うべきではありません」

■Dさん~「現実的な対応」派
「前回の改訂の評判がよいのだから、今回はそれをより進める方向になるでしょう。それは、今の日本の課題と直結するもので、おそらくグローバルな視野をもったものになるはずです。東京オリンピックも明確なターゲットです。文化的なニーズを取り込みながら、美術文化の必要性を主張していくのがよいと思います」

 このように並べてみると、どれも一長一短であることが分かります。

 Aさんの言う美術の社会的な大切さはその通りだと思います。日本人の感性を美術の実践が支えてきたことも事実だと思います。でも、この論理は、国語や音楽など、どの教科にも当てはまります。美術関係者は同意するでしょうが、その他多くの賛同は得られにくいでしょう。

 Bさんの意見は、学校教育法や教育制度にそった妥当なものです。確かに、教科は学力を実現するための道具です。でも、少し学力至上主義の感じがします。教科と学力は、本来切り離して語れるものではありません。例えば、学力を可視化しているのは教科です(※3)。教科の歴史や実践も大切にしたいものです(※4)。

 Cさんの意見は、現場で子どもを見つめてきた視点からでしょう。子どもから語ることは大事なことです。発想、構想、技能等々、授業の中で子どもはすばらしい姿を見せます。でも、後半は都合が良すぎます。子どもの憩いや好みというだけでは、大勢の人々の賛同は得られません。

 Dさんの意見は現実的です。行政的な施策を進めるうえでは有効な方法だと思います。でも、世論形成を図るには弱く、その具現化には政治力が必要になるので、一般的とは言えないでしょう。また、進め方や方法を一つ間違うと、教科が埋没してしまう危険性もあります。

 要は、美術、学力、子どもなど、何か一つだけを取り出して、お互いの関係性を切り離して語る限り、どう言っても切り返されてしまうのです。では、どうすればよいのでしょうか。実は、私も答えを持っていません。「自分のできること」を「自分のできる場」で「精一杯やる」それだけです。ただ、その際、AさんからDさんのような実体論にならないように気を付けながら、多くの資源を関係付けてとらえ、その都度、その状況で効果的な主張や実践をしていくことが大事だと思っています。

 

※1:文部科学省では、初等・中等教育局が幼稚園、小学校、中学校、高等学校の教育を担当している。初中局や初中など、略称で呼ぶことが多い。
※2:幼稚園の表現、図画工作も含む。本稿では分かりやすくするために美術とした。
※3:美術科がないと、創造力や独創性といった資質や能力は見えにくくなる。
※4:ただ、国の調査を別として、学力に関して具体的なデータや証拠を集められていないのは事実だ。