デジタル教科書・教材:デジタルアートカード 実践事例更新

考える力を育む美術教材『デジタルアートカード』:「指導のアイデア」“くらべて見よう!”を追加しました。

「巨大な絵と対話してみよう」(第5学年)

1.題材名

「巨大な絵と対話してみよう」

2.学年

第5学年

3.分野

「鑑賞する」

4.時間数

1時間

5.題材設定の理由

 本題材は、蔵王町在住の画家、加川広重さんをゲストティーチャーとして招き、自身の巨大な水彩画「雪に包まれる被災地」(546cm×1664cm)を目の前で児童が鑑賞していく授業である。
 新学習指導要領では、「造形的な見方・考え方」が重要なポイントとなる。本題材では、郷土の画家が制作した巨大な絵画を鑑賞し、制作者本人と対話することを通して、児童の「造形的な見方・考え方」についての深まりや広がりが期待できると考える。

6.準備物

教師:水彩画「雪に包まれる被災地」、ワークシート

「雪に包まれる被災地」5m40cm×16m50cm/2011年

児童:筆記用具、クリップボード

7.題材の目標

【知識及び技能】
 郷土の画家の作品に触れ、見た時の感覚や行為を通して、動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどを理解する。〔共通事項〕

【思考力、判断力、表現力等】
 動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどを基に、自分のイメージをもちながら、郷土の画家の作品の造形的なよさや美しさ、表現の意図や特徴などについて感じ取ったり、考えたりする。

【学びに向かう力、人間性等】
 つくりだす喜びを味わい、主体的に郷土の画家の作品のよさや美しさを味わう学習活動に取り組んでいる。

8.題材の評価規準

主な評価規準

十分満足

指導の手立て

知識

技能

 自分の感覚や行為を通して、動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどを理解している。

 作品を見たり、友達と意見交流したりする学習活動を通して、動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどを理解している。

 動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどに気付けるような問いかけや言葉かけを行う。

思考

判断

表現

 動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどの特徴を基に、自分のイメージをもちながら、郷土の画家の作品の造形的なよさや美しさ、表現の意図や特徴などについて感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深めている。

 見て理解した作品の動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどの特徴を基に自分のイメージをもちながら、造形的なよさや美しさなどについて、感じ取ったり考えたりしたことを友達と伝え合い、ワークシートに言葉や絵で表すなど自分の見方や感じ方を広げている。

 動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどの感じを基に、郷土の画家の作品のよさや美しさに目を向けることができるような問いかけや言葉かけを行う。

主体的に
学習に
取り組む
態度

 動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどの特徴を基に、自分のイメージをもちながら、郷土の画家の作品の造形的なよさや美しさ、表現の意図や特徴などについて感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深めている。

 見て理解した作品の動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどの特徴を基に自分のイメージをもちながら、造形的なよさや美しさなどについて、感じ取ったり考えたりしたことを友達と伝え合い、ワークシートに言葉や絵で表すなど自分の見方や感じ方を広げている。

 動き、奥行き、バランス、色の鮮やかさなどの感じを基に、郷土の画家の作品のよさや美しさに目を向けることができるような問いかけや言葉かけを行う。

9.本題材の指導にあたって

(1)児童について
 本学級の児童は、表したいという思いはあっても具体的なイメージがもてなかったり、何からどのように活動を進めればよいか分からなかったり、造形的な活動に苦手意識をもっている児童もみられる。これまでの鑑賞活動では、友達の作品に対して、「きれい」「すごい」と漠然とした言葉で表現することが多く、自分の感じたことをいろいろな言葉で何とか表現し、伝えようとすることには消極的である。

(2)指導にあたって
 絵全体の構図を俯瞰で捉えさせるとともに、細部に描き込まれた様々なモチーフについても着目させる。
 色の組み合わせ、筆の運び、構図など自分のこれまでの造形活動や様々な生活経験と結び付けた気付きを大切にし、友達と対話の過程を通して、自分の感じたことで、児童の「造形的な見方・考え方」について深め、広げていきたい。さらに児童一人一人の思いを引き出していくことで、お互いの感じ方の違いを知り、作品への見方を広げていくことを期待できると考える。郷土の画家との出会いを通して、作品を身近に感じ、作品に込められた思いに気付かせたいと考えた。

10.本時の指導

【導入】
○体育館床に設置された絵を2階ギャラリーから俯瞰して見る。
どんな感じがしたか第一印象を聞き取った。

「怖い」「暗い」「真ん中に人がいる」と感じた児童の声が多かった。

【展開】
T:「今日はこの大きな絵を鑑賞して、気付いたことや感じたことをみんなで伝え合っていきましょう」
○体育館フロアに降りて、絵を近くでみる。

どんなものが見えたかつぶやくというよりは、ほとんどの児童が大きな絵を右や左、上や下と夢中になって見ていた。
T:「絵の中に見えるものや描かれている部分から感じることをワークシートに書いてみましょう」
○個人で思い思いに鑑賞する。
伝え合うときは、教師がファシリテーターとなり、友達の感じたことを共有できるようにした。
T:「友達が見た部分を探してみよう」「どうしてそう感じたのかな」

・児童の書いた内容
ボート→昔使われていたものかな、花→悲しい感じがする
小さい家→置き去りにされたおもちゃみたい
水→すごく雨が降った後、東日本大震災
倒れた木→寒くて枯れてしまったのかな
荒れ果てたようす→地球温暖化が進みすぎた姿、戦争のあと

○作品にどんな思いが込められているのかをグループごとに考える。
再び2階ギャラリーからグループごとに絵を鑑賞し、ワークシートを参考に感じたことを話し合う。

・児童の反応
「柱に木や草が引っかかっているから、水が向こうから来て、反対側に引いていったような感じがする」
「右側は暗いのに、左側の空は明るいよね。右は過去で、左は未来を表しているのかな」
「自然災害で流された町に戻ってきた人たちかな。中央の船や荒れ果てた感じがするところに人が戻ってきて愕然としているようだな」
「震災かな。浸水している様子や藁などの付き方が水に流された感じがする」

○制作者から話を聞く。

【振り返り】
○振り返りの感想を書く。

・児童の反応
「震災が起こるとこんな感じになるのかと、怖いと思った」
「大きな絵の迫力とそこから伝わってくる加川さんの思いを感じることができて楽しかった」
「震災は、こんなにつらかったんだと思った」
「私たちは震災のときに生まれて震災のことは知らないけれど、絵を鑑賞して知ることができた」
「描き方や色などの工夫がすごくて心をつかまれました」

・水彩画家 加川広重氏ホームページ(kagawahiroshige.net)

Webマガジンまなびと:「学び!とPBL」Vol.53

Webマガジン:「学び!とPBL」Vol.53 “コロナ禍の中で「学校とは何か」を考える”を追加しました。

コロナ禍の中で「学校とは何か」を考える

1.忍び寄る黒い影

図1 福島市チームのブースに人だかり 「生徒国際イノベーションフォーラム2020」(以下ISIF’20)まで半年と迫った2月、福井大学が中心となって、高校生のワークショップが開催され、これまでネットワークに参加して活動してきた多くの高校生が集まりました。福島チームも参加し、台湾との交流や高校生フェスティバルの発表を中心としたポスターセッションを行ったところ、多くの高校生がブースに集まり、大きな関心を集めることができました。学習会の進行を仕切るなど、福島市チームの活力は際立っていました。しかし、元気だった日常はこれが最後となりました。
図2 生き生きと実践を語る福島市チーム 同じ頃、中国では武漢市から始まった新型コロナウイルス感染症が世界に拡大し、日本でも感染者が少しずつ報告されるようになっていきました。「ISIF’20が開催される夏までには落ち着くだろう」と高をくくっていたところ、2月末には全国の学校に対して休校要請が、4月には緊急事態宣言が発出されました。人と人が接するあらゆる集まりを自粛することとなり、当然のことながら、イノベーションスクールの福島市チームも対面の会議はできなくなってしまいました。対面のISIF’20をやるかどうかを5月に判断する予定でしたが、「状況的に無理」と4月中に早々に諦めました。

2.オンラインは私たちの強み

 OECD東北スクール以来、私たちのメンバーは広域に散在していることから、否応なしに、SkypeやLINE、Facebookなどのオンラインツールを使ってコミュニケーションを取ってきました。むしろ、お金をかけずに、海外も含めてフラットにコミュニケーションを取ることは重要な課題でした。これまでも普通にZOOMを使っていたので、対面の会議をオンラインに変えても高校生のダメージはそれほどありませんでした。「ZOOMって何、どうやって使うの?」「Slackの使い方がわからない」と慌てふためいている学校現場をよそに、私たちは至って冷静でした。
 ISIF’20は完全オンラインで実施することとなり、実行委員会も、サポーターの募集も全てWebを介して進めることになりました。ホームページを会場にして、ZOOMやSlackをメインツールにして、オンラインでサイン帳も作ろう、すべてがバーチャルだと消えてなくなってしまうから、参加証や記念グッズを作って、リアルに価値を共有しよう、と高校生を中心に、話しはふくらんで行きました。経費がかかるからと参加を見合わせていた海外の仲間も、オンラインなら参加できると、実行委員会にも入ってくれるようになりました。

3.学校のWell-Beingって?

 未来の学校を考える、というのがISIF’20の目的でしたが、生徒たちと話すと自ずと現下のコロナウイルスの話題となり、うちの学校は全員端末を持っているので登校しているのと同じタイムスケジュールで勉強できている、という生徒もいれば、うちは課題を印刷した紙の束が送られてきて1日の生活リズムはひどい状態、という生徒もおり、それぞれの地域の「学校自慢」で大いに盛り上がります。同じ高校生なのにどうしてこうも違うのか。大学進学に大きな差が生じてしまうのではないか。であるなら、学校は本当に全ての生徒にとっていいものなのだろうか。逆に、全ての生徒にとっていい学校とはどのような学校なのだろうか……。

図3 OECDのBetter Life Indexと日本の評価(Educationの評価が高いが本当だろうか?)

 学校をOECDのBetter Life Indexに重ねて議論し、「学校のWell-being」を考えると面白いのではないか、というアイデアが出ました。Better Life Indexは、OECDが定義する、よりよい暮らしの指標で、11の分野(住宅、所得、雇用、社会的つながり、教育、環境、市民参画、健康、主観的幸福、安全、ワークライフバランス)について、OECD加盟37カ国とブラジル、ロシア、南アフリカを加え、あわせて40カ国の指標を比較できるようになっています(*1)。学校を生徒たちの暮らしの場として見た場合、教育だけではなく、建物の環境や、生徒や教員らの関係はどうなっているのか、生徒の考えは学校に活かされているのか、勉強や部活動に追いまくられていないのか、等たくさんの疑問が湧いてきます。「所得」にしても、学校はちゃんとお金の稼ぎ方や使い方を教えているのか、「雇用」で言えば、学校は将来の職業に結びつける教育をしているのか、と、話し始めると切りがありません。
 11の指標に沿って参加者でグループを作り、それぞれの内容について国内外から様々な意見を集めると、とても有意義な話し合いになる、と確信しました。コロナ禍の生徒たちのリアルな姿が、ISIF’20の方向性を固めることとなりました。

図4 ISIF’20への参加を呼びかけるフライヤー
※クリック or タップでPDFが開きます。

*1:https://www.oecd.org/tokyo/statistics/aboutbli.htm

持続可能な未来へのテラ・カルタ

マグナ・カルタからテラ・カルタへ

 1215年、マグナ・カルタ(大憲章)がイングランド王国で承認されました。専制君主に苦しむ人々が自らの権利を国王に認めさせた、人権史における画期的な憲章です。普遍的な人権の基礎を築いたと言われるこの憲章の誕生から800年以上の時を経た現在、諸々の権利は人間だけでなく自然にも付与されるべきである、と英国のチャールズ皇太子は力説していることに注目したいと思います。
 チャールズ皇太子がこうした構想をテラ・カルタ(Terra「地球」 Carta「憲章」)と名づけて公表したのは2021年1月のワン・プラネット・サミットでした。その前年1月のダボス会議で皇太子は「持続可能な市場イニシアティブ(Sustainable Markets Initiative: SMI)」を立ち上げ、持続可能な未来に向けて世界のCEOや民間企業が力を結集するように呼びかけています。SMIを更なる推進へと導く提言として生み出されたテラ・カルタは、皇太子によれば、人間によって壊されつつある「地球のリカバリープラン」なのです。
 テラ・カルタ誕生の背景には、国家に負けず劣らず地球温暖化の責任を担うべきグローバル企業をはじめ、民間セクターの本格的な協力なしには救いの道はない、という英国王室の判断があるようです。テラ・カルタは、SDGsの実現を政府や国連まかせにするのではなく、急成長するグローバル企業をはじめとした民間を巻き込みながら、持続可能な未来への展開を一気に加速させるための王室戦略であると言えましょう。

自然を経済活動の中心に

 テラ・カルタはマグナ・カルタと同様に複数の条項から成っています。全体の構成は3部(第1~10条)の構成から成りますが、各々の標題と概要は次のとおりです。

  • 第1部「未来を再想像する」(第1~3条)
    第1条「サスティナブルな産業の創造」
     グローバルな価値創造の中心に置かれるべき「自然と人々と地球」
    第2条「デフォルトとしてのサスティナブル」
     ビジネスモデルや意思決定、行動の前提条件としての持続可能性
    第3条「消費者のパワー」
     持続可能な市場に対して人々がもつボトムアップの力
  • 第2部「ネット・ゼロ及び自然重視への移行に向けた再設計」(第4~5条)
    第4条「産業界のロードマップの促進・調整」
     2050年までに脱炭素の目標を達成する流れの加速
    第5条「ゲームを変革する主体とそのバリア」
     新たな産業構造を変える技術やソリューションの促進と阻害
  • 第3部「持続可能な投資に向けて再びバランスを取り戻す」(第6~10条)
    第6条「持続可能な投資」
     持続可能性のための新たな資産や資金の調達
    第7条「経済の真のエンジンとしての自然」
     サーキュラー・バイオエコノミーやエコツーリズムのように自然の有限性を前提とした経済活動の在り方
    第8条「市場のインセンティブの創造」
     持続可能な市場を想定した税や政策や規制
    第9条「共通のメトリックスや標準の活用」
     SDGs関連の投資を強調したESGなどの世界標準化
    第10条「科学・技術・イノベーションの変化の促進」
     持続可能な未来へのブレークスルーを促進するための研究と開発などの更なる促進

 以上から、社会のあり方を従来の地球資源の無限性を前提とした成長型から、その有限性を前提とした持続可能な開発型へと本格的にシフトさせていくような変革であることが分かります。チャールズ皇太子の言葉を借用すれば、テラ・カルタは「持続可能な未来へのロードマップ」なのです。

試される本気度と教育の可能性

 テラ・カルタの背景には、チャールズ皇太子の自然界に見られる「ハーモニー原則」という思想があります(「学び!とESD」Vol.01Vol.12Vol.13 参照)。現在、私たちが直面する地球規模課題の解決のために、自然界に見出されるハーモニーの諸原則、すなわち「循環」や「多様性」「相互依存」等々の智慧から学び、科学や技術、デザインや生産活動に活かすべきであるという思想です。テラ・カルタはこうした思想に裏打ちされた憲章なのです。
 テラ・カルタを支持する「サポーター」は現在、400社以上に上り、地球の持続可能性にコミットすることが期待されています。具体的には、地球規模の気候、生物多様性、健康を脅かす問題に対して行動すること、人々の健康をはじめ地域や経済、地球資源(土や空気や水)の健康を回復すること、脱炭素社会を2050年までに、できればさらに早期に実現すること、などが目指されるべき努力の方向性です。
 グローバル化の時代においては、地球温暖化に大きく加担しているグローバル企業をはじめとする民間の活動の影響力を無視できないことは明らかです。おそらくその勢力は今後も増していくことでしょう。テラ・カルタはこうした趨勢に対して再考を迫り、経済活動の中心に「自然・人々・地球」を据えることを提唱するチャレンジであると言えます。
 しかし、こうした「覚悟」を経済活動の基軸に据えた企業はどれほどあるのでしょう。わずかな例外として、パタゴニアのように「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」ことを公然と標榜する企業はありますが、そこまでの倫理的なスタンスもしくは生きざまをどれほどの企業が打ち出せるかは未知数であり、サポーターを表明したグローバル企業はその本気度が問われていると言えるでしょう。
 気候危機の脅威が迫る中、そんな気長なことは言っていられない、とお叱りを受けるのを承知で言うならば、上記のような倫理は中長期的に育まれてこそ、持続可能な形で社会にしっかりと根付くと言えましょう。ESDのチャレンジもこの点に見出されます。持続可能な社会の基盤をつくるにはまずは幼児期からの育みが重要であり、次号では、このテラ・カルタのスピリットを受け継いだ絵本を紹介します。

【参考文献及びURL】

Webマガジンまなびと:「学び!とESD」Vol.32

Webマガジン:「学び!とESD」Vol.32 “持続可能な未来へのテラ・カルタ”を追加しました。